「うちの棚は固定棚で、 伸び縮みしません。 」
いやいや、 そういう話ではないのだ。
棚には単行本が30冊入るとする。 ズーッと売れなければ30冊入る30センチの棚のままである。 1冊売れると29冊入る29センチの棚になる。 このままではもったいないので、 すぐさま別の本を補充して30冊入る30センチの棚に戻す。 というようなことをしていると思う。 補充できないまま30センチの棚が25センチくらいになっている書店をよくみかけるが、 せっかくの棚を小さくしてはみっともないと思う。 また30センチの棚には30冊しか入らないに、 どうしてももう1冊置きたくて本を寝かして置いたりすることもある。 本当は本が痛むからしてはいけないのだけど、 やむにやまれずすることだってある。 この場合なんと30センチの棚が31センチになっているのである。 このように棚というのは伸び縮みするのである。 そしてその伸び縮みにつれて、 内容つまり棚の顔も変わるのである。 図書館の棚は伸び縮みするが、 その表情は変わらない。 本のあるべき場所がキチンと決められているからである。 だから書店の棚の面白さはこの伸び縮みにおける表情の変化であると言える。 伸び切った棚は乱雑だし、 縮み切った棚は間抜けである。 いつも同じ顔の棚は飽きる。 なんとなく図書館のような書店を最近よく見掛けるが、 そのような書店の棚は一度見て、 なければ次ぎには絶対見ない。 だっていつも同じなのだから。 そして伸び縮みしている書店には何かしら活気があって、 昨日見たけどもしかするとなんて期待を持ったりする。 食器屋でも洋服屋でも文房具屋でもなんでもそうだけど、 見せて売る商売の棚というものは伸び縮みしているから楽しいのである。