35番目

《本はこれだけですか》

 「あのー、 本はこれだけですか」という読者の質問を受けたことはないだろうか。

 このときの答えは、 「あっ、 その関係の本はこの裏にもあります。 」である。 店の商品構成で厄介なのが中立(なかだち)の棚である。 つまり壁面の棚ではなく棚の両面に展示できる棚である。 店の展示レイアウトを整えていくと、 どうしても1ジャンルで棚の裏表になってしまうところができてしまうのである。 しかしこれは絶対に、 知恵を絞り切って考えて排除すべきである。

 よくあるでしょう、 スーパーマーケットに買い物に行って、 お菓子の棚をみている、 欲しいものが目の前になくて、 まぁこれでいいや、 なんて思ってカゴに入れて、 その棚の裏に回ったら、 あった、 なんてこと。 このときの感情、 うまく言えないけど、 不快の部類に入るものだと思う。
 展示棚というものは、 <基本的に一度に目に入るものがそのジャンルのすべて> であるべきだ。 すべてを目にしてその中から選ぶ、 というのが購入時の心理である。 よく「この裏にもあります」というステッカーを棚に貼っている書店があるが、 これは書店の言い訳にすぎない。 読者は面倒臭いなぁと思っているのである。
 さらにこの展示方法は商品のヴォリュームが少なくなってしまうというデメリットがある。 200点の商品が一度に目に入るのと100点づつを見るのではイメージがまったく違うことはわかると思う。 売れるも売れないも見せ方ひとつであることは、 小売店の基本的なテクニックである。 店の都合で読者に不便を強いり、 さらに、 せかっく仕入れた商品のヴォリュームを小さくするようなバカなことはしてはいけない。 すべての知恵を使い、 これだけは避けなければならない。

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