47番目

《注文書に番線印を押すということ》

 書店に行くとバインダーに一覧表を鋏んで棚とニラメッコをしている人がいる。それからカバンからチラシを取り出し、なにやら「売れます」とか「売って下さい」だのと頭を下げている人がいる。この人達はいったい何物なのだろう。そうです『出版営業』という職業の人達なのです(僕もそうです)。  新刊には基本的に委託期限があります。書店側からいうと委託期限が切れて棚に本が残っていると取次店から請求書が回ってくるということだし、出版社側からいうと委託期限内は本が売れても請求出来ないということだ。これが注文品となると、出版社としては、書店が発注したものについては、取次店に対してすぐに請求できるのである。原則的には、委託品は納品してもすぐに取次店からお金がもらえないけど、注文品は納品即請求だからすぐにお金になるのである。すぐにお金が欲しいのはどんな企業でも同じだ。ここで活躍するのが出版営業である。誤解を恐れずにいうと、書店に訪問している営業マンは注文が欲しいのである。注文書に番線印を押して欲しいのである。  さて、棚の前で営業マンが一覧表に欠本を記入しているのは、売れ行きの良い本が棚にないと売り逃しとなるのでそれをチェックしているわけだ。「これだけ欠本がありました」と書店に説明し、書店の方でも「ハイハイ」と番線を押す。数日後注文した本が入荷し棚詰めする時、多くの本がダブリだったなんてことがよくある。常備カードによる回転や注文による補充がダブルのである。棚にないというのはいろいろな原因や状況ある。それを加味せず棚にない本は欠本としたのは営業マンの責任、そして棚の売れ行き状況を全く把握せずに発注したのは書店の責任だ。そしてまた、ある日、営業マンがやって来て欠本調査をして番線を貰う。そしてまた同じことが繰り返される。  注文を貰うだけの出版営業、番線を押すだけの商品管理、こういうのってやっぱり馴れ合いと言うのだと思う。こういう人たちというのは、ごく小数なのだけど、必ずいます。

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