48番目

《「棚を耕す」ということ》

 米は年1回しかとれない。でも2回、3回と取れる地方もある。2回、3回ととれるように工夫したからである。米が勝手に2回、3回実ったわけではない。棚回転数は、勿論流通によるところも大きいが、米のように回数を増やすことができる。その工夫をしているだろうか。  読者が棚から本を買うと1回転である。棚に本がないと回転数を上げることは出来ない。常に棚に本が在れば、売り逃しがなく無限大に回転数は上がっていく。これは理屈である。すべての本が365日一度も切れる事なく展示するということは在庫が必要ということであり、売れるかどうかわからないもののストックを複数もつことの経営上の危険性はいうまでもなく、物理的に無理である。だけども棚に入った本1冊が常備あるいは必備カードの回転だけで補充されていることも無謀としか言いようがない。超ベストセラーのような本を棚で売ったとしたら、つまりその本が在れば必ず売れるという条件を付けるとカード補充の場合補充に10日かかるとして36.5回転である。一年間にたった36冊しか売れないのである。こんなことはだれもしない。必ず在庫を持ち36冊以上売れるようにするだろう。超ベストセラー以外の本でも基本はこれである。在庫である。10日間全く棚にない状況を極力抑えれば売れる可能性が膨らんでいくのである。カード回転にまかせる本もある。だがカードの回転だけでは売上を伸ばすことは不可能である。(POS自動発注のお店の方、発注点の改定を小まめにやってますか。)  それではなにを在庫するのか。それは入荷して1ヶ月以内に棚から消える商品である。この商品の回転は少なくとも10回転前後と考えられる。この商品の回転を20回転にするのだ。勿論在庫の調整をしながら、試行錯誤を繰り返しながら、棚の回転率を上げていくのである。こうした努力を僕は「棚を耕す」と呼んでいる。

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