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《もう一冊買わせる/関連図書の使い方》

 本を読み出すと、 その本のテーマで別の本を読みたくなることがよくある。 例えば村上春樹をよんでいるとカートボネガットが読みたくなるような場合や、 高橋克彦を読んでいると古代史の本が読みたくなるような場合である。 本というのはそれだけで存在しているのではなく無数の糸によって限りなく連鎖しているものである。 よく巻末に参考文献なんて項目を設けている本があるけれどこれがその証拠である。
 また超ナントカ法という本や、 知のナントカという本の続編や人気作家の新作が売れるのは読者が関連図書を求めているからであり、 読者がいかに1冊の本から次のステップに進みたいのかを示している。

 本を読むということは、 ひとつの本からさらに翼を広げ、 次々と世界を広げて行く行為である。 この場合未知の世界へ飛び込むわけだから、 関連図書探しは読者にとって大変な作業である。 そこでチャンとその周辺図書を並べてくれている書店があると、 これは実に気が効いている。 その分野をよく知っている人なら当たり前の本でも、 初めてその世界に入って行く読者にとってこうした気配りはうれしいものである。

 さてこの業界の悪いところは、 あるテーマの本がヒットすると次から次へと同じような企画の本が出版されることである。 書店もまた2匹目のドジョウを求めてその本を置くことになる。 読者が欲しいのは類書ではなく関連図書である。 類書を置くことと関連図書をおくことは全く意味が違う。
 関連図書探しのコツは参考文献の欄は勿論のことであるが、 後書きや解説のページが結構情報を提供してくれる。 それに新刊の場合書評に載ったら必ず目を通すように。 結構ここにも商売のネタが潜んでいる。 1冊本を売ったらもう1冊買わせる、 ここがコツ。

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