60番目

《客を選べ、客に選ばれるな》

 物を買うとき、 誰でも店を選ぶ。 品揃えや店の雰囲気、 立地、 サービス 、そして価格などいろいろな選択枝を、 頭の中で整理しているはずだ。 本の場合、 価格は一定であるから、 重要なファクターは立地と品揃えということになるだろう。 しかしすべての読者に満足を得られる店というのは物理的に無理なので、 最大公約数的満足を獲得するシステムとしてPOSがあるのだと思う。 しかしこれとて別のところで書いたとおり万能ではない。 だとすれば、 こういう書店はどうだろう。 書店の方で読者を選んでしまうのだ。
 例えば、 選ぶ人はアウトドアに興味のある人。 品揃えはこうだ。 アウトドア関連図書は勿論品揃えのメイン商品だ。 そして専門的なものは避けて入門書に限るが、 自然科学書であれば生物学、 天文学などや社会科学書であれば環境問題、 政治やビジネス書、 人文科学書は現代思想、 宗教などそしてこの層は若いひとが多く子供も小さいと思われるので教育書では育児、 心理など実用書では料理を充実、 旅行ガイドは勿論、 そして文芸書は紀行を中心にとなる。 こうなるともう一揃えの品揃えとなり特徴ないように見えるが、 基本コンセプトはアウトドアライフを愛する人と決めてかかることにより、 いわゆる基本図書による品揃えとはひと味もふた味も違うものとなる。 アウトドアに興味のない人は当店に来るなと最初から決めてしまうことに意味があるのだ。 アウトドアに興味がある人も普通の人である。 だったら普通の書店でいいのでは、 と思う前に誰に何を売るのかを決めることで店は魅力的になるのだと思うのだが。

 もう八方美人的な書店はいらない。

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