61番目

《売れればいいのだ》

 最も安定した売れ筋とは 「エッチ本」 ではないだろうか。 人間の潜在的な本能をくすぐる本である。 タレント写真集をエッチ本というと不遜であるかもしれないが、 有名タレントの写真集が売れるのはそういうことであると思う。 すでにかなり過激な部分にまで到達したこのジャンルであるが、 専門店を除けば、 一般の書店で棚を充実させている所はない。 なぜか、 それはこらは次々と消費され、 単品としての魅力はせいぜい1カ月であることを知っているからだ。 次々と出版され次々と消えていく。 一時期はこれで随分を潤った出版社と書店があった。

  「売れればいいのだ」 とばかりに売れ筋に突っ込んで行く書店がある。 コミックだ写真集だ、 パソコンだ。 そうだ売れればいいのだ。 売れる本を売ってなにが悪い。 でもね、 これらを買い求める読者も客であり、 これ以外の本を買う読者も客である。 あなたのお店には色々なお客が顔を覗かせる。 勿論本を買いにである。 欲しい本がなければ買わない。 欲しい本が在りそうでなければ探さない。

 夏になれば海だ、 とキャンペーンをはる旅行会社のような紋切り型の書店は御免だ。 売れればいいという発想は間違いではないけれど、 頭のなかのもう半分くらいは別のことを考えるゆとりが欲しいと思うのだけど。

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