62番目

《在庫は返済可能な借金》

 書店経営というのは人件費などは勿論だが、 在庫に金のかかる商売である。 しかし常備寄託制度や新刊委託制度により負担が少なくなっている。 しかしどの商売でも同じだが、注文品の在庫については 、売れなければ負担が大きくのしかかる。 よって極力少ない在庫で、 効率のよい商売をしたいと誰もが考える訳である。
 しかし、 書店業は販売効率こそ他の業種より悪いが、 経営リスクは極めて少ないと言える。 それは上記に制度の他に返品可能な商品を取り扱っているからである。 過剰在庫になれば返品で調整することができるのである。 つまり一時は支払い過剰となり借金により支払いをすることになるのだが、 返品によってそれはすぐに取り戻すことが可能なのである。 一時の借金はあくまでも一時のものであり、 手持ちの商品がすぐに返品という手段で現金化され返済できるのある。 過剰在庫はたしかに経営を圧迫し、 柔軟な商売を阻害するが、 在庫過敏に陥ると、 結局商品構成に大きなダメージを及ぼすことになる。 このバランスこそ重要であると考える。

 あちこちから「バカヤロー、おまえはなにもわかっていない」という声がたくさん聞こえるけど、 <在庫は返済可能な借金である>、 というくらいの太っ腹でなければ、 品揃えなどおぼつかないのではないだろうか。

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