63番目

《早く家に帰ってTVを見よう》

 時代の流れを敏感に反映するのが出版物であると言っても良いだろう。 出版というメディアの衰退は否定しないけれども、 出版物つまり新聞、 雑誌、 書籍というものは 「時代」 を抜きにしては考えられない。 そして時代にとても敏感な出版物は、 <○○が流行している> とメディアが叫び始めたころ, すでに流行を発信する役目を終えていると言える。 Aという本だけでは流行を伝えることは出来ないが、 Aという本の出版の方向性をもったB, C, D ,E, といった複数の本が出現するとき時代はその方向へ動き始めたと言える。そして 複合的な傾向によって流行を出現させたと言うことである。
 出版は編集者が別の出版社と示し合わせて本を作っているのではない。 勿論流行していることによって出版される本も多い。 しかし膨大な量の出版物を扱う書店店頭の書店人は、 出版物の流れから容易に、 これから向かおうとしている出版の傾向、 あるいは世間のトレンドを読み取ることが出来るはずである。 しかしそれらの信号を発信しているのは出版というメディアだけではない。 以前は活字だけをチェックしておけばよかったのだけど、 最近はそうもいかなくて大変だけど、 これから商品はなにがどう動くのかをキチンと見ておくことも商品構成のポイントだと思う。 1年前と同じコンセプトの商品構成なんて、どの商売をみてもないのだから。

 そうそう、 以前からこういう傾向はあったけど、 ヒットソングがTVなしには生まれないように、 TVの影響は以前にも増して出版物に強く影響を及ぼしている。 紙の情報だけを追っていると、とんだところで売れ筋をキャッチしそこねるぞ。 夜お遅くまで棚にしがみついていないで、 早く家に帰ってTVを見よう。

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