66番目

《現品限り》

 基本的に書店の在庫は1点1冊である。 つまり現品限りということである。 だから読者から 「もうちょっと奇麗な本はないのですか」 と聞かれるのが大変つらいのである。 しかし現品限りでないものも多くある。 平積みの本、 雑誌、 ストックを持ったロングセラーの本などである。 でも店にあるすべての本からすれば、 展示品以外に在庫のある本の比率は極めて低い。
 というわけで、 常に店の商品は 《現品限り》 なのだ、 ということを頭に入れておいて欲しい。
 そんなことはわかりきっている、 という声がたくさん聞こえたけど、 本当にそう意識して仕事をしていますか。

 読者のほうでも、 書店の展示品は現品限りであることをある程度理解してくれているから、 毎日毎日 「他に奇麗な本はありませんか」 という質問も受けないし、 売る方だってあまり気にしていないと思うけど、 店頭にはこの1冊しかないのだ、 という気持ちは常に持っていて欲しいと思う。 自分だったら絶対に買わない、 と思うような汚れた本を棚に入れている書店があるけど、 そういう本がある店というのは、 店の良心が疑われるので即刻返品するか、 出版社に連絡して交換してもらうなど対策を講じるべきだ。 特にプレゼントの対象になるような本は、 いつも奇麗なものをストックしておくくらいの気持ちが欲しい。
 よくあるケースだけど、 カバーが本体より少し上にズレてしまうことがる。 読者は本を棚から抜くときそのズレた部分に指を引っ掛けて、 カバーを破ってしまうことがあるのだけど、 これはズレているカバーを直すことで防ぐことができる。 帯はとても破れやすくて困るのだけど、 破れた帯をそのままにしておくより、 捨ててしまった方がすっきりしていい。

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