68番目

《書店のアメニティについて》

 ちょっと変わった書店が最近目立つようになって来た。 インターネットカフェのある書店やゆったりとしたスペースで読書さえ出来る書店とかだ。 スタイルはいろいろあるけど、 読者が本買うをという行為よりも、 書店を楽しむというコンセプトを基につくられた書店である。 この連載の初めの方に書いた、 書店はマニアの店であるということの逆の発想による書店である。 明るさいっぱい楽しさいっぱい、 まるでパチンコ屋がそうなったように、 気軽にどうぞという雰囲気である。 でも器や客へのもてなしがそうであっても、 基本的には書店は本を売るところであり、 パチンコ屋はギャンブルをするところである。 そこがキチンと押さえられているかどうかが、 ほんとうは大切なことなのだけど。
 パチンコ屋には勝つために、 書店は本を手に入れるために足を運ぶのである。 客のアメニティは勝負をする前や買う前に存在するのではなく、 目的を達成したときにあると思う。パチンコなら勝った時、 書店ならば欲しい本を手に入れたときだ。 そしてその瞬間の後に訪れる 「ゆとり」 をアメニティと呼びたい。

 快適であることは、 まちづくりや身近な生活空間でも重要な事なのだけけど、 書店の場合、 そのブランドやその雰囲気で本は買われない。 あればいい、 そうした即物的な面が強いような気がする。 「何かおもしろい本」 はないかと探しに行って、 すてきな雰囲気や買いやすい環境が整備されていても 「何かおもしろい本」 がなければ結局つまらない書店なのだと思う。

 というわけで、 書店のアメニティとは、 やっぱり自分の欲しい本がありそうで、 そして探したらあった、 というという喜びの瞬間があることなのだと思う。

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