70番目

《本が足りない》

 最近は500坪を超えるような超大型店は、 普通ではないにしろ、 珍しいものではなくなった。 それぞれがそれぞれの思いを込めて本を展示している。 共通するのは圧倒的な商品の量である。 それはあたりまえなのだが、 やはり通常では見られない圧倒的な本の量を前にすると、 目が眩む思いがする。 ましてや1000坪というようなスペースに置かれた本の量はやはり尋常ではない。

 関西地区でオープンしたある書店でこんな話を聞いた。 「まだまだ本が足りない、 まだ置きたい本がある。」 というのである。 1000坪近い売り場面積を持つその書店では、 面積だけではなく、 書架の高さが通常の倍はあり、 書籍の収容能力では1500坪の書店にも匹敵すると思われる。 しかしまだ置きたい本があるというのである。 確かに現在流通する本をすべてカバーしようとしたら、 これではスペースは不足するだろう。 しかし商売として本を展示するには十分過ぎる規模ではないだろうか。 しかし、 まだまだ売りたい本がある、 まだまだ展示したいという貪欲な発想には驚いた。
 それならば、 多くの本がフルカバー展示されており、さらに展示点数を増やすためにはフルカバー商品をすべて棚差しにすればどうかと聞くと、 「ここは図書館ではない」 とピシャリ。
 こういう話は10坪の書店さんには、 羨ましいかぎりで現実的な話ではないかもしれないが、10坪の店には10坪の店で、 100坪の店には100坪の店の商品構成の中で、 まだまだ置きたい本がある、 あと僅かなスペースがあればこんな本も置けるのに、 と思いつづけることが大切なことなんだと思う。

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