74番目

《配本がない》

 専門書は配本がない。
 これはちょっとオーバーな言い方だけど、 基本的にそう考えていたほうがいいかもれない。

 専門書というのは、 専門家に向けて出版された本だから読者がきわめて少ない。 2000部の本が一年間で売れたら大ヒットという世界である。 大量に販売できないから、 いわゆる新刊委託をして全国のすみずみまで本を配本するということはしない。 新刊委託をしても限られた書店だけという場合はほとんどだ。 また新刊委託をしていないところもあるし、 取次店に帳合を持っていないところもある。 だから取次が勝手に送って来る (言い方が悪いかな) 商品を店頭に並べておけば、 それでOKということにはならない。 また専門書は、 仕事上必要に迫られて購入することが多く、 とりあえず買っておくか、 というような購入動機は少ない。 だから店頭になければ読者はひどく失望する。 それから専門的な内容であるから、 書店側から読者にアピールするような売り方ではなく、 読者の要望に応えながら店の棚を作って行くようにしなければならない。 「ありません」、 「置いていません」 という言葉を頻繁に使うようなら専門書の販売はあきらめなければならない。 また近隣の文化、 産業レベルも大きく影響する。 化学工業系の会社のない地域で化学工業の棚は不要だし、 機械製作関連の会社のないところで機械の棚は不要だ。

 そういうわけで、 専門書の販売は取次店からの配本だけではとうていやっていけない、 ということを自覚したうえで販売することが肝心であると思う。

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