75番目

《ある専門書の担当者のこと》

 ある大型店での話である。 専門書の改訂版が発売されたときのことだ。 こういう商品は読者が待ちに待っているため、 1日でも早く店頭に並べた方が勝ちとなる。 また極めて専門色が強い商品だったため、 刷り部数も極めて少ない 。配本があるはずもない。 このときの担当者の動きを書いておきたい。

 発売日は事前に電話で確認した。 発売日が近付くと再度電話して注文品の取次店への搬入日を確認した。 取次店へは、 その商品の搬入日を知らせ、 商品が滞留しないよう注意を喚起した。 予定どおり商品が店に到着し、 陳列した。 その日の売上から初回の発注数で間に合うのかどうか検討した。 数日後に品切れの可能性があったため、 追加注文の手配を翌日にした。 当然追加分の出荷日を確認し、 初回と同様の手配を取次店にもした。 2回目の補充品が入荷した頃、 3回目の補充の手配が必要になり出版社に電話したが、 1カ月後の重版待ちとなった。

 このようなことは、 いわゆるベストセラーの販売では日常的に行われる手法だと思うが、 ここに記したのは専門書の販売での出来事である。 本を売るということに一般書も専門書もない。 手法は同様である。 専門書だから常備カードに回転を任せておけばいいということはない。 小部数のために大きな手間がかかることもある。 しかし読者の為にコツコツとしてきた大きな手間が、 やがて店の信頼につながるのである。
 専門書というと何か別のものと考えていないだろうか。 たしかに商品の特性は一般書とは違うが、 売り方は同じだ。

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