76番目

《1巻目がないという不幸/巻数もの》

 「巻数もの」 って結構多い。 特にコミックなんかはこういうやつが多い。
 で 「巻数もの」 のことなんだけど、 読みたいものがあって書店にいくと、 たまたま1巻が店頭にないことがある。 2巻からは全部揃っているのに、 1巻がないのだ。 こういうときの失望感といらだちはチョット言葉では言い表せないくらい、 くやしいものだ。 しょうがないから、 2巻を買うかというと、 これは絶対にない。 続きものを 2巻から読むことほどむなしいことはないし、 だいたいストーリーが理解できない。 だから買わない。 でもね、 結構あるんです、 1巻がない書店が。

 「巻数もの」 ってやつは、 1巻が一番よく売れ、 巻を重ねる毎に売れ行きが悪くなるってことは、 経験上知っていると思う。 1巻目を読んだけど面白くなかったとか、 3巻、 4巻と読んできたけど息切れしたとかいうことだ。 ところが、この1巻ってやつは、 その本を読むために誰でも買うものだ。 5巻は持っているけど 1巻は持っていない、 というような人はいないと思う。 「巻数もの」 は、 全10巻なら 10冊で 1冊の意味だ。 最初の 50頁が落丁している本は誰も買わない、 ということだ。
 そこで、 売れ行きの良い 「巻数もの」 の在庫の仕方は、 1巻を 2巻目以降の 3倍在庫することだ。 全点各 1冊の在庫なら 1巻だけは 3冊必要ということだ。 なんとしても 1巻が店頭から消える日を作ってはならない。 これは上下巻の場合でも事情は同じだ。

 読みたいと思って訪れた書店に、 1巻がないことの不幸は、 まったく置いていなかった時よりも大きい。 1巻目を読んだ後に、 2巻目がなかったことの不幸のほうがましだ。

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