82番目

《本を値切る》

 読者は、 書店で本を値切ることはできない。 それは再販制度によって定価販売が守られているからだ。 でも書店は取次店に対して値切ることができる。 仕入正味のことだ。 だけど現実問題としては、 仕入正味は、書店毎に取次店との間でキッチリと決められていて、 商品毎に 「ねえ、 ねえ、 まけてよ」 と言っても、 そう簡単に値切れるものではない。 最近は書店が値切っているわけでもないのに、 通常の正味より安いものがあったりするが、それは買い切りだったりする。
 書店から 「正味を下げてほしい」 という話はもう何年も前からあって、 現実に正味が下がったところもある。 だけど、 一般に話題になる正味の問題は、 業界全体の問題であって個々の書店の仕入れの問題ではないというのが現状ではないだろうか。

 「安く仕入れて、 高く売る」 これは商いの原点である。 高く売ることは、 再販制度があるから出来ないけど、 安く仕入れる努力はすべきだと思う。 それは業界の問題ではなく個々の書店の問題としてである。 出版社から 「正味を下げるから買い切り」 と言われるのではなく、 書店のほうで 「買い切るから正味を下げろ」 という元気が欲しい。 これは店長さんや経営者レベルの話ではなく、 店で働くすべての人が持って欲しい意識だ。
 値切る、 値切られるという習慣から遠のいてしまったこの業界だけど、 モノを売り続ける限り、 この意識はとても大切なことだと思うのだけど。

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