83番目

《POPとふんどし》

 POPというのは知っていいると思うけど、 「ふんどし」 というのをご存じだろうか。
  「ふんどし」 というのは、 平台の最前列の本の一番下に垂れ下げる縦長の紙のことである。 ちょうど書き初めの半紙くらいの大きさだ。 POPは金具を使って本の上にキャッチコピーを掲示するのだけど、 「ふんどし」 は本の下にかなり大きめにキャッチコピーを掲示するような格好になる。 最近これをみかけなくなったのは、 平台の高さが低くなり目の届く範囲に 「ふんどし」 をぶら下げることが出来なくなったためと思われる。 これってほんとは平台の最前列にあるから、 お客さんに触れて結構すぐにボロボロになって実用性に乏しい。 でも以前はよくみかけた。 ふんどしを天井からぶら下げて書店もある。
 いずれにせよ、 店頭で、 ある商品を目立たせるための手法には限りがあり、 僕にしても、 いいアイデアがない。 出版社からは、 「拡材」 という名でいろいろと販売促進用のツールが送られてくる。 それらのすべてを店の表と言わず店内にも一杯張っている書店があるけど、 あまり上品とは言えない。

 これは非常に個人的な趣味の問題だからみんなはどうかわからないけど、 僕は店の人が書いた手書きPOPが好きだ。 「売行良好」 とか 「大評判 」とかいう常套句ではなく、 「猫好きの人は、絶対持っておくべき1冊」 なんてちょっと心をくすぐられるコピーだったら、 そしていかにも猫好きの、 やさしいそうなお姉さんの手書き文字だったら思わず手に取ってしまう。
 そうPOPは心がこもっていなければならない。 そして美しくなければならない。 心がこもっていても美しくない文字はダメ。 悪筆の方は、 残念ながらPOPを書く資格はありません。 書店のPOPはスーパーのそれ ( 「ラストバーゲン980円均一」 というようなやつ) ではなく、 商品を際立たせる手法であるということ。 だからあれもこれもやると下品になるのです。

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