84番目

《「書タレ」 という言葉》

 「書タレ」 って汚い言葉だよね。 この 「タレ」 というのが悪いイメージを持っている。 「鼻タレ」 とか言うし。

 さて、 書タレというのは、 売れない、 返品できないという究極の困った本のことで、 書店では目の敵にされている。 だけど、 そうなった原因と要因を作ったのはあなたであるから、 まあこう言っちゃなんだけどあきらめるしかない。 あなたが大切にしていた茶碗をあなたが割ったようなものだ。 しょうがないのだ。
 で、 その書タレなのだけど、 たまに書店で棚の上のほうに 「私達は書タレです」 と言わんばかりに並んでいることがある。 倉庫にしまっておくより、 まぁ場所は悪いけど店頭に出しておけば、 もしかして、 なんていう思い伝わって来て、 ちょいと悲しい風景だし、 新刊本の書店なのに古本屋が同居しているみたいで、 ちょっと寒い風景でもある。
 でもねぇ、 やっぱし売れないものは売れないと思うのだけど。

 そういうものは、 さっさと棚からはずしてその場所に、 自分が売りたい、 あるいは売れる本をおいた方がよっぽど売上に貢献すると思うのだけど、 1万円も出して仕入れた本だもの、 何とか元を取らねば、 というセコイ気持ちがなかなかそうさせてくれないというのが本当のところかもしれない。
 気持ちはめいっぱいわかるのだけど、 やはりこれは何としても処分すべし。 その方法は、 昔年の恨みと、 こんな売れない本を仕入れた自分への反省を込めて、 庭でメラメラを燃やすのが正解?

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