91番目

《 「帳合」 は死語か》

 書店がどこの取次店と取引しているのか、 ということを 「帳合」 という(読み方がわからない人のために書いておくけど 、チョウアイと読む)。 トーハンと取引していれば 「トーハン帳合の店」 ということだ。

 「帳合」というのは、 製本の用語で、 本のページを1ページから最終ページまで順番どおりに揃えることなのだけど、 当然のごとく、 製本で帳合が狂うとページがバラバラの本が出来上がる。 出版社の人が書店さんに対して 「どこの帳合ですか」 と聞くのは、 出版社は多くの取次店と取引しているから、 「ご注文の品はどこの取次店に納品すればいいのですか」 と聞いているのだ。
 さてこの 「帳合」 という言葉は、 主に出版社側が使うことが多い。 上記の例のように、 書店からの注文に対し、 取次店を確認するために使うことが多いからだ。 だから出版社用語かというとそうではない。 この言葉は、 業界全体であたりまえのように使われる言葉である。 でも最近若い人にこの 「帳合」 という言葉を使うとキョトンとしている人が目立つ。 電話口で 「帳合はどちらですか」 と聞くと、 しばらく沈黙が起きる。 あわてて 「お取次は」 と聞き直すのだけど、 なんかなぁ、 しっくりこないのだ。 言葉はドンドン更新されるものだけど、 業界の用語というのは時の流れの中でいろいろな意味を持つようになったものである。 つまり言葉には歴史があるということだ。
 現在の書店は、 たいへん厳しい状況にあり、 人員を制限したり、 アルバイトやらパートを使ってコストダウンしないと経営が成り立たないらしいが、 業界での基本的なことや用語なんかを教える時間もないのだろうか。 こんなことで、 売上増なんて、 おぼつかないのではないかなと、心配したりしている僕は、古いタイプなのでしょうか。

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