96番目

《制服と名札》

 制服を採用している書店は規模の大きな書店である。 なにしろ制服というのはお金がかかるものだからだ。 経済的余裕がないと制服を貸与することは難しい。 だからといって制服がある書店が儲かっている書店で、 制服のない書店は貧乏書店であるというつもりはない。 ダサイ制服より私服でキビキビした恰好のほうがいいと思う書店もある。 まぁ制服というのはその会社のポリシーである場合が多いのかもしれない。

 さてさて、 制服の利点はお客の目で見れば、 それが店員であることがすぐにわかることである。 ちょっとものを尋ねたい時、 制服を着ている人が近くにいればすぐに聞ける。 この人は店員さんかな、 違うかなとキョロキョロしなくてすむというものだ。 「あのーお店の方ですか」 と聞いたら、 けげんな顔で 「違います」 と言われた経験は書店ならずとも誰でもあると思う。 このときの気恥ずかしさから解放されるのは制服のお陰である。
 それと、 名札であるが、 これは絶対に付けて欲しい。 名札は責任の証である。 名札を付けるだけで責任感が増すとは言えないが、 少なくとも自覚を覚えるはずだ。 名札をつけて街を歩かないのは、 自分という責任をフリータイムに他人に見せる必要がないからだ。 自分の名を明かすことで仕事に責任が生まれる。 それに私服で名札なしだとやっぱり僕なんかは、 それが店の人かどうかわからずに尋ねたいことがあってもなかなか聞けない。
 名札は店員の責任の自覚の証であると同時に、 お客に対するサービスである。 名札に自宅の電話番号が書いてある、 独身のきれいなお姉さんがいる書店なら大盛況まちがいなし?

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