99番目

《ご贔屓さん》

 自分の部屋の書棚を見ると、 著者とか、 出版社に偏りがあることがあるはずだ。 別に意識してそうしたわけでもないのに、 ある出版社の本がたくさんあるということがあると思う。 どうしてそうなるかというと、 出版社にはそれぞれカラーというものがあり、 一定の傾向を持っている。 その傾向と自分の嗜好がある部分で合致しているのである。
 「岩波ファン」 という言葉があるが、 岩波書店の本ならなんでも買ってしまう人たちがいる。 これは他の出版社を否定しているのではなく、 岩波書店の本を積極的に評価し、 自分の読書欲を満たしているのである。 特定の出版社に強い思い入れを持つのは、最近ではコミックの読者であると言えるかもしれない。
 こういうのは、商売としてやっぱり目をつけるべきだと思う。

 ではどうするのか。 それは自分の好きな出版社の本を積極的に売ってみることから始まるのだと思う。 「いつもいい本ばかり出しやがって、 このやろー」 と思う出版社に入れ込むのである。 「いい本だけど、 マイナーなジャンルばかりだしているから、 うちで面倒みてやるか」 的なお情け型であってもいい。 こうした出版社の本を、 ご贔屓(ひいき)本として、 店のちょっと目立つところに置いてみるのである。
 この場合の注意事項は、 これはかなりの冒険だから、 出版社には仕入れの主旨をきちんと連絡しておくこと。 仕入れ条件をはっきりさせておくこと。 出版社としては 「あんたのところの本が気にいった。 ぜひとも売りたい」 という話を断るところはないはずだ。
こうしたエコヒイキ的な発想は商売の足カセとなり邪道でもあるように見えるけど、 お店の特徴にもなるし、 新しい読者をお店に付けることにもなるとおもうのだけど。

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