101番目

《常備入替えの楽しみ》

 取次店からドッカーンとダンボール箱が届く。 おいおいなんだよこの荷物は。 そうです、 毎度おなじみの常備入替商品です。
 書店人が書店人として、 もっと楽しまなければならないのが、 この常備入替なのだと思う。

 出版社から送られて来る常備品は、 セットという形でやってくる。 中身は現在お店に並んでいるものとは違う。 なぜならセットの冊数が決められているから、 一年間に発行した新刊を加えたり、 売れ行きが鈍った商品は削除されているからだ。 100点100冊という常備セットなら、 前年と冊数は同じでも内容が違うという訳である。
 さて常備品の入れ替え作業であるが、 まず入れ替え対象の出版社の常備品を全部抜き出すのが常套手段だ。 この場合注意しなくてはならないのは、 入れ替え月の2カ月ほど前から現在までの新刊は、 常備セットに含まれていないということだ。 取次店とセット組みの打ち合わせをしてセットを組むのに、 2カ月くらいかかるからである。 7月末の入れ替え出版社なら、 6月と7月の新刊は常備セットに入っていないということだ (もしかすると5月分も含まれないところもあるかもしれない)。 というわけだから、 お店の本を全部抜き出すと新刊が棚から消えることになる。 抜き出し作業は、 新刊に十分気を付けること。 全部抜き終わったら次は、 高回転商品を残す作業に入る。 良く売れているものまで返す必要はないからね。 どうせすぐに注文する商品まで返品するというような無駄はしないことだ。
 ここまで進んだらあとは、 送られて来たピッカピカの本を棚に詰める作業が残るだけだ。 これが楽しい。 本が抜き出された棚は、 本が斜めに寝ていて、 本の陳列をチョットいじくる絶好のチャンスなのだ。 棚のバランスを考えながら、 この本は以前 (入れ替え前) は2段目にあったけど3段目にしようとか、 抜き出したら棚がひとつ空いたので、 ジャンルの分け方を変えてみようとか、 いろいろと発想してみるのだ。 それから棚詰め作業中に、 入れ替えの対象となる本以外に、 売れ残り商品や普段は気付かないけどもう少し工夫すれば売れるかも知れない、 という本に出くわすものだ。

 常備入替というのは、 大量の本を一度に扱う重労働であることは分かっているが、 重労働であるからこそ、 そこに楽しみがなければやってられない。 自分でいろいろと工夫してみて下さい。
 それから常備入替直後は、 その出版社の売上は確実に上がります。 なんたってこれまでなんらかの理由で欠けていた本が棚に復活したり、 汚れのない奇麗な本が並んでいるのだから。 努力が報われるってもんです。

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