105番目

《棚は多いほうが》

 売れ行きの良いジャンルの棚は、 ドンドン増やして関連図書をたくさん並べる。 読者の関心が高いジャンルの本は関心の低い本を減らして並べる。 これは誰もが考えることだし販売の常識である。

 以前文庫本の棚や平台は、 これでもかと言うくらい増えた時期があった。 でも文庫棚の収納スペースを越えていくらでも新しい文庫が創刊され、 結局もうこれ以上対応できないというところで、 書店の文庫棚の増設はストップした。 このとき棚を増やした分だけ売上が伸びた書店がいくつあっただろう。 棚を倍にしても売上が倍にならないことは誰でもが経験上知っている。 売上の目安として 「坪効率 (1坪当たりどれくらいの販売量があるかということ) 」 というのがあるけど、 売れ行きが不良であるジャンルを減らして、 売れ行きの良好なジャンルを増やしていく作業というのは、 そう簡単なものではない。 売れるから増やして、 売れないから減らすというのはとても合理的な発想だけど、 売れているものは常に変化していてそれについて行けるだけの判断力がないと増やし放っぱなし、 減らし放っぱなし、 になる危険性がつきまとう。

 ジャンルの売れ行きの変化は、 1年毎に変わるのではなく、3年とか5年とかいうかなり長期的な周期で変化していく。 僕は、書店人じゃないから当たっていなかったらごめんなさいだけど、 パソコン本がこの変化の時期に来ていると思っている。 WINDOWS 95やインターネットをきっかけに爆発的な広がりを見せたパソコン本の販売だけど、 パソコン雑誌の休刊や広がるだけ広がったパソコン本売り場の効率低下 (販売単価の下落や売れ行き不振) など変化の兆しは随分前からあった。 そろそろ考えた方がいいんじゃないかなと外から見ていて思う。
 売り場が大きく、 たくさんの本が並んでいることだけが書店の魅力ではない。 時にはコンパクトにまとめることで売上の効率を高めることも必要だ。

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