107番目

《ねこに未来はない》

 僕の家にはネコがいます。 一年程前、 捨てられていたのを見るに見かねて嫁さんが拾ってきたネコです。 ネコは犬を違ってとてもわがままで気まぐれです。 それに一日中寝ています。 せっかく命を助けてやったのにその恩義など全くありません。

 もう随分前の事になるけど、 「ねこに未来はない」 という小説が大ヒットした。 そのとおり、 ネコにとっての時間は 「今」 だけで 「これから先」 という感覚はまったくないらしい。 これを書いている今も、 僕の机の下で、なにやら夢をみているらしくブツブツいいながら寝ています。
 どうしてこんな話をしているのかというと、 書店の多くが 「今」 しか売っていないような気がするからです。 「猿岩石日記」 なんて探すの結構苦労するんじゃないかと思ってしまったりするのです。 「今」 話題のこと、 「今」 売れている本、 「今日」 発売の雑誌、 フォーカスの少年Aの写真だって、 「今」 売るのはマズイという判断で売るのを止めたところがあったはずで、 これから先を考えて売ったり売らなかったりした書店は少なかったような気がする (間違っていたらすいません)。

 ネコは 「今」 を積み重ねることで、 一生を生きます。 でも書店は、 「今」 を積み重ねることだけで大きくなることは出来ないのではないかと思います。 ひとりでも多くのお客さんに来て、 買ってもらうためには、 「今」 を長い年月の内のひとつであると考えないと 「書店に未来はない」 ということになるのではないでしょうか。
 うちのネコを見ながら、 ふと思ったことです。
 そうそう蛇足だけど、 朝日文庫の 「ネコのこころがわかる本」 は名著だから、 ネコ関連本のところに展示しておいてください。 売れるよ。

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