108番目

《出庫調整ってなんだろう》

 売れ行きの良い本を10冊注文したら3冊しか入荷しなかった。 こんな経験をしたことがあるはずだ。 10冊注文したのだから10冊入荷するのが当たり前のはずだ。 なにしろ 「注文」 したのだから。
 寿司を5人前 「注文」 したら3人前しか来なかったら、 誰だって、 あのーこれ違いますと言うのだけど、 本の注文で減数されても、 まあーしょうがないかと諦めてしまうのがこの業界である。
 寿司を注文するとき、 余ったら返したらいいやと思い、 本当は3人前でいいところを3人前注文して、 食べてみたら1人前余って4人前の代金を支払うというようなことはしないし、 できない。 注文したものについては代金を支払うのが当たり前だからだ。
 もしこれができるなら、 寿司屋はきっとこう言うだろう。 「お客さん、5人前はちょっと多いんじゃないの。 まあ食べてみて、 足りないようだったらまた追加すればいいじゃない。 それに3人前でも余ったらもったいないよ。 とりあえず2人前持って行くから」
 この業界では、 この寿司屋がやっていることを 「出庫調整」というのだ。

 この場合、 注文した方は、3人いるのに2人前しかこないと腹を立てるし、 注文を受けた方は、 あの家でこれまで5人前なんて頼んだこともないのに、 余ったら返すつもりだ。 2人前で十分だろうと、 ギスギスした関係が目に浮かぶ。 極端な話になると、 注文を受けても、 本日は休業です、 と居留守を決め込まれる場合も出てくる。
 この 「出庫調整」 、 良いのか、 悪いのか、 とにかくこの業界の大きな特徴である。 「出庫調整」 されたら大きな声で言おう、 怒りまくろう 「減数するな。 満数くれ。」。 でも満数入荷したら返しちゃだめよ。

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