113番目

《「わざわざ」と「ついで」の考察》

 人間のものに対する欲望は、 通常では考えられない行動を伴うものだ。 そのひとつが「 わざわざ」である。

 欲しい本があると、 車を飛ばしてある可能性が最も高い大型店に出掛けたり、 そこにないと、 考え得るすべての書店に出掛けたりすることがある。 僕の場合、 この間、 欲しいルアーがあって京都市内では有数のバス釣り専門店まで車で出掛けたということがあった。 近所の釣り道具屋では間に合わないから 「わざわざ」 である。 いつもはその近所の店で 「ついで」 に買っておけば間に合うのだけど、 欲しいルアーがその店になくて行動を起こしたというわけだ。 で、 結局その店にもなくて、 「ちくしょう、 せっかく遠くまで、 車で来てやったのに、 僕の欲しいルアーを置いていないなんて、 なにが有名な店だよ、 なにが専門店だよ」 と捨てぜりふを吐いて、 「二度とこんな店には来ないぞ」 という堅い決心をしたのである。

 なにが言いたいのか、 それは 「わざわざ」 には過度の期待が含まれているということだ。 最近では、 便利な場所はすでに出店する場所がなかったり、 家賃が高くて採算性の悪い書店では出店できないことが多く、 立地としては読者に 「わざわざ」 来てもらわなければならないところが多くなったきた。 ということはそれらの書店は常に読者から期待されているということでもある。 立地がよくて 「ついで」 に買って貰える書店と同様であれば、 たちまち読者を失うことにつながるということだ。

左三角前に 上三角目次へ 三角印次へ