この1年で、 僕の家の近くの書店が1軒つぶれました。 10坪ほどの店で、 半分が本と雑誌、 あと半分は文具という典型的な小規模書店でした。 妻はもう何年も前からこの書店に足を運ぶことはありませんでした。 だってなーんにもないんだもん。
はっきり言わせて貰うと、 本を売る努力のかけらもない書店でした。 厳しい言い方かもしれないし、 その書店の店長さんには本当に失礼だとは思うのですが、 妻の通わない書店だったのだから、 欲しい本のない書店だったのだから、 しかたないと思うのです。 そして妻だけではなく、 多くの読書ファンがその店を諦めたのだから。
今妻は、 近くできたショッピングセンターにある大きな書店に足を運んでいます。 ひととおりのものが、 ひととおり並んでいる書店です。 不満はなさそうですが、 満足もないようです。 ひととおりの品揃えだから、 妻の好きなジャンルもひととおりで、 なんか消化不良を起こしそう、 というような感じなのかもしれません。
読者は我がままです。 決して満足などありません。 僕の妻を見ているとよく分かるし、 僕だってそうです。 満足を求めて一生書店をはしごし続けるのかも知れません。 でも、 しばらく足を止める書店には出会います。 でもその書店も、 しばらくするとすべての満足でないことがわかり立ち去ることになります。
このところ、 ぼくが、 バス釣りにでかけることが多くて、 妻は以前のように 「車で書店へ連れて行って」 とは言わなくなりました。 もしかすると、 あのショッピングセンターの中の書店に止まり木を見付けたかもしれません。
一年に渡り、ご愛読ありがとうございました。次週は《あとがき》と《おまけ》です。