おまけ1

《お店での用語集》

 お店で使う言葉を集めたらこんな風になりました。 これで全部じゃないけど、 まぁ基本的に知っておくべき最低限ってところかな。

■カバー
 本の表紙と間違えている人が多いけど、 カバーは表紙に巻かれている奇麗にデザインされた紙のこと。 本のトータルデザイナーとして装丁家がいるけど、 最近では、 カバーだけをデザインするカバーデザイナーが多くなっている。

■帯(オビ)
 カバーの上にさらに巻く宣伝用の細い紙。 以前は腰巻 (こしまき) なんて言ってた。 本を買ってもらうために精一杯の宣伝文句が書かれている。 だからその本の内容はこれを読めばだいたいわかる。

■帳合(ちょうあい)
 書店では、 どこの取次店と取引しているか、 ということ。単純な取引関係を示す言葉ではなく取次店と書店、 あるいは出版社と取次店の深い関係を表す言葉である。 だからといって 「寵愛」 とは書かない。

■版元(はんもと)さん
 出版社のことであるが、 印刷するための版をもっているという意味がある。 「しゅっぱんしゃさん」 と3回続けて言うと舌を咬むけど、 「はんもとさん」 は何回言っても舌を咬まない。

■売筋(うれすじ)
 売れ行きの良い本の傾向を指し示す言葉である。 売筋の本をたくさん集めて販売することが売上を上げる最短の道であるが、 売筋の発見はそうたやすいものではない。 売筋を発見しても、 売筋商品が少ないとなんにもならない。 最大限の努力をしてかき集めよう。

■死筋(しにすじ)
 売筋の逆の言葉である。 どんなに努力しても市場に購入意欲がなければ売れないのは当然だ。 魚のいないところに釣り糸を垂れているようなものだ。 死筋の発見は売筋の発見より大切だと言える。 POSはこれを発見する最大の武器である。 ただし忘れてはならないのは、 売筋も死筋も本そのもののことを言っているのではない。 販売の傾向を示す言葉である。

■書たれ(しょたれ)
 85番目で詳しく書いた。 もうテコでも動かぬ本のことだ。

■延勘(のべかん)
 支払い条件のひとつである。 仕入れ条件は注文 (原則は買切) であるが、 支払いを何カ月か先にするものである。 通常3カ月の場合が多い。 1月に仕入れたものの支払いは3月でよいということ。 3カ月延勘のことは 「さんのべ」 という。

■長期委託(ちょうきいたく)
 現場では 「ちょうき」 と言う場合が多い。 委託ということだから返品が可能である。 ただし委託期間内は展示の義務が発生する。 これは常備寄託と同様だ。 でも売れても今後売れないと予測した場合は補充する義務はない (常備寄託には補充義務がある) 。 多くの場合が6カ月の長期委託である。

■常備寄託(じょうびきたく)
 これは支払い条件のひとつではない。 出版社にある在庫の内、 何点かを書店の店頭に陳列するという契約を出版社と結ぶものである。 書店の店頭にあるけど、 出版社の在庫商品であるから仕入れ金を払う必要はないというわけだ。 その中の本が売れたら、 それは出版社の在庫品であるから売れた本を仕入れて棚に戻しておく必要がある。 これが常備寄託品の補充義務だ。 まあ平たく言えば、 出版社の在庫をちょっとお借りして、 売れたらお金を払うけど、 売れなかったらごめんね。 その代わり売れたものはちゃんと補充するし、 お借りしている本はちゃーんと展示するからね。 という感じかな。
 こうした商品の展示期限は1年。 1年経つと、 一度全部出版社に返して、 清算するというわけだ。

■正味(しょうみ)
 仕入れの掛率のことである。 定価別正味、 出版社別正味、 1本正味、 いろいろあるから店長さんに、 お店の正味はどうなっているのか聞いてみて。

■条件(じょうけん)
 会話の中で使われる場合のほとんどが、 「仕入条件」 のこと。 つまり<注文>なのか<延勘>なのか<長期委託>なのかということである。

■短冊(たんざく)
 七夕には使わない。 本を注文するときに使う、 細長い発注書のことである。 これが書店から、 取次、 出版社を経由して本といっしょにまた書店に戻って来る。 ちょっとしたことで紛失してしまいそうな紙切れであるが、 便利な仕組みでもある。以前は、 注文書 (短冊) を手で書くことで、 本を覚えていたけど、 最近ではISBNやバーコードさえあれば本は注文できるので、 本を覚える道具としての短冊の役割は終わりつつある。

■定期改正(ていきかいせい)
 雑誌の配本部数の調整のことである。 雑誌の配本は納品部数と返品部数の差、 つまり売上によって配本数がコントロールされている。 10冊納品して返品が7冊あれば配本は、 例えば5冊に減る。 ただし実売数の把握には時間を要するし、 いつも一定の売り部数であるはずもない。 店の販売部数は月別の刻々と変化している。 こうした状況を踏まえた上で、 雑誌の配本部数を適正化する作業は日々行わなければならない。

■委託指定配本(いたくしていはいほん)
 指定配本という場合もある。 要するに、 新刊委託の配本数を書店が指定するものだ。 5冊ちょうだい、 10冊ちょうだいというのを書店が決めるやり方である。 ただしこの方式を採用している出版社は限られます。 ちなみに当社はできません。

■即返品(そくへんぴん)
 新刊委託配本について一度も店頭に並べずに返品することである。 店の規模と出版物の量がマッチしない現在では、 店に置きたくても置けないという理由で返品される本は多いと思う。 また自店に棚のないジャンルの本が送られてくることもあるだろう。 様々な理由で 「即返品」 されるのだが、 これは流通のムダの何物でもない。 不要なジャンル、 不要な出版社など配本を必要としないものについては、 取次店に告知しよう。 また配本数についても多すぎる場合は減数してもらうよう連絡しよう。 即返品は業界の不幸である。

■中立(なかだち)
 壁に設置された棚ではなく、 フロアーに設置された両面展示ができる棚のこと。 収納力は抜群であるが、 両面が同ジャンルだったりすると見にくいし、 配置によっては万引きの巣になったりと結構使い方が難しい。

■上置(うわおき)
 平台の上に置かれる2段ほどの棚。 ここに入れるべき本は、 平台との連動を意識して極めてフレキシブルに扱うべきだ。 差し棚として、 あるいはフルカバーに使ったりと、 機動的に本を展示すべき棚で、 客の注目度も高い。 1カ月で全商品が入れ代わっているよう積極的な使い方をしないと、 上置は単なる棚になってしまう。 平台を引き立たせる脇役としての上置の役目は重要だ。

■ゲタ
 平台に本を10冊積みたいけど、 本が足りない。 そんなとき別の本を下敷きにして積みたい本を積むときの、 下敷きになる本のこと。 あまりお薦めできない方法である。

■ふんどし
 平台の最前列に、 床に向かってぶらさげる長方形の宣伝用の紙。 以前は平台の高さがあったのでよく見掛ける手法だったけど、 最近の平台は低いのでなかなかお目にかかれない。だけどお客さんの足に触れてすぐにボロボロになるし、 活気があっていいような気もするけど、 ちょっとヤボったい気もする。

■絶版/品切(ぜっぱん/しなぎれ)
出版社によって、 この言葉は使い分けられているけど、 書店の現場では、 注文しても入手出来ない本のこと以外の意味はない。 品切というのは、 今は在庫がないから出庫できないけど、 もしかするとまた作るかもしれないよ、 という意味をもっているけど、 「絶版」 は刷るための版がないという意味で、 これは本当に手に入らない。 でもどちらも今は手に入らないのだから書店にとっては意味は同じようなもの。

■POS自動発注(ぽすじどうはっちゅう)/
 本を販売したとき、 レジでISBNやバーコードを読み込ませることにより、 その本が自動的に取次店に注文される仕組みのこと。 現在大型店を中心に普及しているが、 その運用の仕方には、 課題が多い。

■拡材(かくざい)
 出版社が販売に力を入れている商品について、 店頭で販売に活用できるように、 と送られてくるチラシ、ポスター、かんばん、POPなどのこと。 センスのいいものや店頭であまりジャマにならないものはいいけど、 時々 「こんなの、飾るんですかぁ?」 と言いたくなるものもある。

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