書店で客さんが季節感を一番感じるのは、 きっと年末年始の風景だと蟹江は思う。 おせち料理特集の雑誌や家計簿付の婦人誌の宣伝用ポスター、 そしてカレンダーや手帳、 そういう季節を感じさせる商品が並んでいて、 それを見たお客が 「ああ、 一年ももう終わりなのか。」 と思う、 その季節感が年末の書店にはある。 この季節感タップリの風景は、タイミングがはずれると、 まぬけな風景に一変する。
蟹江は、 カレンダー売り場を眺めながら、 ここにこの商品を置いておけるのも、 今週だけだなと思った。 寅が言うように確かにカレンダーを買おうと思う時期じゃなくなっているのだ。 売れ残りを売ろうとする未練が、カレンダー売り場に漂い始めている、と蟹江は素直に感じていた。
「こういうのって結構イメージ悪いんだよなあ。 なんかセコイ感じがして。 それに、 見本のカレンダーもボロボロになってるし。 それでも1本でも多く売りたい、 売らなきゃならないと考えると、 いつまでも店に出しておいてしまうんだよなあ。 店長と相談して撤去する日を決めないと。」
蟹江は、 そう決心すると売れ残りの数を調べるために、 ノートをもって倉庫へ向かった。