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一言放談
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株式投資ブームに考える

 株式が大変なブームのようです。書店に行くと専用のコーナーが設け られており、何種類もの株入門書が山積みになって売られています。少 し読んでみると、これまで普通の学生や主婦であった人が、わずかな期 間に何千万円あるいは何億と株で稼いだそうな。しかもその中には「デ イトレード」と言って、上昇する株をいち早く見つけ、その日のうちに 売り抜けて利益を得るというもので、デイトレードでなければ大儲けは できないと謳っている本さえあります。インターネットで取引を行うの で誰にでも簡単にできそうです。預金金利が情けないくらいに低い昨今 、この流れに乗り遅れまじとする人々が引きも切らず、本はベストセラ ーになるし、ネット証券の会社は大繁盛、何か良いことずくめのように もてはやされています。
 しかし決して忘れてならないことは、勝ち組の裏にはたくさんの負け 組の人がいるということです。相場の世界ではそれを生業としているプ ロ達がいて、我々素人が生兵法で参戦するととても危険な世界なのです 。一生懸命働き、せっかく苦労して貯めた大切な資産を、あっという間 に失ってしまう人も後を絶ちません。少しでも損失を出すと、今度は取 り返すぞとばかりにさらに資金をつぎ込む、この悪循環にはまってつい には自己破産に至ってしまうケースもあります。
 あるいはデイトレードで成功した人達はこうも言います。株が上がる か下がるかは分からないが、もし下がったら猶予無くすぐに売ってしま う対策、これを「損切り」と言いますが、それを躊躇わずにやることだ と。またきっと上がるのではないかという、全く根拠のない期待を抱き 、下がった株をいつまでも持ち続けてはならないと言うのです。なるほ ど株で勝つか負けるかが半々だとしたら、負けたときの損を少なくし、 勝ったときの利益を多くすれば単純に儲かる理屈なのです。しかし、み んな一度やってみると良いのですが、初心者にとって短時間に上がりそ うな銘柄を即座に探し出すすことは結構難しく、仮に見つけたとしても 実際は高値でつかむことも多く、また損切りを心掛けていたらいつも損 切りばかりをしていたということにもなりかねません。ですからそんな 初心者から脱却して、本当に利益を上げられるレベルにまで達しようと するならば、株式に関する猛勉強と勘を養う努力を怠ってはなりません 。しばらくは損を覚悟して、株の世界に没頭しなければならないという ことなのです。簡単に勝ち組に入れるのならば、誰でもやっていること でしょう。
 勝ち組に入るためには、努力に加えて才能と素質が必要だと思います 。株式をギャンブルと同一に考えるのは少し乱暴ですが、例えば競馬な らば記憶力が勝負だとも言います。そのどれをとっても、凡庸な私には 少しも備わってはいません。一日中パソコンの画面とのにらめっこに耐 えられませんし、いつも株価のことを気にしていたら本当に疲れてしま います。おっとりとした性格の私は気の休まるひとときが何よりも幸福 なのです。他に趣味とか楽しみとか生き甲斐もたくさん持っていますの で、もともと一つのことに没頭できる性格ではないのです。商売であれ ギャンブルであれ、才覚というものが大きくものを言う世界です。それ に自身がある人は是非チャレンジしてみて下さい。
 株取引の恐ろしい部分ばかりを書いてきましたが、決して悪いことば かりではありません。働いて大事に貯めてきた資金は、いつまでもタン スに眠らせておいてはならないのです。お金は動かしてこそ価値が発揮 されます。あなたが持っているお金で新しい事業が始まり経済活動が活 性化されるのです。正しく「金は天下の回りもの」、世間に回さなけれ ばならないのです。銀行に預けるのも株式投資をするのもその意味では 同じことです。銀行を経由する「間接金融」か、直接企業に投資する「 直接金融」かの違いです。そして実際には「リスク」と「リターン」の 違いが発生します。
 株価の変動による利ざやを狙うのも良いのですが、実際に株価を動か す様々な要素において、それらの情報はプロの相場師たちが我々よりい ち早く入手していて、私たち素人が新聞や情報誌を読んで、「よし、こ の銘柄は上がるぞ」と思ったときには、すでにプロ達によって買われ、 高値となっていると考えるべきなのです。頼れるのは自分の頭で考えた こと、自分の肌で感じたことではないでしょうか。
 やはり本来の投資のあり方は、先にも書いたようにこれからの新しい 経済を興してくれるような有望な企業に直接金融をすることなのです。 長期的に株を保有して、配当や株主優待が得られるならば、タンス預金 や銀行預金よりもずっと有意義な資金活用方法です。 ただ家でじっと していて濡手で粟を掴むような金儲け、決して無いとは言いませんが、 そんなことをしていて果たして楽しいのでしょうか。生き甲斐を感じら れるのでしょうか。儲かった時は確かに楽しく感じられるかも知れませ んが、いつまで続くか知れたものではありません。そのうちに疲れ果て て暗い気持ちになってきそうです。
 私たちが生きてゆく上で必要な財というものは、自ずから与えられる というのが、最も自然な考え方だと思っています。与えられた仕事や使 命に汗を流し多くの人と触れ合い、儲けとか損とかにあたふたせず平安 な心で暮らせることが、人間にとって一番幸せな生き方ではないでしょ うか。
 最後にちょっとだけ説教じみたことを書きました。

(2005.11.5)


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