管理と作業は生育のサイクルにあわせて行います。下の表は生育の目安です。
3月になると前年伸びた茎の根元が膨らみ始めます。生育期が始まったサインです。
普通2本の新芽が出てきますが、品種や株の状態によっては1本しか出ないこともあります。出てこない時は
ナメクジに齧られているか株元が腐っている可能性があります。茎の途中から高芽が出ることになるでしょう。
新芽は梅雨明け頃までにぐんぐん伸びます。この時期の光と水と肥培で茎の大きさが決まります。
梅雨明けから9月頃にかけての成長は緩やかなものになります。
晩秋になると「止め葉」が出て、生育期は終わりです。
止め葉とは、茎頂部に出てくる小さな葉で、それまでの葉より極端に小さくなります。しかし、判りにくい品種も多いです。
成長期には2cmほどに伸びた葉の付け根には必ず次の葉が見えています。
これが見えなくなったら休眠期に入りつつあると考えてください。
1本の茎の生育は下の表が標準です。
開花後も養分を蓄えているので茎を切り取ってはいけません。ただし3年目か4年目の茎を切り取って
「矢伏せ」で増殖することができます。この場合は根元から切ります。
箸ほどの太さであった茎が爪楊枝くらいにまで萎びたら切り取ります。
春に開花した茎と、秋に花芽をつける茎は世代交代しています。
3月になると、米粒よりも少し小さめの状態で冬越しした花芽が膨らみ始めます。花芽の形が
丸く、コロンとした感じであればやや丸弁の花が咲き、とがっていれば細い弁の花が咲く傾向があるように感じます。
普通1つの花芽から2輪咲きます。1本あたり花芽が6つほど付いた開花茎が5本あれば、
あっという間に60輪。甘い芳香を漂わせる株は一回り大きくなったように見えます。
一輪の花は一週間で終わりますが、株全体では10日〜2週間。
色づいた蕾の状態も十分に楽しめるので、一月ほどが一株の鑑賞期間でしょうか。開花期の異なる品種があれば二ヶ月近く
開花を楽しむことが出来ます。
開花後の花は落ちるに任せて、無理に取る必要はありません。完全に萎びても茎に付いているようなら毟り取ります。
早いものでは8月になると花芽が確認できるようになります。 前年伸びだして2年目を迎えた茎の、先端部から5箇所ほどの節の葉とは反対側にふくらみができ、 この頃葉は落ち始めます。これから翌春の開花まで半年以上花芽の状態で過ごすことになります。 年内までに花芽が確認できなければ、来春の開花はほぼ期待できません。
セッコクは秋に狂い咲きすることがあります。晩夏に膨らんだ花芽が休眠せず、そのまま一気に開花にまで進みます。 天候が影響しているようですが、原因ははっきりしません。秋に咲きやすい品種もあります。 残暑が厳しかった年に狂い咲きが多く見られます。晩夏に作られた花芽が残暑の厳しさで早々と休眠してしまい、 その後の涼しい秋を早春と勘違いして開花するのではないでしょうか。
生育期のセッコクは
ということを念頭に置いて管理します。そして乾いたら水をやる。
水苔植えの鉢を中心に水分を管理した場合
灌水は日を決めてやらずに鉢の状態に合わせてやります。
木漏れ日程度の光が理想的です。遮光しなくても問題ありませんが、盛夏時には30%〜50%の遮光ネットを張れば 乾きが遅くなり、セッコクも調子がいいようです。
3月下旬頃、鉢の縁に緩効性化成肥料か油粕の小粒を一つまみ置きます。
新芽から根が伸びだしたら、2000倍程度に薄めた液肥を追肥として与えます。 4月から梅雨時ごろまで1,2週間に1回。置き肥をしてあれば特に必要ありません。 オマジナイのようなものでしょうか。
草花に液肥を掛ける人は、ジョウロ半分まで草花に掛けて、 その後水を加えて満水にしてからセッコクに掛けるというような濃さでよい加減です。
ハダニとナメクジが大敵です。
湿度を保つ、こまめに見回って捕殺するということくらいしか対策はありません。
休眠期のセッコクは
ということを念頭に置いて管理します。そして乾いてから水をやる。
乾いてから水を掛けます。水苔の表面がカチカチに硬くなってからになるので、週に1回くらいが目安です。
凍結は避けましょう。雪も被らない方が無難です。
必要ありません。
一切与えません。
乾いたら水をやる
この一言に尽きます。国産の着生蘭全般について言えることです。
雨晒し・日晒しでも咲きます。盛夏に一週間水を掛けなくても枯れません。 きれいな株にしたい、花をたくさん見たい、 大株にしたいという気持ちが出てきたら少しばかり栽培管理に配慮してみてください。
植え替え作業には大抵株分けや水苔の交換が伴います。 そのことも考慮して作業適期をまとめてみました。
株分けせず、水苔もはずさずに一回り大きい鉢に植え替えるだけならいつでも出来ます。
休眠期にやります。最適期は2月下旬から4月上旬です。この時期であればすぐに成長期に入るので、 株の消耗が押さえられます。花芽を落とさないように気をつけます。親株の根元が膨らんで、新芽が 薄皮を破って出てきた頃までに済ませます。荒っぽい作業になるので、 新芽を欠いてしまうのを避けるためです。
株が大きいとき、水苔を交換しないときは思い切って株を2つに切り分けます。複茎性の着生蘭であるセッコクは 年ごとに順次連なっています。連なり具合を確認して、3年分以上の塊を一株の単位とします。 これは水苔をはずして株分けする場合も同じです。
基本的な手順・適期は株分けする場合と同じです。水苔を交換する場合は2年ごとをひとつのめどとします。 順調に生育すると、鉢内にまわった根で水苔が見えなくなるほどです。こうなる前にやります。
単に鉢を大きくするだけならいつでもできます。
水苔を全て取り除くことになります。荒っぽい作業になり、作業後も根はむき出しで厳しい環境になるので、 必ず休眠期の生育開始直前にやります。作業後は湿度保持に努めます。
大株の場合、根鉢をほぐさずに2つに割ってヘゴにくくりつけることも出来ます。これも生育期直前に作業します。
株分け・高芽・矢伏せ・実生で増やすことができます。
高芽取りと矢伏せの適期は次表の通りです。
セッコクは順調に生育すると、茎の数が毎年1.5倍くらいに増えます。
最も確実な増殖法で、毎年花を見ることができます。
植え替え作業の株分けの項を参照してください。
本来花芽ができるはずの節から高芽が出ることがあります。根腐れなどで株が弱っていたり、新芽を ナメクジに齧られたりすると高芽が出易い傾向があります。増殖法として確実な方法ではありませんが、 最も簡単に殖やすことができます。
新芽が伸び始める頃に、花芽だと思っていたら高芽として成長始めるというような出方をします。 1年以上親株に付けておいて早春に外します。充分に生育していれば、1年目の秋に外すこともできます。
高芽を単独で外さずに茎につけたまま切り取る場合があります。植え込みしやすく茎の養分も期待 できますが、株本体にとってはマイナスです。元気な茎がたくさん残っている場合に限りできる方法です。
高芽から殖やした株の開花が見られるのは4年目以降になります。
健全な株では高芽はいつ出るかわからないので、強引に高芽を出させるのがこの矢伏せです。 セッコクの茎のことを「矢」とも呼びます。この矢を水苔の上などに「伏せ」て置くので「矢伏せ」です。 シンビジュームやカトレアをバックバルブから殖やしたり、エビネのイモを外して殖やす方法と同じで、 頂芽優勢の打破といえます。
水抜きの穴を開けたイチゴパックの底に水苔を1cmほどの厚さに敷いて、 その上に根元から切り取った茎を寝かせておきます。根はついている必要はありません。 常に軽く湿った状態を保ちます。茎が見え隠れするように一重に水苔を 被せておけば安心です。
一年中できますが、適期は春〜夏。早くやるほど生育期が長くなるので後の生育がよくなります。
用いるのは開花の終わった3〜5年目の茎。株分けのときに併せてやったり、切れてしまった茎があればこれらを使います。
1本の茎から1〜3芽出て、そのうち親の茎は萎びてしまうので、高芽を外すときの要領で数本を水苔で寄せ植えにします。
開花は高芽から始めた場合よりもさらに遅くなります。貴重種を早く殖やしたいときに確実な方法です。
セッコクが数鉢あれば放っておいても何個か結実します。そのままでも秋に自然に割れて親株の根元や
周囲の鉢の表面にばら撒かれることになります。積極的に播種するときは植え替えて1年以上経って、当分植え替える予定のない
鉢の表面に播きます。もしかしたら1,2年後に米粒のような苗が現れるかもしれません。
確実性は無く、真剣にやる増殖法ではありません。(無菌培養の技術がある場合にはこの限りにあらず)
気長に待ちましょう。
開花するのは早くても5〜7年後でしょう。
セッコクを入手する時の注意点
開花期=入手適期です。
花数にとらわれず、しっかりした株を選びましょう。咲いている花は見本と考えて1輪でもかまいません。 (咲いている花は一週間もしないうちに萎れます)
葉の付いた茎があり、それが開花している茎と同等以上の大きさに育っているもの。 その茎の根元から新芽がしっかり伸び出しているものを選びます。 花の数より新芽の数です。
セッコクの花物が欲しいときは開花株を見て入手するか、信頼できる専門店で品種を指定して入手する方がよいでしょう。 蕾のときの色はあてになりません。一般に売られている花は1cmほどに育った蕾の色が、 桃色〜薄黄色〜緑→うっすらと桃色を帯びた白花、赤→桃花、赤黒→赤花といった開花時の色になります。花の中心部が緑色で白花の素心と呼ばれる 花については、花軸から蕾の先端まで緑以外の色が極くわずかでもあれば素心にはなりません。