海心遊記2004/12/05

海心遊記 2004/12/05
京都府立文化芸術会館
主催 京都府 (財)京都文化財団京都府舞台芸術振興事業
     NPO 京都ダンスアカデミー

ちらしから
「いのち」は、海のように動く。
その動きは、生きる「ちから」である。
「こころ」と「からだ」は、自由な精神として生きる。

ダンスって何だろうなとふと思ってしまうけれど、本当は「体の動き」そのもの
がダンスなんだろうなと思うね。だけど、どう動いたらいいのか「わからない」
ようになってしまった、のかもしれないなぁと思う。
では、どう動いたらいいかを「感じる」ことがどうしたらできるようになるのか。
今はそれが難しい時代になってしまったかもしれないなと、今日の舞台を見てい
て、ふと思ってしまった。

「いのち」を生み出した「海」の情景からはじまり、人の暮らしのあれこれ、
ほほえましい風景もあれば、悩み苦しみの姿、そして子どもと大人のハッとする
ようなものすごい緊張感、さまざまな暮らしが描かれて、最後に民族舞踊的な
ダンスで、なんだかとても楽しくなった。

ACEH(アチェ)というのは、
インドネシアでしょうか(詳しいことはちょっとわからないのですが)、
舞台最後に、ACEHの民族舞踊のようなダンスが2つありました。
「鳥の歌」と「田植えの歌」。
両方ともなんだかほっとするような雰囲気があって、妙に懐かしい感じもする。

いろんなストーリーを感じる舞台だったような気がするなぁ。



ヘンリエッタ・ホルン&フォルクヴァングタンツシュトゥーディオ2004/08/29

京都府文化芸術会館8月28日、29日
ヘンリエッタ・ホルン&フォルクヴァングタンツシュトゥーディオ
「ソロ」
「アウフタウハー」

##
ヘンリエッタ・ホルンは、日本ではまだあまり知られていませんが、
第二のピナ・ヴァウシュと言われ、繊細で深みのあるダンサーであり
振付者です。
フォル クヴァング・タンツシュトゥーディオはドイツを代表する
モダンダンスカンパニー

29日の公演、なんかものすごく強烈な印象が目に焼きついてる感じ。なんだ
ろ?たぶん、これから先、ふと何かの折に舞台のいくつかのシーンを思い出す
んじゃないかなと今思ってます。で、その時になってはじめて、あっ!と何か
に気がつくかもしれないような。「いま見てきたこと」は舞台そのまま「見え
ていたこと」なのですが、もう少し時間がたったら、なまなましさが薄れて、
イメージみたいなものが残ってきて、それではじめて、そうか!って何か納得
することを見つけ出せるかもしれないなぁと思っています。

ヘンリエッタさんの「ソロ」って、動きでの「表現」なんだなぁと思う。ダン
スとか踊りとか、そういう範疇を越えて、体の動きで気持ちや心を表現してる、
うん、短篇小説ってやつかな。画家はデッサンや絵で表現する、演劇をする人
は劇で、セリフをつないでいくことで何を表現するでしょ。もちろん文章を書
く人は小説やエッセーで。それと同じで「ひとり」とか、「孤独」みたいなこ
とを「体の動き」で表現するって、なるほどなぁとこれはなんかものすごく感
じるところがあるんですよ。いらいらした感じとか、何かに耐えてるとか、自
分で自分を納得させようとする感じとか、まあ、わからんけれど、ひとりでい
る時のいろんな思いみたいなものを感じて、けっこう恐かった(笑)

実は、始まる前にパンフレット見ていたのですが、二つ目の演目の「タイトル」
は、あまり頭に残っていなかった。読んでいるはずなのに読み過ごしてるのね、
おもしろいね。おもしろいというか、舞台を見る前は「アウフタウハー」とい
う言葉に心が動いてなかったんだと思うよ。

でもね、舞台が終わったあとで、ふたつの目の演目の「タイトルは何だっけ?」
と外に出てから、パンフレットを見直して、「アウフタウハー」という言葉が
自然に頭のなかにインプットされてしまった。

「アウフタウハー」ってドイツ語で、「浮かびあがる」って日本語になってい
たけれど、確か「アウフ」って「アウフヘーベン」とかの言葉があるけれど、
「上に」って意味だよね。何かイメージを浮かび上がらせるというか、そうい
う感じね。確かに!、次々に何かが浮かびあがっていたと思う。
何だろ?
実はものすごいストーリーみたいなものを感じているんですよ。
ただ今はうまく言葉にできないのだけれど、ドラマがあったなぁという感じなのね。

普通の生活では隠してるみたいなことを赤裸々に語っちゃうというか、で、すっ
ごい共感もあるんだけれど、その時間って何かやっぱり特別な力が働いている
かもしれないんだよね。で、ふっと現実に引き戻されたときに、なんか自分の
居場所がわからんようになるみたいな、でも一度赤裸々に語ってしまうと、やっ
ぱりそれから先は何か変わるものはあるんだと思うなぁ。
かなりファンタジックだったなぁと思う。2004/08/29

この公演に先だち24日に、ヘンリエッタさんのワークショップに参加された
ダンサーの方  からのお知らせを頂き、ワークショップのレッスンの見学をさせ
て頂きました。



モーリス・ベジャール バレエ団『魔笛』THE MAGIC FLUTE2004/06/27

2004年6月27日(日)びわ湖ホール大ホール 14:00開演 
演出・振付:モーリス・ベジャール
音楽:ヴァルフガング・アマデウス・モーツァルト

公演カレンダー

バレエで「魔笛」、どんな舞台だろうと気にはなっていたのですが、チケットは
買いそびれていました。ところが公演期日ぎりぎりになってチケットが1枚余っ
ているとの情報。
思わず反応してしまいました。というわけで4階サイド席でしたが、ともあれ、
バレエで「魔笛」を見ることができました。

そもそもバレエは、「オペラ・バレエ」であり、バレエの発展の歴史からいえば、
オペラの添え物の時代もあったわけですから、オペラとバレエは相性が悪いもの
ではないですよね。だからオペラ「魔笛」をバレエで見るというのは、おもしろ
いだろうと思っていました。実際、ダンサーたちはそれなりキュートでかわいい
し、夜の女王は迫力があったし、たぶんみな素晴らしい踊り手だったと思います。

ダンスのバックにはずっとオペラの歌が流れている。テープが使われているわけ
ですから、オペラの歌がちょいしんどいのですねぇ。生オーケストラで生オペラ
なら歌手ひとりひとりの声にはそれぞれの個性もあるだろうし、一定のボリュー
ムで歌が流れるということはないですよね。ところが、これがテープになると、
どうもしんどいのだ。私はバレエを見てるはずなのに、「魔笛」のいろんな歌が
流れ、せりふは舞台の袖で字幕が出る。というわけで、途中から、ありゃ〜、いっ
たいどこを見たらいいのよ!てな感じになりまして、正直疲れた。

そもそもバレエの舞台は無言劇、ダンサーの体の動きでの表現を見つめることが
楽しい。舞台を見ながら、なんで「魔笛」なんだろうなぁと考えてしまったのです。

「ボレロ」や「春の祭典」そして、「バレエ・フォー・ライフ」、どれも素晴ら
しかった。飲まれるほど舞台に集中した記憶があるし、「春の祭典」を見たとき
は、音楽の視覚化というか、音楽だけを聞いていてはわからなかったことが舞台
を見てはじめて、こういうことだったのかと思い始めて身震いするような思いに
なった。でも、バレエ「魔笛」は正直わからなかった。なんで「魔笛」なんだろ
うって。「夜の女王のアリア」だけは待っていた。この歌だけは聞き逃してはい
けないと思っていたわけ。けれど、「夜の女王のアリア」を聞いていたら、ダ
ンスが目に入らなかった。そして、昨日の「夜の女王のアリア」はあまり記憶に
残る歌ではなかった。2004/06/27

こちらもどうぞ。
ベジャール・ガラ2000

「バレー・フォー・ライフ」ベジャール・バレエ団




「依存とエクスタシー」2004/03/28

日独共同創作ダンスシアター公演
依存とエクスタシー
右京ふれあい文化会館
2004年3月28日午後3時の公演を見ました。

ちょっと期待、かなり期待!
おもしろかったのも確かだと思うのですが、身体での表現の素晴らしさにやっ
ぱりとても興味を持ってしまったというところかもしれません。

振付けのある動きというよりも、いろんな状況とか感情をどんな風に表現する
かということを、まず自然に出して、それから、いろんな議論があって、それ
がまた動きに反映していくみたいな感じをとても強く受けました。違っている
かもしれないけれど、動きと心を一致させていくみたいな、そんな感じをとっ
ても強く受けました。

   (公演ちらしから)自分の殻に閉じこもって、今いるところにじっとしてい
   ては、何も新しいことやワクワクすることは生まれてこない。ダンスは、社
   会の規制や自己の束縛を越えるものである。
   自分を変える、境界を越えることへの憧れをダンスを通して表現したい。今
   いる状態に固執(依存)することからは、エクスタシーは生まれてこない。//



バレエ・ガラ・コンサート「ロシア・バレエのスターたち」2002/11/15

バレエ・ガラ・コンサート「ロシア・バレエのスターたち」

11月15日(午後6時30分)、16日(午後2時)
びわ湖ホール中ホール

  プログラム
  1幕
    ルスランとリュドーミラ
    ラ・バヤデール
    エウゲニー・オネーギン
    エスメラルダ
    イヴニング・ダンス
    ライモンダ

   2幕
     シェヘラザード
     ジゼル
     スパルタクス
     エスメラルダ、ディアナとアクティオンのパ・ド・ドウ
     瀕死の白鳥
     ドン・キホーテ

     グランド・フィナーレ

中ホールでのバレエは初めてでした。大ホールの華やかさとはちょっと違った
感じで集中度の高い舞台でした。プログラム、時間がたってみると、やっぱり
素敵だったと思います。見てみたいと思うけれどなかなか出会えない、そんな
感じのものが並んでいたようで、かなり満足でした。目いっぱい音を取って踊っ
ているはずなのに、すっごいゆとりを感じてしまうのはテクニックの素晴らし
さなのかしら。

衣装もそれぞれ気品があって趣味がよい。キトリの衣装、赤だと思いこんでい
るものですから、そこに白を基調にした衣装での登場で、ハッとした驚きもな
かなか楽しかったです。プログラムの最後ドン・キホーテで、ハープの弦が切
れたのでしょうか、ちょっとしたハプニングでしたが、修復もあざやかでした。
生ならではの緊張した場面。それにしてもなんて粒揃いのダンサーたちでしょ
うか。腕の長さ、足の長さにほれぼれ、うっとししてしまいました。

私は最初から2階席を購入したのですが、2階席は半分近くが空席でしたね。
ちょっと残念なほど。びわ湖ホール主催の公演ではないということで目だたな
い公演になってしまったのかもしれませんね。


「バレエ」(アメリカン・バレエ・シアターの世界2002/10/07

「バレエ」Ballet (アメリカン・バレエ・シアターの世界)
京都みなみ会館で上映中です。
市バス九条大宮すぐ、近鉄東寺駅西へ150m TEL(075)661-3993
みなみ会館
10月5日(土)から13日(日)まで。
5日から11日までは午前10時15分と13時30分からの2回
12日(土)と13日(日)は19時からの上映
上映時間は約3時間
当日入場券は一般1800円(その他割引いろいろあるようです)。

「エトワール」パリ・オペラ座のエトワールの物語
10月20日(日)から27日(日)限定アンコール
10月20日から25日は昼3時15分から1回上映(午後5時終了)
10月26日、27日は朝9時15分から1回上映(午前11時終了)

チケットは当日券1700円(一般)1400円(学生)
「Ballet」の半券があると「エトワール」は1000円に割引。



アメリカン・バレエ・シアター「海賊」2002/09/22

アメリカン・バレエ・シアター
American Ballet Theatre
「海賊」
2002/09/22 びわ湖ホール

キャスト
コンラッド(海賊の首領)イーサン・スティーフル
ビルバント(コンラッドの友人)ホアキン・デ・ルース
アリ(コンラッドの奴隷)アンヘル・コレーラ
ランケデム(市場の元締)ゲンナジー・サヴェリエフ
メドーラ(ギリシャの娘)ジューリー・ケント
セイード・パシャ(コス島の総督)カルロス・モリーナ
ギュルナーレ(パシャの奴隷)バロマ・ヘレーラ

振付・台本改訂:コンスタンチン・セルゲーエフ
元振付:マリウス・プティバ
音楽:アドルフ・アダン、チョーザレ・ブーニ
      レオ・ドリーブ、リッカルド・ドリゴ、オリデンブルグ公爵

アメリカン・バレエ・シアターの一番大きな 魅力を言うなら、さまざまな国
の素晴らしいダンサーを同じ舞台で見ることができることかもしれません。ロ
シアやヨーロッパの国のバレエ団とはかなり違った雰囲気を感じます。華やか
で豪華で技術的にも目をみはるものがあり、何より観客へのサービス精神がす
ごく旺盛で「見せてくれる!」場面がとても多いです。「海賊」は女性ダンサー
よりも、何と言っても男性ダンサーの力強くスピード感のある技ありのテクニッ
クが見どころ。「海賊」の全幕公演は相当期待してしまいましたが、十分満足
でした。


「夏の夜の夢」2002/09/15

9/15「夏の夜の夢」

演出:蜷川幸雄
 作 W.シェークスピア
 訳  小田雄志

「夏の夜の夢」見てきました。すっごいおもしろかったですよ〜。原作のおも
しろさは言わずもがなですが、今日の舞台はもう演出がすごいというか、楽し
いというか、遊びいっぱいで最高におもしろかったです。ゲラゲラ大声で笑っ
てしまった。

中ホールの舞台が竜安寺の石庭。ホールのなかに入ったとき、もう石庭が見え
ていて、あれれ?とちょっとびっくりはしたのですが、もうこれだけで十分ファ
ンタジックな世界にはまりこんでしまいそうだった。客席から舞台を見るとい
うおきまりのスタイルをこえて、暑い夏の一夜、縁側に座って石庭をながめて
の夕涼みといった感じ、その雰囲気がとってもよかった。竜安寺の石庭はいつ
もピリッとひきしまった雰囲気があります。あの庭で、ゆかいないたずら妖精
が小石をけちらしてとんでもないいたずらをして遊んでいるとしたら、思わず
笑いが出て、そんなことを考えるだけでもほんとに楽しい。とっても日本的で
あるものとシャークスピア作品の合体、微妙にバランスがとれていて、やっぱ
りシェークスピアってどんな風にも料理ができそうで、すっごい楽しくておも
しろいんだと思った。

劇中劇がこれまた楽しかったですね。町のおっちゃんたちの素人劇がほんとに
いきいきしてすごかった。吉本的関西的なおもしろさもあって(笑)

「夏の夜の夢」のチケットは、キエフの白鳥の湖を見に行ったとき、少し時間
があってホールの資料コーナーをうろうろしていたとき、なにげなくカウンター
で「夏の夜の夢」のチケットはまだありますか?と聞いてしまったのが購入の
きっかけ。もうあまり席は残っていなくて、2階の一番後の席を深く考えずに
買ったのですが、中ホールですし、思ったほど後ろという感じもなくて、見や
すかったです。

あ〜、ほんと、楽しかった!こんな演劇ならまた見たいです。



「白鳥の湖」キエフ・バレエ2002/07/21

「白鳥の湖」キエフ・バレエ びわ湖ホール

  キャスト
  オデット/オディール  エレーナ・フィリピエワ
  ジークフリート王子    デニス・マトヴィエンコ
  悪魔ロットバルト      ヴィクトル・イシューク
    
一年に一度は「白鳥の湖」を見る機会がめぐってくるようです。今年の白鳥は
キエフ・バレエの「白鳥の湖」になりました。私がいままでに見た「白鳥の湖」
のなかでは一番シンプルな舞台だったかもしれない、3幕の宮廷の場面もかな
りシンプルでしたが、全体的に技術の高さを感じる舞台でした。衣装もどちら
かといえばシンプル。エレーナ・フィリピエワを見ることができてかなり感激。


Reading 「椿姫」with 草なぎ剛(びわ湖ホール)2002/06/23

Reading 「椿姫」with 草なぎ剛 (「なぎ」の文字が出なくてごめんなさい)
ヴォイス
〜私が愛するほどに私を愛して〜

出演 朗読:草なぎ 剛
ソプラノ:野田浩子
ピアノ  :高田 浩

Reading 「椿姫」を見てきました。
さわやかに楽しかったです。

Reading 「椿姫」、シンプルな舞台がとても効果的で、剛くんのリーディング
にかなり引き込まれてしまいました。言葉のひとつひとつがとてもはっきりし
ていて聞きやすかったし、何よりもドキドキするストーリーの運びが本当に興
味深かったです。先日の土田さんのワークショップに参加して、息づかいひと
つ、動作ひとつで舞台の雰囲気が作られてしまうという「すごいこと」を眼の
前で見て、今日は本当にいろんなことに興味シンシンで舞台を見つめてしまっ
たというところです。台本のよさにとっても満足!土田さん演出の他の舞台も
見てみたいと思うほど。

「椿姫」のアリアもよいところだけたっぷり聞かせて頂いたなぁと思います。
歌もピアノもとっても効果的でよかったです。最初にオペラ「椿姫」のストー
リーについての簡単な解説があったのもとてもよかった。その物語に乗せて、
剛くんのリーディングで別の愛の物語が進行する。どうなるんだろうとほんと
に引き込まれてしまった。

今日はなんだかいつもとびわ湖ホールの雰囲気が違っていましたね。ちょうど
開場時間について列についたのですが「手荷物の検査」にはちょっとびっくり。
カメラやテープレコーダーを所持していないかの検査だったみたいですね。ほ
とんどすべてが女性で男性のお客さんは2、3人ほどしか見なかったです。さ
すが!

今日最高におもしろいと思ったのは終ったとき。ほんの数秒ほど緊張したまま
の時間があったのですが、剛くんが笑顔になった瞬間、どこからか「つよし!」
と声がかかりましたよね。そしてほとんど場内総立ちになっていた。その後は
剛くんが手をあげたり、笑顔になったりするたびに会場はわ〜っと盛り上がる。
その雰囲気がなんだか楽しかったです。

リーディングを演じていた剛くんが SMAP の剛くんに戻った瞬間というか、そ
のわずかの時間がほんとにおもしろかったです。
今日のお客さんの大半はたぶん SMAP のファンだったのかもしれませんが、
Reading 「椿姫」の舞台は SMAP ファンにかかわらず一般的にもとても楽しめ
る舞台だと思います。ワークショップに参加しておいたのもとてもよかったで
す。

トイレの前にホワイトボードが設置してあってびっくりでした。びわ湖ホール
の配慮がすばらしい。ちょうど書き込んでいる方がおられた。どうやら剛くん
へのメッセージだったようですが。



「バレー・フォー・ライフ」ベジャール・バレエ団(びわ湖ホール)2002/04/20


気がついたら2時間が経過してしまっていた、これはすごいことだと思う。時
間を忘れてしまうほどに舞台にひきつけられていたということですものね。静
かな動きで始まったけれど、急激に「その世界」に連れ込まれてしまったとい
う感じがします。実は今回は座席があまりよくありませんでした。3階席の右
側のはじっこ。サイド席は避けて、4階よりは3階でと考えたのですが、右端
だったため、舞台の右側約四分の一が身を乗り出しても、いつも見えない状態
になってしまう。最初はこれが不満だったのですが、いつしかそんな不利な状
態も忘れて、迫力ある音楽に包まれて、躍動感いっぱいのダンサーの動きに目
も心も奪われていました。

男性もダンサーも女性のダンサーも、なんて素晴らしい体なのでしょう!実は
密かに(笑)小林十市さんのファンなのですが、ベジャールバレエ団の他の男性
ダンサーのなかでは一割体が小さくて、きしゃな感じではあるのですが存在感
は十分でした。軽みのあるコミカルな動きに魅力を感じます。

思いを形に表す、それが表現するということだと思う。けれど、そんな風に表
現ということを簡単に言葉にしてしまうと何か逆に違和感を感じてしまう。見
て、考えて、感じて、あらゆる感覚を総動員して、そこから何かを生み出すの
は苦しい作業だけれど、喜びもまた伴うものだと思う。それにしても人間は、
なんてさまざな方法で表現しようとするのでしょう。詩や音楽や絵や、その他
あれこれ。でも、とりわけ、体、人間の体そのものを使って表現すること、こ
れは本当にすごいことなんだと思いました。

体そのものが表現の道具ですから、衣装といってもほとんど「ない」ようなも
のだけれど、体の動きにぴったり添った衣装がどれもなんと洗練されていたこ
とか。

ホールの入口のところでビデオと一緒に本も置いてありましたが、確かベジャー
ルの「舞踊のもう一つの唄」も置いてあったと思います。この本、いつだった
か、ちょっと前に図書館で見かけたので借りたことがありました。作品の構想
を練る前のインスピレーションを与える夢の話だったような。ベジャールがど
んな風に着想を得ていくのかという点ではとても興味深い本なのですが、本を
読んだときはなんだかすっごい難しく感じてしました。けれど、ベジャールは
本を読むより(当たり前かもしれないのですが)、舞台を見てしまうと、体感と
いうのか、そのほうが感覚的に何をしっかりつかめるような気がしました。



BS2 ワンダフル・クラシックス2002/02/22

BS2ワンダフルクラシックス

2/22 朝8時10分から9時30分「エトワールの肖像」
2/22 朝9時33分から 10時24分「栄光と現実のはざまで」ボリショイバレエ団の苦闘

2つの作品が放送されました。

「エトワールの肖像」は、1988年の作品で、イヴェット・ショヴィレが若いエ
トワールたちにすべてを伝えようとするドキュメント。「グラン・パ・クラシッ
ク」「ラ・ペリ」「ノテオス」「白鳥の湖」「コッペリア」「ジゼル」「瀕死
の白鳥」などの作品をどう踊るかを伝える姿はとても感動的でした。形に心を
添わせ、心に形を添わせるというか、思わず画面に見入ってしました。一本の
指先の動きに至るまでの細かな注意の一言ひとことが本当に心に残るようでし
た。次に何か舞台を見るときはきっと今日の番組のなかでの細かな注意を思い
出して舞台を見る見方も変わるのではないかと思いました。そういえば京都の
某バレエスクールのレッスン場に、イヴェット・ショヴィレ先生の写真が飾ら
れていたっけとふと思い出してしまいました。なにげなく眺めていた写真でし
たが、妙に懐かしい。

びわ湖ホールでは7月に「白鳥の湖」、9月には「海賊」が見られそうで、
楽しみにしています。

「栄光と現実のはざまで」---ボリショイバレエ団の苦闘

これはソビエト崩壊後、1996年、ボリショイバレエ団のアメリカ・ラスベガス
公演の記録なのですが、結果は-----。ボリショイの知名度の問題、ラスベガ
スでの「バレエ」となるとバレエを見たことがない人のほうが多い、などなど、
さまざまな問題をかかえつつも互いの国の理解と素晴らしい芸術に触れる機会
を作りたいとボリショイバレエを呼ぼうという企画が行われ投資家を募った。
ボリショイバレエ団がラスベガスにやってきたが、チケットが売れない。アラ
ジンホールはなんと客席7000(聞き間違いではないでしょうが)。とにもかくに
も大きなホールが用意されたのに、売れたチケットは日に 200とか400とか、
あまりにも寂しい状況。公演がはじまってもチケットの売上は伸びない。バレ
エ団には現金がなくなり、ラスベガス公演が成功すればロサンゼルス公演も予
定されていたのに、移動のための費用も莫大な金額になってしまった。

結局のところ、さんざんな状況で公演は終り、この公演に投資した人たちは
180ドルの損失、バレエ団には前金のみ。みんなが多額の負債を負った。やぶ
れかぶれである投資家がカジノでギャンブルに手を出して、3000ドルのお金が
戻ってきたというのですから、ラスベガスというのはなんともすごい町ですね。
しかしその後、この公演の投資家のひとりはこの負債のために倒産してしまっ
たらしい。ボリショイバレエは、1959年のアメリカツアーは大成功だったそう
ですが、ソビエト崩壊後の初のアメリカラスベガスは無惨な結果だった。ラス
ベガスと「白鳥の湖」、いまでもやっぱりミスマッチだろうか。


メダリストたちの競演2002/02/11神戸国際会館こくさいホール



アルティ・ブヨウ・フェスティバル2002/02/08

創造空間2002 アルティ・ブヨウ・フェスティバル
2月2日から3月10日まで
公募公演は8日から11日まで
創造空間公演は16、17日

ブヨウ、ダンス部門、多彩なプログラムで、
公募公演は8日から11日まで
創造空間公演は16、17日
かなり興味をそそるものがあります。

2月8日のプログラムを見てきました。

野火とみかづき Idumi Dance Theater(大阪)オリジナル
満福 SMDP (京都)コンテンポラリー
Ko-Syu(こ しゅう)(東京)邦舞
竹取物語 上野智子(東京)コンテンポラリー
What We Are No Longer Here (Acron Dance,U.S.A.)モダン
ヒストリー宮下靖子バレエ団(京都)バレエ

オリジナルからモダン、コンテンポラリーと多彩なプログラムでついていける
かしら(笑)なんて思ったのですが、結果的には行ってよかったなと思ってます。
一作品約25分から30分くらいで、6時開演で8時45分頃の終演でした。
一つ一つの作品にとても集中できました。

「満福」、テーマに共感があって、とてもおもしろいと思いました。日本舞踊
というか、舞が見られるとは思っていなかったので、Ko-Syu にはかなり興味
を持ってしまいました。身体で表現しようとする試みというのは、そういうジャ
ンルを超えたところで共通する何かがあるのかしら。ダンスとしては確かにさ
まざまなダンスなのですが、実のところ違和感を感じるということがなかった
ように思います。

アルティの舞台はちょっとおもしろい。以前、何かのチャリティーコンサート
で行ったことがあったのですが、その時は舞台は固定状態だった(と記憶して
ます)。作品ごとに舞台のパーツが自在に変化していくのに、ちょっと興味を
持って見ていました。ああいう舞台を効果的に使うというのもまた実験的でお
もしろいのだろうと思います。そういえば座席のほうも移動可能なのかしら。
狭い劇場ですが、実験空間的な感じもあっておもしろいですね。


ドン・キホーテ」宮下バレエ団2001/12/23

2001/12/23(日)京都会館17:30〜
「ドン・キホーテ」全幕
宮下バレエ団
原 美香さんの全幕もの、はじめて見ました。生き生きした動きを感じる華や
かな舞台でした。けっこう満足してます。キューピッド役の石田さんという方
がとてもよかった。キュートでピシッと決まって舞台をひきしめてました。

今日は当日券で入ったのですが、なんと真ん中の二列目の席がひとつ空いてい
たので、思わずそれを買ってしまったのですが。一番前一列目は空き席にして
ありました。で、座ってみて、この席はちょっと失敗だったと思ってしまった
けれど。実は前三列は A 席になっていて、その後ろからが S 席になっていま
した。二階席は自由席のようでしたので、A 席はもう後ろの端しか残っていな
かったので、前にしたのですが。最大の難点は座席が舞台より低い位置にあっ
たということ。四列目とか五列目くらいで舞台と同じ高さになるのでしょうね。
だからそのあたりからは S 席ということですね。

というわけでしたから、バレエを見るには最悪状態だったかも。お顔はばっち
り見えるのですが、舞台の前のほうで踊られると、トウシューズの先が見えな
いんですもん!やっぱり見に行くつもりなら、当たり前ですが、ちゃんと前売
りで買ったほうが良いです。

席にはちょっと失敗してしまいましたが、やっぱり行こうと思いついて行った
わりにはとても楽しい舞台でよかったです。



「シルヴィ・ギエム オンステージ2001」2001/11/26

東京バレエ団全国縦断公演
シルヴィ・ギエム オンステージ2001
大阪フェスティバルホール
プログラム
 白の組曲
 WWW.ウーマン・ウィズ・ウォーター(シルヴィ・ギエム)
 スプリング・アンド・フォール
 ボレロ(シルヴィ・ギエム)

東京バレエ団とシルヴィ・ギエムを同じ舞台で見られるなんて、こんな幸せな
ことはないです。しかもギエムの「ボレロ」です。チケットを購入してから、
待って、待って、待ちこがれてしまった日でした。高岸直樹、首藤康之、斎藤
友佳理と見たい人がずらりと並んで!「白の組曲」流れるような動きがとても
素晴らしかった。だけど、生ギエムの迫力はもっとすごかった。

「WWW.ウーマン・ウィズ・ウォーター」、これは私が持っている DVD (美と神
秘のプリマ シルヴィ・ギエム) に収録されているもので、DVD では「ウェッ
ト・ウーマン」(マック・エッツ振付)というタイトルになっています。クラシッ
クバレエにはない内足、摺足などのテクニックがあり、とても興味深く見たこ
とを覚えていました。動きのおもしろさに加え、しなやかさと同時に力強さを
感じる不思議な作品ですね。

やはりこの日の圧巻はギエムの「ボレロ」。音楽は聴くものだと思うのは当然
のことなのですが、「ボレロ」や「春の祭典」のようなバレエ作品に出会って
はじめて、その音楽が表現しようとしているものを目で見ることができるのだ
と思ったことがありました。独特のリズムの繰りかえしが、気がつくとすごい
パワーを秘めてきてどんどん迫ってくる、思わず自分の体も動きだしてしまう
ような、そんなドキドキする時間を過ごしてしまったように思います。

生オーケストラだったらもっと素晴らしかったのにと思います。




「アッティラ」2001/11/04

11日4日の「アッティラ」に行きました。
結論から先に

おもしろかったです。10月7日の第3回基礎講座のあともまだしばらく迷っ
て、それでもやっぱりチケットを買ってしまったのですが、見ることができて
とてもよかったと思いました。

4日の朝10時からワークショップがあったのですが、参加できませんでした。
27日のプレトークもすっかり忘れていて、それにも参加できませんでした。
「アッティラ」については舞台を見る前に数回いろんなお話を聞くチャンスが
あったのに、結局全部のがしてしまったことになります。

かろうじて10/7のサポーター基礎講座にのみ参加できただけということになっ
てしまいました(日下部さんのお話、今日生
の舞台を見て、ヴェルディのオペラの特徴のことを思い出して、なるほどなぁ
なんて思うことしきり)。機会はあったのに、逃してしまったというのは、な
んだか心残りではあったのですが、4日の朝、ふと、いや、これって普通じゃ
ない?と思いました。舞台についてのさまざまなお話を聞いたりビデオを見た
り、実際の舞台を見る前にあれこれ知識を持つことができれば、楽しみも倍増
するのも確か。でも、何にも予備知識なしでもなおかつ今日の舞台を楽しむこ
とができたら、それはすっごいことなんじゃないかと思い直したのです。だっ
て、オペラ観劇って勉強じゃないですし、そもそも楽しみのために行くわけで
すものね。その日、そこに行くことをまずうれしいと思い、生舞台に接して、
ああ、なんだか素敵!と思う、そういう風に自然であれば、今日はとってもよ
い一日だったってことになりますもの。

誰かにチケットを勧めるときも、こんなことを知っていたほうがいいわよなん
て言って勧めるよりは、とにかく行ってよ、楽しいんだからと、楽しい一日を
過ごしてよとそういう勧め方もまた手だなと改めて思いました。

4日の真夜中、BS11 でフェニーチェ劇場の「椿姫」を放送しておりましたの
で、録画しました。それを4日の朝見ていました。ほぼ半分見たところで時間
切れで、びわ湖ホールに向かいました。朝に見た「椿姫」の場面がけっこう記
憶に残り、「アッティラ」の生舞台鑑賞にも影響を及ぼしていたかもしれませ
ん。ラブストーリーってある意味個人的生活。ヒロインは美しいし、登場する
女性たちがみな素敵なドレスを着てなんだか夢見ごこち。愛の物語のオペラと
比べると、「アッティラ」は華やかではないけれど、壮大で骨太、力強いとい
うのがよくわかりました。

「アッティラ」は歴史物語ですから舞台の壮大イメージが素晴らしかったです。
今日の場面の変換はとても大がかりだったようですね(ワークショップに参加
していたら、そのあたりの秘密も見られたかもしれないなぁと思いつつ)。ス
トーリーが複雑なのかと思いこんでいたのですが、そんなことはないですね。
生舞台の迫力がそのあたりの動きをちゃんと補ってくれるようです。

4階席からの観劇でした。あまり目が良くないので(コンタクトで0.9 くらい
なんです)、実は字幕の文字が双眼鏡がないとはっきり見えなくて、7割くら
いしか読めなかったかもしれません。「アッティラ」はそれこそ始めた見たオ
ペラみたいなものですから、ここでこれ!というお決まりのもの(笑)というの
がよくわかっていないので、それは自分でもはがゆいほど残念だなと思いまし
た。これが二度三度と見たくなるひとつの理由かも。そして、次に見るなら、
イタリア人の歌手が演じるオペラが見たいとしみじみ思いました。


「こけら落し」の「こけら」という文字のこと

今日の朝刊2002/10/30に京都伊勢丹の広告があって、その広告に京都劇場、
柿落とし公演「オペラ座の怪人」の小さな広告がありました。
2002年1月開幕で、チケットの発売は11月10日だそうです。

で、なぜかその広告をしばらく眺めていました。うん?「こけら落とし」って
なぜ「柿(かき)」?なのって。「柿」木偏に市の「柿」という字に見えますよ
ねぇ。
「こけら落とし」がなぜ「柿(かき)落とし」と書くのか妙に気になってしまった。
でも「こけら」は「柿」(かき)じゃない。

「こけら」で広辞苑をひいてみますと、
広辞苑
こけら【柿・木屑】
(1)木材を削るときできる木の細片。また、木材を細長く削りとった板。〈和名抄一五〉
(2)柿板(こけらいた)の略。
―‐いた【柿板】
―‐おとし【柿落し】
―‐ずし【柿鮓】
―‐ぶき【柿葺き】
―‐やまぶし【木屑山伏】

だけど、なんで「柿」の文字。これは「かき」ではないか。
そこで、「かき」とひくと、
かき【柿】

う〜ん!同じ字に見えてしまうのだ。

実は「こけら」と読む字は、「柿(こけら)」は「ハイ」と読んで(肺という文
字がありますが、木偏に市ではなくて、縦の棒は上から下までつき抜けている。
だから、「柿」は9画ですが、「柿(こけら)」は8画になるのですね。

まあ、世の中は広くて、こういうことをちゃんと調べておられる人がいる。

こけらとかきの違い
http://www.akatsukinishisu.net/kanji/kokera.html

ところが「こけら」と「かき」は違う文字なのに、
>漢和辞典を見ると二つの字体は区別してあるが、
>JIS漢字では既に「柿」という字しか存在しない。
http://www.akatsukinishisu.net/kanji/kokera2.html

そういえば、数年前にコンピュータで文字を入力するときに
文字コードを調べることができるように購入した文字コード番号付の辞書
「漢字源」ではふたつの文字を区別していないようです。

古い漢和辞書を調べようと思ったのですが、
いま、ちょっと手もとになくて、はっきり区別できるかどうか、
そこはまだ調べきれてないですが、とりあえずのメモでした。


オペラ編ヴェルディ

10月7日第3回基礎講座「オペラ編ヴェルディ」に参加させて頂きました。

私にとってはオペラはほとんど未開拓のジャンルなのですが、オペラのお話を
聞くたびにどんどん興味がわいてきて、そうなると、当然のことながら生舞台
が見たくなります。「アッティラ」のチケットはもうA 席あたりしか残ってい
ないようですね。さて、どうしようかと帰ってきてから、もう何度もパンフレッ
トを眺めてしまいました。

今日の日下部先生のヴェルディについてのお話、オペラ初心者の私にもとても
わかりやすくてとても興味深かったです。ヴェルディとワーグナー、そしてヴェ
ルディとプッチーニ、それぞれの共通点と相違点をお聞きして、ヴェルディの
オペラの見どころがよりくっきりとしたように思います。
日下部吉彦氏(音楽評論家)

ヴェルディもワーグナーもともにオペラに演劇性を持ち込み、従来のオペラ改
革しようとしたけれど、両者は音楽に対する意識に相違があること。ヴェルディ
のオペラは骨太で男性的、主役がバリトンのことがあるとか、テーマが権力闘
争や政治闘争を扱ったものが多いなど、初心者にも理解しやすい説明を頂きま
した。

そして、「リゴレット」、「椿姫」、「アイーダ」、それぞれの一部をDVD と
レーザーディスクで見せて頂きましたが、オペラってすごい!と、ほんとにわ
ずかの部分だったはずなのに、なんだか画面に見入ってしまいました。「リゴ
レット」ストーリーがすごいですね(ジルダを歌っていたのは、エディタ・グ
ルベローヴァ)。「椿姫」(ロイヤル・オペラの公演は94年)でもあのソプラ
ノは言葉がわからなくても、あの声(アンジェラ・ゲオルギュー)を聞いている
だけで心地よい。「アイーダ」の一部はまるでバレエの舞台のようでしたが、
なんだか壮大な舞台の雰囲気が伝わってきて、どの作品もゴクリと生つばが出
そうな気分になってしまいました。



ニーナ・アナニアシヴィリとボリショイバレエ&世界のスター達

びわ湖ホール大ホール
9月30日午後2時開演

今年、びわ湖ホールは海外バレエ団の公演が少なくて、とても残念に思ってい
ました。海外バレエが見られないので、演劇やオペラなどを見る機会が持てま
したので、それはそれでよかったのですが、やっぱりバレエが見たいです!と
いうことで、今日はもう待って待ってという感じでわくわくうきうき気分でび
わ湖ホールに向かいました。

ガラ公演ですから、もうほんとに良いとこ取りでコンパクトにまとまって凝縮
していて、ほんとうに楽しかった。第1部のパ・ド・ドウ セレクションの1
つ目、「アット・ザ・バー」こんなものが見られるなんて考えてもいなかった
ので、本当に興味深かったです。生ピアノでのバーレッスンのスケッチ。もち
ろん舞台ですから、普段そのままという具合には行かないでしょうが、練習と
いえどもピリッとひきしまった練習風景の雰囲気は十分感じました。今日から
バレエを始める人も、大きな舞台に立つスター達もレッスンの最初はプリエに
始まる、毎日、毎日のレッスンを積み上げて、なんかすっごい感動的な風景で
した。第1部のプログラム、よかったですねぇ。ピシッと決まるところで決ま
る、これは最高。「ジゼル」も「白鳥の湖」の第三幕も同じ舞台で見られるな
んて本当に贅沢でした。

第2部の「眠れる森の美女」ハイライト、きれいなまとまりがあって、とても
よかったです。幕物で見る時とは違って、踊りにかなりの余裕を感じてしまっ
て、見ていて本当に楽しかったです。全体的にとても洗練されていて、技術の
すばらしさと余裕を感じて、ひさびさにとても満足したバレエでした。

4階席の前のほうに座ったのですが、4階席、ちょっと空席が目だったかな。



オペラ「マルタ」

リハーサル見学の感想についてはこちらをどうぞ。

9月16日(日)14時開演を見ました。
私にとってはオペラ生舞台の初観劇でした。
8月の終りにリハーサルを見て、翌日にはさっそくチケットを購入してしまっ
た。リハーサルの時とどんな風に違っているのかはとても興味のあることだっ
たし、「庭の千草」という歌を生舞台で聞いてみたい、いくつか見てみたいと
思うことがあってとても楽しみでした。

入口で頂いたパンフレットのなかの演出家岩田さんの「フロトーが見たユート
ピア」これを読んでオペラを見ると舞台の状況がとてもよく理解できました。

「庭の千草」というのは、日本人好みの歌なのでしょうね。
私も好きですが。
ちょっと調べてみましたら、あちこちに「庭の千草」に関係するものがありました。

「庭の千草」
The Last Rose of Summer 
「イギリス民謡」と書いてあるところもありますが、
「アイルランド民謡」のほうが正しいのかしら。

ちょっとした解説
http://www.issay.com/wordlinker/M20001201_091256/M20010522_191356.html
http://village.infoweb.ne.jp/~fwgf0768/music/music_13.htm

バラにまつわる話
http://www.afftis.or.jp/bara/arakalt.htm
>日本の小学唱歌で菊を歌った「庭の千草」の原曲はアイルランド民謡「夏の終
>わりのバラ」で、詩人トーマス・ムーアが1815年に作詞したものです。

「夏の名残りのバラ」のモデルは、 オールド・ブラッシュというバラだそうです。
http://www.hiroshima-bot.jp/hp-saibai/goannai/rose/rink/oldrose/

ということで一幕目の背景になっていたバラの花がなんとも素敵でした。

ものによったら特に予備知識なしで劇場に行ったほうが良い場合もあるけれど、
オペラの場合は、ある程度の予備知識があるほうがよりおもしろく見ることが
できると思います。

オペラの日本語歌詞が少々聞きにくい部分があって、このあたりのことは
[biwako-hall]のメーリングリストで教えて頂き、日本語でのオペラ上演につ
いては、いろんな問題もあるのだなと改めてオペラに関心を持つことができま
した。

(参考)日本語で上演されるオペラの場合、
日本語の歌詞がなぜ聞きにくいかということについて。
日本語は音を伸ばすと全て母音になってしまうというのが最大の問題。
たとえば、「ああ〜るううう、はぁ〜れぇ〜たぁひい〜〜」みたいになってし
まうと、確かに聞こえてくるのは「あいうえお」の系になり、日本語を言葉の
かたまりとして聞きにくくなってしまう。日本語オペラに日本語歌詞の字幕で
はなんともさまにならないし、それなら歌詞は原語のままで日本語字幕にする
ほうがすっきりするということもあって、言語の問題はなかなか難しいもので
すね。



ミュージカル「ピーター・パン」

ミュージカル「ピーター・パン」
平成13年8月12日 午後1時30分開演

ミュージカル「ピーター・パン」はじめて見ました。舞台としてはけっこうお
もしろかったです。日本での「ピーター・パン」の初演は約20年ほど前。初
代のピーターパンは榊原郁恵。もう長い間上演されているものですし、手慣れ
た舞台という感じはありましたけれど。近くに座っていた人が「去年のとは
ちょっと違う」というようなことをつぶやいていたのを耳にしました。私にも
そんな比較材料があるとよいのですが、私はともあれ初めてみた「ピーター・
パン」なので、けっこう新鮮だったのは確かです。

当然のことながらみなさま、ほとんど小さな子どもを連れての観劇ですよね。
その姿を見ながら、私も「私が子どもだった時」に、あるいは「私の子どもが
小さかった時」にこんな舞台を見ていたらと、そこはちょっぴり残念なことだ
と思ってしまいました。

全体的に生き生きした舞台でダンスもバック転ありのなかなかの迫力で、とっ
ても元気がよくて、とくにタイガー・リリーとインディアンたちの動きはよかっ
た。

「ピーター・パン」を見に行くと決めたとき、私はピーター・パンと子どもた
ちが「どんな風に飛ぶのか」というあたりに興味があるのだと自分で思ってい
ました。そういうある種の劇的な場面というのは、確かにひとつの見どころで
はあると思うのですが、でも舞台を見たあとでは、私の本当の興味はそんなと
ころではなく、やっぱりBarrie, J. M. の Peter and Wendy がどんなミュー
ジカルになっているのだろうというところにあったのだと気がつき、実はいま、
Peter and Wendy の原作に目を通しているところです。

Barrie, J. M.
Peter and Wendy
Peter and Wendy

舞台って一度限り、その場限りのとてもぜいたくな出会いだなと思います。
だからこそまた次も見たいなと思ってしまいますね。



ピーター・ブルック「ハムレットの悲劇」

公演名:ピーター・ブルック「ハムレットの悲劇」

シェークスピア演劇の生舞台初めてみました。どんなものでもそうですが、は
じめて見たものが好ましい印象であれば、それは最高のよい経験だと思います。
次?そうですね、ピーター・ブルック演出で「真夏の夜の夢」があれば、私は
絶対見に行くと思います。バレエやオーケストラであれば見たいと思うものは、
何の躊躇もなくチケットが買えるのですが、演劇になるとなぜか一歩退いてし
まうのはなぜなのだろうと思います。たぶんこれはもう食わず嫌いに似たよう
なもので、なぜか私は演劇には身構えてしまうところがあるのです。

でも、最近シェークスピアについては考えを改めています、ほんとに。シェー
クスピア演劇はグローブ座があった頃は、民衆の「娯楽」であったはずのもの。
ところが翻訳劇として日本に入ってくると、「難しい」「高尚」などと言った
印象のほう先になってしまったように思います。これって不幸ですよね。いつ
の頃からはそんな印象って何か変と思うようになりました。そこで、いつか機
会があったら、まずは「ハムレット」を見てみたいと思っていたところに、な
んと幸運にもびわ湖ホールでの公演チケットを手にいれることができました。

チケットを購入するとき、今回は舞台上にも席がありますと言われたのですが、
劇はやっぱり正面からが良いだろうと、チケットを買うときは深く考えずに正
面席を購入しました。比較的前のほうの席でしたが、あの演出、あの舞台なら、
舞台上のサイド席はかなりの見ごたえがあったのではないかとちょっぴり残念
だったかなとも思いました。

実に2時間30分もの上演時間だったのですね。これにはびっくりしました。
びわ湖ホールを出てから時計を見ると、なんと、4時40分過ぎでした。とい
うことは、上演時間はたっぷり2時間30分くらいあったわけです。時計を見
るまで私はいま見た劇は1時間30分くらいだったと思っていたわけです。こ
れはすごいことですね。かなりの長時間の上演だったにもかかわらず、時間を
感じていないわけです。自分でもびっくりしてしまいました。それほど劇に引
き込まれていたということになります。字幕部分が出たときにひとめでパッと
内容を頭にいれて、なるべく英語を聞くようにして見ていました。

舞台も衣装もシンプルで、ストーリーがくっきりと「目に見える」、これはな
かなか素晴らしいハムレットを見てしまったと思いました。(ハムレット役の
方がJリーグの清水エスパルスのアレックス選手にとてもよく似ていて妙に親
しみを感じてしまいました。これは余談)。(2001/07/09)



舞台芸術と著作権についてのセミナー

2001年6月30日びわ湖ホールでの「舞台芸術と著作権」というセミナーに参加
しました。

「著作権」という言葉、日常的にもよく聞く言葉のひとつだと思います。しか
しながら、その実態というか、それはどういうことなのかということについて
は、恥ずかしいけれど、何かわかっているようで、実はよくわかってないとい
うきわめてあいまいな知識しか持ち合わせていない。著作権という言葉は法律
用語ですし、「著作物」に関する「権利」ということですから、ともあれまず
最初にそのちゃんとした定義を知らないことには話は進みません。まずは著作
物とはどういうものを言うのか、という基本から話を聞けたことはとても大き
な収穫だったと思います。

著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美
術又は音楽の範囲に属するもの」ということですが、う〜ん!わかった気分に
もなるのですが、そんなに簡単なものでもないのも確かですね。でも、ここが
出発点。「著作物」をめぐるもろもろの問題についての話はとても興味深いも
のでした。

そもそもこのセミナーに参加してみようと思ったのは、このセミナーがあると
知ったちょっと前に「シェイクスピアを盗め!」という本を読んだことから、
演劇台本の著作権ということにちょっとばかり興味を持ったからです。

「シェイクスピアを盗め!」
著者:ゲアリー・ブラックウッド
訳者:安達まみ
白水社 2001年1月25日発行

強いて分類すれば、児童書という範疇に入る本かもしれませんが、スリルに満
ちた冒険物語としてもとてもおもしろい本です。舞台は、400年ほど前のイギ
リス、ロンドン。シェイクスピアがグローブ座で脚本を書き、役者としても舞
台に立った頃の物語です。ストーリーのおもしろさに加えて、当時の一般の人
たちの生活、そして、当時の子どもたちの様子がとても生き生き描かれていて
興味深い。

孤児の少年ウィッジは7歳のとき、牧師のブライト博士の徒弟にやとってもら
う。ブライト氏は牧師さんだけれど、博士というのは医者の称号もあるからで
す。ウィッジはブライト博士のところで英語とラテン語の読み書きを習うこと
になります。ブライトさんは牧師でもありますから、説教をメモするというよ
うな仕事があったわけで、ウィッジはブライト博士の考案した速記術もマスター
していきますが・・。説教を速記する目的というのは、なんと!ブライト博士
は自分の説教を自分で書いているわけではなかった。すでに「説教どろぼう」
がすでに存在していたのですね。誰かの説教を誰かが流用してしまう。ウィッ
ジはブライト博士の徒弟、ということはブライト博士の「所有物」なのに、速
記ができるためにあちらの説教をこちらへ、こちらの説教をあちらへと、「説
教」どろぼうの役目をはたしてしまう。
この時代に「速記ができる」これはすばらしい特技なわけで、そのことのため
にウィッジはさまざまの危険にも出会うわけです。

結局のところ、ウィッジはブライト博士のところを逃げ出して、サイモン・バ
スと出会います。この出会いがウィッジの人生を大きく変えることもなってし
まいます。サイモン・バスはウィッジが速記ができることに目をつけ、ロンド
ンへ連れていきます。そして、「シェイクスピアを盗む」仕事をさせるわけ
です。つまり「シェイクスピアを盗む」とは当時の一番人気の劇作家シェイク
スピアの台本を盗むわけです。

ウィッジは「シェイクスピアを盗む」ことが別に悪いことだなんて思いません。
それが当時の社会では当たり前のことでもあったようですから。いかにしてう
まく盗むか、劇を見て記憶する、速記する、そういう方法で台本を盗む。そし
て記憶をつぎあわせて「海賊版台本」を仕上げるわけです。なんともすごいと
いえば、すごい話ですが、いまでもどこかのテレビ局で人気のある番組がある
と、それに似た番組が他局でも放送されたりするのは普通のことですから、やっ
ていることはそれほど特殊なことじゃない。ただ問題は「著作権」という考え
方がなかった時代ですから、そこにこの本のおもしろさがあるのですね。

「訳者あとがき」の頁にこんなことが書いてあります。
----
衣装につぐ劇団の財産は、芝居の台本でした。物語にもあるように、台本はラ
イバル劇団の手に渡らないようにきびしく管理され、役者たちは自分のセリフ
だけを書いたサイドとよばれる紙を渡されました。台本は作者の手を離れてし
まうと、印刷されるまでは劇団の所有物でしたが、いったん印刷されると、台
本の権利は出版業者に移り、だれでもその芝居を上演できるようになります。
(222頁)
----

シェイクスピアというとグローブ座ですが、この時代、芝居小屋はグローブ座
だけではなく、たくさんあったわけです。人気のある芝居をかければ客が入る、
客が入ればもうかるわけですから、人気のある「芝居の台本」を手にいれいる
ということは大きなビジネスになったというわけですから、なんとかして人気
のある芝居の台本を手にいれようと競争で盗んだわけです。盗む方法は「記憶」
ですからすごいですね。記憶をたよりにつぎはぎして作った「海賊版」台本が
いろいろ出回ることになります。ですから、ウィッジのように速記の技術があ
る者は記憶だけでなくセリフを筆記で盗むことができるわけですから、これは
心強い(笑)技術なのですね。

台本作者の「著作権」を保護するという考えがまだ育っていなかった時代を資
料取材して創作として書かれた本ですが、本当におもしろかったです。お勧め!

「シェイクスピアを盗め!」という本に出会ったあとで、「著作権のセミナー」
のことを知り早速参加、おまけに7月にはびわ湖ホールで「ハムレット」があ
りますから、このチケットもすでに購入してしまいました。なんともいろいろ
興味深いことが続いて本当に楽しいです。

お話を聞きながら、ふと「Copyleft」という言葉を思い出していました。
Copyright という言葉から派生的に作られた言葉ですが、プログラマーさんの
世界では Copyleft という言葉も使われてします。Copyright は普通の辞書に
のっていますが、さすがに copyleft は jargon にならのっていますが、普通
の辞書には(たぶん)ないでしょう。著作権は保持したまま、改変や派生的な仕
事はご自由にどうぞというものです。

今日のセミナーのなかでも「同時多発」(この字でよかったかな)ことも触れら
れていましたが、「私が考えたことは、たぶん世界中で他に3人、30人、3
00人くらいは考えついているかもしれない」というようなこともありますよ
ね。人間ですもの、何かをヒントに似たようなことは「思いつく」だろうと思
います。けれど、アイディアだけでは「著作物」ではありません。アイディア
を形にしていくときに私なりの(その人にしかできない) 創造的なものを生み
出すことができて、それはやっぱり世界でひとつだけかもしれません。それは
「私のもの(その人のもの)」として認めて、その権利を保証すること、それは
とっても大事なことですよね。でもあんまりがちがちに固めてしまうと苦しい
状況も生み出すかもしれないとも思いますが、やはりどんなことにも正しい知
識が必要だと思いました。(2001/07/01)



6月10日の「オーケストラで踊ってみよう」

6月10日の「オーケストラで踊ってみよう」は、2階席のチケットを頂き
ちょっと感激でした。少し空席があるかなという気もしましたが、このような
初心者向け青年向けコンサートとしたらよく入っているほうではないかとも思
います。こんなコンサートこそ、これからのクラシックやダンスファンを育て
るとてもよいプログラムだと思います。実際のところ、子どもから大人まで、
さまざまの年代の方の姿があり、ファミリーな雰囲気でとても楽しかったです。
私は、やっぱり「ボレロ」が一番よかったかな。ひとつの楽器からはじまり、
どんどん楽器が増えていって、最後はオーケストラ全体での盛り上がりが好き
です。東京バレエ団の「ボレロ」もびわこホールで見たのですが、あの時の感
激がよみがえりました。
今日のプログラムは「踊り」のリズム特集で、それぞれの曲はどれもほんとう
に良いとこ取りで楽しかったのです、もしもこれに「踊り」がついていたら、
それはもうもっともっと楽しいプログラムになったように思います。びわこホー
ルに声楽アンサンブルがあるように、専属のダンシングチームがあると、本当
に素敵だと思う。

先日のバックツアーで、コンサートの時はホール全体が「箱」になるようにす
るというお話を聞いていたので、私はそのことも興味しんしんでホールを眺め
ました。ステージの後ろ側に壁ができて、ステージの横もドアで出入りするよ
うになっていましたね。そんなちょっとした知識がコンサートへの興味を深め
てくれました。



奈落とすのこ(大ホール見学)

2001年4月22日(日)びわ湖ホール、大ホールの見学に参加しました。

あ〜!舞台裏というのは何とすごいものか。その巨大さにまず驚き、舞台とい
う大きな仕掛けを作るシステムのすごさに強烈なインパクトを感じてしまって、
実はいま、あまり言葉が出て来ないのです。あれこれ巧妙な仕掛けが動くのを
目の前に見ながら説明を聞いても、ただただ驚きのほうが先にたってしまって、
やっぱりこれはいったい何というすごい世界なのだ!と何やらぼうぜんと口を
あけて眺めてしまったというか、そういう感じかもしれません。はっきり言っ
て舞台裏というのは、想像以上にすごいもので、表の舞台とはまた違った大き
な魅力を感じるものであるのは確かだと思います。「裏方」という言葉があり
ますが、そこは舞台を支えるものすごいエネルギーが充満している世界かもし
れません。

お客さんのいない大ホールはほんとうにシーンと恐ろしいほどの静けさがあり
ました。大きなホールが以外に小さく見えてしまうのが不思議ですね。実は今
まで1階席には入ったことがなくて、始めて前から10数列目、舞台が本当に
目の前に見える席に座りました。この段階では舞台は「普通の状態」に見えて
いました。つまり、舞台があって両サイドに黒い幕が数列見えていて、一番奥
に白い壁が見えているという状態です。それでも緞帳がさがっていないむき出
しのびわ湖ホールの舞台を見るのは始めてでした。

何もないむき出しの舞台を見るというのは、舞台の上で演じられる劇やバレエ
を見る感激とはちょっと、いや、ちょっとどころか、相当違う、何がどう違う
のか、まだ分析するほど冷静にはなれていないのかもしれないです。当然です
が、いつもは客席から舞台を眺めるわけです。それも2階席とか、3階席とか、
ときには一番上の一番後ろの席から舞台を見ることもありました。舞台にはか
すかにかすみがかかり、舞台ははるか遠くに!それでも劇場のライトが消され、
真っ暗のなかに舞台が浮かびあがると、舞台はまるですぐ近くにあるように見
えてしまう不思議さを何度も味わってきました。開演まじかになるとシャンデ
リアがスルスルと上に上がっていくのですね。3階席に何度も座っていたので
すが、実は気がついていませんでした。

「音響」についての説明のときに、座席の収納状態にもちょっとした工夫があ
ることを聞き、もうこの段階でもかなりびっくりしていました。さて、いよい
よ舞台の変身を見る段になると、これはもうほんとうにただただ感激するのみ!
今日の舞台では何も演じられてはいないと思っていましたが、いえいえ、「舞
台」そのものがすばらしい姿を見せてくれました。それこそ、ひとつひとつベー
ルを脱いで、その生の姿を現したとき、何かを生み出すものすごいエネルギー
を感じてしまいました。

今日は、舞台の上を歩きました。動く回り舞台に乗りました。舞台から客席を
見ました。実はびわ湖ホールの舞台は客席より広い!舞台が占める面積のほう
がはるかに広くて、誰もいない客席が以外に狭く見えました。びわ湖ホールの
舞台は実は4面からなっているということは開館当時からパンフレットを見た
りして一応知っていました。でも、それがどういう構造になっているのかは乏
しい知識からは想像しがたいものです。舞台4面の間を仕切っているものが取
り払われてしまえば、実際はいつも見ている舞台の4倍の広さの空間がそこに
あるわけです。本舞台の後ろにひとつ、両方のサイドに各ひとつ、合計4面の
広い広い空間が顔を見せます。この4面の空間を自在に使ってさまざまな舞台
が作られるのわけですから、その仕掛けは本当に巨大なものですね。

舞台の板は黒。お客さんには「舞台」そのものを見てもらうわけではなく、あ
くまでそこで演じられるものを見てもらうわけだから、基本的には裏は「黒」
というのはいたく納得するところです。舞台の黒い板はあちこちに傷があった
りはげたりしていましたが、何やら歴史の刻みを感じるようで、とても現実感
がありました。

さて、今日の見学の圧巻は「奈落」と「すのこ」になるでしょうか。舞台の
「天」と「地」になる場所です。奈落は舞台の下。奈落に落ちるなどという言
葉もありますが、舞台の下の薄暗い場所にもこれまた妙な魅力を感じてしまっ
た。奈落を見たあとで、「天」のほうへ。ここはビルで言うと7階くらいの高
さになるとか。奈落が地下30メートルほどということですから、この日歩い
た高低差は100メートルくらいになるのだろうか。定員1人くらいの細い階
段を登る、登る!

舞台の真上の天井は下が覗けないといけませんから、「すのこ」のようになっ
ています。ここからもさまざまな仕掛けが舞台に向かってほどこされているわ
けです。なんともすごい場所です。すのこのすき間からはるか下にある舞台が
透けて見える。はっきり言ってかなり恐ろしい場所ですね。奈落の暗さとは違っ
て、「高い」という恐怖感を感じます。こういう場所を歩く時は、底の広い靴
でなくちゃ恐いです。この日は、かなり細めのヒールのサンダルをはいていて、
おまけに私の足はそんなに大きくないものですから、すのこのすき間にヒール
がはまりそうで、それが一番恐ろしかったですね。

さて、すのこに足をかけたとき、なんとカメラの電池が切れたようでシャッター
が落ちなくなりました。電池が切れかかっていることがわかっていたので、取
り換え用の電池は用意していたのですが、まさか、こんな場所でシャッターが
落ちなくなるとは思っていませんでした。写してもあまり絵にはならないかも
しれないけれど、すのこのすき間からはるか下に見える舞台を写しておきたい。
あのなんともおっそろしいすのこの上で私は、カメラの電池を取り換えました。
どんなことがあっても取り出した電池やポケットにいれてあった新しい電池を
下に落すようなへまはできないわけで、ともすればふらつく足でしっかり立っ
ているのが恐い場所で、私はカメラの電池の取り換え作業をやっていたのでし
た。う〜ん!これはなかなか素敵な体験でした。ほんとに。

舞台の素顔を見てしまった。次の舞台を見に行くとき、何かしらもっと奥深さ
を感じて舞台を見るような気がします。



ジゼル

2001年4月15日バレエスタジオミューズ公演
大阪厚生年金会館大ホール
プログラム
天使が舞い降りた日
  演出・振付け/石原完二
ジゼル(全二幕)
  演出・振付け ウラジミール・デレヴィヤンコ
        (原振付けジャン・コラリ、ジュール・ペロー)
  音楽:アドルフ・アダン
  ジゼル 康村和恵(ドレスデンバレエ)
  アルブレヒト ウラジミール・デレヴィヤンコ(ドレスデンバレエ)

想像以上に素晴らしい「ジゼル」に出会ってしまったような気がする。ジゼル
の生舞台が見たいと思ってもなかなか見る機会がないというか、「ジゼル」は
有名だけれど、日本のバレエ団がジゼルを公演するという機会は少ない(と思
う)し、海外のバレエ団の場合は演目に入っていても、行こうと思う劇場でジ
ゼルを公演してくれる機会に出会うことが少なくて、結果的にはなかなか見ら
れない舞台になってしまうのだ。

今回のジゼルは 1999年のボリショイバレエの「ジゼル」(びわこホール)を見
て以来の「ジゼル」の舞台だったから、とにかくうれしくて!ひょんなことか
らこの公演があることを知り、ヴィリになったジセルに出会いたくて大阪まで
出かけました。

ジゼルの舞台の魅力は何と言っても二幕のヴィリになったジセルがまるで重さ
のない妖精の姿でぽっかりと宙に浮かぶ、その姿!(これこそクラシックバレ
エだと私は思ってしまうけれど)。白い姿がぽっかりと宙に舞い、そしてその
ままふわ〜っと夜の闇のなかに消えていってしまうような不思議な妖精の姿、
そんなジゼルに出会えたら最高。私にとっての「本物のジゼル」というのは、
宙に浮き上がっているヴィリになったジゼルの魂の姿以外にはないのですから。

「ジゼル」は1841年パリ・オペラ座で初演されました。ハインリッヒ・ハイネ
の伝説物語(現在は「流刑の神々・精霊物語」(岩波文庫)で入手可)に書かれた
ヴィリの伝説にヒントを得て、テオフィール・ゴーティエが物語を書き、それ
をもとにサン・ジョルジュがバレエ台本を作成。作曲はアドルフ・アダン。初
演でジゼルを踊ったのはカルロッタ・グリジ。「ジゼル」の脚本がどのように
して生まれたかはゴーティエがハインリッヒ・ハイネに宛てた手紙」(1841年)
「ジゼル、あるいはヴィリたち」に詳しい。

ジゼルを踊った康村和恵さんはドレスデンバレエのソリストですが、一幕では
ほんとうにかわいらしく、素直で繊細なジゼルを感じさせてくれた。アルブレ
ヒトが王子だとわかり、実はバチルダ姫という婚約者がいたことを知ってジゼ
ルは絶望し狂ったような姿になってしまう、このあたりの一幕の山場の悲しみ
の表現がほんとうにすごかった。

ジゼルの舞台、特に二幕を見ると、なんで爪先でたたなくちゃいけないんだろ
うというちょっとした疑問(でもこれがクラシックバレエの世界のおもしろさ
を感じちゃう一番すごいところかもしれないのですが)に、何の理屈もなく納
得できてしまうのではないかと思います。そういう技術があるからこそ、こう
いう舞台が作れるのだという納得。二幕のジゼルは魂の姿ですから、幽霊です
よね。もう人間じゃない。あくまで軽く、透き通って、ひゅんひゅんと白い姿
が宙に浮くとき、ほんとうに舞台にひきこまれてしまいます。

ジゼルの舞台は「白鳥の湖」とはかなり違ったファンタジックな雰囲気を感じ
ることができて、見る前に思っていたよりも私にはかなり満足を感じたジゼル
でした。

「天使が舞い降りた日」はコンテンポラリーダンスなのですが、全体的にはコ
ンパクトにまとまっていてとてもよかったのですが、見ている間にどうしても
東京バレエ団の「春の祭典」の舞台を思い出してしまって、知らないうちに心
のなかで比較をしてしまっている自分に気がついて自分でもちょっとびっくり
してしまった。つまり、私はコンテンポラリーダンスには、なんかすご〜い人
間の心の奥底のどろどろした部分、わからない部分を体で表現して欲しいと思っ
ているのかと思ってしまったのです。「春の祭典」を見てはじめて、あの不気
味な音楽の何かしらの意味、この音楽はこういうことを表現していたのかとは
じめて気がついたことがあって、あの時は素晴らしいとかなんとかいうことよ
りは、とにかく何かしらの「恐怖」を感じたことがあって、「春の祭典」は忘
れられない。

そういう観点から見ると、「天使が舞い降りた日」は生きる喜びを踊るダンス
だというのはわかるのですが、逆に不可解さや理不尽さといった生きることの
なかのわからない部分があまり感じられなくて、そこはちょっと残念だったけ
れど。

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