ガレージキットフィギュアとは
Project Nimbus
このサイトはガレージキットフィギュアをテーマにしたサイトですが、
ガレージキット自体が一般的ではないのでその説明を・・・
語順は逆になるのですが、先ずフィギュアから。
英語では「形」や「数字」を意味する単語で、スケート競技の一つ(元々は、如何に指定された図形通りに滑走するかを競う物でした)だったりしますが、ここでは人形を意味すると思って問題有りません。
広義の意味からすればロボットや怪獣、怪物などもフィギュアとなるのですが、ロボットはそのままロボットやメカ、怪獣も怪獣、怪物等はクリーチャー(怪獣と怪物の区別が今一曖昧ですが、巨大な物を怪獣、人くらいのサイズを怪物、怪人とするみたいです)と呼び、便宜上フィギュアとは呼ばない傾向に有ります。
私は男性キャラクターのフィギュアには興味が無く、女性キャラの物しか作りませんが、どうやらそれは私だけではなく、キャラクターフィギュアの中では女性キャラをモデルアップした物が圧倒的多数で、男性キャラクターは少数派の様です。
次にガレージキット。
直訳するとガレージは「車庫」、キットは「組立て式の模型」と言う感じだと思うのですが、これでは模型である事以外は今一つはっきり解りません。ガレージと付くくらいなので普通の模型とは少し違います。謎を解くヒントは「車庫」を意味するガレージです。こう書くと「誤訳?」と思われる方も居ると思いますが、ガレージキットのガレージは「車庫」なのです。
この「車庫」と言う言葉の中には二つのニュアンスを持ちます。一つは「車庫でも生産が出来る程度の規模で生産可能」と言う意味合いと、もう一つは、ガレージキットは個人が趣味で製造する物が最初の物だったので、発祥のヨーロッパやアメリカでは加工が伴う男の趣味は車庫でする物と相場が決まっているので、そう言う物も含んでいるのだと思います。
つまりガレージキットは工場で大量生産されるものでは無く、家内手工業的な生産方法が取られているものだという事になります。
ここで対比させるために通常生産ラインで作られる大量生産の模型(マスプロダクツモデル)を例にあげると、昔は木や金属を使った物も多かったのですが、プラスチックの原料コストに敵う筈も無く、現代の模型の大多数はプラスチックが原料です。
プラスチックで作られた模型は日本ではプラモデルの商品名で広く知られているので、大抵の方は大体の想像は付くと思いますが、
金属の型に液状のプラスチックを圧力をかけて流し込み(インジェクション、固めて作ります。現在では金型に粒状のプラスチックを敷き詰め、上から金型を被せる方法も有りますが、成形方法の違いだけで、成形物には大きな違いが無いので、便宜的にインジェクションと呼ばれます。この金属の型を使う整形方法は、数百万台も生産される家庭用ゲーム機のプラスチック外装部分の製造に用いられる方法でも有るので、非常に多くの数を生産するのには適しているのですが、金属の型をを作るのに、相当な初期投資が必要になります。従って、製品の原料は安いものの、大量に作らないと一つあたりのコストが高く付き、だからと言って商品単価を上げると売れないので、確実にある程度の販売が見込める物しか作る事が出来ません。又、型に流し込むプラスチックは硬化後に収縮して体積が小さくなるのですが、分厚く大きいパーツはそれが顕著になる為、どうしても薄いパーツの張り合わせをせざる得ない構成になってしまうのと、金属型を用いる関係で余りに複雑な形状の物は整形は出来ません。ただ、薄い物や細長いパーツでも均一に整形出来るので、飛行機や戦車などの工業製品を模した物や、やキャラクター物の中でものロボットには適した整形方法と言えます。
ガレージキットの代表的な製造方法はレジンキャスト整形と呼ばれる物です。
レジンの語源は松ヤニで、転じて樹脂やプラスチック素材の合成樹脂、キャストは流し込みを意味します。
歯医者が金歯等の義歯を作る際、歯型を立体的に複製する時に用いるのと同じ方法で、歯医者では患者の歯型をシリコーンゴムで型を取り、その型にブラスチック樹脂を流し込む事により歯型を複製するのですが、ガレージキットの場合も同様に、原型となるフィギュアをシリコーンゴムで型を取り、ブラスチック樹脂を流し込みます。
ガレージキットの生産に用いられるプラスチック樹脂はは主に二液性の無発泡ウレタン樹脂です。ウレタン樹脂は自動車の樹脂製パンパーにも使われる素材で、一般的なプラモデルに用いられるスチロール樹脂やABSに比べ、耐久性や柔軟性に優れ、溶剤や、熱、衝撃に対する耐性が高い物です。
シリコーン製の型は材質がゴムの為耐久性が無く、一つの型からは二桁のオーダーでしか生産する事が出来無い(使用するシリコンゴムと整形技術により一の型から100個以上生産する事も不可能では有りませんが)ものの、シリコーン型を製作するコストは、材料費だけなら、小さい物なら数百円から、高くても数万円程度に収まるので、全く売れなかったとしても、需要も見極めずに大量生産しない限りは、大損害を蒙る事は先ず有りません。
数十個で数千円から数万円の型と、プラモデルでは組み立てると中空になる部分にもレジンキャスト整形の場合は一体化して、素材が詰ったムクの状態の部品が多く材料の使用量も多い上、流し込むウレタン素材は1kgで数千円もするので、製品一つあたりのコストはプラモデルと比べるとどうしても高くなってしまいます。ただ、シリコン型は弾力があるのと、流し込む素材の硬化時の収縮率がプラモデルに用いる素材に比べて小さく、金型では不可能な形状の製品が生産出来るので一概に高いとも言い切れません。欠点としては前述の短い型の寿命と、型の弾力により高いパーツ精度が望めず、細長い物や薄いパーツは均一に作るのが困難(大量に生産して比較的精度の高い物を抽出すると言う方法も考えられますが、製品一つ当たりの製造コストが一気に跳ね上がるので現実的では有りません)なので精度を望む物は苦手、高コストと良い所無しにも思えますが、精度を必要としないものの複雑な形状を必要とする、人体を含め、有機的な作りの模型を整形する方法として、現時点では最も適した製造方法です。
ガレージキットとプラモデルを対比表にしてみるとこんな感じでしょうか。
ガレージキット | | プラモデル |
レジンキャスト | 主な整形方法 | インジェクション |
安い
数千円〜数十万円
| 製品当たりの初期投資 | 高い
数百万円から数億円
|
高い | 製品単価 | 安い |
高い | 製品当たりの材料費 | 安い |
少ない
数個〜数百個
| 生産数 | 多い
数百個〜数百万個
|
低い | パーツ精度 | 高い |
大きい | 製品の個体差 | 殆ど無い |
高い | 整形できるパーツの形状の自由度 | 低い |
価格に関してですが、プラモデル全体としては一つあたりの数の売れる個数がピーク時に比べて低下しているので、製品単価を上げるしかなく、価格が上昇し続けた結果、物によってはガレージキットと同じくらいの価格帯のプラモデルも出始めています。もっとも、
一時のブームが過ぎ去り、購買層を市販完成品にとられてしまったガレージキットフィギュアも事情がそれ程変らず、商品価格が上昇傾向に有ります。
ガレージキットにはレジンキャストの他に、金型を用いるソフトピニール製の物も存在します。
壷状の金型に柔軟性の有る素材を流し込み、遠心力で金型の内側全体に素材を行き渡らせて硬化させた後、素材の柔軟性を利用して引っ張り出して成形する方法で、複雑な形状の複製がレジンキャスト同様に可能です。
金型が必用とは言え、プラモデルに用いる物と比較すると格段に安い初期投資で生産出来る為、小規模のメーカーでも製品化が可能で、未組立ての物はガレージキットとして流通しているのですが、塗装済み完成品のマスプロダクツ用途にも使われている製法なので、ガレージキットと呼ぶべきかどうかは議論の分かれる所だと思います。
他には、熱したプラスチックの板を型に押し付け、空気を吸引して成型するパキュームフォームと言う生産方法も有り、これはレジンキャスト整形が苦手とする非常に薄いパーツの整形がレジンキャストよりも高い精度で可能で、海外にはこの方法のみで生産された飛行機などの模型が有るのですが、整形されたパーツに厚みが殆ど無いので、これを張り合わせて製作するとなると、大変高度な技術が要求されるので、バキュームフォーム整形部品のみで全パーツを構成する製品は少なく、レジンキャストキットの一部や、ラジコンカーのボディーパーツの整形等に使われるのが一般的です。
最近は、プラスチックモデルと同様の金型に、ソフトビニールに近い硬化後も柔軟性の有る素材を圧力を掛けて流し込む事によって複雑な形状を成形する方法で複製したパーツに塗装を施して完成品とした、PVC完成品がフィギュアの市場の大勢を占める様になって来ました。
PVC完成品はレジンキャストキット用の原型に少し手を加えただけか、或いは全く手を加えない物から金型を作れる様です。
金型の製作から商品のパッケージングまでの生産を一貫して、コストの安い海外で行う事により、未組立、未塗装のガレージキットよりも安い価格で完成品が作れる様になっています。
PVC完成品は、精度の良いゴム人形に彩色を施した様な物ですので、レジンキャストキットと比較した場合、個体差は少ない物の、原型の再現性に劣りますし、自重で変形し易かったり、素材から可塑剤が染み出して塗装を変質させたりする事があったりします。又、
生産のコストを抑える為に可能な限り手間を掛けずに製作されているので、それ相応の仕上がりだったりと、ガレージキット完成品と比較すると劣る面が多いのですが、それを補うには十分な価格の安さで、モデラー以外の層に受け入れられ、今やフィギュアと言えばPVC完成品と言っても差し支えない状況です。
ただ、販売前に発表されるサンプル写真は大抵、実際の製品が生産される前に、原型をレジンキャストで複製して、販売する製品の数倍から十数倍ものコスト(社外のモデラーに外注すると数万から十数万円、社内のモデラーでの製作でも人件費だけで数万円)を掛けてガレージキット完成品と同じ手法で製作された物に対して、
PVC完成品の製品は原型の再現具合は金型製作に相当依存する上、製作はライン工による分業と、複製方法、材質、製作方法が全く異なる別物ですから、予約受注時の写真だけで予約購入する場合は、ある程度の割り切りが必要です。
原型
せっかくなので原型にも言及しておきましょう。
インジェクションもレジンキャストも原型を元に金型やシリコン型を作ります。
インジェクションの金型については私はあまり詳しくないのですが、最近は電子制御の加工機により昔より比較的簡単に作れるそうです。原型の測定にも加工時の制御にもレーザーが用いられ、非常に高精度の加工が可能との事。又、原型を測定しなくても、コンピューター上のみで加工機械の制御用のデーターを作る事によっていきなり金型を作る事も可能な筈ですが、模型雑誌を見ている限りでは、検討用の立体化を行い、最終的には銅で立体物を作り、銅から放電させて金型を作る様です。
今の様に電子制御が無かった時代でも機械式で、原型をなぞって金型を加工する物が有ったらしい(直接見た訳では無いので想像するしかないのですが、航空写真をなぞって地図を起こすトレーサーの立体版か、合鍵を作る機械をずっと複雑にした物だと思います)のですが、細かいモールディングを金型に反映させるのは無理だったので、原型時点でモールドは入れずに、金型職人が金型直接にモールドを掘り込んでいたので、大昔のプラモデルのモールドは凸モールドばかりでした。
レジンキャストの場合、型がゴム状の為、ゆがみ等の個体差が発生し易いのですが、原型のイメージを損なう事無く製品に反映する事が可能です。従って、原型を製作する原型師の個性がそのまま反映されるので、製品の元となるキャラクター性を原型師の作家性が凌駕する場合が少なく無く、フィギュアの多くがキャラクター商品であるにも関わらず、キャラキャラクターではなく原型氏が購入の判断基準になる場合が少なからず有るのがキャラクターフィギュアのの面白い所です。ガレージキットメーカーは何処も中小や零細企業、良く行って中堅企業止まりで、ライセンスの独占契約という事があまり無い為、同じ作品の同じキャラクターが同スケールで、同価格帯、場合によってはポーズまで同一という商品が複数のメーカーから発売される事も有り(もっともそう言う非常事態はイベント限定品に限られますが)、その際、雌雄を決するのは原型氏の人気となる為、各メーカーとも自社の原型氏のブランド力を高め様としたり、既に人気が安定している原型氏に仕事を依頼したり、イベントに参加しているアマチュアの中から人気の出そうな者を探したりと様々な努力をしている様です。
原型の製作方法は基本的に同じで、金型にはシリコーン型よりは制約が多いので、それを考慮して製作すると言う以外は、金型とシリコーン型とでの差は決定的な違いは無く、原型を作る人によって色々な方法が有ります。
金型では木の削り出しと言うのが典型らしいのですが、最近はポリエステルバテやエポキシバテで作ったりしているみたいです。もっとも、最終的には別素材に置き換えられたり、工作機械の制御用に数値化されてしまう物なので、素材はそれ程関係無いと思います。
シリコン型も基本的には同じなのですが、フィギュアの場合は製品の為に原型を製作するのではなく、趣味で作ったフィギュアを複製したものを商品としたと言う歴史的背景があり、フィギュアを製作され始めた頃は紙粘土の盛り付けや切削が主流だったのですが、模型にパテ類が使用され始めるとフィギュアの製作にもポリバテやエポキシバテが使われ始めました。又、工業試作用の粘土が一般手に入り易くなると、それで大まかな形を作って、それをシリコン等で型を取り、別素材に置き換えた物をポリバテやエポキシパテ、ファンドで仕上て行く方法も登場しています。どの方法が優れていると言うのは一概に言えず、最終的には原型師の好みの問題となってきます。ただ、ブロック材からの削り出しと言う手法は有機的な曲線が大部分を占めるフィギュアの製作には向いていないので、金型の原型では一般的な木材等からの削り出しを、ガレージキットフィギュアの原型製作に用いていると言う話は聞いた事が有りません。
ガレージキットの原型は私も作っていますので、興味のある方はコチラをご覧下さい。
ガレージキットフィギュアの購入
ガレージキットの入手方法ですが、キットに関してはガレージキットフィギュアの作り方の「工程 1購入」を参照して下さい。
ガレージキットを組立て完成させたガレージキット完成品は都市部ではボークス等が行っているレンタルショーケースで扱われている事が多いのですが、欲しいキットの完成品が確実に有る保証は全く有りませんし、そもそもそう言った店舗が無い地域が殆どでしょう。
ボークスの本社が有る京都ですらそう言った店は無いくらいです。
一番多くの種類と数を取り扱っているとなるとYahoo!オークションとなります。「ガレージキット 完成品」と検索するたけでも相当数のアイテムがヒットします。
ネットオークションですので全て一品物ですからその性質上、希望するキットの完成品が常に出品されている訳ではありませんし、オークションの性質上、写真や説明文で商品状態を判断するしか有りませんし、確実に購入出来るとは限りませんが、取り扱いでは世界最大規模です。
具体的に希望するキットの完成品を探す場合は、メーカーやディーラー名とキャラの名前といったアイテム名に「完成品」を加えて検索すると、出品があれば相当の高確率でヒットします。又、「ガレージキット」や、「GK」、「キット」、「ガレキ」を加えても良いでしょう。
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