先ず、自分でヘビのアーリマンを生み、次に、そのヘビと交わった「太母」に対して、父権制のペルシアが与えた蔑称。(太母とヘビとの関係では、 リリト、あるいは、アダムよりも前に存在していたイヴEveなども、聖書に出てくるヘビを生んで、そのヘビと交わったと考えられていた)。ゾロアスター教の聖典によると、ヤヒは、ヘビと交わった後に世界で初めて月経を経験し、この世に月経をもたらしたという。したがってヤヒは、各地で月経の源泉とみなされていた月を擬人化した存在だった。ヤヒはまた、原初の庭園で人類最初の男性を誘惑して、この世に性(セックス)をもたらした。ユダヤ人の家父長たちは、女たちを(イヴの末裔であるがゆえに)罪深いものと考えていたが、たぶんこの考えは、女性はすべてヤヒの子孫であるがゆえに「娼婦」であると主張したあのペルシアの禁欲主義者たち(ジャイナ教徒)に由来していたものと思われる。
奇妙なことだが、ユダヤの神の当初の名のいくつかは、ヤヒという名の男性版だったように思われる。すなわち、神の名の中には、Jahu、Jah、Yahu、Yahweh、Iau、Jahoなどがあった。一部の神話では、ユダヤの神は、昔はアーリマンと同じようにヘビの姿をしていたのであり、したがって、太母の伴侶のヘビという役割を果たしていたのかもしれないと示唆されている。
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)