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インドからアイルランドにいたる各地で知られている原初の大地女神の印欧語族名。ラテン語のテラ・マーテル、ヘブライ語のテラー、ゴール語のタラニス、エトルリア語のトゥランと語源が同じである[1]。毎年アテーナイで催されたあるきわめて古い祭りは、この女神の名にちなんでタラマタTaramata(「母なるタラ」)の祭りと称され、その放縦な乱行の風習のため「どんちゃん騒ぎ」Riotingの異名をとった[2]。
アイルランドにあるタラの聖なる森は、大地女神の身体の女陰にあたると考えられた聖地で、石柱ファル(「男根」)の形をとる神を取り囲んでいた。この柱はエジプトのオベリスクと同じく、神の生殖力を表しており、ずばり「石のペニス」と呼ばれていた[3]。この神の名はウェールズではタラン、アイルランドではトランと言い、いずれも雷を意味した。この神は、ユピテル・プルウィウスと同じく、母なるタラに雨を降らせて豊穣にした[4]。伝統的なファンファーレの擬音語であるTaran-Tara(=tarantara。ラッパ・角笛などの吹奏音)は元来、この2柱の神々の合体を表す呪術的な「叫び声」に由来するものである。
チベットのタントラ仏教徒は現在もなお母なるタラに次のような祈りを捧げている。
「万歳! おお、緑なすタラよ! あらゆる存在の救世主よ! 願わくば、汝のすべての追従者たち、すなわち、神々、巨人たち、解放者たちを引き連れて、汝の天の館より、この地ポタラに降りたまえ! 我らは汝のハスの足下にうやうやしくひれ伏さん! 我らをすべての苦悩から解き放ちたまえ! おお、聖なる母よ! 我らは熱き心で迎えん! おお、かたじけなくも崇高なタラよ! 汝はあまねく国々の、かつ、現在・過去・未来の、すべての王や君主の崇敬の的なり!」[5]。
タラはインドでは、ヴェーダ以前の古い女神たちの中で「最高の崇敬を受けるもの」と呼ばれているが、これはちょうど、大地母神が、アリアン族の住むすべての地域で、神々の中で「最初で最古の、最も偉大なもの」と呼ばれていたのと同じである[6]。
Barbara G. Walker :The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)