セラピオーン/断片集(4)
ギリシア占星術文書目録1703_001
12宮について
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[人物]
TeuvkroV(ラテン語表記 Teucer)。バビュローン(おそらくエジプトのバビュローン)人・占星術師テウクロスは、後1世紀頃の人と推測されている。彼はエジプトの伝統的天文学を詳説し、これをオリエンタル的・ギリシア的要素と結びつけ、その星座の記述を介して、アラビア天文学と中世天文学に多大な影響を与えた。作品の断片が伝存している。
Ed. F. Boll, Sphaera (1903), 16, 31; CCAG 7. 194 ff., 8. 196 ff., 9. 2. 180 ff.; RE 5 A 1132 f.
(OCD)
[底本]
TLG 1703
TEUCER Astrol.
A.D. 1
Astrol.
Babylonius (fort. Aegypti)
1703 001
De duodecim signis (Rhetorii Aegyptii excerpta) (e cod. Berol. 173)
Astrol.
F. Boll, Codices Germanici [Catalogus Codicum Astrologorum Graecorum 7. Brussels: Lamertin, 1908]: 194-213.
7.
(194)
T
[第88章 バビュローン人の哲学者・ハガルの末裔〔アラビア人〕テウクロスによる、傾斜した軌道<の>12宮について。高揚と失墜と家と三合の支配星と衝について、また5惑星の区界。3つの顔に対する3つのデカン。多衆にとって別の驚異。風についても。<また>度の分と秒も。]
R
天文学の全体と関係する弁論家の宝。
占星術のあらゆる分野を包摂する導入。
(194)
獣帯軌道は斜めに動くが、12の区分を有しており、これは宮とも呼ばれる。その第1区分は白羊宮でもある。白羊宮は男性、転換、春、平等、役立たず、四足、陸棲、王者、少子、変わりやすく、健気、燃えあがり、世界の正中にあったといわれ、満ち欠けし、最終的で、淫ら、火のようで、不具、肉づきよく、弱視、卑屈、半声、不従順、指導的で、南東方面に向く〔宮である〕。
〔各宮は〕30度を有し、1度は60分、1分は60秒、以下同様である。〔白羊宮は〕火星の家であり、およそ19度で (195) 太陽の高揚、およそ21度で土星の失効〔koivlwma、失墜(tapeinwma)と同義〕、昼間は太陽の三合、夜間は木星のそれ、土星は中立である。障害は金星の〔働き〕である。やはり3つのデカンを有す。第1デカンに連れ立って昇るのは「アテーナー」座と「海獣」座の尾と三角座のガムマ星と灯火を運ぶ「犬の頭」座と、12刻限(dwdekawvroV)の「猫」座の頭である。第2デカンに連れ立って昇るのは、「アンドロメダー」座と「海獣」座の中央と「ゴルゴー」座と「ペルセウス」座のハルペー剣と「三角」座の半分と12刻限(dwdekawvroV)の「猫」座の中央である。第3デカンに連れ立って昇るのは、王座に坐った「カッシオペイア」座と倒立した「ペルセウス」座と「海獣」座の頭と「三角」座の残りと、12刻限(dwdekawvroV)の「猫」座の尾である。また第1デカンは火星の顔をまとい、第2デカンは太陽のそれ、第3デカンは金星の〔それをまとう〕。こ〔の宮〕に続いて昇る明るい星は、最果ての「河」の3度50分、南側の、1等星であり、連携するのは木星と金星。また、5惑星の区界は、1度から6度までが木星の、7度から12度までが金星の、12度から20度までが水星の、21度から25度までが火星の、26度から30度までが土星の〔区界〕である。この宮の下に配置されるクリマは〔以下のとおりである〕。ペルシス〔ペルシア〕。プトレマイオスによればブレッタニア、ガラティア、パライスティネー〔パレスチナ〕、イドゥマイア、イウゥダイア〔ユダヤ〕。身体において君臨するのは、頭部、顔、頭に関係して起こるあらゆる病因と病状、つまり感覚器官、頭痛、弱視、狂気、難聴、霞目、癩、夜目、脱毛、禿げ、無感覚、傷、そして聴力や歯に関して起こりがちであるかぎりのものらに対してである。また1と50という数にも君臨する。
また、〔この宮は〕横臥宮であり有声宮である。上昇するのはこの宮の第1度から第3度までの区界(o{rion)で、3度から7度までが頭、8度から10度までが頸、(196) 11度から13度までが胸、14度から18度までが腰、19度から21度までが尻、21度から24度までが背中、25度から27度までが尾、28度から30度までが足である。
験(しるし)を成就するのは、出生時の星相をもつか月を持つかして、肌色薄く、長鼻、眼黒く、デコ禿げ、いかめしく、ほっそりし、良稟、脚細く、美声の持ち主、高邁な者たちとしてである。また第1デカンに〔生まれついた〕者たちとしては、活動的で、支配的な者たちである。祖国を後にするか追放され、数多の地や海を通過し、久しく異国で驚かされた事柄に逆らい、また数多の人々を虐待する。良い死に方をしない父を持つか、自分の父祖伝来のものを失うであろう。また兄弟たちを見捨てる。身体の隠し所を挫く。第2デカンに〔生まれついた〕者たちは、裕福になるだろうが、いつも苦痛と喪失と再所有のうちにあろう。第3デカンに〔生まれついた〕者たちは苦労多く、危難ないし牢屋に与る者たち。自分を憎んで若い頃に固有の地を捨てるが、後に立ちもどるが、再び離れるだろう。たいていは子無しである。
第2番めの宮は金牛宮で、〔この宮は〕女性、夜行、北方、横臥、半声、確定、春、完成途中、四角、不具、種なし、不変、陸棲、創世の時に立ち会い、放埒、末期、土性、金星の家、およそ3度で月の高揚、失墜は何もなく、後脚から上昇し、まっすぐ沈む、その大部分は見えない世界に横たわり、南を望む〔宮である〕。30度を有し、残りは、述べられたとおり、白羊宮上にある。昼間は金星の三合、夜間は月のそれ、火星は中立。火星の反対側である。3つのデカンを有す。第1デカンに連れ立って昇るのはクシポス剣を携えた「オーリーオーン」座、「プレイアデス」座の半分、残された (197)「女の屍体」座の半分、12刻限(dwdekawvroV)の「犬」座の頭である。第2デカンに連れ立って昇るのは、剥き出しの神像を捧持する「犬」座の頭、「杖」座、12刻限(dwdekawvroV)の「犬」座の中央である。第3デカンに連れ立って昇るのは、「馬」座、「馭者」座、「戦車」座、「馭者」の左手に携行される「山羊」座と、12刻限(dwdekawvroV)の「犬」座の背中である。そうして第1デカンは水星の顔をまとい、第2デカンは月の、第3デカンは土星の〔顔をまとう〕。これに連れ立って昇るのは、3度20分に「ゴルゴー」座の明るい星、北側、2等星、連携するのは木星と土星である。さらにこれに連れ立って昇るのは、6度から8度まで「プレイアデス」全星。これらの度数は眼に関して破滅を招く。さらに連れ立って昇るのは、16度20分に「ヒュアデス」座の明るい星、南側、1等星、連携するのは火星と金星である。さらに連れ立って昇るのは、23度に「オーリーオーン」座の足先の明るい星、南側、1等星、連携するのは木星と土星である。さらに連れ立って昇るのは、27度40分「オーリーオーン」座の先導する方の明るい星、南側、2等星、連携するのは火星と水星。さらに連れ立って昇るのは、「山羊」座の明るい星(これは<星そのもの>と名づけられもするが)、北側、1等星、連携するのは木星と土星である。5惑星の区界は、1度から8度までが金星の、9度から14度までが水星の、15度から22度までは木星の、23度から27度までが土星の、28度から30度までが火星の〔区界〕である。この下に配されるクリマは以下のとおり。バビュローン、パルティア、メーディア、ペルシス、キュクラデス群島、キュプロス、小アシア。身体において君臨するのは腱と頸、食道、猫背、瘰癧、呼吸と鼻。眼の傷と病状。数において君臨するのは2と60である。
上昇するのは、1度から3度までが頭、4度から7度までが角、8度から10度までが頸、11度から13度までが胸、14度から18度までが腰、19度から21度までが尻、22度から24度までが足、25度から27度までが尾、28度から30度までが爪である。
験(しるし)を成就するのは、肌がすべすべし、大口にして (198) 額広く、毛髪硬く、意気消沈し、家族に背かれた者たち。これらの人たちのうち、第1デカンに属するのは数多の危難に遭遇し、浪費家、子無し、兄弟少ない者たち。第2デカンに属するのは無教養、肉体労働者、姦夫、父祖伝来の財産を捨て、兄弟殺したち。第3デカンに属するのは、厳めしい連中で、礼儀正しく、裕福、名誉を受け、輝かしい生を送るが、後には憂慮と報いを受ける者たち。
第3番めの宮は双児宮で、〔この宮は〕男性、昼行、発声、横臥、二重身、種子少なく、世界の凶兆、雲的で、人間らしく、西を望み、水星の家、約15度で昇交点の高揚、約15度で降交点の失墜、木星の反対側、昼間は土星の三合、夜間は水星のそれ、木星は中立。やはり3つのデカンを有す。第1デカンに連れ立って昇るのは「馭者」座、「戦車」、「戦車」の下の「車輪」と、「犬」座の前面の半分と、12刻限(dwdekawvroV)の「蛇」座の頭である。第2デカンに連れ立って昇るのは、「竪琴」座、「ヘーラクレース」座と、「ヘーラクレース」に追いかけられる樹上の「蛇」と、12刻限(dwdekawvroV)の「蛇」座の中央である。第3デカンに連れ立って昇るのは、「アポッローン」座と「竪琴」座と「犬」座と「海豚」座と「小熊」座の前面部と、追われる「蛇」の背面部である。そうして、第1デカンは木星の顔をまとう。第2デカンは火星の。第3デカンは太陽の〔顔をまとう〕。こ〔の宮〕に連れ立って昇るのは、第1度の「オーリーオーン」座の腰帯の3つの星の中央の明るい星、南側、2等星、連携するのは木星と土星である。さらに連れ立って昇るのは、5度4分に「オーリーオーン」座の右肩の明るい星、南側、1等星、連携するのは火星と水星である。さらに連れ立って昇るのは7度30分に「馭者」座の右肩の明るい星、2等星、連携するのは木星と土星である。さらに連れ立って昇るのは21度40分に「犬座」の明るい星、1等星、連携するのは木星と火星である。(199) また連れ立って昇るのは、27度に「双子」座の先導する方の頭の〔星〕で2等星、連携するのは木星と水星である。5惑星の区界はといえば、水星6度、木星6度、金星5度、火星7度、土星6度である。配置されているクリマは以下のとおりである。カッパドキア、プトレマイオスによればヒュルカニア、アルメニア、マッティアネー、キュレーナイケー、マルマリケー、アイギュプトスの下方地域。また、われわれの身体において君臨するのは両肩と両手、数の3と70である。
上昇するのは、1度から2度までが「アポッローン」の長髪、3度から5度までが頭、6度から9度までが頸、10度から12度までが両肩、13度から17度までが腹、18度から20度までが大腿、21度から23度までが轡の中央、24度から25度までが足、26度から30度までは、巨蟹宮の傍だから、北端である。
験(しるし)を成就するのは、色黒く、生まれ良く、眉毛が繋がり、デコ禿げ、歩行せわしなく、仕事に精通し、格好良しの者たちにおいてである。これらのうち、第1デカンに〔生まれつく〕のは、超越的な事柄を扱って歓びとするだろう。また父祖伝来の財を受け継ぐ。また修行者にも惨めな者にもなり、虚しくつまらぬことに労苦し、経験者、後悔にくれる者たち。第2デカンに〔生まれつく〕のは、数多の危険に遭遇し、姦淫者、親に反対するもの、骨折りを憎み、抜け目なく、向こう見ず、裕福な者たち。第3デカンに〔生まれつく〕のは、勝利者、栄光に満ち、祖国を飾る者たちである。
第4番めの宮は巨蟹宮である。〔この宮は〕転換、夏、直立、無声、女性、夜行、変わりやすく、汚く、癩的で、下降的、水っぽく、世界のホーロスコポス、善きものらを明らかにするもの、通俗的、子沢山、両棲的、月の家、およそ18度で木星の高揚、およそ28度で火星の失墜、木星の反対側、昼間は金星の三合、夜間は火星のそれ、月は中立である。やはり3つのデカンを有す。第1デカンと連れ立って昇るのは、「小熊」座の (200) 背中と棍棒に触れるサテュロスとリュラを弾く「ムゥサ」とカリスたちの1人と12刻限(dwdekawvroV)の「カンタロス」の頭。第2デカンと連れ立って昇るのは、「飼い葉桶」座の半分と「驢馬」座と中央の「カリストー」、12刻限(dwdekawvroV)の「カンタロス」の半分。第3デカンと連れ立って昇るのは、「カリスたち」の三番目と、もう一頭の「驢馬」と「飼い葉桶」座のもう半分と12刻限(dwdekawvroV)のカンタロスの末端。また、第1デカンは金星の顔をまとい、第2〔デカン〕は水星の、第3〔デカン〕は月の〔顔をまとう〕。この〔宮〕に連れ立って昇るのは、20度に先導する双子宮の頭の明るい星、北方にあり、二等星、連携するのは火星のみ。なおまた連れ立って上昇するのは、9度から15度まで「」。これらの度数は眼にとって厄難である。5惑星の区界が有するのは、火星の7度、金星の6度、水星の6度、木星の7度、土星の4度である。配されているクリマは以下のとおり。アルメニア、プトレマイオスによればヌゥミディア、カルケードーン、アプリケー、ビテュニア、プリュギア、コルキケー。身体において君臨するのは、胸と胃、乳房、心臓、脾臓、秘所、「」のせいの霞目、白癬、吹き出物、癩、狂気と水腫、ふくらみ、ソラ豆と数の4と80。
上昇するのは、1度から第3度までが端、4度から7度までが頭、8度から10度までが腹、11度から13度までが足、14度から19度までが末端、20度から24度までが背中の末端、25度から27度までが南向きの左の鋏、27度から30度までが西向きの右手。
験(しるし)を成就するのは、色黒、頸小さく、胴美しく、歩く際に斜行するか斜めに傾いている者たちで、肉づきよく、他人のものを浪費する者たち。これらの者のうち、第1デカンに生まれつく者らは、裕福になり、多くの人たちに善行し、大いなる人たちとの友愛を仕切るであろう。第2デカンでは、狭量、病弱、成功者、客遇者、外見は障害者、器用な者たち。第3デカンでは、たいていは誰かに従順にして危険な者たちとなり、(201) 兄弟殺しにして家族の離反者、海を愛し、利得のための蛮勇者だが、子宝に恵まれ、身体に損傷を持つ者たちにおいてである。
第5番めの宮は獅子宮である。〔この宮は〕男性、昼行、有声、直立、確定、王者、支配者、熱い、夏の、火のごとき、怒りっぽい、変わらざる、気概ある、不従順、上向き、市民的、公的、不毛、四角、不具、放埒、世界の回帰、独り子、指導的、日の出の家に向いた、高揚と失墜に中立、木星の反対側、昼間は太陽の三合、夜間は木星のそれ、土星は中立である。3つのデカンを有す。そうして第1デカンに連れ立って昇るのは、矢を射る「犬面」座と「船」座の半分と「ヒュドラ」の頭と12刻限(dwdekawvroV)の「驢馬」の頭である。第2デカンに連れ立って昇るのは、「船」座のもう半分と、両手を上に伸ばしたある神と、「ヒュドラ」の南部、「酒和え甕」、「シンバル」座、「プリュギアのアウロス笛」座、そして12刻限(dwdekawvroV)の驢馬の中央である。第3デカンに連れ立って昇るのは、車をあやつる「馭者」座、これに続く小さな「若者」、「ヒュドラ」の中央、12刻限(dwdekawvroV)の驢馬の背中である。また第1デカンは土星の顔をまとい、第2のそれは木星の、第3のそれは火星の〔顔をまとう〕。これに連れ立って昇るのは3度40分の「ヒュドラ」の喉に当たる明るい星、南側、2等星、連携するのは土星と金星である。さらに連れ立って昇るのは、「獅子」座の6度12分、心臓(これは王者と呼ばれる)上の明るい星、1等星、連携するのは火星と木星。さらに連れ立って昇るのは28度12分、その尾に当たる明るい星、1等星、連携するのは土星と金星、これが5惑星の区界を有する。つまり、木星6度、金星5度、土星7度、水星6度、火星6度である。この下に配されるクリマは以下のとおり。アシア、イタリア、ガラティア、アプゥリア、ポイニケー、カルダイア、オルケーニア。身体において君臨するのは神経、骨、腰、男根。数の5と100。
(202) 上昇するのは、1度から3度までが頭、4度から7度までが頸、8度から11度までが鼻、12度から14度までが腰、15度から19度までが尻、20度から22度までが尾、23度から25度までが膝、26度から28度までが、尾のまがった後肢の外の膝のあたり、29度から30度までが後ろ足の底と爪である。
験(しるし)を成就するのは、色白、ややくすんでいるが、目はきらめき、大口、歯が少なくまばら、項美しく、鼻筋通り、胸美しく、腹の平坦な、下方が引き締まって四肢細く、声音重く、頑丈、保護者たちにおいてである。これらのうち、第1デカンに〔生まれついた〕者たちは兄弟を愛し、山住まい、淫蕩者たちである。第2デカンに〔生まれつくの〕は王者的、大胆、高貴、支配者、短命、父祖伝来のものを滅ぼす者たち。第3デカンに〔生まれつくの〕は汚い、恐ろしい、非難され、裕福、指導的、出奔者たちで、多くは親切だが、多くは不正でもあり、兄弟を見捨て、自らはいい死に方をしない者たちである。
第6番めの宮は処女宮である。〔この宮は〕結合、直立、女性、夜行、熱い、有翼、3面の、有理、下向き、有声、土性、変わり易い、神秘的、後置の〔金牛宮から始まる偶数の=女性的な〕、二重身、人間に類する、安定させる、西向き、世界の次席、水星の家、およそ15度で水星の高揚、およそ27度で金星の失墜、木星の反対、昼間は金星の三合、夜間は月のそれ、水星は中立である。3つのデカンを有す。第1デカンに連れ立って昇るのは、玉座に坐し幼児を養育するある女神(これを人々はホーロスを薄物の中で養育するイシスだと言う)、また「麦の穂」、「ヒュドラ」の中央、「烏」の頭、そして12刻限(dwdekawvroV)の獅子の頭も連れ立って昇る。第2デカンに連れ立って昇るのはリュラ弾く「ムゥサ」、「烏」の中央、「ヒュドラ」の尻尾、金牛宮の頭の「牛飼い」の半分、「鋤」の半分、12刻限(dwdekawvroV)の獅子座の中央部。(203) 第3デカンに連れ立って昇るのは、「牛飼い」のもう半分、「鋤」のもう半分、「カラス」の尾、「麦の穂」、12刻限(dwdekawvroV)の「獅子」の尾である。また、第1デカンがまとうのは太陽の顔、第2デカンは金星のそれ、第3デカンは水星のそれである。しかし処女宮はパラナッテロンタとして明るい星(わたしが言うのは1等星と2等星のことである)をもたない。連れ立って昇るのは、南側の左の翼の上、2度26度の3つの大〔星〕のみで、連携するのは水星と火星、北側である。さらにまた15度36分、右翼にあるいわゆる「葡萄の摘み頃を先触れする者(Vindemiatrix)」〔Arat.138、e Virginis〕北側、3等星、連携するのは土星と水星である。5惑星の区界は以下。1度から7度までが水星、金星は10度、木星は4度、火星は7度、土星2度である。下に配されるクリマは以下のとおり。ヘッラス〔ギリシア〕、イオーニア、アカイア、メソポタミア、バビュローニア、中央アイティオピア、アッシュリア、クレーテー。身体において君臨するのは胃、すべての内臓と隠された器官。数では7と90。
上昇するのは、1度から3度までが頭、4度から6度までが鼻、7度から10度までが頸、11度から13度までが胸、14度から18度までが指、19度から21度までが麦の穂、22度から23度までが脛、24度から27度までが北側の部分、残りが南側の部分である。
験(しるし)を成就するのは、色艶良く、背丈高く、格好良く、扱いやすく、愉快、優雅、子ども時代に秀抜でたいてい子どもを愛する者たちにおいてである。第1デカンに〔生まれつくの〕は長生き、淫蕩、大事なところで不具だが、利得愛から多くのことで害される者たちにおいてである。第2デカンでは知者、下向きで、若さゆえ捨てるが、老年にいたって幸運に恵まれ、成功し、病弱に良好な者たちにおいてである。第3デカンにでは、人生において低く、次席を占めて、多くのことにおいて価値に留まる者たちにおいてである。
第7番めの宮は天秤宮である。〔この宮は〕男性、昼夜平分、直立、昼行、有声、転換、人間的、上向き、義しい、大気的、(204) 変わり易い、秋の、世界の地下の、民衆的、都市民の、周期さまざまな宮である。金星の家、およそ21度で土星の高揚、およそ19度で太陽の失墜、火星の反対側、昼間は土星の三合、夜は火星のそれ、木星は中立。やはり3つのデカンを有す。そうして第1デカンに連れ立って昇るのは、「ハーデース」、リュラ弾く「ムゥサ」、「船乗り」座、「アケロース港」の中央、「船」座の部分、12刻限(dwdekawvroV)の山羊の頭である。第2デカンに連れ立って昇るのは、「馭者」座、「若者」座、ケンタウロス(!ippokravtwr)の前部、「船」座と「アケルゥス河」との中央、「井戸」座、「市場」座、12刻限(dwdekawvroV)の山羊座の中央である。第3デカンに連れ立って昇るのは、ケンタウロスの背後、「船」座とアケルゥス港との末端、頭に左手を挙げたアリアドネーと、アリドネーの「花冠」、天上の2つの頭、<そして>いわゆる「バリステース」座とアドーニス(ウゥラノスと言われる)、12刻限(dwdekawvroV)の山羊座の末端。しかし天秤座は天蝎宮の胸に結合していて、その棹ゆえに二重身の力能をも有する。そうして第1デカンは月の顔をまとい、第2デカンは土星の、第3デカンは木星の〔顔をまとう〕。これに連れ立って昇るのは、20分に「麦の穂」の明るい星、北側、1等星で、連携は金星と水星である。さらに連れ立って昇るのはアルクトゥロスともいう牛飼座の明るい星、5度40分、北側、1等星、連携するのは火星と木星である。さらに連れ立って昇るのは、15度20分、北の花冠上の明るい星、北側、2等星、連携するのは金星と水星である。さらに連れ立って昇るのは、25度40分、天蝎宮の棹上の明るい星、北側、2等星で、連携するのは木星と水星である。5惑星の区界は以下のとおりである。土星6度、水星8度、木星7度、金星7度、火星2度。下に配されるクリマは以下のとおりである。リビュエー、キュレーネー、バクトリアネー、カスピア、セーリケー、テーバイス、サキス、トローグロデュティケー。身体において君臨するのは、尻、臀部、(205) 亀頭、コロン?、背面部、腰。しかし磨羯宮においては放埒でも子沢山でもある。数〔において君臨するの〕は8と300。
上昇するのは、1度から4度までがこれの初端、5度から6度までがここ[]における
験(しるし)を成就するのは、温和、眼黒く、美髪、裕福、義しい者たちにおいてである。この者たちのうち第1デカンに〔生まれついた〕者たちは有徳、勇敢、友を愛し、彷徨する者たちである。第2デカンに〔生まれついた者たち〕は良稟、知者、指導者、誉れ高く、女好き、出郷者、義人、博識、兄弟殺したちである。第3〔デカンに生まれつく〕のは、良稟だが、浪費者にして心変わりしやすく、邪悪ならざる者たちである。
第8番めの宮は天蠍宮で、〔この宮は〕女性、夜行、直立、確定、秋の、無声、水性、実り豊か、滅びをもたらし、下向き、猫背、鱗状、癩、変わらざる、怒りっぽい、鋭い、欺瞞、世界の善運、家政の家、何ものの失墜でもなく、およそ3度で月の失墜、金星の反対側、昼間は金星の三合、夜間は火星のそれ、月は中立。3つのデカンを有す。そうして第1デカンに連れ立って昇るのは、ヒュゲイア〔ヒュギエイア〕、ケンタウロスの後ろ、12刻限(dwdekawvroV)の金牛の前部。第2デカンに連れ立って昇るのは、アスクレーピオス、12刻限(dwdekawvroV)のケンタウロスの後ろ<と金牛の中央>。第3デカンに連れ立って昇るのは、兎を携えたケンタウロスの前部、「犬」座の前部、「蛇使い」座、12刻限(dwdekawvroV)の牡牛の後ろ。また、第1デカンは火星の顔をまとい、第2デカンは太陽の、第3デカンは金星の〔顔をまとう〕。これに連れ立って昇るのは、11度のケンタウロスの右足の明るい星 (206) 北側、1等星、連携するのは金星と木星。5惑星が有する区界は。火星7度、金星4度、水性8度、木星5度、土星7度。これの下に配されるクリマは以下のとおり。イタリア、メタゴーニティス、マウレータニア、ガイトゥリア、シュリア、コムマゲーネー、カッパドキア。身体において君臨するのは、恥部、膀胱、睾丸、臀部。基本地点によって作るのは、霞目、飛蚊症、結石、滴尿症、瘰癧と気管支炎、極悪非道?、乱交、痔瘻、癌、出血、脳出血である。数において君臨するのは9と400。
上昇するのは、1度から3度までが蹄、4度から7度までが頭、8度から10度までが頸、11度から13度までが胸、14度から17度までが胃、17度から21度までが臀部、22度から24度までが矢、25度から27度までが中心、28度から30度までが矢の末端である。
験(しるし)を成就するのは、色黒、眼黒く、謹厳、縮れ毛、声細く、度胸あり、性急にして横柄な者たちにおいてである。第1デカンでは、不正に放浪し、数々の危険を冒し、男らしく、人生において節度ある者たち。第2デカンでは、苦労し、慎重、頑固、出郷者、重大事に任じられるが、子無しで身体的に欠陥ある者たち。第3デカンでは曲がり、狡く、苦難に遭い、たいてい気が狂っていて、多くの人たちに不正し、家族を無視し、悪しき人生を生き、短命な者たちにおいてである。
第9番めの宮は人馬宮で、〔この宮は〕男性、二重身、王者的、人間の形をしながら獣でもあり、頑丈、2つの顔をもち、陸棲、四角、視力弱く、半声宮である。2つの顔をもつと呼ばれるのは、頭の後ろから顔の別の部分が反対向きについていているので、(207) このことから王者とも呼ばれているのである。直立、秋、火性、子ども少なく、善良、世界の斜行にして奴隷の<トポス>、木星の家、およそ15度で「降交点」の高揚、およそ15度で「昇交点」の失墜、水性の反対側、昼間は太陽の三合、夜間は木星のそれ、土星は中立。3つのデカンを有す。そうして第1デカンに連れ立って昇るのは、真っ逆様のある神(タラースと呼ばれ、その頭にカラスが接している)、ひっくり返った「犬」座、12刻限(dwdekawvroV)の「鷹」座の頭である。第2デカンに連れ立って昇るのは、右手を「狼」座(Qhrivon)に委ねたケーペウス座、「狼」座の頭、「アルゴー号」座の半分、<「海豚」座の前部、12刻限(dwdekawvroV)の「鷹」座の中央。第3デカンに連れ立って昇るのは>「海豚」座の残り、ペラゴス、「大熊」座の半分、12刻限(dwdekawvroV)の「鷹」座の尾羽。また、第1デカンは水星の顔をまとい、第2デカンは月の、第3デカンは土星の〔顔をまとう〕。これに連れ立って昇るのは20度に人馬宮の膝のところに明るい星、北面、2等星、連携するのは木星と土星。さらに連れ立って昇るのは21度にリュラ弾きと呼ばれる明るい星、北側、一等星、連携するのは金星と水星。5惑星の区界は以下のとおり。木星12度、金星5度、水星4度、土星5度、火星4度。下に配されるクリマは以下のとおり。キリキア、テュロン、ケルティケー、スパニア、幸福のアラビア。身体において君臨するのは大腿、亀頭。しばしば作るのは過剰な母斑を有する者たち、禿げ頭の持ち主とか弱視の者たち、癲癇とか眼の痛みとか矢で失明した者たち、あるいはタラナ?のせいで高みから転落とか四つ足に起因する危険とか四肢の欠損とかケーペウスのせいでの獣の不正を受けた者たちにおいてである。数において君臨するのは10と500。
上昇するのは、1度から3度までが頭、4度から7度までが弓、8度から10度までが弦、11度から14度までが両手、15度から19度までが頸と (208) 肩、20度から22度までが腰、23度から25度までが針の上の中央、26度から28度までが足、29度から30度までが爪。
験(しるし)を成就するのは、色においては穏やかでおとなしいが、眼うるわしく格好良し、性急で向こう見ずで浪費家だが、たいていはケチで落ち着きのない者たちにおいてである。そうして第1デカンでは家族を破滅させ、独りで食事する欠陥者、多淫で、異国で市民生活するか命終する者たちにおいて。第2デカンでは空威張り屋、数多の事柄や獲得や喪失の中に含まれ、父祖伝来のものを失い、いつも客遇し不安定で、子どもや女たちのことで悩む者たちにおいて。第3デカンに生まれつくところの、有名人で、異国で名誉を得、性愛に見境なく、心変わりしやすい者たちにおいてである。
第10番めの宮は磨羯宮で、〔この宮は〕女性、夜行、転換、横臥、冬の、両生、陸棲・海棲、鱗のある、癩病、破滅の因をなす、子無し、下向き、冷却した、半声、??謎めいた、両性的、湿潤、土的、完成半ば、????土星の家、ほぼ28度で火星の高揚、ほぼ15度で木星の失墜、月の反対宮、昼間は金星の三合、夜間は月のそれ、火星は中立。3つのデカンを有す。第1デカンに連れ立って昇るのは、「アルゴス」座と大熊座のもう半分、ネーレーイス、リュラ座、大魚の頭、12刻限(dwdekawvroV)のキュノケパロスの前面。第2デカンに連れ立って昇るのは、玉座に坐る「エイレイテュイア」、「車」座と「葡萄」座の半分、「大魚」の中央、12刻限(dwdekawvroV)の星回りの悪いもの(DuswnuvmoV)の半分。第3デカンに連れ立って昇るのは、「車」座のもう半分、「大魚」座の尾、「吊り香炉」座、おのれの頭を運ぶ無頭の「ダイモーン」座、12刻限(dwdekawvroV)の (209)「悪名をもつもの」座の背中である。また第1デカンは木星の顔をまとい、第2デカンは火星の、第3デカンは太陽の〔顔をまとう〕。これに連れ立って昇るのは、7度40分、「鷲」座の明るい星、北側、1等星で、連携は火星と木星。5惑星の区界は以下。水星7度、木星7度、金星8度、土星4度、火星4度。下に配されるクリマは以下のとおり。シュリア、インディケー、アリアネー、ゲドローシア、トラケー、マケドニア。身体において君臨するのは膝、腱。作るのは霞目患者、棘が原因の阿呆、狂気、湿とか流出に起因する乱れ。また放埒で醜行を作る〔宮〕でもある。数において君臨するのは20と600。
上昇するのは、1度から3度までが角、34度から7度までが鼻、8度から10度までが頸、11度から13度までが腹、14度から19度までが脛、20度から21度までが腰、22度から24度までが尾、25度から27度までが北面、残りが爪である。
験(しるし)を成就するのは、小顔、足首細く、女好き、虚言癖、虚栄、奴隷、敬神、友を愛し、無欠、益され、そのおかげで不足を知らず、大口、無謀な者たちにおいてである。そうして第1デカンでは長生き、魅力あり、湿潤で客遇で有名だが、多病にして久しく???者たちにおいてである。第2デカンでは放浪しまわり、出郷者、善人、奉仕者、負傷とか水の危難とかの経験をする者たち、若年にまさる老年を過ごす者たちにおいてである。第3デカンでは協働者、放浪者、有名人、多衆に歓愛され、客遇で評判の者たち、親切な者たち、平穏な者たちにおいてである。
第11番めの宮は宝瓶宮で、〔この宮は〕男性、昼行、横臥、有声、露を生む、安定、冬の、大気と繋がる、寒冷、上方生まれ、人間的、不変、子無し、臆病、苔状?、???土星の家、何ものにとっても (210) 高揚も失墜もなく、太陽の反対側、昼間は土星の三合、夜間は水星のそれ、木星は中立。やはり3つのデカンを有す。第1デカンに連れ立って昇るのは水瓶を掴んだエーリダノス河、ケンタウロスの頭、切断されたその左手、12刻限(dwdekawvroV)のトキの頭。第2デカンに連れ立って昇るのは、ケンタウロスの中央、互いに結び目を有する2匹の蛇、12刻限(dwdekawvroV)のトキの中央である。第3デカンに連れ立って昇るのは、「大鳥」(これは白鳥と呼ばれ<……>ケンタウロスと呼ばれ、その右手を咬む「狼」、ペーガソスの背、12刻限(dwdekawvroV)の<トキの>末端。また第1デカンがまとうのは金星の顔、第2デカンは水星のそれ、第3デカンは月のそれである。これに連れ立って昇る明るい星は、「南の魚」と呼ばれ、12度、南、一等星で、連携するのは金星と水星である。さらに連れ立って昇る明るい星は、鳥と呼ばれ、一等星、12度50分、北側、2等星、連携するのは金星と水星。また5惑星の区界を有す。〔それは〕水星7度、金星6度、木星7度、火星5度、土星5度である。またその下に配されるクリマは以下のとおり。アイギュプトス〔エジプト〕、サウロマティカ、オクセイアネー、ソグディアネー、アラビア。身体において君臨するのは脛、四肢、神経。作るのは、水腫患者、関節炎患者、狂気じみた者、切断され負傷し象足患者、黄疸患者、憂鬱症患者、「水甕」による無力症患者たちである。数は30と700を有する。
上昇するのは、1度から第3度までが頭、第4度から7度までが頸、8度から10度までが腹、11度から13度までが両手、14度から19度までが両肩、20度には心臓、21度から22度まで、23度から25度までが太腿、26度から27度までが両足、28度から30度までが腰である。
験(しるし)を成就するのは、顔色良く、感染しやすく、虚栄、清潔好き、虚仮威しの者たち。そして第1デカンに〔生まれついた者たちは〕親切だが、しばしば恩知らず、客遇し、良縁に恵まれるが、薬に悩まされる者たちである。第2デカンでは陽気、踊り子、正直、水に悩まされる者たちで、快活、秀抜な者たちや武装者の間で (211) 功名を挙げる栄光者たちにおいてである。<第3デカンでは>無価値、多くのことで堂船者となって危険を冒すか、水によって失敗する者たちにおいてである。
第12番めの宮は双魚宮で、〔この宮は〕女性宮、二重身宮、夜行宮、横臥宮、水性宮、冬宮、下方宮、無声宮、吉宮、変化宮、多産宮、性愛宮、湿潤宮、不具宮、鱗宮、多彩宮、癩病宮、癩病宮、不安定宮、放埒宮、通俗宮、有翼宮、世界の善き下降宮、神のトポス、ゼウスの家、およそ27度で金星の高揚、昼間は金星の三合、夜間は火星のそれ、月は中立である。3つのデカンを有す。第1デカンに連れ立って昇るのは、有翼の馬ペーガソスの前面と、鼻のところに2つの蛇を有する鹿座の頭と、鼻座の初めと、12刻限(dwdekawvroV)の「鰐」座の尾である。第2デカンに連れ立って昇るのは、鹿座の背中と、「膝つく人」〔ヘーラクレース〕座のもう半分と、鼻座の末尾と、12刻限(dwdekawvroV)の「鰐」座の頭である。また、第1デカンが運ぶのは、土星の顔、第2〔デカンは〕木星の、第3デカンは火星のそれである。これに連れ立って昇るのは、馬の5度40分、北面の明るい星で、2等星、連携するのは火星と水星。さらに連れ立って昇るのは、馬座とアンドロメダー座との明るい共通星、21度、北面、二等星、連携するのは火星と水星。5つの惑星の区界が有するのは、金星12度、木星4度、水星3度、火星9度、土星2度である。下に配されたクリマは以下のとおり。紅海とインド地方、ガラマンティア、リュディア、キリキア、パムピュリア。身体において君臨するのは、足底、つま先、足の神経、踝。発病させるのは、関節炎、痛風、瘤、(212) 数において君臨するのは40と800である。
上昇するのは、1度から3度までが頭、4度から7度までが縄の中央、8度から10度までが南向きの部分、11度から13度までが腹、14度から19度までが肩、20度から27度までが北面、28度から30度までが爪である。
験(しるし)を成就するのは、肌色白く、美髪、多才、浪費家たちである。また第1デカンでは無鉄砲、利得のために不正する者、人生は中程度で、言い分けとか教養で驚嘆され、友だちが多く、器用で、尊敬され、女たちに持てる者たちにおいて。第2デカンでは、食いしん坊で、お節介、放浪者たちにおいて。第3デカンでは、享楽者、愛言家、好評を博し、経験豊か、女たちから贔屓されるが、浪費家・衝動家・衆人環視のなか、易々と見捨てられ殺される者たちにおいてである。
これらの宮のうち、あるものらは直立宮であり、あるものらは横臥宮である。直立宮とは巨蟹宮から人馬宮まで、横臥宮とは磨羯宮から双児宮までである。さらに、これらのうちあるものらは昼行宮であり、あるものらは夜行宮である。昼行宮とは♈♊♌♎♐♒であり、夜行宮とは♉♋♍♏♑♓である。三角宮は上昇宮とも呼ばれ、♈♌♐である。火宮も王者宮も同じである。土性宮とは♉♍<♑>で、北面宮も同じである。双魚宮と天秤宮と宝瓶宮の三合宮は、気息宮とも呼ばれ、日没の方角に位置する。同じく♋と♏と♓とは、水性宮とも多種宮とも呼ばれ、これらは南に位置する。四角宮とは♈♋♎♑から成り、これらは転換宮とも呼ばれる。さらに♉♌♏♒は確定宮と言われる。二重身宮とは♊♍♐♓という四合である。また転換宮の反対宮とは♈対♎と、♋対♑、安定宮の反対宮とは♉対♏と、♌対♒である。六合宮とは男性宮対女性宮 (212) と、女性宮対男性宮である。あるいは、男性宮とは、先の箇所でわれわれが昼行宮と書いた例えば♈♊♌♎♐♒である。六合宮も昼行宮も男性宮も同じものが呼ばれる。対して、♉と♋と♍と♏と♑と♓とは、今度はお互いに同じく六合宮とも女性宮とも夜行宮とも呼ばれる。これらの徴を基に、何びともすべて、いかなる人物であり、いかなる星の〔生まれか〕を悟るのである。
2018.01.29. 訳了
[テウクロス]
テウクロスは西暦1世紀頃のバビロン(たぶんエジプトのバビロン、つまりローマ人軍営地であるといわれる)の人物で、天文・占星に関する著述があったが、ボルは2種類の断片をこの本で公刊している(テキストを収録した第1部の第1章と第3章)。
その最初の断片(写本は15世紀のもの)の内容からすると、これは一方でレートリオスという人物を介して12世紀のビザンチンの詩人ヨハンネス・カマテロスに影響を与えたらしく、ボルはこの本の第1部第2章でこのカマテロスの天文詩(十二宮に分けたもので総計122行)を公刊している。
このテウクロスの名がアラブの占星術者アブー・マアシャルの文中ではティンクルースと表記されていることは前述したが、ボルによれば、テウクロスのギリシア語テキストがベルシア語訳を介してアブ−・マアシャルに知られたとなっている。ドロテオスの場合と同じように、ここでもべフレヴィー語(中世べルシア語)訳が存在した可能性が考えられる。
テウクロスの第二の断片は三種の写本(一種はごく一部のみ)によって再編成されたもので、パリ写本は14世紀のものだが、これには占星術者ユリアノス(ラオディケア)によるとの書き入れがある。これははじめの四宮のみで、あとはラウレンティアヌス写本がほぼ全文を伝えている。
(矢島文夫『占星術の誕生』)
[区界]
「区界」(o{rion、複数 o{ria)については、TLG 1337 002 ヘーパイスティオーンの書『アポテレスマティカ』に引用された諸断片
ヘーパイスティオーンの書『アポテレスマティカ』に引用された諸断片
を見よ。
[クリマ]
「クリマ」(klivma、複数 klivmata)については同じく TLG 1337 002 ヘーパイスティオーンの書『アポテレスマティカ』に引用された諸断片 を見よ。
[刻限]
カルデア天文学では、2時間単位を1刻限として、1日12刻限(2x12=24時間)とした。それがここで言う”dwdekavwroV”である。ここで述べられている、その目安となる星座を整理すると、以下のようになる。
zw/vdion |
dekanovV |
dwdekavwroV |
♈ |
Ⅰ |
猫座の頭 |
Ⅱ |
猫座の中央 |
Ⅲ |
猫座の尾 |
♉ |
Ⅱ |
犬座の頭 |
Ⅱ |
犬座の中央 |
Ⅲ |
犬座の背後 |
♊ |
Ⅰ |
蛇座の頭 |
Ⅱ |
蛇座の中央 |
Ⅲ |
蛇座の背後 |
♋ |
Ⅰ |
カンタロスの頭 |
Ⅱ |
カンタロスの中央 |
Ⅲ |
カンタロスの末端 |
♌ |
Ⅰ |
驢馬の頭 |
Ⅱ |
驢馬の中央 |
Ⅲ |
驢馬の背後 |
♍ |
Ⅰ |
獅子の頭 |
Ⅱ |
獅子の中央部 |
Ⅲ |
獅子の尾 |
♎ |
Ⅰ |
山羊の頭 |
Ⅱ |
山羊の中央部 |
Ⅲ |
山羊の末端 |
♏ |
Ⅰ |
牡牛の前面 |
Ⅱ |
牡牛の中央部 |
Ⅲ |
牡牛の背後 |
♐ |
Ⅰ |
鷹の頭 |
Ⅱ |
鷹の中央部 |
Ⅲ |
鷹の尾羽 |
♑ |
Ⅰ |
キュノケパロスの前面 |
Ⅱ |
星回りの悪いものの中央部 |
Ⅲ |
星回りの悪いものの背後 |
♒ |
Ⅰ |
朱鷺の頭 |
Ⅱ |
朱鷺の中央部 |
Ⅲ |
朱鷺の末端 |
♓ |
Ⅰ |
鰐の尾 |
Ⅱ |
鰐の半分 |
Ⅲ |
鰐の頭 |
こうして見ると、「異国の天体」の聞き慣れぬ星座が多いことがわかる。主だった星座を解説すると、
アテーナー座(=Aqhna:):
ケートス座(Kh:toV)〔鯨座〕:ケートスを「鯨」の属名にしたのはアリストテレースである(『動物誌』490b10)。アラートスは歌う「アンドロメダーは迫りくる巨大な海の怪物に怯えている。/……/その海の怪物は牡羊と二匹の魚の下方に、/そして星のきらめく皮のすぐ上にいる」(354-8)。
三角座(DeltwtovV):ペルセウス座、アンドロメダー座、魚座、牡羊座に囲まれた3星から成る星座。
キュノケパロス:ギリシア語(kunokevfalos)「犬頭を持つもの」の意だが、複数形(Kunokevfaloiで、リビア西部に住む民族名を表した(ヘーロドトス、IV-191)。また、エジプトのマントヒヒ(バブーン 学名Simia hanadryas)の別名でもあった。バブーンはトトの神獣である。星座としては大犬座と一致すると考えられる。大犬座の前の子犬座が、ギリシア語では「(犬の)前の犬(Prokuvwn)」。キュノケパロスが掲げる灯火(luvcnon)と考えられたらしい。
猫座(Ai[louroV):?
死んだ女座(Nekra Gunhv):???
馬座(+Ippikovn)馭者座(+HnivocoV)戦車座($Arma)車輪座(TrocovV)山羊座(Ai[x):
アポッローン座():?
牛飼い座():
カンタロス座(KavnqaroV):
驢馬座(!OnoV)と飼い葉桶座(Favtnh):蟹(座)の甲羅に当たるγ〔北の小さな驢馬〕とδ〔南の小さな驢馬〕とが驢馬座、蟹座中央部にあるM44(プレセペ星団、ラテン語名 Praesaepe は「囲い場」の意)が飼い葉桶座に該当する。
麦の穂座(StavcueV, pl.):乙女座のα 星、Spica のこと。 「葡萄の摘み頃を先触れする者」(ProtrughthvV または Protrughthvr):乙女座 ε 星(Vindemiatrix)。この星と、乙女座 α 星(スピカ)、牛飼い座 α 星(アークトゥルス)と、獅子座 β 星(デネボラ)とで、いわゆる「春の大三角」を形成するので、位置ははっきりしている。
鷹座():ラテン名 Aquila。α星はアルタイル(七夕の彦星)である。「ドイツの研究者パウル・クーニッチは、バビロニアやシュメールにおいてアルタイルが鷲の星とされており、鷲座の起源はこの時代まで遡る、としている」(Wiki)。
名も不吉なもの(duswnuvmoV):狼座(Lupus)のこと。古代メソポタミアでは、狂犬 (the Mad Dog) またはカバ男と現在呼ばれる人頭獣身の姿が描かれ、バイソンマン(現在のケンタウルス座)と対を成すとされた。古代ギリシアでは、この部分はケンタウルス座の一部とされていた。また、この動物を指す名がなく、単に野獣などと呼ばれた。ビチュニアのヒッパルコスが紀元前200年ごろにこの星座を分離させ、テーリオン(Qhrivon)〔野獣〕と命名した。
エーリダノス河(=HridanovV):この星座については 「星座入門」. が詳しい。
朱鷺座(#IbiV):???
蛇座(!OiV):アラートスは歌っている。「両の手は蛇を掴むのにあくせくしているが、それがまた蛇使い(=Opiou:coV)の腰のあたりをのたくっているのだ」(82-83)。
海豚座():ラテン語名 Delphinus。
アルゴー号座():「アルゴー号」座はあまりにも免責が巨大であったために、18世紀にフランスのニコラス・ラカイユ(Nicolas Lacaille)が3つに区分して以来、「艫座」「羅針盤座」「帆座」「竜骨座」の4つに分割された。
鹿座(=ElavfoV):???
膝つく人(=Eggovnasin):「膝つく人」の意。ギリシアではヘーラクレース座が必ずこの名称で呼ばれた。
鰐座(KrokodeivloV):ロヒャー(K. Locher)の推定では、エジプトの獅子座(ペルセウス座と馭者座とから構成)を挟んで北と南に2頭の鰐が横たわっており、北の鰐は今でいう牡羊座と三角座とアンドロメダー座ペルセウス座の一部、南の鰐座は牡牛座と馭者座の一部から構成されるという。
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