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Isocrates



一揃いの〔戦車用〕競走馬について(4/5)






[31]
 さて、その後、私の母〔ヒッパレテ〕を娶った。というのは、彼女のことでも父は最善なものを取得したと私は考えているからである。なぜなら、彼女の父親ヒッポニコス〔カリアスの子〕は、富裕さではヘラス人たちの第一人者であり、生まれの点では市民たちの誰にも後れをとらず、同時代の人たちの中で最も尊敬と驚嘆にあたいする人物であり、最多の嫁資と最大の名声とを付けて娘を嫁がせるわけだから、その結婚に与ることを願ったのは誰しもであるが、資格があるのは第一人者だけであったのに、万人の中から私の父を選んで、姻族にすることを欲したのである。

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 同じころ、オリュムピアの祝祭が万人の歓愛と驚嘆の的であり、ヘラス人たちはここにおいて富と体力と教養を誇示し、選手は羨望の的となるのみならず、勝者の国も有名となるのを眼にして、かてて加えて、当地での公共奉仕は同市民たちの間で私人のためになるにすぎないが、あの祝祭のためのそれは全ヘラスにわたって国家のためになると考えて、

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 こういったことを商量して、生まれにおいて誰にも負けず、身体においても脆弱でないからして、体育競技は見下したのである。、選手たちの中には、生まれも賎しく、住んでいる国家も弱小にして、教養も低級な者たちがいるのを知り、これに対して、自分は馬の飼育を手がけているが、これこそ最も幸運な人たちの仕事であり、つまらぬ輩は誰もできないことであり、その点で競争相手のみならず、これまでの勝利者たちをも凌駕していたからである。

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 すなわち、数の点では最大の国々でさえ競技に参加させたことのないほどの戦車団を参加させ、徳〔優秀さ〕の点では 一等にも二等にも、また三等にもなったほどなのである。また、これとは別に、供犠その他の祝日の晩餐においても、その惜しみなさと気前のよさは、その他の公共物の方が父の私的な物よりも少ないように見えたほどである。だが〔父が〕派遣団を解散しために、先人たちの幸運も父のそれに比すれば小さいように思わせ、自分の同時代の勝利者たちも羨望の的となることをさせず、馬の飼育をしようとする者たちには、凌駕する余地を残さぬこととなったのである。

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 しかし、当地における合唱隊奉仕や体育競技奉仕や三段櫂船奉仕について語ることを私は恥じる。父がその他の事柄において抜きん出ていたあまりに、父ほどには充分に公共奉仕しなかった連中が、それによって自惚れて、莫大な〔公共奉仕〕に対する謝礼を返すことを父のために要望する人がいたら、つまらぬことについて言説を為しているように思われるであろうからである。

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 市民生活についても、これも言い漏らすべきではないのは、あたかも、父がこれを忽せにしなかったのと同様であるが、むしろ最も厳密な資格審査を受けた者の中で、民衆に対してより善き人物であったので、その他の連中は自分のために党争したが、父だけはあなたがたのために危険に身を挺したことに、あなたがたがお気づきにならぬほどである。なぜなら、父が民主制的人物であったのは、寡頭制からの逃避の結果ではなく、呼びかけ人であったのだからである。現に彼には何度も、少数〔寡頭〕者といっしょになってその他の者たちを支配するばかりでなく、これらの連中よりも多くを取得できる機会があったが、これを拒み、国家によって不正されることの方を、国制を裏切ることよりも選んだのである。

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 このことも、あなたがたが持続的に民主制統治するまでは、あなたがたに言っても誰も信じなかったであろう。だが今は、生じた諸々の党争が、民主制的人たちにも寡頭制的な人たちにも、どちらをも欲しない人たちにも、どちらにも参加する気のある人たちにも、はっきりと証明した。つまり、この党争において、二度、〔父は〕あなたがたの敵たちによって放逐された。一度は、〔連中が〕父を排除するや否や、民主制を解体し、その次には、あなたがたを奴隷化するかしないうちに、市民たちの中で真っ先に父に追放刑の判決を下したのである。かくも密接に、国家は父の害悪を享受し、

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 父もまた国家の災禍を共有していたのである。しかるに、市民たちの多くが、まるで僭主たらんと策謀した者に対するがごとくに彼を嫌悪するのは、働きを基に考察するのではなく、行為は万人に羨望されていながら、それを最もうまく成し遂げ得たのは、父なればこそと考えるからである。あなたがたが父に大いに感謝する理由および正当性は、市民たちの中で父だけがこのような責めを帰せられるだけの資質を有していたにもかかわらず、国制にはその他の市民たちと平等に参加すべきだと〔父が〕思っていたからである。

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 父のために述べることのできる事柄の多さ故に、目下のところ、何を言及するのがふさわしく、その中でいかなることを省略すべきかに私は行き詰まっている。まだ申し立てられていないことの方が、あなたがたに向かっですでに述べおわった事柄よりも、その都度より大事なように私に思われるからである。次のことも万人に明らかだと私は考えるのであるが、善きにつけ悪しきにつけ、これの最大の役割を演じた者ほど、国家の繁栄に最も好意的な人物だというのは、致し方ないことだということである。

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 ところで、国家がうまくいっているとき、父よりも幸福な者とか、驚嘆される者とか、羨望される者が、市民たちの中に誰かいたであろうか。逆に、不運に見舞われたとき、〔父よりも〕大きな希望とか、多くの財産とか、美しい名声とかを奪われた者が、誰かいるであろうか。結局は、「三十人」政権が成立したため、その他の人たちは国を追われただけであるが、父は全ヘラスから追放されたのではないか。ラケダイモン人たちとリュサンドロスは、父を殺害し、あなたがたの権力を解体するのと同様の働きをしたが、それは、城壁を打ち壊しても、再建の力を持った人物まで亡き者にしないかぎりは、国家から保証を取ることにはなるまいと考えたからではなかったか。

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