アガトブゥロス
[略伝](出典:Wikipedia「Secundus the Silent」) 彼について知られるのは、作者不明の『セクゥンドスの生涯』によってのみである〔Perry, B., Secundus: The Silent Philosopher, in Hansen, W., (1998), Anthology of Ancient Greek Popular Literature. Indiana University Press〕。彼は幼少の時、勉学のためにアテーナイに送られてたという。成人してから、女はみな娼婦という命題を試す決心をし、長い髪に髭をたくわえた犬儒者の姿に身をやつし、自分の母に知られぬようにして家郷に帰り、金貨50枚で自分と寝床を共にするよう母を口説いた。彼女と夜を共にすることになったとき、みだらな行為には及ばず、自分が何者であるかを告げた。母は恥じて、首を吊って死んだ。セクゥンドスは、このような事態を招いた自分の舌を恥じ、一生沈黙を守ることを誓った。このことから、彼はピュタゴラス派の哲学者とみなされている。 この沈黙の哲学者のことを聞いて、ハドリアヌス帝は彼を召喚し、口をきかなければ処刑すると脅した。セクゥンドスは口をきくことを拒み、ハドリアヌス帝は彼の心構えに感心した。セクゥンドスは口をきくことは拒んだが、書板に書くことで、20の質問に答えることに同意した。 この問答が無名氏のテキストに与えられている。「世界とは何か?」「神とは何か?」「美とは?」というふうな問いに対して、短い答えが与えられている。典型的なのは、17番目の答えである。「貧しさとは何か?」 嫌悪される善、健康の母、快楽の障害、思い煩いのない暮らし、引き離しがたい所有物、創意工夫の教師、知恵の発明者、妬まれることなき所行(pragmateiva)、侵害されることなき財産、罰金をとられることのない商品、勘定に入らぬ利得、誣告されることなき所有物、不明な幸運、思い煩いのない幸運。 セクゥンドスの生涯が本当かどうか、言うことは不可能である。伝存する問答は、ハドリアヌス帝とエピクテートスとの対話に似たところを持っている〔Altecratio Hadriani Augusti et Epicuteti philosophi〕。 同じ時期、アテーナイにセクゥンドスという弁論家がいたことが、ピロストラトスによって言及されている〔Philostratus, Lives of the Sophists. 1. 26.〕。われわれのいうセクゥンドスと同一人物かどうかは不明である。 |