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ディオゲネース・ライエルティオス
『ギリシア哲学者列伝』
第6巻6章

メートロクレース伝

〔c. 300 B.C.〕



Vitae philosophorum, ed. H. S. Long, Diogenis Laertii vitae, vi. 6.


[94]
 マローネイア〔テッサリアの沿岸都市〕人メートロクレースは、ヒッパルキアの兄。初め逍遙学派テオプラストスの門弟であったが、気落ちのあまり――あるとき、演説の練習をしていて、どうしたわけか放屁して、落胆のあまり、家に閉じこもり、食を断って死のうした。ところがクラテースがこのことを知り、〔身内の者に〕頼まれたので、彼のもとに出かけ、わざとハウチワ豆を食べたうえで、言葉によっても彼を説得した。――しでかしたことはちっともへまなことではない。〔腸内の〕ガス(pneu/mata)も、もしも自然に語り始めなければ、とんでもないことになったろう、と。挙げ句の果てには放屁して、彼を元気づけたのであった、似たような行動で慰めて。それ以来、〔メートロクレースは〕彼の門弟となり、哲学における習熟者となったのである。

[95]
 この人が、自分の著作を焼き棄てたとは、ヘカトーンが『箴言集』のなかで主張しているところだが、こう付言したという。

 これは、地界に住む者たちの見る夢の幻だ。
 〔未詳悲劇断片〕

 また、ある人たち〔の主張で〕は、テオプラストスの講義録に火をつけながら、こう付言したという。

 ヘーパイストスよ、ここに来たれ、今こそテティスがそなたを必要としている。
 〔Il. XVIII_372〕

 この人物は、事物には、例えば家のように、銀子によって買えるものと、教育のように、時間と面倒(e)pimelei/a)の懸かるもものがある、と言った。富は、ひとがこれをふさわしく扱わなければ、有害である〔と言った〕。

 そして老齢になって、自分で息を止めて亡くなった。

 彼の弟子には、テオムブロトスとクレオメネースとがいる。テオムブロトスの〔弟子が〕アレクサンドレイア人デーメートリオス、クレオメネースの〔弟子が〕アレクサンドレイア人ティマルコスと、エペソス人エケクレースである。しかしながら、エケクレースはまたテオムブロトスの門下生であり、これ〔エケクレース〕の〔門下生〕が、わたしたちが語ることになるメネデーモスであった。また、シノーペーのメニッポスも、彼らの中で著名人となった人である。

2005.12.03. 訳了。

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