砂漠の師父の言葉(Λ)
257."29t" 257.31 260.24 261.7 264.33 5 師父マカリオスがスケーティスの荒廃について兄弟たちに言うを常とした。「沼の近くに修屋が建てられるのを見たら、その荒廃は近いと知れ。樹木を見たら、それは戸口に迫っている。少年たちを見たときには、そなたたちの羊の毛皮を取って、隠修するがよい」。〔主題別18-16〕 6 彼がさらに言うを常としたのは、兄弟たちを慰めようとしたからである。「ダイモーンに憑かれた少年が、自分の母親に連れられてここにやって来て、自分の母親に言った。『立つのだ、婆さん、ここから連れて行ってやろう』。彼女が云った。『わたしはもう歩けない』。するとこれに少年が云った。『俺があんたを背負って行ってやるよ』。わしが驚いたのは、ダイモーンの悪辣さじゃ、いかに彼らを逃げさせようとするかという」。〔主題別18-15〕 7 師父シソエースが言うを常としていた。「わしがマカリオスとともにスケーティスにいたとき、彼といっしょに7名で収穫に登って行った。すると、見よ、一人の寡婦がわれわれの後ろで泣きながら〔落穏を拾って〕いたが、彼女は泣くのをやめなかった。そこで、老師が地所の主人に声をかけ、これに云った。『この女はどうしたのか、絶えず泣いているのは?』。これに言う。『彼女の夫が人から物を預かったまま、急死し、どこにそれを置いたか云わなかったのです。それで、預け主が彼女と彼女の子供たちを奴隷にしようとしているのです』。これに老師が言う。『真昼の休息の間に、われわれのところに来るように彼女に云うがよい』。こうして女が来ると、これに老師が云った。『なぜ、そんなにずっと泣いているのか』。265.20 すると云った。『わたしの夫が、ある人から預かり物をしたまま死に、死ぬときに、それをどこに置いたか云わなかったのです』。すると老師が彼女に云った。『こちらへ〔来て〕、彼をどこに埋葬したか、わしに示すがよい』。そして、兄弟たちを引き連れて、彼女とともに出かけた。そしてその場所に着くと、老師が彼女に云った。『そなたの家にひっこんでいるがよい』。そして彼らが祈っている途中、老師は死者に声をかけた、いわく。『何某よ、他人の預かり物をどこに置いたのか』。すると相手が答えて云った。『わたしの家の中、寝台の足元に隠してあります』。265.30 そこでこれに老師が言う。『復活の日まで、再び眠るがよい』。兄弟たちはこれを見て、恐ろしさも彼の足元に倒れ伏した。すると彼らに老師が云った。『わしの力でこのことが起こったのではない。わたしは何者でもないからだ。いや、寡婦と孤児のために、神がこのことを行われたのだ。これこそが偉大なことである、神は罪のない魂を欲するということが。そして、求めることは何でも、得られるのだ』。そして、行くと、預かり物がどこにあるかを寡婦に告げた。彼女はそれを取って、その預け主に返し、自分の子供たちを自由にした。そこで、この話を聞いたすべての人は、神を栄化したのである」。〔主題別19-12〕 8 師父ペトロスは聖マカリオスについて言うを常としていた、 あるとき彼が一人の隠修者のところへ来てみると、その人が具合を悪くしているのを見つけて、何か食したいものがあるか訊いた、自分の修屋には何もなかったからである。すると、その人物が、「pastillumを」と謂ったので、この勇気ある人物〔マカリオス〕は、ためらうことなく都市アレクサンドレイアまで行き、病人に与えた。さらに驚くべきは、この出来事を誰にも明かさなかったことである。 9 彼がさらに云っていた、 師父マカリオスはどんな兄弟に対しても無悪に振舞ったので、ある人たちが彼に謂った。「なぜそのように振舞うのですか?」。相手が云った。「この恩寵をわしに与えてくださるよう、わしは12年間わが主に隷従してきたのに、そなたたちは皆、それをやめるようにとわしに忠告するのか」。 10 師父マカリオスについて言い伝えられている、 彼が兄弟たちと時を過ごすときには、こんな決まりを自身に定めていた、 たまさか葡萄酒があるときには、兄弟たちのために飲め、しかし葡萄酒一杯ごとに、1日水を飲んではならない、と。そういう次第で、兄弟たちは彼に休息の恩寵を与えようとした。すると老師は喜んでそれを受けたが、それは自分自身を苦しめるためであった。268.20 弟子の方は事情を知って、兄弟たちに言った。「主にかけて、彼に葡萄酒を与えないでください。さもないと、修屋で自らを圧殺しかねません」。これを知った兄弟たちは、もはや彼に与えることはなかった。〔主題別4-29〕 11 あるとき、師父マカリオスが沼地から自分の修屋に帰ろうと、ナツメヤシの枝を運んでいたところ、見よ、道中、小刀を持った悪魔が彼に出くわした。そこで〔悪魔が〕彼を叩こうとしたが、その力がなかった。それで彼に言う。「おまえから、マカリオスよ多くの力が出ていて、俺はおまえに何もできない。というのは、見よ、おまえがすることは何でも俺もする。おまえが断食すれば、俺もする。おまえが徹夜すれば、俺も全く眠らずにいる。おまえがわしに勝利するのは、ただ一つのことによってだ」。これに師父マカリオスが言う。「それは何だ」。相手が謂った。「おまえの謙遜だ。これによってこそ、俺はおまえに対して何もできないのだ」。〔主題別15-40〕 268.35 13 あるとき、師父マカリオスは、スケーティスからテレヌゥティスに上っていった。そして眠ろうとして神殿に入った。そこには、ヘッラス人たちの古いミイラがあった。そこでその一つを取って、枕として自分の頭にあてがった。そこでダイモーンたちは、剛胆さを見て、嫉妬した。そこで、彼を脅かそうとして、女の名のように声をかけた、いわく。「何某婦人、こちらに、わたしたちといっしょ水浴びに行こう」。すると他のダイモーンが、死人の中からかのように、彼の下から応じた、いわく。「わたしの上に異邦人がいるので、行けないのです」。しかし老師は脅されなかった。それどころか、威勢よくミイラを叩いた、いわく。「起て、暗闇の中に去れ、できるならな」。これを聞いてダイモーンたちは大声で叫んだ、いわく。「おまえは俺たちに勝った」。そして、辱められたまま逃げ去ったのだった。〔主題別7-15〕 14 アイギュプトス人である師父マカリオスについて言い伝えられている、 スケーティスから上ってきて、しかも大きな籠をかついでいたので、疲れ果てて坐りこんだ。そして祈った、いわく。「神よ、あなたはわたしに力がないことをご存じです」。すると、ただちに、川のほとりにいる自分に気づいた。〔主題別19-10〕 15 小児麻痺の息子を持つ人がアイギュプトスにいた。そこでこれを師父マカリオスの修屋に連れて來た。269.10 そして、泣いているこれを扉の前に放って、遠く離れていた。すると老師が覗いて、これ子どもを見て、これに言う。「誰がそなたをここに運んだのか?」。すると言う。「ぼくの父さんがここに投げ出して、行ってしまいました」。これに老師が言う。「立って、彼をつかまえよ」。するとすぐに健康になって、立ち上がって、自分の父親につかまえた。じつにこうして、自分たちの家に戻っていったのである。〔主題別19-11〕 16 偉大なる師父マカリオスは、教会を解散させるとき、スケーティスの兄弟たちに言った。「逃げるがよい、兄弟たちよ」。するとこれに、老師たちの一人が云った。269.20「この砂漠をわたってどこに逃げればいいのですか」。相手は、口に自分の指を当てた、いわく。「ここから逃げよ」。そして自身の修屋に入り、扉を閉めて、坐った。〔主題別4-30〕 17 同じ師父マカリオスが云った。「人を咎めようとして、怒りに衝きうごかされるなら、自分の情念を満足させてしまう。つまり、他の者たちを救おうとして、自分自身を滅ぼしてはならない」。〔主題別4-31〕 269.28 19 ある人々が師父マカリオスに、こう入って尋ねた。「どのように祈るべきでしょうか?」。彼らに老師が言う。「必要なのは、くどくどいうことではなく、両手を広げて、言うことだ。『主よ、御心のままに、ご存知のとおりに、憐れみたまえ』。また、闘いが起こったならば、『主よ、助けたまえ』。主ご自身は、何が有益なことかを知っておられ、われわれに応じて憐れんでくださる」。〔主題別12-11〕 269.45 21 言い伝えられている、 二人の兄弟がスケーティスで躓いた。そこで都会人の師父マカリオスは彼らを破門した。272.1 そこで幾人かがやって来て、アイギュプトスの偉人、師父マカリオスに云った。相手が云った。「破門されるのは兄弟たちではなく、マカリオスが破門されるべきだ」。というのは、彼を愛していたからである。都会人マカリオスは、老師によって破門されたと聞いて、沼地に逃げた。すると、師父の大マカリオスが出かけて行き、彼が蚊にきされているのを見つけ、これに言う。「そなたは兄弟たちを破門したが、見よ、彼らは村に隠棲することができた。272.10 わたしはそなたを破門したが、そなたは内奥の寝室に逃げ込む美しい処女のように、ここに逃れた。そこでわしはあの兄弟たちを呼ぴ、彼らから聞き知ろうとしたが、彼らは云った。『そのようなことは何もありませんでした』」と。されば、そなたも、兄弟よ、ダイモーンたちにからかわれないように注意せよ(そなたは何も見ていなかったのだから)、むしろそなたは、そなたの躓きを悔改めよ」。相手が云った。「よろしければ、どうかわたしに悔い改めを授けてください」。すると老師は彼の謙遜を見た、言った。「行け、そして1週毎に食事をして、3週間断食せよ」。実は、数週間にわたって断食するということこそが、彼のいつもの行いだったからである。 272.20 23 ある兄弟がアイギュプトス人、師父マカリオスを訪ね、これに言う。「師父よ、どうすれば救われるか、どうかわたしに説話(rJh:ma)を云ってください」。そこで老師が言う。「墓場に行って、死者たちを侮辱せよ」。そこで兄弟は出かけて行き、侮辱し、石を投げた。そして戻って老師に報告した。するとこれに言う。「彼らはそなたに何も話さなかったか」。相手が謂った。「何も」。これに老師が言う。「明日、もう一度行って、彼らを栄化せよ」。そこで兄弟は出かけて行って、彼らを栄化した、いわく。「あなたがたは使徒です、聖人です、義人です」。そして老師のもとにもどって、これに云った。「栄化しました」。するとこれに言う。「そなたに何も答えなかったか?」。兄弟が謂った。「何も」。これに老師が言う。「そなたは自分がどれほど彼らを侮辱したかを知っているが、彼らは何もそなたに答えず、272.40 また、そなたはどれほど彼らを栄化したかを〔知っているが〕、彼らは何もそなたに話さなかった。それと同じように、そなたも救われたいならば、死者になるがよい。人間どもの不正も、かれらの栄光も思量せぬこと死人のごとくせよ。そうすれば、救われ得るであろう」。 272.45 25 師父ポイメーンが涙にくれながら、彼に呼びかけた、いわく。「どうかわたしに説話(rJh:ma)を云ってください、どうすれば救われるのでしょうか」。すると老師が答えて彼に云った。「そなたが求めていることは、今や修道者たちから離れ去ってしまった」。 273.1 27 師父ヘーサイアスが師父マカリオスに尋ねた、いわく。「どうかわたしに説話(rJh:ma)を云ってください」。するとこれに老師が言う。「人間どもを避けよ」。これに師父ヘーサイアスが言う。「人間どもを避けるとは、どういうことですか?」。すると老師が彼に云った。「そなたの修屋に坐し、そなたの罪を泣くことである」。 28 師父マカリオスの弟子である師父パフヌゥティオスが言った、 わしの師父に願った、いわく。「どうかわたしにお言葉をください」。相手が謂った。「ひとに悪行してはならぬ、ひとを断罪してもならぬ。これらを守れ、そうすれば救われよう」。 29 師父マカリオスが云った。「悪しき噂のある兄弟の修屋で眠ってはならない」。 30 あるとき、兄弟たちが師父マカリオスをスケーティスに訪ねたが、彼の修屋には、腐った水以外何も見当たらなかった。そこで彼に言う。「師父よ、上の村においでください、そうすればあなたを休ませます」。彼らに老師が言う。「そなたたちは、兄弟たちよ、村にある何某のパン焼き場を知っているか」。するとこれに言う。「はい」。彼らに老師が言う。「わしもそれを知っている。川が滔々たる何某の地所を知っているか」。彼に言う。「はい」。彼らに老師が言う。「わしもそれを知っている。だから、わしは望むときに、そなたたちの扶けを借りずに、自分で上ってゆく」。 31 師父マカリオスについて言い伝えられている、 兄弟が彼のところに、聖にして偉大なる長老に対するかのように、畏れをもってやって来ると、彼には何も話しかけなかった。しかし、兄弟たちのひとりが、彼をからかうかのように、「師父よ、あなたが駱駝曳きで、硝石を盗んでこれを売ろうとしたとき、番人たちがあなたを殴りつけませんでしたか」と言ったときには、誰かがこのように彼に言ったときには、何を彼に尋ねようと、喜んで相手に話すのであった。 273.47
33 師父ビティミオスが物語るを常としていた、 師父マカリオスは言うを常としていた。「かつて、わしがスケーティスに住持していたとき、二人の異邦の若者がそこへ下ってきた。一人は髭を生やしており、もう一人は生やしかけていた。彼らはわしのところに来た、いわく。「師父マカリオスの修屋はどこですか」。そこでわしが云った。「彼に何の用か?」。すると言う。「あの方について、またスケーティスについて聞いて、彼に会うためにやって来ました」。彼らに言う。「それはわたしだ」。すると、彼らは跪いた、いわく。「わたしたちはここに留まりたいのです」。しかしわしは、彼らが繊細で裕福な出であることを見て取って、彼らに言う。「そなたたちはここに住持できまい」。すると年長の方が言う。「ここに住持できないのであれば、276.10 よそに行きます」。わしはわしの想念に言う。『何ゆえわしは彼らを追い払ったり、躓かせたりしようとするのか。労苦が彼らを自分たちから逃げ出させるだろう』。そこで、彼らに言う。「来て、できるならば、自分たちのための修屋を建てよ」。すると彼らが言う。「わたしたちに場所を示してください、そうすれば建てます」。そこで老師は彼らに斧と、パンと塩で満たした籠を与えた。また、彼らに老師は堅い岩場をも示した、いわく。「ここで石を切り、沼地から材木を運び、屋根をふいて住持するがよい」。ところでわしは、とマカリオスが謂う、 彼らが労苦のためにここを離れ去るだろうと考えた。ところが彼らは、ここで何をして働くべきか、わしに尋ねた。彼らに言う。「縄をなえ」。そうして、沼地からナツメヤシの枝を取って、縄のない始めと、どのようになうべきかを示し、云った。た。「籠を編んで、監督者たちに渡せ、そうすれば、そなたたちにパンをくれる」。そうして、わたしは立ち去った。 277.29 35 また別のとき、ダイモーンが戦刀をたずさえて師父マカリオスに襲いかかった、彼の足を斬ろうとしたからである。しかし彼の謙遜のせいで果たせなかったので、彼に言う。「おまえが持っているものは何でも、われわれも持っている。ただ謙遜によってのみ、おまえはわれわれを凌駕し、また制覇する」。 277.48 37 師父マカリオスの弟子、師父パプヌゥティオスが云った、 この老師は言うを常とした、 わしが少年だった頃、他の少年たちと連れ立って、牛に草を食ませに行った。が、彼らは無花果を盗みに行った。彼らが駆け出したとき、その1つが落ちたので、わしはそれを拾って喰った。そのことを思い起こすたびに、泣きつつ坐るのだ、と。 38 師父マカリオスが云った、 あるとき、砂漠を歩いていて、地に打ち捨てられた死人の頭蓋骨を見つけた。ナツメヤシの枝の杖でそれをつつくと、頭蓋骨がわしに話しかけてきた。そこでこれに言う。「おまえは誰だ」。頭蓋骨がわしに答えた。「わたしは偶像の大祭司で、この地に住むヘッラス人の出でした。ところであなたは、聖霊の使者(pneumatofovroV)マカリオス。罰を受けている者たちをあなたが憐れみ、彼らのために祈ってくれるときはいつでも、幾分か慰めを得ているのです」。これに老師が言う。「いかなる慰めか、またいかなる懲罰なのか?」。これに言う。「天が地から隔たっているほどに隔たって〔イザヤ55:9〕、われわれの下には火があり、われわれの足の先から頭の天辺まで火の直中にいるのです。そして、誰も顔を合わせて他の者を見ることはできません。それどころか、それぞれの顔を別の者の背にくっつけているのです。ただ、あなたがわたしたちのために祈ってくれるときには、他の者の顔を少しだけ見ることができます。それこそが慰めなのです」。すると老師は泣きながら云った。「悲しいかな、人間が生まれた日よ」。これに老師が言う。「他にもっと酷い責め苦があるのか?」。これに頭蓋骨が言う。「わたしたちの下に、もっと酷い責め苦があります」。これに老師が言う。「そこにはどんな者たちがいるのか?」。これに頭蓋骨が言う。「わたしたちは神を知らなかった者たちとして、少しは憐れみを受けています。しかし、神を知りながらそれを否定した者たちは、わたしたちの下にいるのです」。そこで、老師は頭蓋骨を取って、これを埋葬したのであった。 39 アイギュプトス人の師父マカリオスについて言い伝えられている、 あるとき、彼はスケーティスからニトリアの山に上った。そして彼がその場に近づくと、自分の弟子に云った。「少し先を行け」。そこで彼が前を歩いていると、ヘッラス人たちのある神官に行き逢った。すると兄弟が大声で声をかけた、いわく。「おい、おい、ダイモーンよ、どこへ走って行くのだ?」。すると件の者が振り返って、兄弟に殴打をくらわせ、これを半殺しの目に遭わせた。それから、木を拾いあげて走った。しかし少し先の方で、師父マカリオスは走ってくる彼に出会った。そしてこれに言う。「救われるがよい、救われるがよい、労苦する人よ」。すると驚いて、彼のところにやって来て、そして云った。「わしの中にどんな美しいところがあるのですか、わしに話しかけられるとは」。これに老師が言う。「そなたが苦労しているのを見たからじゃ。そなたは無駄に苦労しているのを知らないのじゃ」。これに本人も言う。「わしはあんたの挨拶に胸を打たれた。そして、あんたが神の味方であることを知った。わところが、わしと行き逢った別の修道者は悪いやつで、わしを侮辱しおった。そこでわしも、死ぬほどやつに殴打をお見舞いした」。そこで老師は、それが自分の弟子であることを知った。すると彼の足を抱いて神官が言った。「わしを修道者にしてくれなければ、あんたを放しません」。彼らは弟子のいるところに行き、これをかついで山の教会に連れて行った。するとかの神官が彼といるのを見て、仰天した。彼らは彼を修道者にした。そこで、多くのヘッラス人たちは、彼によってキリスト教徒となった。それゆえ、師父マカリオスは言うを常とした、 悪しき言葉は、美しき人たちさえも悪くする。美しい言葉は、悪しき人たちさえも美しくする、と。 281.5 281.21 281."26t" 281.27 281.46 3 別のとき、スケーティスで集会が持たれたが、師父たちが彼を吟味しようとして、彼を軽蔑した、いわく。「このアイティオポス人までわれわれの中に来ているとは、どういうことか?」。しかし彼は、これを聞いても、沈黙を守っていた。彼らが解散した後、彼に言う。「師父よ、先ほどあなたはちっとも当惑なさいませんでしたか?」。彼らに言う。「当惑した、が、話さなんだ〔詩篇76:5〕」。〔主題別16-9〕 4 師父モーウセースについて言い伝えられている、 聖職者となり、ひとびとは彼に法衣(ejpwmivV)を授けた。そして大主教が彼に言う。「見よ、そなたは全身真っ白となったのだ、師父モーウセースよ」。これに老師が言う。「外見はです、教父なる主よ、内面もそうでありますように!」。そこで大主教が彼を吟味しようとして、聖職者たちに言う。「師父モーウセースが至聖所に入って来たら、彼を追い出し、彼についてゆけ、彼が何と言うかを聞くために」。さて、老師が入っていった。すると彼らは彼を咎め、追い出した、いわく。「出て行け、アイティオプス人め」。すると相手は出て行きながら、自身に言った。「彼らをおまえを美しく扱ったのだ、灰色肌の黒ン坊よ。人間ではないのに、おまえはどうして人間どもといっしょするのか?」。〔主題別15-43〕 5 あるとき、スケーティスで命令が授けられた、いわく「今週は断食せよ」。たまたま、アイギュプトスから兄弟たちが師父モーウセースを訪ねて来ていた。そこで、彼らに少しの煮物をこしらえた。すると隣人たちが煙を見て、聖職者たちに云った。「見よ、モーウセースが命令を破って、自分のところで煮物をつくった」。彼ら〔聖職者たち〕が云った。「彼が来たら、われわれが彼に話そう」。さて、土曜日になって、聖職者たちは師父モーウセースの大いなる行住坐臥を見て、信者たちの前で彼に言った。「師父モーウセースよ、あなたは人間どもの命令を捨てて、神のそれを守った」。〔主題別13-4〕 6 兄弟がスケーティスに師父モーウセースを訪ねた、彼に言葉を請うためである。これに老師が言う。「行け、そなたの修屋に坐れ。そうすれば、284.40 そなたの修屋がそなたにすべてを教えてくれるであろう」。〔主題別2-19〕 7 師父モーウセースが云った。「人間どもを逃れる人間は、葡萄の房に似ているが、人間どもといっしょにいる者は未熟な葡萄のごとし」。〔主題別2-20〕 8 あるとき、長官が師父モーウセースのことを聞き及び、彼に会うためにスケーティスにやって来た。そこである人たちが、事情を老師に報告した。すると彼は立って、沼地に逃げた。すると〔長官一行が〕彼に出くわして、いわく、「どうかわれわれに云ってください、ご老人よ。師父モーウセースの修屋はどこですか。すると彼らに言う。「彼に何を求めているのですか。彼は愚か者ですよ」。しかし長官は教会に行き、聖職者たちに言う。「わたしは師父モーウセースのことを聞き及び、彼に会いに下ってきました。ところが、見よ、アイギュプトスに向かう老人がわれわれに行き合い、彼に云いました、『師父モーウセースの修屋はどこですか』。するとわれわれに言うのです。『彼に何を求めているのですか。彼は愚か者ですよ』と」。これを聞いた聖職者たちは悲しんだ、いわく。285.16「聖人のことをそのように話す老人とは、どのような人でしたか?」。彼らが云った。「老人で、古い服を来て、背丈があって色黒い人です」。彼らが云った。「それこそ師父モーウセースです。自分があなたがたに会わないために、あなたがたにそんなことを云ったのでしょう」。じつに多くのことを益されて、長官は帰って行った。〔主題別8-13〕 285.22 10 またかつて、兄弟たちが彼のそばに坐っていたころ、彼らに言った。「見よ、蛮族が、今日、スケーティスに襲来するであろう。さあ、立ち上がって、逃げよ」。彼らが彼に言う。285.30「するとあなたはお逃げにならないのですか、師父よ」。相手が彼らに云った。「わしは長年この日を待っていたのじゃ。『剣を執る者たちはみな、剣に滅びる』〔マタイ26:51〕と言われた主なるクリストスの言葉が成就するために」。彼らが彼に言う。「わたしたちも逃げないで、あなたとともに死にます」。相手が彼らに云った。「わしは関わりを持たぬ。めいめいが在り方を見よ」。ところで、兄弟は7人で、彼らに言う。「見よ、蛮族が門まで近づいて来ている」。やがて入って来て、彼らを殺した。彼らの中の一人は縄の山の後ろに逃れた。そして、7つの冠が降りて来て、彼らに戴冠するのを見た。〔主題別18-18後半〕 11 兄弟が師父モーウセースに尋ねた、いわく。「わたしの目の前に何かが見えるのですが、それを捉えることができません」。これに老師が言う。「埋葬された者たちのように、そなたが死人にならぬ限り、それを捉えることはできぬ」。 285.47 13 師父モーウセースについてスケーティスで言い伝えられている、 彼がペトラに行こうとしたとき、途中で疲れてしまった。そこでこころの中で言った。「どうしたら、ここでわしの水を汲むことができるだろうか」。すると、こう言う声が彼にきこえてきた。「〔ぺトラに〕入れ、何も案ずることはない」。」そこで、入って行った。すると何人かの師父たちが、彼を訪ねてきたが、彼は小さな瓶1杯分の水しか持っていなかった。しかも、わずかなレンズ豆を調理したので、使い切ってしまった。老師は困惑した。そこで、入ったり出たりして、神に祈った。すると、見よ、雨雲がベトラの真上に来た。そして彼の容器を全部満たしたのだった。後に彼らは老師に言う。「どうかわたしにたちに云ってください、入ったり出たりなさったのは、どうしてですか?」。すると老師が彼らに言う。「わしは神に訴えていたのだ わたしをここに連れてきたのに、見よ、あなたの僕たちが飲む水をわたしは持ちません」と。そのために、神がわれわれに送ってくださるまで、神に願いながら、入ったり出たりしたのだ」。〔主題別6-27〕 14 師父モーウセースが云った、 何事においてであれ、ひとを裁かないために、人は自分の仲間に対して死人にならねばならない。 15 さらに云った いかなる人に対しても悪しきことを為さないために、身体から出て行く前に、あらゆる邪悪な事柄に対して自ら死人にならなければなならない、と。 16 彼がさらに云った。「ひとは自分の心中において自分は罪人であるという思いを抱かない限り、神が彼に耳をかされることはない」。そこで兄弟が云った。「心の中で、自分は罪人であると思うとは、どういう意味ですか?」。すると老師が云った もし人が自分の罪を担うならば、隣人の罪は見ないものだ」。 17 彼がさらに云った。「行いが祈りとが調和しないならば、無駄に苦労することになる」。そこで兄弟が云った。「行いと祈りとの一致とは、どういうことですか?」。すると老師が云った。「われわれが祈っている当のことがら、これをもはや実行するまでもない、ということである。というのは、人が自分の意志を捨てるとき、神は彼と和らぎ、その祈りをただちに受け入れるからである」。
18 兄弟が尋ねた、人間のあらゆる労苦の中で、彼を助けるものは何でしょうか?」。すると老師が言う。「神こそが助ける者である。というのは、こう書かれているからじゃ。『神はわれらの逃れ場、力、悩みの時の大いなる助け』〔詩編54:2〕」。兄弟が云った。「人間が行う断食と徹夜とは、何を生み出すのでしょうか?」。これに老師が言う。「それらは魂を謙虚にさせる。こう書かれているからじゃ。『見よ、わたしの謙遜とわたしの労苦とを、そしてわたしのすべての罪を赦したまえ』〔詩編24:18〕。もし魂がこれらの実を結ぶならば、神はそれら〔の実〕によってそれ〔魂〕を憐れまれる」。 289."36t" 289.37 289.40 3 彼はまた言うを常とした。「わしは若い頃、心中に言っていたものだ 自分は多分何か善いことを行っているのだ、と。しかし、老いた今、自分の中にはひとつとして善いわざがないのを見る」。 4 彼がさらに云った。「サターンは、魂がいかなる情念によって打ち負かされるかを知らない。種まきはするが、収穫できるかどうかは知らない。邪淫をめぐる想念や、中傷をめぐる想念、自余の情念も同様である。ただし、いかなる情念に魂が傾いているかを見て、これ〔魂〕に合唱舞踏するのであるが」。〔主題別10-49〕 292.1 6 兄弟が師父マトーエースに尋ねた。「どうすればいいのでしょうか、兄弟がわたしを訪ねて来て、それが断食や朝課の時であった場合は? わたしは悩んでいるのですが」。するとこれに老師が言う。「もし、悩むことなく、兄弟とともに喰うのなら、292.10 そなたの振る舞いは美しい。しかし、何びとか待っていないのに、喰うならば、それはそなたの意志である」。 7 師父イアコーボスが云うを常とした、師父マトーエースを訪ねたことがある。そしてわしは戻ろうとして、彼に云った ケッリアに行くつもりです、と。するとわしに云った。「師父イオーアンネースにわしからよろしく」。そこでわしは師父イオーアンネースのところに赴いて、彼に言う。「師父マトエースがあなたによろしくとのことです」。すると、わしに老師が言う。「見よ、師父マトエースこそ、真のイスラエール人、彼に偽りなし〔ヨハネ1:47〕」。それから1年が経って、わしは再び師父マトエースを訪ねた。そして彼に師父イオーアンネースの挨拶を伝えた。すると老師が言う。「わしはあの老師の言葉に値しない。ただし、次のことを知っておくがよい、ある老師が自分よりも隣人を栄化するのを聞くときには、〔その老師は〕偉大な境位に達しているのだということを。なぜなら、完徳なればこそ、自身よりも自身の隣人を栄化するのだからである」。 8 師父マトーエースは言うを常とした、兄弟がわしのところにやって来て、わしに云った、 中傷は邪淫よりも悪い、と。そこで云った。「その言葉は受け入れ難い」。292.30 するとわしに言う。「この件をいったいどう考えるのです?」。そこでわしが謂った。「中傷は悪い。しかしすぐに治す方法がある。というのは、中傷する者は『わたしは悪く話した』と言って、しばしば後悔するからである。だが、邪淫は自然本性的に死である」。〔主題別5-6〕 9 あるとき、師父マトーエースはライトウからマグドロース地方に出かけて行った。彼の兄弟も彼とともにいた。ところが、ある主教が老師を捉まえて、彼を司祭に任じた。そして彼らがともにいるとき、主教が言った。「どうかわたしを赦してほしい、師父よ。あなたがこのことを望んでいないことは知っている。だが、あなたからわたしが祝福を受けたかったので、あえてこのようにしたのだ」。すると彼に老師が、謙って云った。「わたしの想念も、少しはそれを望んでいました。それよりもわたしを苦しめるのは、わたしとともにいる兄弟から離れなければならないことです。というのは、祈りをすべて一人ですることには耐えられないからです」。すると主教が言う。「彼がふさわしい、とあなたが思っておられるならば、わたしが彼を叙階しよう」。これに師父マトーエースが言う。「彼がふさわしいかどうかは分かりません。ただ一つ分かっているのは、彼がわたしより美しい人であることです」。292.50 そこで、彼をも叙階た。しかし、彼らは二人とも、奉献祭儀を行うために祭壇に近づくこともなく、永眠した。が、老師は言っていた。「わたしは、奉献祭儀を行わなかったから、叙階のことでひどい裁きを受けることはないと神に信頼している。というのは、叙階は咎められるところのない人々のものだからだ」。〔主題別15-42〕 10 師父マトエースが云っていた、3人の老師が、「頭」と言われる師父パプヌゥティオスのところにやって来た、彼に言葉を述べてもらうためである。そこで老師が彼らに云った。「そなたたちに何を云ってほしいのか? 霊的なことか、293.10 それとも身体的なことか」。彼らが彼に言う。「霊的なことです」。彼らに老師が言う。「行け、休息よりも苦しみを、名誉よりも侮辱を、また、受けることよりも与えることを愛せ」。 11 兄弟が師父マトーエースに尋ねた、いわく。「どうかわたしに説話(rJh:ma)を云ってください」相手が彼に云った。「行け、神に呼びかけよ、そなたの心に悲歎と、それから謙遜を与えてくださるようにと。つねにそなたの罪に傾注せよ。他人を裁かず、むしろ万人の下にいる者となれ。少年に親愛の情をいだかず、女と知己とならず、また異端の者と友となるな。そなたから気易さ(parjrJhsiva)を取り除け。そなたの舌と腹とを制し、葡萄酒はわずかにせよ。もし人が何かについてあれこれ話しても、彼と愛勝するな。いや、彼が美しく言っているなら、『然り』と云え。悪くなら、『あなたはどのように話すか知っているはずです』と云え。彼が話したことについて、彼と言い争ってはならない。そして、これこそが謙遜である」。〔Anony330〕 12 兄弟が師父マトーエースに尋ねた。「どうかわたしにおことばをください」。そこでこれに云った。「何事についても、そなたから愛勝心をすべて取り除け。そして嘆き、悲しめ、時が近づいているからだ」。 13 兄弟が師父マトエースに尋ねた、いわく。「どうすべきでしょうか、。わたしの舌がわたしを苦しめるのです。人々の中に入っていくときも、これを制することができません。いや、善いわざに対しても、彼らを咎め、彼らに反駁してしまいます。一体どうすればよいでしょうか」。すると老師が答えて云った。「自分を制することができないならば、独りの生活に逃れよ。それは弱さのためである。しかし、兄弟たちと坐す者は、四角であってはならず、あらゆる方向に転がることができるように、丸くなければならない」。また、老師が云った。「わしが独りで坐るのは、徳があるからではなく、弱さのためである。というのは、人間どもの中に入って行く者たちは、力ある人々である」。〔主題別11-79〕 293."45t"/"46t" 293.47 2 師父シルゥアーノスについて言い伝えられている、 あるとき、老師たちとともにスケーティスをめぐっていたが、自分の弟子マルコスの従順さと、彼を愛する所以を彼らに示そうとして、小さな猪を見つけたので、彼に言う。「あの小さな野牛が見えるか、わが子よ」。これに言う。「はい、師父よ」。「その角がどんなに堂々としているかも?」。言う。「はい、師父よ」。そこで、老師たちはその答えに驚き、その従順さに建徳されたのであった。 3 あるとき、師父マルコスの母が彼に会いに下ってきた。彼女は非常に着飾っていた。老師が彼女のところに出て行った。するとこれに云った。「師父よ、わたしの息子に会うため、彼に出てくるよう云ってください」。そこで老師が中に入って彼云った。「そなたの母親がそなたに会うため、外に出るがよい」。ところで彼は古外套(Lat. cento)を着、台所のせいで煤だらけになっていた。従順さから出て来たが、その両眼を閉じ、彼らに云った。「お元気で、お元気で、お元気で」。しかし、彼らを見ようとはしなかった。彼の母親は、彼を認知できなかった。そこで、再び老師のもとにひとを遣った、いわく。「師父よ、息子に会うために、わたしの息子をわたしのところに遣わしてください」。そこでマルコスに云った。「そなたに云わなかったか。『そなたの母親がそなたに会えるよう、外に出るがよい』と」。するとこれにマルコスが云った。「あなたのお言葉どおり外に出ました、師父よ。ただ、あなたにお願いします、あなたに逆らわないですむよう、うことにならぬよう、また出て行けとは仰らないでください」。そこで、老師は外に出て、彼女に云った。「『お元気で』と言いながらあなたがたに会ったのが、本人じゃ」。そして、彼女を慰め、送り出したのであった。〔主題別14-12〕 4 別のとき、彼はスケーティスを出て、シナ〔シナイ〕山に行き、そこに住持することになった。するとマルコスの母は人を遣わした、自分の息子が出て来て、これに会えるように、涙ながらに彼に誓ってである。老師は彼を解放しようとした。しかし、外に出るために自分のmhlwthv〔修道者用の毛皮の外套〕を着け、老師に挨拶しはじめようとするや、突然泣き出して、外には出なかった。〔主題別7-7〕 5 師父シルゥアーノスについて言い伝えられている、 彼がシュリアに向かって出発しようとしたとき、彼の弟子マルコスが彼に云った。「師父よ、わたしはここを出て行きたくありません。いや、わたしはあなたを出発させたくないのです、師父よ。いや、3日間ここに留まってください」。そして3日目に、彼は永眠した。〔主題別18-20〕 297."1t" 297.2
2 別のとき、彼が2人の弟子とともにペルシス〔ペルシア〕の国境に住んでいたとき、肉の兄弟である2人の王子が、習慣に従って狩りに出かけた。彼らは40ミリア[025]もの長さの網を張った。網の中に見つかったすべてのものを狩り立て、矢で殺そうとした。そこへ、老師が自分の2人の弟子とともに来合わせた。毛むくじゃらの、野人のような彼を見て、驚愕して、彼に云った。「人間か、それとも霊か、われわれに云え」。そこで彼らに云った。「罪人である。わしの罪を泣くために出て来た。生ける神の子、イエースゥス・クリストスをわしは拝礼する」。彼らが彼に云った。297.30「太陽と火と水(これらが彼らの崇拝するものであった)の以外に、他に神はいない。さあ、進み出よ、そしてそれらに供犠せよ」。 300."1t" 300.2 2 師父モーティオスについて、彼の弟子である師父イサアーク(両者とも主教になった)が語り伝えている。 ヘーラクレイアに最初に修道院を建てたのは老師であった。そしてそこを去り、別の場所に来て、そこにまた建てた。しかし、悪魔の働きによって、彼に敵意をいだき、彼を悩ますある兄弟がいた。そこで老師は立ち上がって、本來の村に隠遁した。そして自分のために修道院を造り、自身を閉じこめた。しばらくして、彼が出て来た地の老師たちがやって来たが、彼に悲しみを与えた兄弟をも連れて来て、これを彼の修道院に引き取ってもらおうと、かれに頼みに来たのである。さて、師父ソーレースがいる場所に彼らが近づくと、彼らはその近くに、彼らの修道者用の毛皮の上衣と、悲しみを与えたかの兄弟を残した。それから戸を叩くと、老師は梯子を立てかけ、覗きこんで、彼らを認めて、言う。「そなたたちの毛皮はどこにあるのか?」。彼らが云った。「見よ、ここに兄弟何某とともにあります」。自分を悲しませた兄弟の名を聞くと、長老は喜んで、斧を揮い、戸を壊し、兄弟のいるところに走って行った。そして先ず、彼の前に跪いて、彼に挨拶した。そして、彼を自分の修屋に導きいれた。3日間、彼らを歓待し、本人もまた彼らととにしたが、そんなことをする習慣はなかったのである。それから、彼は立って彼らとともに出発した。こうして後に、彼は主教になった。たしかに彼は奇蹟を行う者であった。また、浄福なるキュリロスは、彼の弟子である師父イサアークをも主教にした。 300."48t" 300.49 301.1 3 師父たちの幾人かが師父メゲティオスに尋ねた、いわく。「煮物が翌日まで残った場合、兄弟たちは食べてもよいとおかんがえですか?」。彼らに老師が言う。「腐っているなら美しくない、兄弟たちがそれを喰うよう強いられると、病気になるからからで、むしろ捨てるがよい。しかし、美しいものであるのに、贅沢から捨てられて、他の物を煮るならば、それは悪しきことである」。 4 彼がさらに云った。「初め、われわれがたがいに寄り合って、益となることに互いに励まし合って話していたとき、われわれは円になり、諸天に引き上げられていた。しかし今では、寄り合って、一人が一人を中傷するようになり、下に落ちている」。 301."26t" 301.27 301.30 3 師父ミオスが、ある兵士に、はたして神は悔い改めを受け入れてくださるのかどうか、と尋ねられた。そこで彼が、多くの言葉で彼を導いた後、彼に向かって言う。304.1「どうかわしに云ってくれ、親愛なる者よ。そなたの外套が破れたとしたら、それを外に投げ捨てるのか」。彼が言う。「いいえ。それを繕って、これを用います」。彼に向かって老師が言う。「されば、そなたが上衣を惜しむのなら、神が御自分の被造物を惜しまれないことがあろうか」。 304."6t" 304.7 304."44t" 304.45 2 師父マカリオスがタベネーシス人たちの師父パコーミオスのもとを訪ねた。パコーミオスが彼に尋ねた、いわく。「兄弟たちが無規律なとき、彼らを教育するのは美しいでしょうか?」。これに師父マカリオスが言う。「そなたのもとにいる者たちなら教育し、義しく裁くがよい。しかし、それ以外の者は、何びとをも裁いてはならない。こう書かれているからである。『あなたたちが裁くのは内部の者だけではないのか。外部の者たちは、神が裁かれる』〔1コリント5:12-13〕。」〔主題別10-46〕 3 かつて、師父マカリオスは、4か月間、ある兄弟を毎日訪ねつづけたことがある。しかし彼が祈り以外の暇を持っているのを一度たりとも見たことがなかった。そこで驚嘆して言った。「見よ、地上の天使である」。 2016.02.07. |