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原始キリスト教世界

語録集(Apophthegmata)1

砂漠の師父の言葉(Μ)
(12/24)



257."29t"
字母Μの初め。
257."30t"
アイギュプトス人、師父マカリオスについて

257.31
1 師父マカリオスは自分について話すを常としていた、いわく。「わしがまだ若く、アイギュプトスで修屋に坐していたとき、わしをつかまえ、村の聖職者にしようとした。だが、受け入れることを拒み、別の所に逃れた。そこで、世間の敬虔な人がわしのところに来て、わしの手仕事を引き受け、わしに奉仕してくれた。その頃、村のある処女が誘惑を受けて堕落したということが起こった。そうして孕んだため、このようなことをしたのは誰かを尋ねられた。すると彼女が言った。「隠修者です」。そこで、村まで来てわしを捕らえ、わしの首に煤だらけの鍋と壺の耳〔取っ手〕とをぶらさげ、村の通りを引きずり回した、わしを殴って、こう言いながら。「この修道者が、われわれの処女を堕落させた、こいつを捕えろ、捕えろ」。そして、わしをすんでのところで死ぬほど殴ったのである。
 そのとき、老師の一人が来て云った。「異国の修道者を、いつまで殴るつもりか」。また、わしの奉仕者はといえば、恥じ入りつつわしの後について来た。というのも、彼をさんざんに侮辱し、こう言う者たちがいたからである。「見ろ、おまえが保証人になった隠修者だぞ。何ということをしてくれたのだ」。彼女の親たちも言う。「彼女を養う約束をしない限り、やつを放さない」。そこで、わしの奉仕者に云った。するとわしの保証人になってくれた。そこでわしの修屋に戻り、持てるかぎりの籠を彼にわたした、いわく。「売って、わしの妻に食べ物を与えてほしい」。そして、わしの想念に言いきかせた。「マカリオスよ、見よ、おまえは妻を見つけた。彼女を養うために、もう少し懸命に働かなくてはならない」。わしは夜も昼も働き、彼女に渡していた。しかし、哀れなこの女に出産のときが来ても、何日も陣痛に苦しみつづけ、出産できなかった。そこで〔人々は〕彼女に言う。「これはどうしたことだ?」。彼女が云った。「わたしにはわかっています、— 隠修者を讒訴し、偽って訴えました。事に及んだのはこの人ではなく、しかじかのです」。そこでわしの奉仕者は喜んでやって来て、言った、— あの処女は、事に及んだのは隠修者ではなく、彼に対して偽ったと言って告白するまで、出産することができなかった。そして、見よ、村全体がうやうやしくここに来て、あなたに悔い改めようとしています、と。これを聞いたわしは、人々がわしを悩ますことのないよう、ここスケーティスに逃げてきた。これが、わしがここに来たそもそもの理由である。〔主題別15-39〕

260.24
2 あるとき、アイギュプトス人マカリオスが、師父パムボーの行う奉献の祭儀のために、スケーティスからニトリアの山にやって来た。すると彼に老師たちが言う。「兄弟たちに説話(rJh:ma)を云ってください、師父よ」。相手が云った。「わしはまだ修道者になれないでいるが、修道者たちを見たことはある。というのは、あるとき、わしがスケーティスで修屋に坐っていると、諸々の想念がわしにたかった、いわく。『砂漠に去れ、そして、そこでそなたが何を目にするか見よ』。しかし、わしは5年間、『これはダイモーンから来たのかもしれない』と言って、想念と闘い続けた。しかし想念が続いたので、砂漠へと向かった。
 そして、〔水の〕湖を見つけ、その中央には島があった。砂漠の獣たちがそこに水を飲みに来ていた。すると、その真中に二人の裸の人間を見つけた。わしの身体は怯んだ。霊であると思ったからである。しかし彼らは、わしが怯んでいるのを見ると、わしにはなしかけた。『恐れるな。われわれも人間なのだから』。そこで彼らに云った。『あなたたちはどこから来たのですか、どうしてこの砂漠に来たのですか』。彼すると彼らが云った。『われわれは共住修道院の出身である。われわれに同意が得られたので、ここに来た。見よ、40年になる。一人はアイギュプトス人、もう一人はリビュア人だ』。自分たちも、わしに質問した、いわく。『世間はどうか。また、その時宜にかなって雨は降るかどうか、世間はその豊作を得ているかどうか』。そこで彼らに云った。『はい』。わしも彼らに尋ねた。『どうすれば修道者になれるでしょうか』。するとわしに言う。『世俗のものすべてから出離しなければ、修道者になることはできない』。そこで彼らに云った。『わたしは弱いので、あなたたちのようにはできません』。すると彼らもわしに云った。『仮にわれわれのようにできないのならば、そなたの修屋に坐れ、そしてそなたの罪を泣くがよい』。そこで彼らに尋ねた。『冬が来たら、凍えるのではありませんか。また、暑くなったら、あなたがたの身体は焼けるのではありませんか』。彼らが云った。『がわれわれにこのような生活を授けてくださった。だから、冬でも凍えず、夏にも暑さがわれわれに不正することはない』。そういう次第で、わしはまだ修道者になれないが、修道者たちを見たことはある、とそなたたちに云ったのじゃ。どうかわしを赦してほしい、兄弟たちよ」。〔主題別20-4〕

261.7
3 師父マカリオスが大砂漠に住んでいたときのことである。さて、そこで隠修していたのは独りであったが、下手には、非常に多くの兄弟たちを擁する別の砂漠があった。そこで、老師は道を見張っていた。すると、人間の姿をしたサターンが上って来て、彼のそばを通り過ぎようとしているのが目に入った。穴のあいた亜麻布の上着をまとっているように見えた。穴ごとに小瓶がぶらさがっていた。そこで彼に偉大な老師が言う。「どこへ行くのか」。するとこれに云った。「兄弟たちに想い出させに行くのだ」。そこで老師が云った。「おまえのその小瓶はいったい何のためだ?」。すると云った。「兄弟たちにいろいろな味を持って行くのだ」。老師が云った。「いったい、それで全部か」。答えた。「そうだ。一つが気に入らない者には他のものをやる。それも気に入らなければ、他のものを与える。全部の中で少なくとも一つは気に入るのがあるだろう」。こう云って立ち去った。
 老師はといえば、やつがが再び帰ってくるまで、道を見張りつづけた。そうして老師は彼を見つけるや、これに言う。「救いがあるように」。相手が答えた。「どうして俺に救いなどありえよう」。これに老師が言う。「どうして?」。相手が言う。「皆が俺に頑なで、誰も俺を迎えないのだ」。これに老師が言う。「それでは、おまえはあそこに友は一人もいないのか」。相手が答える。「いや、一人の修道者を友としてあそこに持っていて、そいつだけは俺に聴従する。彼は俺を見ると、風のよう変心するのだ」。これに老師が言う。「その兄弟はいったい何と呼ばれているのだ」。相手が言う。「テオペムプトス〔「の遣わせし者」の意〕だ」。彼はこう云うと、去って行った。
 そこで、師父マカリオスは立ち上がると、下手の砂漠に出かけて行った。すると兄弟たちが聞きつけて、ナツメヤシの枝を執って彼に会いに出て来た。それからめいめいが準備をした、老師が自分のところに立ち寄ってくれると考えたからである。しかし彼は、山にいるテオベムプトスという者が何者かを探した。そして見つけると、その修屋に入った。テオペムプトスは喜んで彼を迎えた。しかし彼が一人になりはじめるや、老師が言う。「そなたの事情はどうか、兄弟よ」。相手が云った。「あなたの祈りのおかげで、美しいです」。そこで老師が云った。「もろもろの悪しき想念が、そなたに闘いをしかけて来はしないか」。相手が云った。「今のところは美しいです」。云うことを恥じたからである。これに老師が言う。「見よ、わしは長い間修行して、万人から誉められているが、邪淫の霊が老いぼれたわしにたかるのじゃ」。テオペムプトスも答えた、いわく。「信じてください、師父よ、わたしもなのです」。つまり老師は、別の諸々の想念までが自分に闘いをしかけてくるということを口実に、ついに彼が告白するよう仕向けたのである。ついで、彼に言う。「そなたはどのくらい断食するのか?」。相手が彼に言う。「第九時課までです」。これに老師が言う。「晩まで断食し、修行せよ。福音書と他の〔聖〕書を暗誦せよ。もし想念がそなたにのしかかっても、決して下を見ず、つねに上を見よ。そうすれば、すぐに主がそなたを助けに来てくださる」。老師は兄弟に指図したうえで、自分の砂漠に帰って行った。
 そして、再び見張りをしていると、例のダイモーンを見たので、これに言う。「今度はどこに行くのか」。相手が言う。「兄弟たちに想起させるために」。そして去っていった。再び戻って来ると、これに聖者が言う。「兄弟たちはどうだつたか」。相手が言う。「うまくいかなかった」。そこで長老が言う。「なぜか」。相手が云った。「みなが頑なで、もっと悪いことに、俺に服従していたあの友までが、誰が惑わせたのか知らないが、俺に従わないだけでなく、一番頑固になってしまった。だから、当分の間はあそこには足を向けまい、と決心したのだよ」。こう云って、老師を残して去って行った。そこで、聖者も自分の修屋に入ったのである。〔主題別18-13〕

264.33
4 偉大なる師父マカリオスが、師父アントーニオスを山に訪ねた。そして彼が戸を叩くと、彼のところに出て来て、彼に云った。「おまえは誰か?」。相手が謂った。「マカリオスです」。すると、戸を閉めて中に入り、彼を放っておいた。しかし彼の忍耐を見たので、彼に戸を開け、彼に冗談めかして、言った。「そなたに関する噂を聞いて、長い間そなたに会いたいと思っていたのだ」。そして彼を客遇して、休ませた。彼がとても疲れていたからである。で、夕方になると、師父アントーニオスが自分のナツメヤシの枝を濡らした。そこでこれに師父マカリオスが言う。「わたしも自身のために濡らすよう命じてください」。相手が云った。「濡らすがよい」。そこで大きな束をつくり、濡らした。そうして彼らは夕方から坐り、魂の救いについて話しながら、縄を編んだ。そして縄は窓を通って洞窟の中へ下がっていった。明け方に浄福なるアントーニオスが入ると、師父マカリオスの縄の長さを見て、言った。「この両手から偉大な力が出来するのだ」。〔主題別7-14〕

5 師父マカリオスがスケーティスの荒廃について兄弟たちに言うを常とした。「沼の近くに修屋が建てられるのを見たら、その荒廃は近いと知れ。樹木を見たら、それは戸口に迫っている。少年たちを見たときには、そなたたちの羊の毛皮を取って、隠修するがよい」。〔主題別18-16〕

6 彼がさらに言うを常としたのは、兄弟たちを慰めようとしたからである。「ダイモーンに憑かれた少年が、自分の母親に連れられてここにやって来て、自分の母親に言った。『立つのだ、婆さん、ここから連れて行ってやろう』。彼女が云った。『わたしはもう歩けない』。するとこれに少年が云った。『俺があんたを背負って行ってやるよ』。わしが驚いたのは、ダイモーンの悪辣さじゃ、いかに彼らを逃げさせようとするかという」。〔主題別18-15〕

7 師父シソエースが言うを常としていた。「わしがマカリオスとともにスケーティスにいたとき、彼といっしょに7名で収穫に登って行った。すると、見よ、一人の寡婦がわれわれの後ろで泣きながら〔落穏を拾って〕いたが、彼女は泣くのをやめなかった。そこで、老師が地所の主人に声をかけ、これに云った。『この女はどうしたのか、絶えず泣いているのは?』。これに言う。『彼女の夫が人から物を預かったまま、急死し、どこにそれを置いたか云わなかったのです。それで、預け主が彼女と彼女の子供たちを奴隷にしようとしているのです』。これに老師が言う。『真昼の休息の間に、われわれのところに来るように彼女に云うがよい』。こうして女が来ると、これに老師が云った。『なぜ、そんなにずっと泣いているのか』。265.20 すると云った。『わたしの夫が、ある人から預かり物をしたまま死に、死ぬときに、それをどこに置いたか云わなかったのです』。すると老師が彼女に云った。『こちらへ〔来て〕、彼をどこに埋葬したか、わしに示すがよい』。そして、兄弟たちを引き連れて、彼女とともに出かけた。そしてその場所に着くと、老師が彼女に云った。『そなたの家にひっこんでいるがよい』。そして彼らが祈っている途中、老師は死者に声をかけた、いわく。『何某よ、他人の預かり物をどこに置いたのか』。すると相手が答えて云った。『わたしの家の中、寝台の足元に隠してあります』。265.30 そこでこれに老師が言う。『復活の日まで、再び眠るがよい』。兄弟たちはこれを見て、恐ろしさも彼の足元に倒れ伏した。すると彼らに老師が云った。『わしの力でこのことが起こったのではない。わたしは何者でもないからだ。いや、寡婦と孤児のために、がこのことを行われたのだ。これこそが偉大なことである、は罪のない魂を欲するということが。そして、求めることは何でも、得られるのだ』。そして、行くと、預かり物がどこにあるかを寡婦に告げた。彼女はそれを取って、その預け主に返し、自分の子供たちを自由にした。そこで、この話を聞いたすべての人は、を栄化したのである」。〔主題別19-12〕

8 師父ペトロスは聖マカリオスについて言うを常としていた、— あるとき彼が一人の隠修者のところへ来てみると、その人が具合を悪くしているのを見つけて、何か食したいものがあるか訊いた、自分の修屋には何もなかったからである。すると、その人物が、「pastillumを」と謂ったので、この勇気ある人物〔マカリオス〕は、ためらうことなく都市アレクサンドレイアまで行き、病人に与えた。さらに驚くべきは、この出来事を誰にも明かさなかったことである。

9 彼がさらに云っていた、— 師父マカリオスはどんな兄弟に対しても無悪に振舞ったので、ある人たちが彼に謂った。「なぜそのように振舞うのですか?」。相手が云った。「この恩寵をわしに与えてくださるよう、わしは12年間わが主に隷従してきたのに、そなたたちは皆、それをやめるようにとわしに忠告するのか」。

10 師父マカリオスについて言い伝えられている、— 彼が兄弟たちと時を過ごすときには、こんな決まりを自身に定めていた、— たまさか葡萄酒があるときには、兄弟たちのために飲め、しかし葡萄酒一杯ごとに、1日水を飲んではならない、と。そういう次第で、兄弟たちは彼に休息の恩寵を与えようとした。すると老師は喜んでそれを受けたが、それは自分自身を苦しめるためであった。268.20 弟子の方は事情を知って、兄弟たちに言った。「主にかけて、彼に葡萄酒を与えないでください。さもないと、修屋で自らを圧殺しかねません」。これを知った兄弟たちは、もはや彼に与えることはなかった。〔主題別4-29〕

11 あるとき、師父マカリオスが沼地から自分の修屋に帰ろうと、ナツメヤシの枝を運んでいたところ、見よ、道中、小刀を持った悪魔が彼に出くわした。そこで〔悪魔が〕彼を叩こうとしたが、その力がなかった。それで彼に言う。「おまえから、マカリオスよ多くの力が出ていて、俺はおまえに何もできない。というのは、見よ、おまえがすることは何でも俺もする。おまえが断食すれば、俺もする。おまえが徹夜すれば、俺も全く眠らずにいる。おまえがわしに勝利するのは、ただ一つのことによってだ」。これに師父マカリオスが言う。「それは何だ」。相手が謂った。「おまえの謙遜だ。これによってこそ、俺はおまえに対して何もできないのだ」。〔主題別15-40〕

268.35
12 師父たちの中の幾人かが、アイギュプトス人である師父マカリオスに尋ねた、いわく。「なぜあなたの身体は痩せこけているのですか、食事のためですか、それとも断食のためですか」。すると老師が彼らに言う。「燃える薪を掻き回す枯れ木は、最後には火によって焼き尽くされる。それと同じように、もし人がへの畏れによって自分の理性を浄めるならば、への畏れそのものが彼の身体を焼き尽くすのだ」。〔主題別3-18〕

13 あるとき、師父マカリオスは、スケーティスからテレヌゥティスに上っていった。そして眠ろうとして殿に入った。そこには、ヘッラス人たちの古いミイラがあった。そこでその一つを取って、枕として自分の頭にあてがった。そこでダイモーンたちは、剛胆さを見て、嫉妬した。そこで、彼を脅かそうとして、女の名のように声をかけた、いわく。「何某婦人、こちらに、わたしたちといっしょ水浴びに行こう」。すると他のダイモーンが、死人の中からかのように、彼の下から応じた、いわく。「わたしの上に異邦人がいるので、行けないのです」。しかし老師は脅されなかった。それどころか、威勢よくミイラを叩いた、いわく。「起て、暗闇の中に去れ、できるならな」。これを聞いてダイモーンたちは大声で叫んだ、いわく。「おまえは俺たちに勝った」。そして、辱められたまま逃げ去ったのだった。〔主題別7-15〕

14 アイギュプトス人である師父マカリオスについて言い伝えられている、— スケーティスから上ってきて、しかも大きな籠をかついでいたので、疲れ果てて坐りこんだ。そして祈った、いわく。「よ、あなたはわたしに力がないことをご存じです」。すると、ただちに、川のほとりにいる自分に気づいた。〔主題別19-10〕

15 小児麻痺の息子を持つ人がアイギュプトスにいた。そこでこれを師父マカリオスの修屋に連れて來た。269.10 そして、泣いているこれを扉の前に放って、遠く離れていた。すると老師が覗いて、これ子どもを見て、これに言う。「誰がそなたをここに運んだのか?」。すると言う。「ぼくの父さんがここに投げ出して、行ってしまいました」。これに老師が言う。「立って、彼をつかまえよ」。するとすぐに健康になって、立ち上がって、自分の父親につかまえた。じつにこうして、自分たちの家に戻っていったのである。〔主題別19-11〕

16 偉大なる師父マカリオスは、教会を解散させるとき、スケーティスの兄弟たちに言った。「逃げるがよい、兄弟たちよ」。するとこれに、老師たちの一人が云った。269.20「この砂漠をわたってどこに逃げればいいのですか」。相手は、口に自分の指を当てた、いわく。「ここから逃げよ」。そして自身の修屋に入り、扉を閉めて、坐った。〔主題別4-30〕

17 同じ師父マカリオスが云った。「人を咎めようとして、怒りに衝きうごかされるなら、自分の情念を満足させてしまう。つまり、他の者たちを救おうとして、自分自身を滅ぼしてはならない」。〔主題別4-31〕

269.28
18 師父マカリオスが、アイギュプトスにいたとき、駄獣を連れて来て、彼〔マカリオス〕の用品を盗み出している者を見つけた。しかし彼自身が余所者として盗人の前に現れ、駄獣にいっしょに積んだうえで、大きな静寂さのうちに、こう謂って彼を送った、— われわれは何ものをも持たずにこの世にやって来た、明らかに、何かを持ち出すこともできない。主が与えてくださった。ご本人の御旨のままに、また成ったのだ。万事において、主は祝せられ給え〔1テモテ6:7、ヨブ1:21〕」。〔主題別16-8〕

19 ある人々が師父マカリオスに、こう入って尋ねた。「どのように祈るべきでしょうか?」。彼らに老師が言う。「必要なのは、くどくどいうことではなく、両手を広げて、言うことだ。『主よ、御心のままに、ご存知のとおりに、憐れみたまえ』。また、闘いが起こったならば、『主よ、助けたまえ』。主ご自身は、何が有益なことかを知っておられ、われわれに応じて憐れんでくださる」。〔主題別12-11〕

269.45
20 師父マカリオスが云った。「そなたの中で侮り(ejcoudevnwsiV)が賞讃となり、貧困が富となり、欠乏が豊富さになったならば、そなたは死ぬことはないだろう。というのは、美しく信仰し、敬虔さをもって働く者が、不浄な情念やダイモーンたちの迷妄に落ち込むことはあり得ないだからだ」。

21 言い伝えられている、— 二人の兄弟がスケーティスで躓いた。そこで都会人の師父マカリオスは彼らを破門した。272.1 そこで幾人かがやって来て、アイギュプトスの偉人、師父マカリオスに云った。相手が云った。「破門されるのは兄弟たちではなく、マカリオスが破門されるべきだ」。というのは、彼を愛していたからである。都会人マカリオスは、老師によって破門されたと聞いて、沼地に逃げた。すると、師父の大マカリオスが出かけて行き、彼が蚊にきされているのを見つけ、これに言う。「そなたは兄弟たちを破門したが、見よ、彼らは村に隠棲することができた。272.10 わたしはそなたを破門したが、そなたは内奥の寝室に逃げ込む美しい処女のように、ここに逃れた。そこでわしはあの兄弟たちを呼ぴ、彼らから聞き知ろうとしたが、彼らは云った。『そのようなことは何もありませんでした』」と。されば、そなたも、兄弟よ、ダイモーンたちにからかわれないように注意せよ(そなたは何も見ていなかったのだから)、むしろそなたは、そなたの躓きを悔改めよ」。相手が云った。「よろしければ、どうかわたしに悔い改めを授けてください」。すると老師は彼の謙遜を見た、言った。「行け、そして1週毎に食事をして、3週間断食せよ」。実は、数週間にわたって断食するということこそが、彼のいつもの行いだったからである。

272.20
22 師父モーウセースがスケーティスの師父マカリオスに云った。「わたしは静寂さを保ちたいのですが、兄弟たちがわたしを放っておかないのです」。するとこれに師父マカリオスが言う。「わしが観ずるところ、そなたの自然本性が柔いゆえ、兄弟を追い返すことができないのだ。しかし、静寂さを保ちたいならば、ペトラの奥地にある砂漠に行け、そうすれば、そなたは静寂さを保てるだろう」。そこで、そのことを実行し、平安を得たのであった。

23 ある兄弟がアイギュプトス人、師父マカリオスを訪ね、これに言う。「師父よ、どうすれば救われるか、どうかわたしに説話(rJh:ma)を云ってください」。そこで老師が言う。「墓場に行って、死者たちを侮辱せよ」。そこで兄弟は出かけて行き、侮辱し、石を投げた。そして戻って老師に報告した。するとこれに言う。「彼らはそなたに何も話さなかったか」。相手が謂った。「何も」。これに老師が言う。「明日、もう一度行って、彼らを栄化せよ」。そこで兄弟は出かけて行って、彼らを栄化した、いわく。「あなたがたは使徒です、聖人です、義人です」。そして老師のもとにもどって、これに云った。「栄化しました」。するとこれに言う。「そなたに何も答えなかったか?」。兄弟が謂った。「何も」。これに老師が言う。「そなたは自分がどれほど彼らを侮辱したかを知っているが、彼らは何もそなたに答えず、272.40 また、そなたはどれほど彼らを栄化したかを〔知っているが〕、彼らは何もそなたに話さなかった。それと同じように、そなたも救われたいならば、死者になるがよい。人間どもの不正も、かれらの栄光も思量せぬこと死人のごとくせよ。そうすれば、救われ得るであろう」。

272.45
24 あるとき、師父マカリオスが兄弟たちと連れ立ってアイギュプトスに通りがかったとき、少年が自分の母親に言うのを耳にした、いわく。「お母さん、ある富者が僕を愛してくれるけれど、僕は彼が嫌いなんだ。それから、ある貧しい人が僕を嫌うけれど、僕は彼を愛しているんだよ」。これを聞いて師父マカリオスは驚いた。すると、兄弟たちが彼に言う。「この説話(rJh:ma)は何を意味しているのですか、師父よ、あなたが驚かれたのは?」。すると彼らに老師が言う。「まことに、われらの主は富者であり、われわれを愛してくださるが、われわれは彼の言葉を聞こうとしない。他方、われわれの敵なる悪魔は貧しく、われわれを憎んでいるが、われわれは彼の不浄を愛するものだ」。

25 師父ポイメーンが涙にくれながら、彼に呼びかけた、いわく。「どうかわたしに説話(rJh:ma)を云ってください、どうすれば救われるのでしょうか」。すると老師が答えて彼に云った。「そなたが求めていることは、今や修道者たちから離れ去ってしまった」。

273.1
26 あるとき、師父マカリオスが師父アントーニオスを訪ねた。そして、彼と話した後、スケーティスに帰って来た。すると師父たちが彼を出迎えにやって来た。そして話の途中で、彼らに老師が云った。「われわれのところには奉献の祭儀がないと、わしは師父アントーニオスに申し上げた」。しかし、師父たちは他のことについて話し始め、老師から答えを学ぶべくもはや質問しようせず、老師もまた彼らに何も云わなかった。ところで、これは師父たちのひとりが言っていたことだが、自分たちを益する事について兄弟たちが質問するのを忘れていると師父たちが見れば、自分たちの方から話を切り出すのが当然であった。しかし、もし兄弟たちから要求されなければ、もはや言葉を話すことはない。尋ねられないのに話したり、無駄話をしたりしているなどと恩われないためである。

27 師父ヘーサイアスが師父マカリオスに尋ねた、いわく。「どうかわたしに説話(rJh:ma)を云ってください」。するとこれに老師が言う。「人間どもを避けよ」。これに師父ヘーサイアスが言う。「人間どもを避けるとは、どういうことですか?」。すると老師が彼に云った。「そなたの修屋に坐し、そなたの罪を泣くことである」。

28 師父マカリオスの弟子である師父パフヌゥティオスが言った、— わしの師父に願った、いわく。「どうかわたしにお言葉をください」。相手が謂った。「ひとに悪行してはならぬ、ひとを断罪してもならぬ。これらを守れ、そうすれば救われよう」。

29 師父マカリオスが云った。「悪しき噂のある兄弟の修屋で眠ってはならない」。

30 あるとき、兄弟たちが師父マカリオスをスケーティスに訪ねたが、彼の修屋には、腐った水以外何も見当たらなかった。そこで彼に言う。「師父よ、上の村においでください、そうすればあなたを休ませます」。彼らに老師が言う。「そなたたちは、兄弟たちよ、村にある何某のパン焼き場を知っているか」。するとこれに言う。「はい」。彼らに老師が言う。「わしもそれを知っている。川が滔々たる何某の地所を知っているか」。彼に言う。「はい」。彼らに老師が言う。「わしもそれを知っている。だから、わしは望むときに、そなたたちの扶けを借りずに、自分で上ってゆく」。

31 師父マカリオスについて言い伝えられている、— 兄弟が彼のところに、聖にして偉大なる長老に対するかのように、畏れをもってやって来ると、彼には何も話しかけなかった。しかし、兄弟たちのひとりが、彼をからかうかのように、「師父よ、あなたが駱駝曳きで、硝石を盗んでこれを売ろうとしたとき、番人たちがあなたを殴りつけませんでしたか」と言ったときには、誰かがこのように彼に言ったときには、何を彼に尋ねようと、喜んで相手に話すのであった。

273.47
32 偉大なる師父マカリオスについて言い伝えられている、— 彼は書かれているとおり、まさに「地上の」〔使徒言行録11:26〕となった、が世界を覆い守るように、師父マカリオスは、過ちを見ても見なかったように、また聞いても聞かなかったように、それらを覆い守ったからである。

33 師父ビティミオスが物語るを常としていた、— 師父マカリオスは言うを常としていた。「かつて、わしがスケーティスに住持していたとき、二人の異邦の若者がそこへ下ってきた。一人は髭を生やしており、もう一人は生やしかけていた。彼らはわしのところに来た、いわく。「師父マカリオスの修屋はどこですか」。そこでわしが云った。「彼に何の用か?」。すると言う。「あの方について、またスケーティスについて聞いて、彼に会うためにやって来ました」。彼らに言う。「それはわたしだ」。すると、彼らは跪いた、いわく。「わたしたちはここに留まりたいのです」。しかしわしは、彼らが繊細で裕福な出であることを見て取って、彼らに言う。「そなたたちはここに住持できまい」。すると年長の方が言う。「ここに住持できないのであれば、276.10 よそに行きます」。わしはわしの想念に言う。『何ゆえわしは彼らを追い払ったり、躓かせたりしようとするのか。労苦が彼らを自分たちから逃げ出させるだろう』。そこで、彼らに言う。「来て、できるならば、自分たちのための修屋を建てよ」。すると彼らが言う。「わたしたちに場所を示してください、そうすれば建てます」。そこで老師は彼らに斧と、パンと塩で満たした籠を与えた。また、彼らに老師は堅い岩場をも示した、いわく。「ここで石を切り、沼地から材木を運び、屋根をふいて住持するがよい」。ところでわしは、とマカリオスが謂う、— 彼らが労苦のためにここを離れ去るだろうと考えた。ところが彼らは、ここで何をして働くべきか、わしに尋ねた。彼らに言う。「縄をなえ」。そうして、沼地からナツメヤシの枝を取って、縄のない始めと、どのようになうべきかを示し、云った。た。「籠を編んで、監督者たちに渡せ、そうすれば、そなたたちにパンをくれる」。そうして、わたしは立ち去った。
 さて、彼らは忍耐をもって、わしが彼らに云いつけたことすべてを為した。そして3年間、わしのもとを訪ねなかった。わしは想念と闘いつづけていた、いわく。「彼らは想念を尋ねに来ないが、彼らの為業は一体どうなっているのだろうか。はるか遠くの者たちがわしのところに来る。しかるに近くにいるこの者たちはやって来ず、他の者たちのところにも行っていない。奉献祭儀に黙って集まりに来るだけだ」。そこで、わしは1週間断食して、彼らの為業をわしに示してくださるようにと、に祈った。で、1週間後、わしは立ち上がり、彼らがどのように住持しているかを見るために、彼らのところに出かけた。そしてわしが扉を叩くと、彼らは開き、黙ってわしに挨拶した。わしは祈りをなして、坐った。すると年長の方が若い方に、出て行くように合図して、何も話しかけずに、縄をなうために坐った。そして、第9時に、彼が手を叩くと、276.40 若い方が戻って来て、粥を少しつくり、食卓をしつらえた、年長の方が彼に合図したからである。そして、彼はそこに3つのビスケットを置いて、黙って坐った。そこでわしが云った。「立ち上がれ、食べよう」。そして、われわれは立ったまま食べた。すると彼が水差しを持って来たので、われわれは飲んだ。夕方になると、彼らがわしに言う。「出かけますか」。しかしわしは云った。「いや、ここで眠ろう」。すると、彼らはわしのために隅のほうに茣蓙を敷き、別の茣蓙を自分たちのために別の隅に敷いた。彼らは帯と肩衣とを解き、わたしの前で一緒にござに横になった。
 彼らが身を横たえると、わしは、彼らの為業をわたしに開示してくださるように、に祈った。すると、屋根が開き、真昼のような光が差し込んできた:。しかし、彼らにはその光は見えなかった。彼らはわたしが眠っていると考えたので、年長の者が若いほうの横腹をつついて起こした。彼らは帯を締め、手を天に伸ばした。わたしは彼らを見ていたが、彼らはわたしを見ていなかった。すると、わたしはダイモーンたちが蝿のように若いほうの修道者に寄って来るのを見た。或る者は彼の口の中に、他の者は眼の上に居座ろうとした。わしはまた、主の使いが火の剣を持って彼を取り囲み、彼からダイモーンたちを追い払うのを見た。しかし、年長の修道者には近づくことができなかった。
 夜明け頃、彼らは身を横たえた。わしも眠りから目を覚ましたように振舞い、彼らも同じようにした。年長の者が、次の言葉だけをわしに云った。「詩編を12編唱えてもよいでしょうか」。わしが言う。「よし」。すると若い方が6つの唱句とアッレールゥイアを唱え、5つの詩編を歌うと、唱句に従って、火のような松明が彼の口から出て、天に昇っていった。同じように、年長の者が詩編を唱えるためにその口を開くと、火の縄のようなものが出て来て、天まで昇っていった。わしも心から少し歌った。外に出ながらわしは言う。「わしのために祈ってほしい」。しかし彼らは跪いた、黙ったまま。277.20 そこで、わしは、年長の者は完徳に達しているが、若い方は、敵がいまだ闘いをしかけてくることを知った。ところが、数日後、年長の者が永遠の眠りにつき、さらに3日後には若い方が〔死んだ〕。それからは、師父たちの何人かが師父マカリオスを訪ねるたびに、彼らをかの兄弟たちの修屋に連れて行った、いわく。「来て、異邦の若者たちの殉教の場所を見よ」。〔主題別20-3〕

277.29
34 あるとき、山の長老たちがスケーティスの師父マカリオスのもとに人を遣わした、彼に呼びかけるためである。つまり彼らは彼に謂う。「民がみなあなたのことで心配しないように、あなたがわたしたちのところに来て、あなたが主のみもとに旅立つ前に、あなたにお目にかかれるようお願いします」。そこで、彼が山に到着すると、民がみな彼の周りに集まった。そして、兄弟たちのために言葉をくださるよう彼に呼びかけた。相手が聞いて謂った。「泣こう、兄弟たちよ、そしてわれらの両眼をして涙を流さしめよう、われらの涙がわれらの身体を焼き尽くすところに、われわれが赴く前に」。そこで、皆は泣き、自分たちの面を伏せ、そして云った。「師父よ、わたしたちのために祈ってください」。〔主題別3-20〕

35 また別のとき、ダイモーンが戦刀をたずさえて師父マカリオスに襲いかかった、彼の足を斬ろうとしたからである。しかし彼の謙遜のせいで果たせなかったので、彼に言う。「おまえが持っているものは何でも、われわれも持っている。ただ謙遜によってのみ、おまえはわれわれを凌駕し、また制覇する」。

277.48
36 師父マカリオスが云った。「人間どもによってわれわれに招来されたもた諸悪を思い起こせば、を想起する力を排除する。しかし、ダイモーンたち諸悪を思い起こすならば、われわれは無傷であろう」。〔主題別10-48〕

37 師父マカリオスの弟子、師父パプヌゥティオスが云った、— この老師は言うを常とした、— わしが少年だった頃、他の少年たちと連れ立って、牛に草を食ませに行った。が、彼らは無花果を盗みに行った。彼らが駆け出したとき、その1つが落ちたので、わしはそれを拾って喰った。そのことを思い起こすたびに、泣きつつ坐るのだ、と。

38 師父マカリオスが云った、— あるとき、砂漠を歩いていて、地に打ち捨てられた死人の頭蓋骨を見つけた。ナツメヤシの枝の杖でそれをつつくと、頭蓋骨がわしに話しかけてきた。そこでこれに言う。「おまえは誰だ」。頭蓋骨がわしに答えた。「わたしは偶像の大祭司で、この地に住むヘッラス人の出でした。ところであなたは、聖霊の使者(pneumatofovroV)マカリオス。罰を受けている者たちをあなたが憐れみ、彼らのために祈ってくれるときはいつでも、幾分か慰めを得ているのです」。これに老師が言う。「いかなる慰めか、またいかなる懲罰なのか?」。これに言う。「天が地から隔たっているほどに隔たって〔イザヤ55:9〕、われわれの下には火があり、われわれの足の先から頭の天辺まで火の直中にいるのです。そして、誰も顔を合わせて他の者を見ることはできません。それどころか、それぞれの顔を別の者の背にくっつけているのです。ただ、あなたがわたしたちのために祈ってくれるときには、他の者の顔を少しだけ見ることができます。それこそが慰めなのです」。すると老師は泣きながら云った。「悲しいかな、人間が生まれた日よ」。これに老師が言う。「他にもっと酷い責め苦があるのか?」。これに頭蓋骨が言う。「わたしたちの下に、もっと酷い責め苦があります」。これに老師が言う。「そこにはどんな者たちがいるのか?」。これに頭蓋骨が言う。「わたしたちはを知らなかった者たちとして、少しは憐れみを受けています。しかし、を知りながらそれを否定した者たちは、わたしたちの下にいるのです」。そこで、老師は頭蓋骨を取って、これを埋葬したのであった。

39 アイギュプトス人の師父マカリオスについて言い伝えられている、— あるとき、彼はスケーティスからニトリアの山に上った。そして彼がその場に近づくと、自分の弟子に云った。「少し先を行け」。そこで彼が前を歩いていると、ヘッラス人たちのある官に行き逢った。すると兄弟が大声で声をかけた、いわく。「おい、おい、ダイモーンよ、どこへ走って行くのだ?」。すると件の者が振り返って、兄弟に殴打をくらわせ、これを半殺しの目に遭わせた。それから、木を拾いあげて走った。しかし少し先の方で、師父マカリオスは走ってくる彼に出会った。そしてこれに言う。「救われるがよい、救われるがよい、労苦する人よ」。すると驚いて、彼のところにやって来て、そして云った。「わしの中にどんな美しいところがあるのですか、わしに話しかけられるとは」。これに老師が言う。「そなたが苦労しているのを見たからじゃ。そなたは無駄に苦労しているのを知らないのじゃ」。これに本人も言う。「わしはあんたの挨拶に胸を打たれた。そして、あんたがの味方であることを知った。わところが、わしと行き逢った別の修道者は悪いやつで、わしを侮辱しおった。そこでわしも、死ぬほどやつに殴打をお見舞いした」。そこで老師は、それが自分の弟子であることを知った。すると彼の足を抱いて官が言った。「わしを修道者にしてくれなければ、あんたを放しません」。彼らは弟子のいるところに行き、これをかついで山の教会に連れて行った。するとかの官が彼といるのを見て、仰天した。彼らは彼を修道者にした。そこで、多くのヘッラス人たちは、彼によってキリスト教徒となった。それゆえ、師父マカリオスは言うを常とした、— 悪しき言葉は、美しき人たちさえも悪くする。美しい言葉は、悪しき人たちさえも美しくする、と。

281.5
40 師父マカリオスについて言い伝えられている、— 彼の留守中に、盗賊が彼の修屋に忍び込んだ。ところが、彼が修屋に戻って来て、自分の用品を盗賊が駱駝に積んでいるのを見つけた。そこで、自分が修屋に入り、用品を取って、彼といっしょに駱駝に積んだ。そうして積み終わると、盗賊は駱駝を立たせるために叩き始めた。が、立ち上がろうとしなかった。立ち上がろうとしないのを見て、修屋の中に入って行き、小さな鋤を見つけた。そして出てくると、こう言いながら駱駝に積んだ。「兄弟よ、駱駝はこれを求めていたのだ」。そして老師は、脚でそれ〔駱駝〕を蹴った、いわく。「立て」。するとすぐに立ち上がり、彼の言葉に従って数歩歩いた。だが、再び座り込むと、用品をすべて降ろすまでは、起き上がらなかった。そして、そういうふうにして立ち去ったのである。

281.21
41 師父アイオーが師父マカリオスに尋ねた、いわく。「どうかわたしに説話(rJh:ma)を云ってください」。これに師父マカリオスが言う。「人間どもを避けよ。そなたの修屋に坐し、そなたの罪を泣け。人間どものおしゃべりを好むな。そうすれば、救われるであろう」。〔主題別2-3〕


281."26t"
師父モーセースについて

281.27
1 あるとき、師父モーウセースが邪淫に激しく闘いを挑まれた。もはや修屋に坐っている力なく、出かけて行って、師父イシドーロスに打ち明けた。すると、自分の修屋にもどるよう老師が彼に呼びかけた。承知しなかった、いわく。「わたしにはその力がありません、師父よ」。すると彼を連れてみずから屋根にのぼり、彼に言う。「西を向け」。そちらを向くと、ダイモーンたちの無数の大群を見た。連中は混乱し、戦いに騒ぎ立っていた。次に師父イシドーロスが彼に言う。「東をも見よ」。そこで向くと、栄化される聖なる天使たちの無数の大群を見た。すると師父イシドーロスが云った。「見よ、彼らは、聖人たちを助けるために主から遣わされたものたちである。だが、西の方の連中は、彼らに戦いを仕掛ける者たちだ。されば、われわれとともにいる者たちの方が多数である」。じつにこういうふうにして、師父モーウセースはに感謝し、勇気を取り戻して、自分の修屋に戻っていった。〔主題別18-17〕

281.46
2 あるとき、スケーティスで兄弟が躓いた。そこで集会が関かれることになり、師父モーウセースのところに遣いが出された。しかし、彼は来ようとしなかった。そこで司祭は彼のもとに遣いをやった、いわく。「お越しください、民があなたを待っています」。相手は立ち上がって、出かけた。ただし、穴のあいた籠を取り、砂を満たして、担いだ。彼を出迎えに出て来た人々が彼に言う。「それは何ですか、師父よ」。そこで彼らに老師が云った。「わしの諸々の罪はわしの背中にあふれているが、わしにはそれらが見えない。それなのに、わしは今日、他人の罪を裁こうとしている」。これを聞いた者たちは、兄弟には何も話さず、彼を赦した。〔主題別9-7〕

3 別のとき、スケーティスで集会が持たれたが、師父たちが彼を吟味しようとして、彼を軽蔑した、いわく。「このアイティオポス人までわれわれの中に来ているとは、どういうことか?」。しかし彼は、これを聞いても、沈黙を守っていた。彼らが解散した後、彼に言う。「師父よ、先ほどあなたはちっとも当惑なさいませんでしたか?」。彼らに言う。「当惑した、が、話さなんだ〔詩篇76:5〕」。〔主題別16-9〕

4 師父モーウセースについて言い伝えられている、— 聖職者となり、ひとびとは彼に法衣(ejpwmivV)を授けた。そして大主教が彼に言う。「見よ、そなたは全身真っ白となったのだ、師父モーウセースよ」。これに老師が言う。「外見はです、教父なる主よ、内面もそうでありますように!」。そこで大主教が彼を吟味しようとして、聖職者たちに言う。「師父モーウセースが至聖所に入って来たら、彼を追い出し、彼についてゆけ、彼が何と言うかを聞くために」。さて、老師が入っていった。すると彼らは彼を咎め、追い出した、いわく。「出て行け、アイティオプス人め」。すると相手は出て行きながら、自身に言った。「彼らをおまえを美しく扱ったのだ、灰色肌の黒ン坊よ。人間ではないのに、おまえはどうして人間どもといっしょするのか?」。〔主題別15-43〕

5 あるとき、スケーティスで命令が授けられた、いわく「今週は断食せよ」。たまたま、アイギュプトスから兄弟たちが師父モーウセースを訪ねて来ていた。そこで、彼らに少しの煮物をこしらえた。すると隣人たちが煙を見て、聖職者たちに云った。「見よ、モーウセースが命令を破って、自分のところで煮物をつくった」。彼ら〔聖職者たち〕が云った。「彼が来たら、われわれが彼に話そう」。さて、土曜日になって、聖職者たちは師父モーウセースの大いなる行住坐臥を見て、信者たちの前で彼に言った。「師父モーウセースよ、あなたは人間どもの命令を捨てて、のそれを守った」。〔主題別13-4〕

6 兄弟がスケーティスに師父モーウセースを訪ねた、彼に言葉を請うためである。これに老師が言う。「行け、そなたの修屋に坐れ。そうすれば、284.40 そなたの修屋がそなたにすべてを教えてくれるであろう」。〔主題別2-19〕

7 師父モーウセースが云った。「人間どもを逃れる人間は、葡萄の房に似ているが、人間どもといっしょにいる者は未熟な葡萄のごとし」。〔主題別2-20〕

8 あるとき、長官が師父モーウセースのことを聞き及び、彼に会うためにスケーティスにやって来た。そこである人たちが、事情を老師に報告した。すると彼は立って、沼地に逃げた。すると〔長官一行が〕彼に出くわして、いわく、「どうかわれわれに云ってください、ご老人よ。師父モーウセースの修屋はどこですか。すると彼らに言う。「彼に何を求めているのですか。彼は愚か者ですよ」。しかし長官は教会に行き、聖職者たちに言う。「わたしは師父モーウセースのことを聞き及び、彼に会いに下ってきました。ところが、見よ、アイギュプトスに向かう老人がわれわれに行き合い、彼に云いました、『師父モーウセースの修屋はどこですか』。するとわれわれに言うのです。『彼に何を求めているのですか。彼は愚か者ですよ』と」。これを聞いた聖職者たちは悲しんだ、いわく。285.16「聖人のことをそのように話す老人とは、どのような人でしたか?」。彼らが云った。「老人で、古い服を来て、背丈があって色黒い人です」。彼らが云った。「それこそ師父モーウセースです。自分があなたがたに会わないために、あなたがたにそんなことを云ったのでしょう」。じつに多くのことを益されて、長官は帰って行った。〔主題別8-13〕

285.22
9 師父モーウセースがスケーティスで言うを常とした。「もしわれわれがわれわれの師父たちの命令を守るならば、蛮族がここに来ることはないと、わしはにかけてそなたたちに保証しよう。だが、われわれが守らないならば、この地は荒らされるだろう」。〔主題別18-18前半〕

10 またかつて、兄弟たちが彼のそばに坐っていたころ、彼らに言った。「見よ、蛮族が、今日、スケーティスに襲来するであろう。さあ、立ち上がって、逃げよ」。彼らが彼に言う。285.30「するとあなたはお逃げにならないのですか、師父よ」。相手が彼らに云った。「わしは長年この日を待っていたのじゃ。『剣を執る者たちはみな、剣に滅びる』〔マタイ26:51〕と言われた主なるクリストスの言葉が成就するために」。彼らが彼に言う。「わたしたちも逃げないで、あなたとともに死にます」。相手が彼らに云った。「わしは関わりを持たぬ。めいめいが在り方を見よ」。ところで、兄弟は7人で、彼らに言う。「見よ、蛮族が門まで近づいて来ている」。やがて入って来て、彼らを殺した。彼らの中の一人は縄の山の後ろに逃れた。そして、7つの冠が降りて来て、彼らに戴冠するのを見た。〔主題別18-18後半〕

11 兄弟が師父モーウセースに尋ねた、いわく。「わたしの目の前に何かが見えるのですが、それを捉えることができません」。これに老師が言う。「埋葬された者たちのように、そなたが死人にならぬ限り、それを捉えることはできぬ」。

285.47
12 師父ポイメーンが言った、— 兄弟が師父モーウセースに、どうすれば人は隣人に対して自分を死人のようにできるでしょうか、と尋ねた。するとこれに老師が云った、285.50— 自分はすでに3日前から墓の中にいると肝に銘じなければ、この言葉にはとどかない」。〔主題別10-92〕

13 師父モーウセースについてスケーティスで言い伝えられている、— 彼がペトラに行こうとしたとき、途中で疲れてしまった。そこでこころの中で言った。「どうしたら、ここでわしの水を汲むことができるだろうか」。すると、こう言う声が彼にきこえてきた。「〔ぺトラに〕入れ、何も案ずることはない」。」そこで、入って行った。すると何人かの師父たちが、彼を訪ねてきたが、彼は小さな瓶1杯分の水しか持っていなかった。しかも、わずかなレンズ豆を調理したので、使い切ってしまった。老師は困惑した。そこで、入ったり出たりして、に祈った。すると、見よ、雨雲がベトラの真上に来た。そして彼の容器を全部満たしたのだった。後に彼らは老師に言う。「どうかわたしにたちに云ってください、入ったり出たりなさったのは、どうしてですか?」。すると老師が彼らに言う。「わしはに訴えていたのだ— わたしをここに連れてきたのに、見よ、あなたの僕たちが飲む水をわたしは持ちません」と。そのために、がわれわれに送ってくださるまで、に願いながら、入ったり出たりしたのだ」。〔主題別6-27〕

14 師父モーウセースが云った、— 何事においてであれ、ひとを裁かないために、人は自分の仲間に対して死人にならねばならない。

15 さらに云った— いかなる人に対しても悪しきことを為さないために、身体から出て行く前に、あらゆる邪悪な事柄に対して自ら死人にならなければなならない、と。

16 彼がさらに云った。「ひとは自分の心中において自分は罪人であるという思いを抱かない限り、が彼に耳をかされることはない」。そこで兄弟が云った。「心の中で、自分は罪人であると思うとは、どういう意味ですか?」。すると老師が云った— もし人が自分の罪を担うならば、隣人の罪は見ないものだ」。

17 彼がさらに云った。「行いが祈りとが調和しないならば、無駄に苦労することになる」。そこで兄弟が云った。「行いと祈りとの一致とは、どういうことですか?」。すると老師が云った。「われわれが祈っている当のことがら、これをもはや実行するまでもない、ということである。というのは、人が自分の意志を捨てるとき、は彼と和らぎ、その祈りをただちに受け入れるからである」。

18 兄弟が尋ねた—、人間のあらゆる労苦の中で、彼を助けるものは何でしょうか?」。すると老師が言う。「こそが助ける者である。というのは、こう書かれているからじゃ。『はわれらの逃れ場、力、悩みの時の大いなる助け』〔詩編54:2〕」。兄弟が云った。「人間が行う断食と徹夜とは、何を生み出すのでしょうか?」。これに老師が言う。「それらは魂を謙虚にさせる。こう書かれているからじゃ。『見よ、わたしの謙遜とわたしの労苦とを、そしてわたしのすべての罪を赦したまえ』〔詩編24:18〕。もし魂がこれらの実を結ぶならば、はそれら〔の実〕によってそれ〔魂〕を憐れまれる」。
 兄弟が老師に言う。「自分に襲いかかるすべての誘惑にあって、また、敵のあらゆる想念に対して、人は何を為すべきでしょうか?」。これに老師が言う。「〔が〕自分を助けに来られるように、の善性の前に泣き叫ばなくてはならない。そうすれば、ただちに安らぎを得られよう、289.1 心して願えばであるが。というのは、こう書かれているからである。『主はわたしの助け、人がわたしに何をしようとも、わたしは恐れない』〔詩編117:6〕と」。兄弟が尋ねた— 見よ、人が自分の奴隷を、それが犯した罪の故に殴ったとします。奴隷は何というでしょうか?」。老師が言う。「美しい奴隷であればいうであろう。『どうかわたしを憐れんでください、わたしは罪を犯しました』と」。これに兄弟が言う。「ほかには何も言わないのでしょうか?」。老師が言う。「言わん。それは、おのれに責めを帰して、『わたしは罪を犯しました』というや、彼の主人がただちに彼を憐れむからじゃ」。
 さて、これらすべての話の目的は、隣人を裁かない、ということである。というのは、『主の御手がアイギュプトスのすべての初子を殺したとき、死者のいない家はなかった』〔出アイギュプトス12:29〕からじゃ」。これに兄弟が言う。「その言葉はどういう意味ですか?」。これに老師が言う— われわれがわれわれの罪を見るようにさせれば、隣人の罪を見ることはないだろう。というのは、自分の死者を持ちながら、これを放置して、隣人の死者を嘆きに出かけるとすれば、それは愚かなことじゃ」。
 ところで、汝の隣人に対して死ぬとは、汝の罪を担い、あらゆる人間を気にかけないということである、それが美しい人であれ、それが悪しき人であれ。いかなる人間に悪を行ってはならず、何びとに対しても汝の心中に悪しきことを思量してもならい。悪しきことを行う者を軽蔑してもならない。自分の隣人に悪行する者に聴従してもならず、自分の隣人に悪を為す者といっしょに喜んでもならない。何びとかを中傷してはならない。むしろ言え、『それぞれの者はが御存知である』と。中傷する者に同意してはならず、その中傷をいっしょになって喜んでもならず、その隣人を中傷する者を憎んでもならない。これこそが裁かない〔ルカ6:37〕ということである。何びとに対しても敵意を持ってはならず、そなたの心の中に敵意を抱いてはならない。隣人に対して憎しみを持つ者を憎んはならない。これこそが平安というものである。これらすべてにおいて自らに呼びかけるがよい。ロゴスたるの恩寵によって、苦しみはわずかの間にすぎず、休息は永遠である」。


289."36t"
師父マトエースについて

289.37
1 師父マトエースが言った。「初め苦しくて、すぐに打ちのめされてしまうわざよりも、軽くて長続きするわざをわたしは望む」。〔主題別7-16〕

289.40
2 彼がさらに云った。「人は、に近づけば近づくほど、いっそう自分が罪人であることが分かる。例えば預言者ヘーサイアースは、を見て、自分が惨めで不浄の者であると言った〔イザヤ1:1-13〕」。〔主題別15-41〕

3 彼はまた言うを常とした。「わしは若い頃、心中に言っていたものだ— 自分は多分何か善いことを行っているのだ、と。しかし、老いた今、自分の中にはひとつとして善いわざがないのを見る」。

4 彼がさらに云った。「サターンは、魂がいかなる情念によって打ち負かされるかを知らない。種まきはするが、収穫できるかどうかは知らない。邪淫をめぐる想念や、中傷をめぐる想念、自余の情念も同様である。ただし、いかなる情念に魂が傾いているかを見て、これ〔魂〕に合唱舞踏するのであるが」。〔主題別10-49〕

292.1
5 兄弟が師父マトエースを訪ね、彼に言う。「スケーティスの人たちは、自分自身よりも自分たちの敵を愛することによって、聖書に書かれているよりも優れたことを行っていたのですか」。これに師父マトエースが言う。「わしは、わしを愛する者をさえも、自分自身ほどには愛していない」。

6 兄弟が師父マトーエースに尋ねた。「どうすればいいのでしょうか、兄弟がわたしを訪ねて来て、それが断食や朝課の時であった場合は? わたしは悩んでいるのですが」。するとこれに老師が言う。「もし、悩むことなく、兄弟とともに喰うのなら、292.10 そなたの振る舞いは美しい。しかし、何びとか待っていないのに、喰うならば、それはそなたの意志である」。

7 師父イアコーボスが云うを常とした—、師父マトーエースを訪ねたことがある。そしてわしは戻ろうとして、彼に云った— ケッリアに行くつもりです、と。するとわしに云った。「師父イオーアンネースにわしからよろしく」。そこでわしは師父イオーアンネースのところに赴いて、彼に言う。「師父マトエースがあなたによろしくとのことです」。すると、わしに老師が言う。「見よ、師父マトエースこそ、真のイスラエール人、彼に偽りなし〔ヨハネ1:47〕」。それから1年が経って、わしは再び師父マトエースを訪ねた。そして彼に師父イオーアンネースの挨拶を伝えた。すると老師が言う。「わしはあの老師の言葉に値しない。ただし、次のことを知っておくがよい、ある老師が自分よりも隣人を栄化するのを聞くときには、〔その老師は〕偉大な境位に達しているのだということを。なぜなら、完徳なればこそ、自身よりも自身の隣人を栄化するのだからである」。

8 師父マトーエースは言うを常とした—、兄弟がわしのところにやって来て、わしに云った、— 中傷は邪淫よりも悪い、と。そこで云った。「その言葉は受け入れ難い」。292.30 するとわしに言う。「この件をいったいどう考えるのです?」。そこでわしが謂った。「中傷は悪い。しかしすぐに治す方法がある。というのは、中傷する者は『わたしは悪く話した』と言って、しばしば後悔するからである。だが、邪淫は自然本性的に死である」。〔主題別5-6〕

9 あるとき、師父マトーエースはライトウからマグドロース地方に出かけて行った。彼の兄弟も彼とともにいた。ところが、ある主教が老師を捉まえて、彼を司祭に任じた。そして彼らがともにいるとき、主教が言った。「どうかわたしを赦してほしい、師父よ。あなたがこのことを望んでいないことは知っている。だが、あなたからわたしが祝福を受けたかったので、あえてこのようにしたのだ」。すると彼に老師が、謙って云った。「わたしの想念も、少しはそれを望んでいました。それよりもわたしを苦しめるのは、わたしとともにいる兄弟から離れなければならないことです。というのは、祈りをすべて一人ですることには耐えられないからです」。すると主教が言う。「彼がふさわしい、とあなたが思っておられるならば、わたしが彼を叙階しよう」。これに師父マトーエースが言う。「彼がふさわしいかどうかは分かりません。ただ一つ分かっているのは、彼がわたしより美しい人であることです」。292.50 そこで、彼をも叙階た。しかし、彼らは二人とも、奉献祭儀を行うために祭壇に近づくこともなく、永眠した。が、老師は言っていた。「わたしは、奉献祭儀を行わなかったから、叙階のことでひどい裁きを受けることはないとに信頼している。というのは、叙階は咎められるところのない人々のものだからだ」。〔主題別15-42〕

10 師父マトエースが云っていた—、3人の老師が、「頭」と言われる師父パプヌゥティオスのところにやって来た、彼に言葉を述べてもらうためである。そこで老師が彼らに云った。「そなたたちに何を云ってほしいのか? 霊的なことか、293.10 それとも身体的なことか」。彼らが彼に言う。「霊的なことです」。彼らに老師が言う。「行け、休息よりも苦しみを、名誉よりも侮辱を、また、受けることよりも与えることを愛せ」。

11 兄弟が師父マトーエースに尋ねた、いわく。「どうかわたしに説話(rJh:ma)を云ってください」相手が彼に云った。「行け、に呼びかけよ、そなたの心に悲歎と、それから謙遜を与えてくださるようにと。つねにそなたの罪に傾注せよ。他人を裁かず、むしろ万人の下にいる者となれ。少年に親愛の情をいだかず、女と知己とならず、また異端の者と友となるな。そなたから気易さ(parjrJhsiva)を取り除け。そなたの舌と腹とを制し、葡萄酒はわずかにせよ。もし人が何かについてあれこれ話しても、彼と愛勝するな。いや、彼が美しく言っているなら、『然り』と云え。悪くなら、『あなたはどのように話すか知っているはずです』と云え。彼が話したことについて、彼と言い争ってはならない。そして、これこそが謙遜である」。〔Anony330〕

12 兄弟が師父マトーエースに尋ねた。「どうかわたしにおことばをください」。そこでこれに云った。「何事についても、そなたから愛勝心をすべて取り除け。そして嘆き、悲しめ、時が近づいているからだ」。

13 兄弟が師父マトエースに尋ねた、いわく。「どうすべきでしょうか、。わたしの舌がわたしを苦しめるのです。人々の中に入っていくときも、これを制することができません。いや、善いわざに対しても、彼らを咎め、彼らに反駁してしまいます。一体どうすればよいでしょうか」。すると老師が答えて云った。「自分を制することができないならば、独りの生活に逃れよ。それは弱さのためである。しかし、兄弟たちと坐す者は、四角であってはならず、あらゆる方向に転がることができるように、丸くなければならない」。また、老師が云った。「わしが独りで坐るのは、徳があるからではなく、弱さのためである。というのは、人間どもの中に入って行く者たちは、力ある人々である」。〔主題別11-79〕


293."45t"/"46t"
師父シルゥアーノスの弟子、師父マルコスについて

293.47
1 師父シルゥアーノスについて言い伝えられている、— スケーティスに弟子を持っていた、名をマルコスという。大いなる従順さを有し、そのうえ能筆家であった。老師が彼を愛したのは、その従順さのゆえであった。〔老師には〕他に11人の弟子がいたが、彼らは、自分たちよりも彼〔マルコス〕を愛していることで苦しんでいた。また他の老師たちも聞き及んで、悲しんだ。そこである日、老師たちは彼のところにやって来て、彼を告発した。すると、老師たちを連れて外へ出、修屋毎の戸を叩いた、いわく。「兄弟何某よ、出て来てくれ、そなたに用がある」。しかし彼らの一人として、すぐに彼に応じる者はいなかった。それから、マルコスの修屋に行って戸を叩いた、いわく。「マルコスよ」。相手は老師の声を聞いて、すぐに跳び出してきた。そこでこれを司祭のところに使い遣った。そして老師たちに言う。「他の兄弟たちはどこにいますか、師父たちよ」。それから、彼〔マルコス〕の修屋に入り、彼の帳面を捜した。そして見出したのは、ωを書くことに着手した、しかし老師の声を耳にして、それを完成するために葦の筆を回転させようとしなかった、ということであった。そこで老師たちが言う。「彼こそ本当にあなたの愛している者、師父よ、わたしたちも彼を愛します、またも彼を愛しておられます」。〔主題別14-11〕

2 師父シルゥアーノスについて言い伝えられている、— あるとき、老師たちとともにスケーティスをめぐっていたが、自分の弟子マルコスの従順さと、彼を愛する所以を彼らに示そうとして、小さな猪を見つけたので、彼に言う。「あの小さな野牛が見えるか、わが子よ」。これに言う。「はい、師父よ」。「その角がどんなに堂々としているかも?」。言う。「はい、師父よ」。そこで、老師たちはその答えに驚き、その従順さに建徳されたのであった。

3 あるとき、師父マルコスの母が彼に会いに下ってきた。彼女は非常に着飾っていた。老師が彼女のところに出て行った。するとこれに云った。「師父よ、わたしの息子に会うため、彼に出てくるよう云ってください」。そこで老師が中に入って彼云った。「そなたの母親がそなたに会うため、外に出るがよい」。ところで彼は古外套(Lat. cento)を着、台所のせいで煤だらけになっていた。従順さから出て来たが、その両眼を閉じ、彼らに云った。「お元気で、お元気で、お元気で」。しかし、彼らを見ようとはしなかった。彼の母親は、彼を認知できなかった。そこで、再び老師のもとにひとを遣った、いわく。「師父よ、息子に会うために、わたしの息子をわたしのところに遣わしてください」。そこでマルコスに云った。「そなたに云わなかったか。『そなたの母親がそなたに会えるよう、外に出るがよい』と」。するとこれにマルコスが云った。「あなたのお言葉どおり外に出ました、師父よ。ただ、あなたにお願いします、あなたに逆らわないですむよう、うことにならぬよう、また出て行けとは仰らないでください」。そこで、老師は外に出て、彼女に云った。「『お元気で』と言いながらあなたがたに会ったのが、本人じゃ」。そして、彼女を慰め、送り出したのであった。〔主題別14-12〕

4 別のとき、彼はスケーティスを出て、シナ〔シナイ〕山に行き、そこに住持することになった。するとマルコスの母は人を遣わした、自分の息子が出て来て、これに会えるように、涙ながらに彼に誓ってである。老師は彼を解放しようとした。しかし、外に出るために自分のmhlwthv〔修道者用の毛皮の外套〕を着け、老師に挨拶しはじめようとするや、突然泣き出して、外には出なかった。〔主題別7-7〕

5 師父シルゥアーノスについて言い伝えられている、— 彼がシュリアに向かって出発しようとしたとき、彼の弟子マルコスが彼に云った。「師父よ、わたしはここを出て行きたくありません。いや、わたしはあなたを出発させたくないのです、師父よ。いや、3日間ここに留まってください」。そして3日目に、彼は永眠した。〔主題別18-20〕


297."1t"
師父ミレーシオスについて

297.2
1 師父ミレーシオスがあるところを通りがかり、ある修道者が殺人をなしたかどで、ある人に捕えられているのを見た。老師が近づいて、兄弟に尋ねた。そして誣告だと聞き知って、これを捕らえているものたち言う。「殺された人はどこにいるのか?」。すると彼に示した。そこで殺された者に近づき、皆には祈るよう云った。当人はといえば、に向かって両手を差し伸べると、死者が立ち上がった。297.10 そこで、皆の前でこれに云った。「そなたを殺したのは誰なのか、われわれに云ってくれ」。相手が云った、— 教会に入って司祭に銭を渡した。すると相手が立ち上がって、わたしを殺戮した。そして背負っていって、師父の修道院に投げ入れたのです。さあ、あなたがたに呼びかけます、あの銭を取り返して、わたしの子供たちに与えてください」。そこで、老師は相手に云った。「行け、そして眠れ、主が来られて、そなたを目覚めさせるまで」。〔主題別19-13〕

2 別のとき、彼が2人の弟子とともにペルシス〔ペルシア〕の国境に住んでいたとき、肉の兄弟である2人の王子が、習慣に従って狩りに出かけた。彼らは40ミリア[025]もの長さの網を張った。網の中に見つかったすべてのものを狩り立て、矢で殺そうとした。そこへ、老師が自分の2人の弟子とともに来合わせた。毛むくじゃらの、野人のような彼を見て、驚愕して、彼に云った。「人間か、それとも霊か、われわれに云え」。そこで彼らに云った。「罪人である。わしの罪を泣くために出て来た。生けるの子、イエースゥス・クリストスをわしは拝礼する」。彼らが彼に云った。297.30「太陽と火と水(これらが彼らの崇拝するものであった)の以外に、他にはいない。さあ、進み出よ、そしてそれらに供犠せよ」。
 相手が彼らに云った。「それらは被造物であり、そなたたちは踏み迷っているのだ。いや、わしはそなたたちが回心し、それらすべてのものの造り主である真実のを知るように勧める」。彼らが云った。「断罪され十字架に付けられた者が、真実のだと言うのか?」。すると老師が言う。「罪を十字架に付け、死を滅ぼした方、そのお方こそ真実のである、とわたしは言っているのだ」。しかし、彼らは、老師を、兄弟たちもろとも拷問にかけ、供犠するよう強制しようとした。そうしてさんざんに拷問したうえで、2人の兄弟たちを斬首した。しかし老師の方は、なお多くの日数拷問した。ついには、自分たち狩猟法に従って彼を彼らの間に立たせ、一人は表に、一人は背に、矢弾を射掛けた。しかし彼は彼らに云った。「そなたたちは心を一にして、罪のない血を流したので、やがて、明日の同じ時刻に、そなたたちの母はそなたたちを殺され、そなたたちの愛を失うだろう、そして、そなたたちは自らの矢で、互いの血を流し合うのだ」。しかし、彼らは彼の説話(rJh:ma)をあざわらい、その翌日狩りに出かけた。すると、一頭の鹿が彼らの傍らから飛び出した。彼らは馬に乗って鹿を追いかけ、矢を放った。すると、長老が彼らを呪って言った説話(rJh:ma)のとおり、互いに心臓を貫き合い、死んでしまった。〔主題別7-17〕


300."1t"
師父モーティオスについて

300.2
1 兄弟が師父モーティオスに尋ねた、いわく。「わたしが住持すべき場所に行く場合、そこでどうすごせばいよいとお考えですか?」。これに老師が言う。「どこぞに住むなら、例えば集会に行かないとか、愛餐で食べないとか、何か一つのことで自分に名声を博そうとするな。これらは虚しい名声となり、ついには煩わしさを見出すことになるからじゃ。人間どもは、そのようなことが見出されるところ、そこに馳せ参ずるものだからである」。そこで彼に兄弟が言う。「では、どうしたらよいでしょうか?」。長老が言う。「そなたがどこに坐そうと、すべての人に等しく従い、そなたが信頼する敬虔な人々の行うことを見て、行え。そうすれば平安を得るであろう。そなたが彼らと同じになること、これこそが謙遜である。人々も、そなたが特別な者でないのを見て、そなたを万人と等しい者と看倣す。そして、誰もそなたにたかることはない」。

2 師父モーティオスについて、彼の弟子である師父イサアーク(両者とも主教になった)が語り伝えている。— ヘーラクレイアに最初に修道院を建てたのは老師であった。そしてそこを去り、別の場所に来て、そこにまた建てた。しかし、悪魔の働きによって、彼に敵意をいだき、彼を悩ますある兄弟がいた。そこで老師は立ち上がって、本來の村に隠遁した。そして自分のために修道院を造り、自身を閉じこめた。しばらくして、彼が出て来た地の老師たちがやって来たが、彼に悲しみを与えた兄弟をも連れて来て、これを彼の修道院に引き取ってもらおうと、かれに頼みに来たのである。さて、師父ソーレースがいる場所に彼らが近づくと、彼らはその近くに、彼らの修道者用の毛皮の上衣と、悲しみを与えたかの兄弟を残した。それから戸を叩くと、老師は梯子を立てかけ、覗きこんで、彼らを認めて、言う。「そなたたちの毛皮はどこにあるのか?」。彼らが云った。「見よ、ここに兄弟何某とともにあります」。自分を悲しませた兄弟の名を聞くと、長老は喜んで、斧を揮い、戸を壊し、兄弟のいるところに走って行った。そして先ず、彼の前に跪いて、彼に挨拶した。そして、彼を自分の修屋に導きいれた。3日間、彼らを歓待し、本人もまた彼らととにしたが、そんなことをする習慣はなかったのである。それから、彼は立って彼らとともに出発した。こうして後に、彼は主教になった。たしかに彼は奇蹟を行う者であった。また、浄福なるキュリロスは、彼の弟子である師父イサアークをも主教にした。


300."48t"
師父メゲティオスについて

300.49
1 師父メゲティオスについて言い伝えられている、— 彼は修屋から出かけた。その場所から隠遁しようという想念が彼に起こるや、自分の修屋には戻らなかった。ナツメヤシの枝を割くための剪りひとつのほかには、この世のいかなる材料も持ってはいなかった。彼は自分の糧の価として、日に3つの小籠を作っていた。

301.1
2 2番目の師父メゲティオスについて言い伝えられている、— この人はすこぶる謙虚で、アイギュプトス人たちのもとで教育を受け、数多くの師父たち、とくに師父シソエースや師父ポイメーンと親交を結んでいた。シナ〔シナイ山〕の川のほとりに住持した。聖人たちの一人が彼を尋ねたことがあり(本人が話していることであるが)、彼に言う。「どのように過ごしているのですか、兄弟よ、この砂漠で」。相手が云った。「二日ごとに断食し、1つのパンを食べる」。そしてわたしに言う。「わたしに聴従しようとするのならば、日に半分のパンを喰え」。彼はそのとおり実行して、平安を見出した。〔主題別14-10〕

3 師父たちの幾人かが師父メゲティオスに尋ねた、いわく。「煮物が翌日まで残った場合、兄弟たちは食べてもよいとおかんがえですか?」。彼らに老師が言う。「腐っているなら美しくない、兄弟たちがそれを喰うよう強いられると、病気になるからからで、むしろ捨てるがよい。しかし、美しいものであるのに、贅沢から捨てられて、他の物を煮るならば、それは悪しきことである」。

4 彼がさらに云った。「初め、われわれがたがいに寄り合って、益となることに互いに励まし合って話していたとき、われわれは円になり、諸天に引き上げられていた。しかし今では、寄り合って、一人が一人を中傷するようになり、下に落ちている」。


301."26t"
師父ミオースについて

301.27
1 ベレオス人の師父ミオースが云った、— 従順に対しては、従順がある。人がに聴従するならば、もその人に聴従したもう。〔主題別14-9〕

301.30
2 彼がさらにある老師について云った、— 〔その老師は〕スケーティスにいた。しかし奴隷の出身であった。が、非常に分別のある人物であった。毎年。アレクサンドレイアに出かけた、自分の主人たちのところに報酬を持って行くためである。かれらは彼を迎え、彼に敬意を表した。老師の方は、自分の主人たちの足を洗うために、盥に水を入れて、持って来た。しかし彼らは彼に言った。「いけません、師父よ、わたしたちの気を重くさせないでください」。しかし相手は彼らにに向かって言うのだった。「あなたがたの奴隷であることをわたしは告白します。わたしが自由人としてに隷従することを許してくださったことを感謝して、わたしもあなたがたの足を洗います、そして、わたしのこの報酬を受け取ってください」。しかし彼らはあくまで受け取らなかった。そこで彼らに言った。「受け取ることを拒まれるならば、あなたがたに隷従するために坐ります」。こうして彼らは彼を恐れて、したいようにすることを許した。そして、多くの必需品と多くの敬意を彼に捧げ、自分たちに代わって愛のわざを為すことができるようにした。このため、彼はスケーティスで有名になり、愛される人となったのである。〔主題別15-47〕

3 師父ミオスが、ある兵士に、はたしては悔い改めを受け入れてくださるのかどうか、と尋ねられた。そこで彼が、多くの言葉で彼を導いた後、彼に向かって言う。304.1「どうかわしに云ってくれ、親愛なる者よ。そなたの外套が破れたとしたら、それを外に投げ捨てるのか」。彼が言う。「いいえ。それを繕って、これを用います」。彼に向かって老師が言う。「されば、そなたが上衣を惜しむのなら、が御自分の被造物を惜しまれないことがあろうか」。


304."6t"
アイギュプトス人、師父マルコスについて

304.7
 アイギュプトス人である師父マルコについて言い伝えられている、— 彼は30年間、自分の修屋から外に出ることなく住持した。で、司祭がやって来て、彼のために聖なる奉献祭儀をする習慣があった。ところが、悪魔がこの人〔師父マルコ〕の有徳な忍耐を観て、断罪という方法で彼を試すことをたくらんだ。つまり、霊に憑かれた或る者を、祈りを口実に、老師のもとに行くよう仕向けたのである。さて、霊に懸かれた者は、開口一番、老師にくってかかる。「おまえの司祭は罪の匂いがする、もはややつをおまえのところに入れてはならん」。しかし、の霊に動かされた師父は、やつに向かって云った。「わが子よ、ひとは誰しも不浄を外に投げ出す。しかし、そなたはそれをわしのところに持って来る。しかし、こう書かれている。『裁くな、裁かれないために』〔マタイ7:1〕。たとえ罪人であっても、主は彼を救われる。こう書かれているからじゃ。『癒されるために、互いに祈り合うがよい』〔ヤコブ5:16〕」。この言葉の間に祈りをし、彼からダイモーンを追い出して、彼に健康を恢復した。
 さて、司祭がいつものようにやって来ると、老師は喜んで彼を迎えた。そこで、善なるは、老師の無垢さを見て、彼に徴を示した。つまり、聖職者が聖なる食卓の前に立とうとすると、老師が話したところでは、ؙ 主の使いが天から下って来るのを見た、そしてその手を聖戦者の頭の上に置いた、するとその聖職者は火の柱のようになった。この光景にわたしが驚いていると、わたしにこのように言う声が聞こえた。「人よ、なぜこの出来事に驚いているのか。地上の王が自分の高官たちに、汚れたまま正装もせず自分の前に立つことを許さないならば、ましての力が、天の栄光の前に立つ聖なる秘の祭礼の司式者たちを浄めないことがあろうか」。こうして、キリストの高貴なる闘士、アイギュプトスのマルコスは偉大な者となり、この賜物にふさわしい者とされた。というのも、彼が司祭を裁かなかったからである。〔主題別9-6〕


304."44t"
都会人、師父マカリオスについて

304.45
1 あるとき、都会人、師父マカリオスが、ナツメヤシの枝を伐りに出かけ、兄弟たちも彼に同行した。最初の日に、彼らが彼に言う。「こちらへ、わたしたちといっしょに喰いましょう」。相手は行って、喰った。翌日、また喰おうと彼に言う。だが相手は断り、304.50 彼らに言った。「そなたたちは喰う必要がある、わが子たちよ。そなたたちは肉の盛りにあるからじゃ。だがわしは、今や喰うことを拒む」。

2 師父マカリオスがタベネーシス人たちの師父パコーミオスのもとを訪ねた。パコーミオスが彼に尋ねた、いわく。「兄弟たちが無規律なとき、彼らを教育するのは美しいでしょうか?」。これに師父マカリオスが言う。「そなたのもとにいる者たちなら教育し、義しく裁くがよい。しかし、それ以外の者は、何びとをも裁いてはならない。こう書かれているからである。『あなたたちが裁くのは内部の者だけではないのか。外部の者たちは、が裁かれる』〔1コリント5:12-13〕。」〔主題別10-46〕

3 かつて、師父マカリオスは、4か月間、ある兄弟を毎日訪ねつづけたことがある。しかし彼が祈り以外の暇を持っているのを一度たりとも見たことがなかった。そこで驚嘆して言った。「見よ、地上の天使である」。

2016.02.07.

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