シビュラの託宣・第8巻
					
					 
					※  第9巻は、第6巻の全体に第7巻1行目と第8巻の218行目から428行目を繋ぎ合わせたもの。第10巻は第4巻と同一である。 
					 
					11."T1" 
					シビュラの託宣・第11巻
					11.1 
						あまねく広がれる人間どもの世界よ、長壁よ、 
						数多の都市よ、あるいは、東の、西の、 
						南の、北の、無量の族民、 
						多種多様な声音や王国に分かたれた族民よ。 
						他の最も災禍なる事どもを、汝らのために告げよう。 
					すなわち、〔大〕洪水がかつての人々に起こり、 
						第5の世代を多量の水で、全能者ご自身が 
						滅ぼして以来、さらにもうひとつ別の 
						疲れを知らぬ人々の種族をもたらした。彼らは天に逆らい、 
						11.10 
						神でさえ言い得ぬ高み目指して塔を建てた。しかし、 
						まさにここにおいて互いの舌が無効になった。そして彼らの上に 
						至高の神の怒りが襲いかかり、巨大な塔は 
						崩落した。そして彼らは互いに悪しき争いを突発させた。 
						はかなき人間どもの第十世代こそ、 
						それが起こったときである。して、全地は 
						他国の者どもと、多種多様な話し言葉に分配され、 
						その数を言い、折り句の文字によって 
						支配者の名を告げ、その名を明らかにするだろう。 
					先ず初めに、エジプトは王国の威権を、卓越し 
						11.20 
						義しきものとして受けるであろう。しかしその次には、そこにおける 
						数多くの勧告者たちが支配するであろう。それからさらに 
						恐ろしき人物、強い白兵戦の戦士が支配するであろう。 
						して、彼の名は 頭文字に剣(Favsganon)のそれを有する[101]であろうが、 
						剣をば敬虔なる人間どもに対して伸ばすであろう。 
						して、この者が覇権を揮っているとき、大いなる徴が、あの者に、 
						エジプトの地に現れ、大いなる栄誉を与えるものが、 
						飢饉によって滅びた魂たちに、そのとき、穀物を与えるであろう。 
						法をもたらす当人が、〔かつての〕囚人として、 
						東方とアッシリア人の種族を養うであろう。して、その名は 
						11.30 
						 数価にして10[102]によって明らかであると知れ。 
						しかし、輝く天から十の災害がエジプトに 
						到来したとき、そのとき汝に再びこのことを大呼せん。 
					わざわいなるかな汝、メムピス、わざわいなるかな大いなる王都よ。 
						汝のおびただしき民を紅海が滅ぼすであろう。 
						十二部族の民が、不死なる方に命じられて、 
						実り豊かな地を後にするとき、 
						法をも主なる神ご自身が人間どもに授けられよう。 
						[103]しかるに、ヘブライ人たちをば、度量の大きい偉大な王が 
						支配するであろう。その名は、砂だらけのエジプトにちなんだものを持ち、 
						11.40 
						テーバイ人たることを偽りの祖国とする者が。恐ろしき蛇が 
						メムピスを歓愛し、諸々の戦争の中で多くのものどもを呑みこむであろう。 
					10の王朝が12回経巡り、100の10倍に7年を加え、さらに 
						5年が足りぬとき、まさにこの時ペルシアの支配が始まる。 
						そのときこそ、ユダヤ人たちにとっては暗黒、その日々、 
						耐えがたい飢饉と疫病を逃れることもできまい。 
						 しかるにペルセース人が支配し、孫の息子が王笏を 
						奪い、たかだか4の5倍の年数が満ちるとき、 
						11.50 
						100の9倍〔年〕をみたすとともに、すべてを償うであろう: 
						そしてそのとき、ペルセーの地に、メーデイア人たちに貢がれる奴隷奉公があろう、 
						強烈な合戦を通しての打撃に滅ぼされて。 
					たちまちにして災悪があるだろう、ペルシア人たちとアッシリア人たちに、 
						また全エジプトにも、リビュエーあるいはアイティオピア人たちにも、 
						カルキス人たち(?)とパムピュリア人たち、またその他全人類にも。 
						そしてそのとき、息子たちに王の支配権を与え、 
						今度は〔息子たちが〕数多の掠奪の種族として掠奪するだろう、 
						何の同情もなく全地を掠めつくして。 
						ティグリスの畔なる無残なペルシアは、哀歌を嘆くであろう。 
						11.60 
						エジプトは数多の地を涙に濡らすだろう。 
					そしてそのとき汝に、メーデイアの地よ、多くの禍事を為すだろう、 
						インド生まれの多幸な<大将が>、恥知らずな性根をもって 
						それまでに為してきた限りのすべてを償った上で。 
						災いなるかな、汝、メーデイアの族民よ、やがてメロエーの地に至るまで 
						アイティオピア人たちの奴隷となることだろう: 
						初めから100年になお7年を満たす間、 
						惨めなものよ、おまえは軛の下に頸を置くことだろう。 
					そしてその時、色黒く髪は灰色、意気盛んな 
						インドス人がその後で君主となり、彼は数多の災悪を 
						11.70 
						強烈な合戦を通して東方にもたらすだろう: 
						汝をもまた、いかなる破滅よりも多く不具にするだろう。 
						しかし、20と10年間、10に7年を加える間王支配して、 
						全族民が狂い悶え、自由を掲げるだろう、 
						三分の一年を隷従のままにおかれて。 
						しかし再び到来して、軛の下に頸を置くだろう、 
						人類の全族民は、かつて隷従した強い王に、 
						自発的に服従するであろう。 
						大いなる平和が世界にあまねくあるだろう。 
					11.80 
						 そしてそのときには、偉大な男[104]がアッシリア人たちの王となり、 
						支配し、神が適法に定めた事として、 
						万人が心にあることを云うよう説得するだろう:そしてこの時この王に、 
						槍の穂先によって思い上がった諸王はみな、臆し、 
						声もなく、戦慄し、驕り高ぶり慕われる者たちが、 
						大いなる神の戒めに従って、彼らはこれに隷従するであろう。 
						何となれば、万事ロゴスによって説得し、万事を屈服させ、 
						大いなる神の神殿と恋しい祭壇を、 
						自らが力強く建てるだろうが、偶像は投棄するだろう: 
						だが族〔うから〕と父たちの生まれと幼子は、 
						11.90 
						住民をひとつに集めて取り囲む: 
						[してその名は数価にして200を有し、 
						第18字母〔Σ〕を徴として示すだろう。] 
						しかるに、20年に5を加える年月を巡って 
						覇権を握り、時代の終わりに至って、 
						死すべきものらのあるかぎりの族、あるかぎりの部族、 
						あるかぎりの都市、あるかぎりの島嶼、浄福者たちの海辺、 
						あるいは、繁り栄える耕地の王たちがあらわれるだろう。 
						11.98 
						だがこれらの男たちの中に一人の王たる将軍がいるだろう: 
						して、この者に数多の意気盛んな王たちが屈服し、 
						11.100 
						この者と、子どもらと、多幸なる孫子らに、 
						王制支配のための分け前を与えること 
						100に加える100に8年[105]、この歳月の間 
						支配するだろう:しかも大いに栄えるだろう。 
						 獰猛な獣[106]が勇猛なアレースとともに到来するとき、 
						その時こそ、汝、女王たる大地よ、怒りが芽吹くだろう。 
						 災いなるかな汝、ペルシアの大地よ、ひとの血の溢れ出るを 
						いかほど受けることか、かの頑ななる男が 
						汝に攻め寄るときに:そのときこそ、再びこれを大呼しよう。 
					されど、イタリアがはかなき人間どもの大いなる驚きとなるとき、 
						11.110 
						幼い者らの悲鳴が、混じり気なき泉に起こり、 
						陰暗き巣穴に、羊喰らう野獣の子が 
						覇権握る7つの丘で人間となって、 
						恥知らずな気性もつ多数のものらを転覆させるだろう、 
						両者とも数価にして100[107]、その名は、招来する事柄の 
						大いなる徴として示すだろう:そして7つの丘には堅固な 
						市壁を建造し、おのれらの周りに仮借なきアレースを 
						安置するだろう。そのとき再び、男どもの叛乱が 
						おまえを見舞うだろう、稔り豊かな大地、 
						意気盛んなエジプトよ:このことはまたそのときに大呼しよう。 
						11.120 
						[それ以前に、大いなる打撃を家々に受け、 
						己が男たちの蜂起が再びおまえにあるだろう。] 
					しかし今は、哀れなプリュギアよ、汝をいたましく嘆こう: 
						馬の馴らし手たるヘッラスによる捕囚と、強烈な合戦による 
						恐ろしい戦争とが汝に起こるだろうから。 
						イーリオンよ、汝を悼まん:スパルテーからエリーニュスが、 
						おぞましい星に混成されて、おまえの館に到来するだろうから: 
						おまえには、とりわけ労苦、苦痛、呻吟を 
						置こう、よくわきまえた男たちが戦いを始める場合には、 
						マレースに親しむヘッラスの、とりわけて善勇の英雄たちは。 
					11.130 
						だが、彼らのうちの一人が王、強い槍武者となるだろう: 
						姉妹をめぐって最悪の所業が企てられるだろう。 
						しかし彼らはまたもや、プリュギア人たちのトロイエーの名だたる城壁を破壊するだろう: 
						年月が5の2倍めぐった時、 
						クロノスの子は、戦争の血汐にまみれた所業を充足させるだろう、 
						そしてこれを膝の上に受け取るだろう、ヘッラスの軍団が胎児として 
						孕まれているとは想いもせずに、悲しみ惹き起こす禍が: 
						ああ、一夜のうちに、いかほどの者たちをハデースが受け取り、 
						あるいは、涙多き老人の略奪品をいかほど 
						11.140 
						もたらすことか:だが、不老の名声が来るべき人々に残るだろう。 
						この大いなる王[108]はゼウスの血を引くものにして、 
						字母の初めを名にもつ:彼は帰郷した時、 
						まさしくその時に、妻の手で謀略に陥ちた者である。 
					だが、アッサラコスの氏と血筋から生まれた子[109]、 
						英雄の誉れ高く、勇猛にして強い男が支配するだろう。 
						して彼は、大火に陥落したトロイエーから到来するだろう、 
						アレースの恐ろしいぞめきを逃れて: 
						老いたる父親を己が肩に運び、 
						一人の息子をば手に引いて、敬虔なる業を 
						11.150 
						成し遂げるであろう、八方に眼を配りながら、[燃えさかる 
						トロイエーの火の勢いを潜りぬけたこの男は]急き立ちながら、 
						恐ろしい大地と海を恐る恐る進むだろう。 
						その名は3音節をもっているだろう、なぜなら、この最高の男は、 
						第1字母を意味なくもっているのでないことを明らかにしているからである。 
						そしてその時、ラティネー人たちの強い都市をも建設するだろう。 
						10に加える五年目に、海潮の深みのせいで 
						水に滅ぼされて、死という最期をつかむであろう。 
						だが死さえ、ひとの族が忘れることはあるまい: 
						なぜなら、この者の血統が、全人を支配するからである、 11.160 
						エウプラトスと河川のチグリスに至るまで、アッシリア地方の 
						真ん中、パルティア人が暮らすところを。 
						これらすべての事柄が、招来の者たちに起こることだろう。 
					そして今度は、或る年長の知者の詩人[110]が現れ、 
						これを万人は人類中至賢の者と呼び、 
						その全世界は叡智によって教育されるだろう: 
						なぜなら、発明の力能で……要点を著し、 
						しかもまた、神の力をも凌ぐ事柄を、各所各様、賢明に書くからである、 
						韻律・詩句においてわたしの言葉にふさわしく: 
						というのは、彼自身がわたしの書を真っ先に開いて、 
						11.170 
						その後は隠して、人々に示すことはもはやないであろうから、 
						滅相もない死、つまり生の最後の終わりまで。 
					しかしながら、わたしの云った事、それらがすべて成就したときこそ、 
						ヘッラス人たちは再びまた互いに争うであろう: 
						アッシリア人たち、アラビア人たち、なおまた箙負うメーディア人たちも、 
						ペルシア人たちにまたビテュニア人たち、ネイロス河のほとりの者たちも、 
						美しき穂の大地を蹂躙する:して、万人の中に、 
						不滅の神は等しく喧騒を置かれるであろう。いやむしろ、ひどく猛然と 
						アッシリアの男、庶子のアイティオピア人[111]、獣の気性を持ったのが 
						11.180 
						突如到来し、八方睨みつつ地峡を悉く破壊し、 
						イオーニアの海すべてを押し渡るだろう。 
						そしてその時、汝に数多の大事が生ずるだろう、信じがたいヘッラスよ、 
					ああ、汝、哀れなヘッラスよ、いかほど汝は嘆息することか。 
						80に加えること7年を完了する間、 
						全氏族の恐ろしい戦争の無残な汚物があるだろう。 
					それから、ひとりのマケドニア人[112]がヘッラスに禍害を引き起こし、 
						全トラーキアを破滅させ、アレースの騒(ぞめ)きが、 
						島々に、沿岸地域に、また戦争を愛するトリバッリに〔起こるだろう〕。 
						11.188 
						...................................................................... 
						〔彼は〕前衛の陣中にあって、その名を共有し、 
						11.190 
						数価にして50の10倍〔Φ〕の名を明らかにするだろう。 
						だが支配は短命であろう:だが最大の 
						王国を無限の大地に残すだろう。 
						だがまた自身は、悪巧みする槍持に倒されるだろう、 
						余人の思い及ばぬほど静かに生きて。 
					してまたその後で、彼の息子、字母の初めを〔頭文字とする〕、 
						意気盛んな息子が支配するだろう:<だが>出自は妾腹の子であろう。 
						これをゼウスの真実の〔子〕とも、アムモーンの真実の〔子〕とも呼ぶことはない、 
						にもかかわらず万人の想像では、クロノスの庶子。 
						して、数多のはかなき人間どもの諸都市を明け渡させるだろう: 
						11.200 
						エウローペーには最大の傷口が開くだろう。 
						これはバビュローンの都市をも疫病で不具にし、 
						また、あるかぎりすべての大地を太陽は照覧し、 
						東に、世界を、彼ひとり航海するだろう。 
						 かなしいかな、汝、バビュローンよ、凱旋の車に曳かれるだろう、 
						女主人と喧伝された女が:アシアにアレースが進撃し、 
						飽くことなく攻撃し、汝の子どもらを数多殺戮するだろう。 
						そしてそのときには、汝の王国の男を派遣するだろう、 
						数価4の頭文字をもつ男[113]、強力な戦士たちを率いる 
						槍に名だたる、恐ろしい弓もつ戦士を。 
						11.210 
						そしてそのときこそ、キリキア人たちとアッシリア人たちの中に 
						疫病と戦争が到来しよう:そのうえ、意気盛んな王たちが 
						命を蝕む諍いの恐ろしい叛乱を投げかけるだろう。 
						しかしおまえは、前の王はそのままに、自身が逃れて、 
						留まろうともせず、怯懦な者となることを恥じもしない: 
						なぜなら、恐ろしい獅子、肉喰らう野獣、粗暴で 
						邪な奴、両肩に外套をまとった奴が、おまえに襲いかかるからだ。 
						雷撃する奴を逃れよ。アシアには悪しき軛が到来し、 
						殺戮が豪雨となって再び全地を呑みこむだろう。 
						 しかし、エジプトの、繁栄もたらす大いなる都市をば、 
						11.220 
						ペッラのアレースが設立するとき、彼に因んで名付けられたその〔都市〕には、 
						仲間たちによって運命と死が欺瞞的に与えられる 
						11.221 
						...................................................................... 
						なぜなら、彼がインドイを去って再びバビュローンに帰郷したとき、 
						異邦の殺人者がこれを宴卓のまわりで根絶やしにするからである。 
					その後、各氏族の別の王たち、民を食い物にする王たち、 
						身の程知らずの、不実な王たちが支配すること 
						数年間:さらに次いでは、意気盛んにいきり立って、 
						要塞化した全エウローペーを落ち穂拾いしたであろう者[114]が、 
						その時、全地が全氏族の血を呑みこむとき、 
						固有の運命によって生命を費やして後、すぐに生を終わるであろう。 
						11.230 
						だが、この氏族から、4の2倍の男たち[115]が 
						別の王となるが、その皆が同じ名前である。 
						 そのとき、エジプトは統治する花嫁、 
						マケドニアの主人の大都市、 
						御女神アレクサンドリア、諸都市の名高き養い親、 
						美しさに輝き、ひとり母市となるであろう。 
						そしてその時、メンフィスは統治する者たちに非難されるであろう[116]。 
						だが、全宇宙に深き平和があろう: 
						して、土黒き大地はといえば、そのとき数多の果実をもつだろう。 
					そしてその時ユダヤ人たちに諸々の災悪が起こり[117]、 
						11.240 
						かの耐え難き日に飢え、疫病を逃れることもできまい: 
						しかしながら土黒く穀物美しい新世界、 
						不死なる大地が、破滅した多衆を受け容れるだろう。 
					しかし、泥深きエジプトの八人の王が、 11.244 
						200と30と3<年>という数を 
						満たすだろう。その際には、彼らすべての種族が 
						根絶やしにされることなく、人間の禍となる女の根が、 
						その王国の賜物として芽吹くであろう。 
						否むしろ、彼ら自身がその後、性悪さゆえに自分たちに対して 
						邪悪な所業を為出かして、お互いに滅びるだろう: 
						11.250 
						[赤ら顔した末裔が戦闘者たる祖先を、自分自身が息子を 
						打ち倒し、別の植物が芽を出す前に 
						果てるだろう:だがその後、根は自生的に再び 
						芽を出すだろう:まさにその分岐した氏族となるだろう。] 
						なぜなら、女王はナイルの流れの畔の地の者にして、 
						〔この流れは〕7つの河口に分かれて海に流れこむのだが、 
						この女の大いに慕わしい名は数価にして20[118]: 
						だが、無量の事どもを要求し、あらゆる黄金や銀といった 
						あらゆる財を集めるだろう:自身の男たちからのまさしく 
						企みが彼女に起こるだろう。そのとき再び汝に、浄福の大地よ、 
						11.260 
						戦争、諍い、殺人も起こるだろう。 
					しかしながら、豊かなローマを多衆が支配するとき、 
						選抜されるのは、勿論、浄福者たちの中からではなく、1000、 
						10000の、支配者となった僭主たち、 
						法定のアゴラの監督たち、あるいは至高の 
						皇帝たちがすべての日々を支配するだろう: 
						だが、彼らのうち最後の者は、数価にして10[119]を 
						その名に有するのだが、地に倒れ伏すだろう、 
						[恐るべきアレース〔戦闘〕の最中、敵の戦士に撃たれて:] 
						これをローマの子らは、己が掌に運び、 
						11.270 
						厳かに埋葬するだろう、その上には徴の品を注いで、 
						各人の友情の記憶とするだろう。 
					しかし、時代の終わりの年が到来し、 
						300を2度、10を2度満たしたとき、 
						おまえの設立者、野獣の子が嚮導し、 
						計量された時を支配する執政官はもはやいないであろう: 
						それどころか、神にもたごう者が主たる王となるだろう。 
					そのとき知るがよい、エジプトよ、汝に攻めかかる王を: 
						だが、煌めく兜の恐怖のアレースがきっとやってこよう。 
						そしてそのとき汝に、寡婦よ、それから後に捕囚があるだろう: 
						11.280 
						なぜなら、土壁のまわりに暴力に燃えさかる恐ろしい 
						悪意に満ちた戦いが起こるだろうから。戦いのさなかには、 
						彼女〔寡婦〕は破滅を被って、新たに傷ついた者らを越えて、 
						怯えた女として逃げるだろう:同衾の結婚は終わりだ。 
						悲しいかな、汝、不運な婚礼の乙女よ、王制の支配権をば 
						ローマの王に与え、かつて勇ましい態度で 
						行為した限りのことを、すべて償うとは: 
						全領地を持参金として非情な男に与え、 
						リビュエー、色黒き者どもまでも。 
						11.290 
						汝はもはや寡婦どころではなく、人間を貪る恐ろしい獅子、 
						戦神のエニューアリオスと共住するだろう。 
						そしてその時、惨めな女よ、おまえは人間界から 
						消え去るだろう、恥知らずな気性を持った女としてすべてを残して: 
						 民の多くが汝のために泣き、 
						王も汝のために恐ろしい悲嘆の呻き声をあげるだろう。 
					そしてそのときには、エジプトは労多き奴隷女となって、 
						多年の間、インドイ人たちに対して勝利牌を運ぶ者となる: 
						11.300 
						して、屈辱的に隷従し、あの河  稔りもたらすネイロス河に、 
						涙をこき混ぜる、幸運と、あらゆる善き事どもの 
						大きさ、諸々の都市の栄養を獲得し、 
						恐ろしい人間どもの羊喰う種族を養うだろうから。 
						ああ、いかほどの野獣たちに奴隷奉公と獲物が生じることか、 
						多幸のエジプトよ、民人たちに判決を下すものよ: 
						かつては大いなる王たちをも栄化し、 
						かの民のために辛抱強く民人に隷従し、 
						今は敬虔に生きる彼を、諸々の辛苦と哀哭の 
						数多の悲惨へと導き、その頸の上に 
						11.310 
						鋤を置き、死すべき者らの涙で田畑を灌漑するであろう。 
						そのために主御自身、天空に住まいする不滅の神が、 
						全都市を明け渡させ、愁歎へと送り渡すであろう: 
						そして汝がこれまでに無法に為してきたことの見返りの報いを受け、 
						ついには汝は知るだろう、神の怒りが汝に到来することを。 
					さらには、わたしは、ピュートーンへ、塔にすぐれるパノペーへと 
						赴こう:そこでは、わたしのことを万人が言い広めるだろう、わたしが真実の 
						託宣する預言者だと:そのまま気の狂った心もて 
						わたしは告げた…………:だが汝が書物に接近したときには、 
						汝は戦慄してはならぬ、そして将来するはずの事も過去の事も、万事を 
						11.320 
						我らの言の葉から知るがよい:そのときもはやひとは、 
						必然の予言する女占い師と呼ぶことはなかろう。 
						しかし、主よ、今は、心(しん)から待たれる私の歌をやめたまえ、 
						激情と神憑りとによる本当のお告げと恐ろしい狂気を 
						撥ねのけて、心ゆかしい歌を与えたまえ。 
					2021.11.03. 訳了。 |