奥崎謙三に判決
生徒心得の歌 (さだまさしの「関白宣言」のメロディーで) おまえを進級(入学)させる際に 言っておきたい事がある かなりきびしい話もするが おれの本音をきいておけ 零時より前に寝てはいけない それまでに復習・予習三時間やれ あとの1、2時間、漱石・鴎外・ジイド・カフカ読め そのため時々徹夜してもかまわない 6時より後に起きてはいけない 起きたらすぐに御飯を炊き、味噌汁つくり、シャツ洗え 弁当は毎日自分でつくれ 御飯おかず腹いっぱい食べろ やせようなんて決して考えるな おまえはいま健康で最も美しい時なんだから ただし糖分を摂ることだけはひかえろ これら全部守ることを命令する おまえにほんの少し言っておきたい事がある 少しの頭痛なら登校せよ 登下校の際には校舎に向かって礼をしろ 授業中は全身 目と耳にしろ 頭はフル回転! 疑問は先生が閉口するほど徹底的にきけ おまえにはおまえにあった勉強方法があるはずだ それを早く見つけて効果的にやれ 忘れてくれるな怠けて勉強しない奴は 進級させるはずなど絶対ないってことを おまえにちょっぴり言っておきたい事がある 地球がたといこっぱみじんになっても学校の規則を一つでも破るな 忘れてくれるな校則違反時は 厳しい処分があるってことを 自由と独立とを獲得するまでは 異性など気にもかけるな 父母や先生の注意は素直にありがたくきけ 全て5分前に駆け足でやれ 「静かに!」と言われたら、「よし」と言われるまで 1時間でも2時間でもかきのように口を閉ざしておれ これは全て命令だ おまえにもう少しだけ言っておきたい事がある 部活動にも生命(いのち)を燃やせ それぞれ日本一、岐阜県一になれ 不可能なはずはない なろうとしないだけだ 優勝旗・表彰状いくらとってきてもかまわない おまえにはすばらしい長所がたくさんある 絶対ある それを磨け いつも礼儀正しく にこにこしていろ 誰にでも爽やか挨拶をしろ それから女らしさを失うな 友情を深めよ みんなみんな友達だ 忘れてくれるなおれの言っておきたいことは たったこれだけだ おまえが何かでおれを感動させることをしたら 嬉し涙のしずく二つ以上こぼし おまえの首っこにあの表彰メダルをおれがかけるから 必ずかけるから 忘れてくれるな おれの憎む生徒は 憎む生徒はパーマをかけ マニキュアつける奴 忘れてくれるな おれの愛する生徒等は かしこく、強くゆたかな ◯◯高生 △△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△ ここに挙げた「生徒心得の歌」は、岐阜県の女子高校の校長が、生徒心得として生徒手帳に記載したものだという。ぼくは、これを読んで笑ってしまった。こんなブラック・ユーモアがどうして笑わないでいられようか。 笑ったあとで、本音とはかくもグロテスクなものか、と感心もした。 笑いもし、感心もしたあとで、待てよ、という気になった。もしかしたら、この校長は、ユーモアでも皮肉でもギャグでもなく、本気で、大真面目で、真剣に、これを書いたのではなかろうか。さもなければ、生徒手帳に載せるなんて、ちょっと考えられないことだ。しかし、だとしたら、これは恐ろしいことだ、と言わなければならない。ブラック・ユーモアがユーモアでなくなれば、それはもう暗黒の恐怖以外の何ものでもなかろう。 |