未来への可能性 |
ところで絹川さんは建設業を経営しながら、ボランティアでまちづくりコーディネーターをされているようですが、そういう立場からご意見はありませんか。
絹川:
リムさんて恐い人だったんだなと思いました。
若い人がこの分野に意欲をもって入ってきて、朽ち果てていく例を何人もみてきました。自分自身もつらい経験を持っています。本業の建設業とこういう分野の人たちと、どう連携したら良いか、十数年、悩んでいます。
言葉にうまくできないんだけど、それでも突っ込んでいくピエロのような人に賛同する人が現れてきているとも思います。だから奈良の井岡さんに怒られたからシュンとならないで、自分自身も諦めんとこうと思います。
リム:
そういう明るい兆しがどこかにありますか?。
絹川:
あります。たとえば小野郷の休耕田に入った23、4歳のNさんを知っているからです。
その人はその経験を武器に、佛教大学の先生だった丹羽さんがやっておられるまちの学び舎ハルハウスを拠点みたいにして頑張っています。小野郷に関係した佛教大学の学生さんが、京都のなかで地域改善に頑張っています。
20代の若者たちに、そういう人たちがものすごく増えていると思います。
リム:
小野郷で別荘をつくる人がいないんですかねえ〜。
張さん何かご意見ありませんか。
張:
鳥取環境大学のものです。
自分がかかわっているところでいうと、まちなかは高齢化が進んでいます。
農山村では若者が減っていますが、50代、60代の人が頑張っています。
まちなかのほうはみんな諦めていて、なにかやろうとしても門前払いとか、町内会長さんがみんなを集めてきてくれて、やっと話を聞いてくれる程度ですが、農村のほうはどんどん引っ張ってくれる人もいます。
ニュータウンのなかに大学があるので、ニュータウンでアドバイザーを頼まれましたが、ここもまた、まったく違う場所でした。
ただ、こういう人間だということで、頼んでみようかという状況が生まれてきているということです。
そのなかで最近思うのは持続的にやっていくことが大変重要だということです。
長期的に解決していく場合には、いろんな人に関わってもらわないといけないし、その場合、既存の組織の力を発揮してもらうことも必要だし、そのためのデータベースづくりも必要だと思います。
リム先生が計画する力と言われていましたが、日常生活のなかの力、太極拳のグループでも、お料理づくりのグループでも、直接まちづくりに関係がないように見えるグループでも力になることがあるのです。
たとえばニュータウンのなかに鹿が出たというとき、どう対応するか。やはりそういったことにもともと関心がある組織を活用するということもあるんじゃないかと思います。
リム:
そういう現場を見ていて、木屋町や小野郷の話を聞かれてどう思われますか?。
ぬるいでしょ、京都は。恵まれているなと思われませんか。
張:
パトロールとか、環境改善とかが紹介されていましたが、それは元々、既存の組織があったのか、連携を作られたのか、新たに作られたのかといった話をお聞きできればと思いました。
佐藤:
立誠の場合は、諦めてしまうところまではいっていません。
地元の元々の組織もありましたし、なんとかしようという気持ちもあります。恵まれていると言われれば、その通りです。
でも、繁華街の環境悪化に対して動ける住民数が圧倒的に少ないなど、やはり困っているので、私たちが入っていったということだったと思います。
リム:
昔、宮本憲一先生に京都の再生ということを話したら、「京都のどこを再生するんだ。年間5000万も観光客が来ていて、コミュニティもしっかりしている。他の地方都市と比較にならない。これ以上何を望むのか」と指摘されました。
でも逆に考えると京都は仕掛け方しだいで、あるいは何かを提案したら爆発的なビジネスになる可能性を秘めているのです。そこまでまちづくりコーディネーターに期待したいんですが。
絹川さん、どうですか?。
絹川:
実はきっかけはあちこちにあるのであって、それをつむぎ合わせるのがまちづくりコーディネーターの役割かなあと思います。
錬金術師たれというリムさんの話は、言葉にはされないけど、まちなかで動いている人たちには、これとこれとあれを結びつけたら出来るんじゃないかという絵は描けていると思うんです。だけど、実際に手がけてみると、頭のなかで出来ていることを実際に形にするのがこんなに邪魔くさいんか、と思うことがよくよくあります。
それは、地域のコミュニティの顔役とか長老の足の引っ張り合いとか、ジェネレーションギャップとか、いろいろあります。でもそれを気にしないで動ける若い世代がでてきているし、もうちょっとで、コミュニティビジネスがあちこちから沸いて出てくるんじゃないかと思っています。つぶれかけている建設業界もなんとかなるんじゃないかという期待も持っています。そのへんでまちづくりコーディネーターがどう動くかに期待しています。
リム:
まちづくりコーディネーターの地域の調整役としての能力はすごいと思うし、よそ者だからできるということはあると思いますが、私はそれにとどまって欲しくないと思っています。それでは便利使いされて終わってしまう。そこを突破して、ちゃんとした職能になって欲しいと願っています。