都市計画の新たな挑戦(蓑原敬)
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メールで寄せられたご意見

 

Sさん(行政)
 今後、基礎自治体がまちづくりを展開していくうえで必要なことは何か、という視点でお話しをお聞きしていました。その結果、「以前から漠然とそうではないか」と感じていたことが、「間違いなくそうだ」と感じることができました。具体的には、以下の2点です。

 まず1点目は、蓑原さんがセミナーでおっしゃったことですが、「体得しながら地域課題を解決することが、まず第一」ということです。すなわちこれは、現場でしっかりと地域課題を把握し、地域の主体と一緒になって課題の解決を図るということです。

 2点目は、縦割り行政の弊害です。月並みかもしれませんが、やはりこれがどうしても邪魔になっています。これからのまちづくりは、都市計画のみならず福祉や教育の課題に加えて、身近な生活に関する課題まで、同時並行的に取り扱う必要があります。私も地区計画の関係で、いくつもの地域に入って行きましたが、住民の課題は都市計画などではなく、近所の違法駐車や犬のフンなど生活に密着したことです。

 まず、これらの課題をすべて出し合って、そのうえで核心を抽出していきますが、関係部署の連携が不可欠です。

 これら2点に対して、行政の姿勢はどうかといいますと、1点目に対しては、概して(少しずつ変わってきている部分もあるようにも思いますが)苦情待ち、指示待ちの旧態依然とした雰囲気を否定できませんので、「行政が能動的に地域に出向いて」ということが、行政全体としてなかなか実践できてない。したがって、「体得しながら地域課題を解決する」ことが出来ずにいる。

 また、2点目に対しては、都市計画や福祉や教育など、必要に応じて連携が求められてもなかなか積極的な連携が実現しない。

 まさしく縦割り行政の弊害です。

 これらのことは、今さら言うまでもないことにも思えますが、しかし、現場は一向に改善されない。道州制や広域圏などの議論が進めば進むほど、それと同時に基礎自治体の意識改革(役割の再構築などを含めた見直し)への取り組みが急務であると強く感じました。

Iさん(社会人院生)
 日本人は本当に改革をできるのか? 近世〜現在まで大きな改革が二度会ったが、いずれも外圧依存であった。地域活性化、コンパクトシティ化など21世紀を通じて推進すべき大きな課題であるが、今回も外圧頼りになるであろう。

 2020年(ひょっとすると2015年以前)にoil crunchhが起こるであろう。大企業が支配してきた流通が崩壊するであろう。必然的に小さなコミュニティの中で農・工・商をまわしていかざるをえない。

 ただ、そのときに問題になるのは、一般の人びとが議論を行えるレベルにはほど遠い実態である。議論できる市民が育たなかった。

 私はプラスティック産業に関わっている。8月26日に山形大学で行われた日本(プラスティック)成形加工学会夏期セミナーで「成形加工の地産地消」を提唱。20世紀型の大量生産→大量輸送→大量消費→大量廃棄の構図から、真に必要なものを、必要な時に、必要な場所で、必要な個数だけ作る構図への変革が必要(村の鍛冶屋論)。

 追伸

 私は「地域の活性化」にとって、次の3点が重要と考えています。

 1)人の育成
 これには2つのポイントがあると考えます。一つは、アンケートに書きましたように、公共(Public)の精神を持った市民の育成で、学校教育、生涯教育が重要です。残念ながら、学校教育では失敗しています。受験に勝ち抜くための知識教育に偏りすぎ、利己的な心を持つ生徒を育ててきました。大学教育ではその弊害を補正出来る可能性があったのですが、就活が大学生の最大の関心事になるにつれて、補正どころかかえって利己心を助長しかねない状況になっています。

 もう一つは、地域活性化にしゃにむに取り組む人の養成です。特に今後10年〜30年取り組める20代、30代の若い人です。でも、ボランティアに頼っては長続きしませんし、真に能力のある人も呼び込めません。しっかりした生活基盤が築ける長期的な雇用の創生が必要です。

 2)交通システム
 北陸地区にある金沢大学のドクターコースに在籍しています。高山教授「交通政策論」のドクターゼミに、門外漢を承知で参加させてもらい、限界地区の交通問題に取り組む白山市の専門家と議論したりしています。北陸3県の中核都市を除く地域の交通事情は危機的です。自家用自動車の方が利便性が高いために多くの人が自家用車で移動するようになった結果、公共交通システムが崩壊しています。結果、83歳のおじいさんの運転に頼っていた79歳のおばあさんが、おじいさんの身体的な問題が発生したため、その年になってから車の運転免許を取り、あらたに車を運転するといった悲惨な状況になっています。合成の誤謬の最たる例です。

 私は、車の走行を徐々に減らす方向に誘導するといった生やさしい方法ではなく、一旦自家用車のない社会にし、どうしても必要なケースのみ例外的に自家用車の走行を認めるといった大胆な施策が必要な時期に来ていると思います。クルマ社会には7つの大罪があります。今から50年前には自家用車がほとんど走っていなかったですが、そのときには社会生活が送れないほど不自由だったのか?ヨーロッパでは、ベネチア、コペンハーゲン、ウィーンなど、市中への自家用車の走行を制限したり禁止したりしている都市があり、その数が増えてきているように感じます。私の予感では、後数年先にはパリがその仲間入りすると考えています。

 (1)「Peak Oil」の早期実現化
 (2)炭酸ガス排出による気候変動の激化 (廃熱によるヒーアイランド現象の激化)

 (3)NOx、SOx、粒子状物質排出による環境汚染。

 (4)道路・駐車場のためのコンクリート化やアスファルト舗装による緑地面積の減少。先のヒートアイランド現象と合わせて、都市部における局地水害の発生原因になっています。

 (5)交通事故死傷者の多発による人的損失
 (6)高齢運転者の増加による交通事故の激増
 (7)地域のコミュニケーションの崩壊、子供の遊び場(50年前は近所の生活道路が遊び場であり、そこで集団で遊ぶことに必要なルール作りを学んだ)の搾取
3)雇用の創出
 アンケートにも簡単に書きましたので、省略。

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