食旅と観光まちづくりセミナー記録
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旅行者の食旅経験と意向

 

食旅経験と意向(p22図表(1))
 地域ってどこ?という難しい問題があります。たとえば今日、訪れたエリアは大正ということで皆さん納得されていたようですが、大正区の一部ですし、大阪市とか大阪府、関西と言った範囲も地域と呼ばれることがあります。

 食旅で観光まちづくりの「まち」もどこなんだという議論もあります。

 プレイスという言葉がピッタリくるようにも思いますが、これも重層的に重なっています。

 しかしまあ、そういう問題はおいておいて、「地域の食を食べることを目的とした国内旅行にいったことがありますか」という質問に対する回答です。半分近くの人が行ったことがあるという結果でした。

食旅の背景〜旅と地域の変化
 物見遊山の観光が目的型、滞在型、体験型、学習型になってきています。ニューツーリズムという呼び方もあります。背景には旅行市場の成熟、すなわちリピーターが増え、旅行経験値が増えてきたということがあります。

 また受け入れるほうも変わってきました。

 昔は来るのを待っていたのですが、今は来てくださいと工夫しています。食旅もそうです。いままでは来た人がたまたま食べていたのですが、今はこんな食事があるから来てくださいという形になって「見える化」されています。

 もちろん地域のニーズに観光だけが応えられる訳ではないし、人口減少という大きな流れに観光だけで対抗できるわけでもありませんが、交流人口はやっぱり大切になってきています。そのとき、30分だけ来られて去られたのではだめで、やっぱり食べて貰ったり、体験して貰いたい訳です。


■食旅の経験度

食旅経験(性年齢別、p39図表(1))
 やはり食旅の経験は女性のほうが若干多いですね。特にヤングが多いです。ここでは35歳までをヤングとしています。

 美味しい物は女性誌にほとんど載っていますし、旅行誌も女性の読者が多いのです。彼女たちは情報を持っているということです。

食旅の類型別経験率(p40の図表(2))
 本で詳しく解説していますが、「高級食材」「旅館で地元グルメ」「地元の高級料亭」「伝統的な郷土料理」「B級グルメ」「特徴ある食の空間」「体験する食」「買う食」に分けて聞いています。

 この分け方はまだ研究の余地があると思いますが、前の『食旅入門』を書いたときのオープンアンサーから拾った言葉から、想定した分類です。

 B級グルメがトップで、意外なことに買う食が大人気です。これは現地に行って食べるのではなく、食べ物を買うという旅です。もちろん食べるのですが、主目的が買うことにあります。

 焼津、銚子とか、このあたりなら白浜にお魚を買いにいくという傾向が目立っていますし、地域がフィッシャーマンズワーフとか、ファーマーズマーケットなどによって、それに対応し始めています。

食旅の類型別経験率・性年齢別(p41図表(3))
 男性ヤングの経験率では突出しているのはB級グルメです。

 宇都宮に餃子を食べに行ってきましたが、やっぱり若い人たちばっかりでした。

 男性シニアは高級食材です。

 一方、女性ヤングは他の性年齢別階層と比べると旅館指向が目立ちます。

 女性ミドルは子育て層ですが、いずれも平均的レベルで他の階層と比べて特に積極的な項目はありません。

 買う食は女性全体に人気がありますが、女性シニアでは他の分野に比べて圧倒的です。バスに乗っていったり、マイカーに乗っていったり、特に年末の買い出し旅行は凄いです。


■食旅に行ったことのある観光地、都市ベスト20

食旅経験(p43の図表(1))
 実際にいった食旅で印象に残っている物を書いていただいたものです。

 京都が一番でした。やはり強いです。

 あとは仙台の牛タンです。美味しいんですが、わざわざ行くかなという気がするのですが、第2位です。次は讃岐うどん。これはほんとにそれだけのために行って、3、4軒、うどん屋さんを巡るという本格派です。

 これらを見ると名物がある大都市か、あとはひたすらカニです。


■食旅への意向度

食旅意向(p22図表(2))
 77%の人が行ってみたいと答えていますが、もともとどんな旅行も行ってみたくないという人もいるわけですから、この数字は大変高いと思います。

食旅意向・性年齢別(p47図表(1))
 行ってみたいという人は女性に多く、男性と10ポイント以上の差がつきました。

 女性ヤングは85%も行きたいと言っています。男性ヤングは意向では落ちてしまいます。彼等は旅行自体に意欲を示さなくなっています。お給料が少ないとか、かったるいとか、そういう感じですが、ここにもその傾向が表れています。

行きたい食旅の類型(p48図表(2))
 さっきと同じ類型ですが、高級食材がトップです。続いてB級グルメ、旅館で地元グルメ、そして伝統的な郷土料理です。

食旅意向・性年齢別(p49図表(3))
 男性のヤングは軒並み平均以下で、ミドルがB級グルメです。シニアは予想通り高級食材です。

 女性は郷土料理や特徴ある食の空間への関心が高いのですが、男だと郷土料理と言われてもなかなか思いつかない、情報を持っていないというのに対して、彼女たちが情報を持っているからだと思います。

 コメントを見ても若い女性はほんとうに生き生きと書いています。

 女性のミドルが体験する食に関心が高いのは、子供に体験させてやりたいからだと思います。稲刈りとかチーズ作りを経験させてあげたいということです。

 女性シニアは旦那さんというより友達と、旅館グルメに行きたいという感じが見えてきます。

 彼女たちは高級料亭への関心も高いのですが、これはミュシュラン効果かもしれません。

 地域では、こういった分析から地域資源をどういうターゲットにどうやって売り込んでいくかを考える手がかりにしてはどうかとお話しております。


■食旅に行きたい観光地、都市ベスト20

最も言ってみたい観光地、都市(p51図表(1))
 ダントツなのは北海道です。絶対に美味しい物があると思われています。

 次が讃岐うどん、沖縄料理です。そして京都の京懐石。

 きりたんぽや大阪の粉もんも健闘していますが、概して大きな都市とカニが強いことが分かります。

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