JUDI関西 「海上都市のアイデンティティ」 浜田法男
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5 フリーディスカッション

はじめに

コー・プラン 小林郁雄

 それではフリーディスカッションにはいります。

   

(一部省略)

 いくつかの論点があると想いますが、 海からみた海上都市、 その背後に市街地、 六甲山が見える風景をみながら、 シーバスで本会場にこられたと思います。

   

 このような神戸の市街地の構造のなかで、 人工島の姿をみながらどんな感じを受けられたかといった大枠の話を含めて、 神戸の風景のなかで、 あるいはニュータウンとしての、 あるいは埋立地のなかでの街の姿、 アイデンティティについてどんな感じを持たれたかを伺いたいと思います。

   

建築設計の立場から

現代計画研究所 江川直樹

 私は先程スライドにも出てきましたが、 ここで建築の設計をさせて戴きました。

どちらかというと街を造っている感じでやらせて戴き、 今も引き続いて次のブロックの設計をやらせて戴いています。

その時に感じたことと、 都市環境デザイン会議の会員として、 小林さんが言われた海から見てどう感じるかなどと、 旨くマッチングするかがわかりませんが、 お話しをさせて戴きます。

   

 海上都市として何か特殊なことがあるだろうか。

私は街づくりのなかであるのではないかと思います。

それは、 私達が設計している際に、 現場を何度も訪れ、 工事中にも訪れていろいろ見ている中で、 やっぱり空気が違うんですね。

   

 私達は三田のような内陸部の山を越えたエリアの新しい開発地での仕事や自分達が住んでいる阪神間の仕事もやっています。

六甲アイランドは海の手六甲と言われていますが、 私は阪神間の延長線上にあると思っています。

ただし、 物づくりという感じからすると、 阪神間の空気と六甲アイランドの空気はぜんぜん違うと感じています。

ポートアイランドのことはよく解かりませんが、 たぶん違うのではないかと思います。

   

 空気が違うというのは、 海上都市の場合には周りの海に反射されて、 上の空が明るいという感じがするからではないかと思います。

   

 阪神間の場合には身近に六甲山があり、 緑との付合い方、 山との付合い方が随分他の地域とは違うと感じています。

先程の大塚さんのスライドのなかに、 六甲アイランドはわりとカラフルな街になっているという話がありましたが、 人間の目に色を感じる経緯は反射ですから、 周りの状況によって感じる感じ方が全然異なると思います。

当然のことながら、 内陸の三田でつくる好ましい色とか、 現代性とか馴染みやすさと、 阪神間、 六甲アイランドでのそれは明らかに違うと感じています。

   

 当初、 ウエストコースト4番街でつくられたデザインガイドラインでは、 4つの街角に色をつけることを決められました。

そして、 それ以外は大人しくしていいじゃないかと考えられた。

あの発想が最後までいっているようでありながら、 実はあまりいっていない。

応答みないなものはあったのですが、 意外に色が大人しくなってしまっています。

あの街角の4つの色を変えたというのは新しい街をつくるときのスケールで色を決めていった感じと、 六甲アイランドの空気から出てきたものではないかと考えます。

   

 私どもは紺色のタイルを使って、 結構ハデといった意見もありましたが、 水谷さんはもっと激しいこと『ブルーと白と緑といった中近東、 イスラム圏のモスクに使われている色をつかってやってみたら』と言われました。

そこまでやる勇気はなかったのですが、 水谷さんはそういう感じを思っていられたと思います。

宮脇さんも街角の4つにブルーとか黄色とかオレンジを配したということで、 そういう感じを持っておられたのではないかと思います。

   

 また、 水谷さんは六甲アイランドに教会をつくりたかったと言われていましたが、 それからすると、 六甲、 阪神間をかなり意識して計画が進められていたのではないかと思います。

   

 同じ神戸とか阪神間ではありますが、 海上都市と街の色は一つ考える要素としてあるのではないかと思います。

   

小林郁雄 色の話は難しい訳ですが、 都市環境デザイン会議の大きなテーマであり、 今後の問題にしていただきたい。

 最初の街角の色を決めるのには随分勇気がいりました。

積水ハウス(株)の山根さんなんかは、 清水の舞台から飛降りる気持で決められた訳ですが、 出来上がったときはやった本人もビックリしたのですが、 2年たてば慣れるとゆうか、 今見れば随分大人しい感じがします。

   

オープンスペースについて

都市環境計画研究所 大矢京子

 神戸の街の骨格から話をはじめます。

神戸の都市構造は、 500〜700m級の六甲山系の麓に街が広がっています。

その市街地の大きさは東西20km、 南北は僅か2〜3km程度で海に至り、 その海上にポートアイランド、 六甲アイランドが位置する構造になっています。

これらの南北に短い市街地を海に向かって数本の川が貫いているものの、 地形的な条件で通常は殆ど水の流れていない状態になっています。

   

 これが神戸の大きな地域性を造りだしている背景となっていると思います。

このような、 特徴を持つ都市部でのオープンスペース確保には複雑な土地問題がからんでこざるを得ないと思います。

   

 一方、 六甲アイランドでは豊かなオープンスペースが造られていますが、 オープンスペースは利益を生まない空間、 反対に管理費を必要とする空間であると思います。

リバーモールなどでは相当な管理費を要していることは容易に想像出来る訳で、 このようなオープンスペースは必要なんだけれども、 気づかれなければ、 つくられない性格の空間ではないかと感じています。

   

山本茂 当初、 せせらぎ、 街角広場は街の財産として街全体で維持してゆこう考え、 そのための位置づけとして街角広場を地区施設に指定したりしています。

現在、 住民から、 街角広場、 せせらぎ両方の維持管理費用として一戸当り月300円を徴収しています。

 当初ランニングコストとしてこれでは厳しいのではないか、 700円或いは1000円程度必要ではないかとの話がありましたが、 8年前に、 街全体に寄与する物に対するコストというものがどの程度まで認識されるか、 環境インフラに対する住民の認識に対する不安な面を感じ、 申し上げました300円に落ち着いた次第です。

   

 現在、 せせらぎについては夏の間(4月〜10月まで)半年間稼働させており、 何とか管理費のなかで収まっているようです。

せせらぎなどを管理している管理会社は他の事業(住宅の仲介や新聞の合配、 宅配便取次など)でも収益を上げており、 そういったところからの補填など管理会社のなかでやり繰りしてもらっているのが現状です。

   

大塚映二 リバーモールの管理費は正確には把握していませんが、 年間1億円前後と聞いています。

但し、 人件費は除いています。

純粋に水の循環などの維持管理費が約1億です。

 これに税金を注ぎ込んでいたら市民の方から総スカンをくうと思いますが、 開発局の事業は基本的に企業会計でやっていますので、 何とかそのへんは大目にみて戴けるのではないかと考えています。

但し、 あれだけの空間、 水量を維持しようとすれば、 それだけの費用がかかるのかとビックリはしています。

   

小林郁雄 これまでは、 管理費を如何に安く抑えるかばかりに目を向けていましたが、 管理会社をつくって儲ける発想、 4000戸の人がいて、 その人達が活動していて掛かるお金を上手に動かせば、 会社の一つ位は出来るという発想の転換で管理が行われていることは、 民活の一つの勝利ではないかと思います。

計画の立場から

COM計画研究所 吉田薫

 海上都市をどのように評価するのかについてはいろいろ難しい議論もあると思いますが、 実感として先程江川さんもおっしゃったように、 自然を感ずるとか、 開放性があったり、 自由さ、 自由性といったものを何となく感じる環境を海上都市は持っていると思います。

   

 そうゆう意味で、 固定観念で思っていた『大丈夫かな』ということとは別に、 出来ているものを見てみると、 それなりに大小の違いはあっても、 既成市街地の中にはないなにかを持っている点ではすごく評価出来ると思います。

   

 特に、 神戸市を例にとると、 新開地でアーケードをとっぱらってモールにする、 木を1本2本植えるのに大変努力をする仕事をしている立場からみると、 こんなに自由にノビノビとせせらぎをつくれるというのは大変羨ましいと感じます。

   

 総じて、 海上都市に出来ているものをミクロに見ると、 既成市街地で実現したいなと思いながら実現していないものが、 ふんだんに事例として出てきている点は実感として評価しています。

   

 ただ、 震災があったから言うのではないですが、 陸の孤島になってしまうとかいった海上都市の持っている問題点、 これは平常時であれば、 私は全て二重丸と思いますが、 非常時の時にどうなのかという点で、 海上都市という限り、 都市の持っているそういった問題について触れてトータルに評価することが、 出来るのか、 このあたりの話がないと問題が残るのではないかと思います。

   

 海上都市は人工島ですが、 島である以上は、 例えば、 小さいとき『ひょっこりひょうたん島』などのアニメに出てきたように、 島のもっている特徴として夢の島にはアンジュレーションがあるわけです。

   

 海上都市というのは、 南港のように一部に盛土して森を創るなど高低差つけている例もありますが、 それとて島という風にはなかなか見えません。

   

 運輸省絡みで護岸の問題などいろいろ制約がありますけれども、 制約があっても海のなかに浮かんだ島でフラットだと決め付けるのは如何がなものかと思います。

我々大阪に住んでいますと、 大阪はフラットの都市ですからアンジュレーションにすごく憧れを持っています。

神戸の場合は六甲もあり、 土地がないのでせめてフラットにしておこうか、 有効利用しようとゆうこともあるかも知れませんが。

   

 しかし、 人工島からみた六甲の借景というのは享受できるが、 市街地側に何を投げかけるのかという点では、 例えば、 ビルのスカイライン、 六甲風のビルのスカイラインをビルで創ってみようということもあるもかも知れませんが、 出来るのか出来ないのかは別として、 六甲側からみても市街地からみても若干島らしきものがあるという発想にたつと、 現在の海上都市は人工的に過ぎるのではないかと思います。

   

 どうせ埋めた自然ですから、 償いとしてもう少し自然を考えてゆくことも計画論としてあっていいのではないでしょうか。

事業論としてはいろいろ難しい問題もありますが、 そのような発想を一部に取り入れることがあるといいのではないかと思います。

   

 メリケンパークのように既成市街地に近接したエリア(インナーハーバー)ですと、 もう少しデザインについても市街地とどう結び付けるか、 機能上だけではなく風景についてもいろいろ考え易いのですが、 人工島で更地ですと寄って立つデザインコンセプト、 ヴォキャブラリーを探ろうといってもあまり無い訳で、 逆に遠く離れた人工島のデザインは、 思い切ってフリーハンドでやり易いわけですから、 なんかのコンセプトを持ちながらトータルに創ってゆくという考え方で、 デザインそのものはいろいろなことがあっていいのではないかと考えます。

   

 それが、 トータルで都市として調和していればいいのではないかと思います。

神戸らしい風景・デザインを人工島にイメージして出来るのかがイメージ出来ません。

むしろ、 なんらかの開発のコンセプトを持ってデザインもフリーにやってゆくものではないかと思います。

   

 ただ、 港湾、 物流機能など都市が持つべきいろんな機能を混在させるなかで、 これとバリヤーしなければならない現状についてどのように考えてゆくのか、 護岸の土地利用、 形態についての工夫がなければ、 陸側となんら変わらない都市空間になってしまうと思います。

   

 また、 都市は人間の行為、 営みがあって時間を経過しないと、 本当の意味でのその街のアイデンティティは出てこないと思います。

その考え方に基づくと、 出来てすぐの六甲アイランドではアイデンティティはまだまだで掴みきれないのではないでしょうか。

積水ハウスが頑張っておられるソフトな仕掛けをとっかかりに、 六甲アイランドらしいアイデンティティを形づくっていかれることを期待しています。

   

住民の立場から

六甲アイランド住民、 サントリー不易流行研究所 佐藤由美子

 六甲アイランドに住み始めてまる2年が経過しました。

第1期の最後ウエストコースト3番街に住んでいまして六甲の山が非常によく見える住戸です。

今日の話を聞いて買いは山だったのかと解かってよかったと思います。

   

 先程、 色に慣れるのに2年位掛かるとおっしゃってましたが、 ピンクとブルーなんですね、 私の住戸の色は。

買うときには全然解からなかったのですが、 玄関のドアの周りがピンクなんです。

モデルルームではそこまでやっていませんし、 階によって色が違いますし、 それはすごくショックでした。

でも、 今はだいぶ慣れました。

   

 私が、 六甲アイランドにやってきましたのは、 私がフルタイムで働いていますので、 交通の便がよくて、 子供が安心して暮らせて、 ある程度の広さが必要だったんです。

   

 阪神間で京都寄りの高槻に住んでいたんですが、 なかなか大きな住居がない。

マンションで80〜90平方メートル位まではあっても、 100平方メートルになると数が少なくなり選ぶという感じがしなかったんですが、 私が入っております所は100平方メートルを越えるようなものがかなりありまして、 ピタットきたなという感じで、 間取りや広さに惹かれました。

   

 また、 ベランダが十分確保されていて、 中庭があり前の住戸が緑越しにみえるところが気にいっております。

   

 今は、 プールとかが家の前にありますし、 私が気に入っているシティヒルというのがありまして、 外側の港湾地帯との間に丘が盛ってありまして、 そこが土になっています。

犬の散歩をされている方とか私達は子供達と遊びにいったりとか、 ある程度の自然が感じられる空間となっています。

   

 六甲アイランドは旨く出来ていると考えられるし問題でもあるのですが、 駅から家に帰るのに信号を渡らないでそのまま玄関に着きます。

ウエストコースト3番街は買い物に行くのにも公園の中を通って行けます。

外の交通との遮断がはっきりなされており、 子供達は一輪車に乗ってどこでも走って行きます。

   

 あるとき気がついたのですが、 震災の前ですが、 住吉の街に自転車でいった時恐くて走れないのです。

六甲アイランドの住区の中には電柱がないのですが、 電柱をどうやって避けたらいいのかといった些細なことを恐く感じてしまう。

小学生の子供は島の外に出ることがあまりありませんから、 外に出たときに戸惑うのではないかと感じさせられました。

   

 六甲アイランドは非常にいいのですが、 市場的なものがありません。

非常に準備された店が多く日用品については不満な面があります。

洋服とか遊びの店は沢山あります。

外から来られた人には楽しいのですが、 普段生活している人にはどうかなと思います。

また、 震災以降もそうですが、 兎に角お店がよく変わります。

つい最近も24時間営業のコンビニエンスストアーが出来たのですが、 それによって随分街の表情が変わりました。

2年住んでいる間に随分街の表情がかわりました。

店が1軒変わっただけで随分表情が変わりいろんな所に変化がみられます。

   

 さき程、 親水空間の話がありましたが、 あれが親水空間だったのかとがっかりさせられました。

親水空間というのは砂浜があったり、 魚釣が出来たりするのが親水空間ではないか。

なにも無い所に出来た街ですが、 ここで原風景や歴史性を感じさせるとすれば海しかないと思います。

子供達にこういう所に住んでいるのですから、 海がこんなに近いんだと感じさせてやれればいいのですが。

   

もう一つの人工島から見て

ポートアイランド住民 原野芳弘

 ポートアイランドに移ってきて2年です。

移ってきて1年位で震災があり色々感じる所がありました。

それまでポートアイランドには絶対に住みたくないと思っていました。

それまで御影に住んでいたのですが。

なにがいやと感じていたかとゆうと、 不安な感じがすること、 陸側からみると海上都市というのはすごく新しくて、 いろんな試みがあって興味はあるが、 出来れば住みたくないと思っていました。

   

 震災の時に感じたのですが、 六甲アイランドも同じだと思いますが、 孤立感みたいな、 橋が落ちる、 橋が通れないといった話があって、 パニックまではいかなかったのですが、 それが誘因となって隣近所と始めて会話が始まるようなことがあったり、 給水所でみんなが協力してお年寄りの家に水を届けたりしたりすることを通じて、 始めて住民の顔が見えたような感じがしました。

   

 海上都市は何も無いところに島を創るわけで、 そこに先天的な海上都市本来の脆弱性と面白さがあると思います。

そこには明確な意識・意図があると思うのですが、 ポートアイランドが出来て10年以上になり震災も経験した今、 当初の意識・意図について総括ができる段階にきているのではないでしょうか、 是非やって戴きたいものです。

   

 島は橋が生命線なのですが、 橋が落ちたときに我々の生活はどうなるのか、 緊急時の場合何処に避難するのかといったパニックに陥る要素が海上都市にはあります。

ポートアイランドは震災2日後に関空に行くKージェットが動きましたが、 ホテルの客等がそこに行かれた時にすごく安心されたということがありました。

今回の震災では、 海にいて何故海から逃げられないのか、 海から何故外に出られないのかを強く意識しました。

   

 震災後も新交通が復旧するのに半年掛かりましたので陸上交通も非常に混雑しました。

大阪に勤めていますが天保山のほうに臨時のシーバスが運行されましてこれを利用するとすごく快適でした。

島の生命線の橋が1本しかないということを解消出来、 ポートライナーとともに海上の輸送ルートを確保出来れば、 海上都市らしさがつくり出せるのではないでしょうか。

これからも快適に住み続けたいと思えるような街になるのではないでしょうか。

   

 住民として生活している時間はほとんどなく、 生活実感が余り無いのですが、 ポートアイランドにはいかがわしさが足らないように思われます。

橋を境に島と陸とでは何か受ける感じが違うような気がします。

   

 都市機能の分散を図るために神戸市が人工島を計画したのですが、 災害という問題を契機として余計に感じるのですが、 一定期間人工島内でその機能が自己完結する、 自立していられるような計画にする必要があるのではないでしょうか。

   

小林郁雄 先程の佐藤さんのお話しの、 住吉での自転車が恐いという話は、 ニュータウンの開発には必ず付きまとう話なのですが、 海上都市のほうがより街に近いことによる期待の大きさの違いによるのかなと思います。

 海の交通機関の利用は大事なことで、 島の計画の当初からそのような話はある訳ですが、 なかなか旨くいかないのが現状です。

現状でハーバーランドからの海上ルートがありますが、 確かに改善してゆかなければならないと考えます。

   

生活情報サービスに携わって

六甲アイランド住民、 六甲アイランドケーブルビジョン株式会社 小山敬子

 六甲アイランドに住んで5年を迎えようとしています。

当初はイーストコース4番街に住んでいましたが、 島のなかで住み替えを行いました。

   

 先にお話のありました佐藤さんの、 住吉に行って道路が恐いという話は私も本当に実感しています。

六甲アイランドは車道と歩道がきれいに分離されていまして、 小学校6年の子供が漫画の本を見ながら道路を歩いても大丈夫なくらい安全に計画されています。

島の外に出ますと車道と歩道が区別されていない道路がありまして、 当然車が行き交っており人も歩いているのですが、 うちの家族だけが歩けなったことがありました。

   

 六甲アイランドに住んでいて、 あの環境に馴れきってしまっていたのですが、 通常子供を育てるのに環境が良いと思っていたのですが、 余り管理し整い過ぎているところに育てるのはどうかなと思いました。

   

 また、 中学校3年の娘が高校の志望校を見学に行ったことがあったんですが、 帰ってきてがっかりしたような顔をして、 あの高校があんなにボロとは知らなかったと言うんです。

当人達はここで小学校も中学校も、 島外の学校の子供達が見たらホテルと間違うような学校で生活をしており、 年数が長い学校程古くなって風格が出るということが解からないものですから、 校舎が古いとゆうのでショックを受ていましたのには返答にこまりました。

   

 六甲アイランドは環境が良いですね。

それから、 小さい子供を育てるのには非常にいい場所だと思います。

夏はリバーモールが大活躍で、 あそこで子供達に水着を着せて遊ばせるんです。

水深が30〜40cm位で水も水道水できれいですし、 お母さん達も子供を遊ばせながら井戸端会議をされています。

土日はお父さんが連れてきて、 そこで子供達を遊ばせながらビールを飲みながら寝転るがっておられる。

近場ですので連れていく引率者も疲れませんし、 お腹が空いたらそこで簡単に食事が出来るという便利さがあります。

六甲アイランドは夏の街だなという感じがしています。

   

 六甲アイランドの開発に当たって、 事業主が色々なまちづくりのなかに生活情報サービスをうたわれました。

具体的には、 センター装置と各住戸の生活情報端末機により情報のやり取りを双方向に行おうと考えました。

   

 しかし、 いろいろ機能を付ければ付ける程機械が複雑になり過ぎて、 会社の管理職で試したところ全くダメなことが解かりました。

誰がこのサービスを受けるのかを考えた場合、 家庭の主婦であり子供達であり、 複雑な操作の機械を配置したところで無用のものになると考え、 誰でもが簡単に使えるものとして生活情報端末機としてFAXを設置することにしました。

FAXはFAX自体の機能としても活かせるし生活情報サービスも受け取ってもらえると考え採用することになりました。

   

 問題は、 生活情報サービスが始まって2年目位にこれが始まることになったので、 既に3000戸程の入居者が存在していたことでした。

そこを訪ねて全戸に説明し了承得るのに大変苦労をしました。

外国まで連絡し了承を得ることもありました。

おかげで拒絶は非常に少なくてすみました。

   

 今は先の経験を踏まえ、 操作を非常に簡単にした機種を開発しボタン一つで情報が取れるようになっています。

   

 ソフトについては、 地域に密着した情報を提供しようと考えました。

六甲アイランドに住んでいて生活に必要な情報に絞り込んでいます。

情報については最低月に1度のメンテを心掛けています。

今では、 シーバス等は時刻が変われば変更情報を知らせてくれるまでになってきています。

   

 震災後には、 例えば、 六甲アイランドからさまざまなボランティアバスなどが運行されたのですが、 テレビだと映像が消えてしまうので、 情報の目次を示しFAXで引き出せるようにしたことで、 テレビと新聞の両方の役割を果たすことが出来ました。

震災後、 大量の情報を整理して届けることが出来たことで、 このシステムの意義があったと感じています。

   

設計者の目で見ると

ジイケイ設計 宮沢功

 シーバスで来た時に、 神戸そのものは歴史的な背景があって陸側のアイデンティティづくりは拠り所があると思いますが、 島の方になると、 全く海だった所に陸を創っているわけですから、 神戸が昔持っていた歴史的な要素を持ち込むのか、 全く縁切りしたところで創るのかという要素があるなと感じました。

   

 また、 図面を見せて戴いて愕然としたのですが、 全部水際がこれ程コンテナヤードで囲まれているとは、 いくらなんでもすごいという感じがしました。

   

 かなりのパーセンテージで海を覗くというところがないとダメなんではないか。

ポートアイランド2期などは神戸にいまだかってなかった平坦地が登場することになり、 それが海の中に有るというこを感じさせることがアイデンティティ要素であるし、 空気の違いを感じさせるような街づくりをしないと海上都市のアイデンティティは出来ないだろうと思います。

   

 リバーモールそのものはランドスケープとしては立派だと思いますが、 あれが本当に海上都市のアイデンティティを表現する媒体なのかというと、 海の雄大さとは違うと思います。

   

 シーバスで巡ってきて海から見ますとすごく雄大でした。

ビルもスカイラインも六甲の山も雄大なんだけれども、 島の中に入るとその雄大さがなかなか感じられないのが残念です。

どこの街でも海上都市の雄大さは共通したファクターがあると思いますが、 ただ、 神戸の場合には、 海から見るとバックに六甲の山や陸側が見えるということと海上都市の平地との関係を六甲の場合には表現すべきではなかったかと思います。

   

 アイデンティティは創るものではなく、 住んでいる人々も一緒になって創られるものだと思います。

仕掛けとして、 リバーモールや街かどの色はあってもいいけれど、 その仕掛けを住んでいる人がどう使うか、 非常に不確定な予測の上で仕掛けを創っていって、 10年ぐらいたって、 自分が住んでいた島の記憶がいくつか出来てきて、 それが、 アイデンティティになるのではないかと思います。

このようなソフトな部分に非常に気を配る必要があるし、 海上都市を取り巻く自然を活かしきることが必要ではないかと思います。

   

 また、 屋外環境の生活パターンがアイデンティティ形成の重要な要素ではないかと思います。

大きくは道路の構造であったり歩車分離であったり、 小さくはバスストップ、 ベンチ、 ガス灯などがどのように仕掛けられているか、 それによって生活のリズムがつくられたり、 生活のリズムが補助されたりしてしていく。

生活のリズムを創る道具の仕掛け方もアイデンティティ形成にとって重要ではないか思います。

   

小林郁雄 海上都市の海が何処にあるかという問題に何時も突き当たりますが、 アーバンデザインやプランニングはコンテナヤード等が先に動いている段階から始まる訳でいかんともし難い訳ですが、 最終的には何故埋めるのかという問題に突き当たるわけです。

ただ、 東京湾においてはかなり努力をしているようです。

大塚映二 神戸市の立場として答えなければならないところですが、 話がおもしろくないので差し控えます。

基本的には宮沢さんのおっしゃった通りだと思います。

人が住むのだから海を感じる街が当然あるべきと思います。

神戸の場合は港湾機能が先にありきで人工島をつくっているので、 その制約からは神戸の場合は逃れようがないのが現状ではないかと思います。

 ただ、 ポーアイ2期には海際にウォーターフロント緑地、 レクリエーション緑地を大規模に取っています。

ここを如何にこれから味付けをするかにかかっていると思いますが、 神戸のこれからの人工島の在り方を見守って戴きたいと思います。

   

小林郁雄 ポートアイランドの西側のコンテナヤードを住宅にしてはどうかと提案し、 港湾局の人に強く反対されていますが、 いずれそういう時期が来るのではないかと思っています。

 今はコンテナーのために埋めた埠頭ですが、 神戸製鋼が川崎製鋼が工場のために埋めた土地が今住宅地になろうとしていますので、 いつかの日には、 コンテナヤードのために創った土地が利用転換が行われて、 海際の街になることがあるのではないかと思います。

また、 逆も起こる可能性がある気もしますが、 そのような長い目で見て戴きたいと思います。

   

住民の目で見て

住民、 大林組 萩原正五郎

 六甲アイランドに住んで6年目に入っています。

六甲アイランドは港湾機能から創った街ですので、 都市機能を入れるのには限界があるのではないかと思います。

   

 海が何時も感じられない、 水が感じられないというのが、 住んでいて一番の不満です。

これがなければ、 これ程素晴らしい街はないと思っております。

海をどう感じるかがこれからの街づくりの中で一番のポイントになるのではないかと思います。

それがないかぎりはアイデンティティそのものがなかなか感じられないというのがこれからも続くのではないかと思います。

   

 港湾機能そのものもこれからだんだん変わってくると思います。

港湾機能もコンテナーだけではなくなると思います。

新しい港湾機能と住んでいる者との一体感のあるようなものを繋げて行く、 生活のなかに取り入れて行くような工夫もやっていっていいのではないかと思います。

   

 六甲アイランドでは住んでいる人と港湾で働いている人或いは港湾機能が完全に分離されている訳ですが、 分離していること自体が問題ではないかと思います。

これは都市機能上からは必要かもしれないけれども、 港湾機能自体が見えたり、 その中に入って来てることが考えられないでしょうか。

当然、 住む機能に配慮しながら融和させることが重要ですが、 あまりにも分離し過ぎているのではないかと思います。

   

 交通のほうでは反対に分離されていないことが問題です。

今回の震災の時に顕著だったのですが、 トラックなどの交通と住民のための交通(バス)とが一体になっていることが問題であったと思います。

アクセス分離の問題と機能の適切な融合の問題がまさに反対になっているのではないかと思います。

   

 六甲アイランドでは歩車分離の問題は旨く出来ているように見受けられますが、 なかなか旨く回遊出来ない所があったりして中途半端な感じがしています。

施設的には図書館などの生活に必要な情報を発信する身近かな充実した施設が十分でないのが残念です。

   

 オープンスペースですが、 住民にとってオープンスペースと感じられる場所があまりないと感じています。

アーバンリゾートフェアの時に大きな芝生の緑地を暫定的に創っていましたが、 あのような楽しい空間が欲しいのですが、 そのような地区公園的な空間がこのような大きな街にないのが残念ですし、 あればアイデンティティのポイントになるのではないでしょうか。

   

 六甲アイランドは住んでいる人の階層が比較的似通っているのですが、 このような住んでいる人の均質性は住んでいる住民としては住みやすい訳ですが、 子供の教育という面では、 多様な人々が社会を構成していることを理解させる必要もあるのではないかと思います。

純粋培養されたような子供が育つことに対する不安を覚えます。

   

小林郁雄 今の話は今後の団地づくりの大きなテーマではないかと思います。

震災でたまたま仮設住宅も沢山出来ていますので、 そういった人達との交流も含めて、 これを機会に交流の輪が広がるといいのではないかと思います。

 それから、 ウエストコートの西側にシティヒルで見えないのですが、 食品工場がいくつかあり神戸の主要な食品を生産しています。

一歩出ると大変豊かな生産物がありますので、 交流を活性化させて戴きたく思います。

   

 小山さんにはお願いなのですが、 震災の時の情報伝達の状況とテレビがどのように役立ったのかを教えて戴きたいのですが宜しくお願い致します。

   

小山敬子 マンション街区毎に管理事務所スーパーロビーがあり、 救援物資の到着はイーストコート側については館内放送で伝えました。

ウエストコート側は電気が来るのが遅かったので回覧板式に声を掛け合って伝えたと聞いています。

 自主放送は六甲ケーブルビジョンと六甲アイランド復興委員会(自治会、 周辺企業が組織)の事務所が隣だったので、 知らして欲しい情報がすぐに回ってきて、 文字とナレーションで告知を毎日行いました。

簡易シャワーの連絡、 コープコーベの買物情報など細かい情報を伝えました。

   

 生活情報との兼ね合いですが、 ほとんど交通情報が多かったのですが、 毎日のように情報が変化しました。

テレビで告知する、 詳しい情報はFAX情報ボックスの取出し番号を伝える方法で対応しました。

テレビは夜の10時までリピート形式で流し、 一日一回見ていれば六甲アイランドの情報が得られるようになっていました。

   

 掲示板ですと、 掲示内容の更新が難しく整理をすることが難しいという問題がありますが、 生活情報システムでは情報を整理して伝えることが比較的やりやすく、 またそのことに注意を払いました。

   

まとめ

大阪大学工学部環境工学科 鳴海邦碩

 簡単に感想を述べます。

大きく分けて、 この街がどうなっていくのかという問題と、 新たにこういう開発をするときにどうすれば良いかという問題があると思います。

この街がどうなっていくかについてはあまり纏めはいたしません。

   

 海上都市、 人工島といった立地条件の都市の総括をしてはどうかという話がありましたが、 都市開発に携わっている者としては是非やっていかなければならない問題だと思います。

   

 島であり、 人工島であり、 港である空間的な条件を、 どうやって一連のテーマであるアイデンティティやらしさに繋げてゆけるかが重要だと思う訳です。

   

 以前に尼崎で行ったシンポジウムで尼崎の女性の公園課職員が、 喩え話ですが、 六甲から見える景色で島を設計出来ないか、 恋人と一緒に六甲山頂から海を見ているときに余りにもロマンがない、 例えば、 ハート型の埋立地が出来ないかという話をされていました。

ハート型は喩え話ですが、 どうして埋立デザインの発想が出来ないかと話されていましたが、 海の水際の設計とか計画の技術はまだ低いレベルにあって、 最近エコエンジニアリングと良くいわれますが、 関西には特にそういうことをやっている学者もいないし、 事業者もあまり関心がないということが現状ではないかと思います。

   

 最近『なぎさ海道』という大阪湾を歩いて巡れるルートを創ろうということをやっています。

1700kmもあるのですが、 それを歩けるようにしようとやっています。

   

 震災の時でも海に行こうとした人は殆どいない。

何故かという理由は色々考えないといけない訳ですけれども、 海というのは広いとか、 外につながっているとか、 外から来るものを迎えるという、 イメージのなかではそういう機能を持っている訳ですけれども、 阪神とか神戸の人は海に行こうとはしなかったのではないか。

神戸阪神間の海辺は8割以上は近付けないし、 海と水辺の環境に新しい試みがまずないということがあるのではないかと思います。

   

 東京の方は運輸省とか建設省がやる事業と大学の研究が合体してやっていますが、 関西は、 このような国土事業的なものについてはレベルが低いのが現状です。

   

 島とか港とかの空間を如何に創っていくかについてはイメージが貧困ではないかという気がしています。

海上都市は何を原風景にしたらいいのだろうかという話がありましたが、 海が強いインパクトでもって迫って来るような環境作りをこれから始まるベイエリアの開発の中では考えなければいけないと思います。

   

 空気が違うとか、 夕陽とか海とか非常に大きな景色が海辺の開発ではポイントになると思いますが、 それを人間の側に持ち込む技術がまだ育っていないということも原因の一つで、 それについて考えて行かなければならないと思います。

   

 それから、 橋にばかり頼るのではなくて海上を活用することも重要と思います。

サンフランシスコ湾でもこういった街が沢山つくられていますが、 そこでは海のタクシーまでありますから、 そういったことも一つの課題としてあると思います。

   

 島の都市開発は民間開発というこれまで経験のなかったことに取り組んでいるわけで、 いろんなこれからの可能性と同時に問題点もあるのではないかと思います。

それは問題点というよりは限界と言えるかも知れません。

そういうことについて2点だけ申し上げます。

   

 ひとつは、 ポートアイランドよりも六甲アイランドにきて非常に感じることは、 アメリカの最近の新しいニュータウンにイメージとして非常に似ている。

アメリカではこのようなニュータウンのことをエッジシティとかテクノシティとか呼びますが、 複合開発なのだけれど選択され抜いた複合開発なのです。

   

 例えば、 いい学校とか先端産業とか研究機関とかハイクラスの住宅とかレクリエーション施設とか、 選択されて売る効果が発揮出来る開発が目指されています。

これがアメリカの数年来の傾向を創って来ているのだけれど、 その傾向がここの印象と良く似てるなという感じがしました。

   

 選択的複合というのは、 お客さんを選択していることと同じなので、 民間開発の一つの限界なのですが、 限界のなかでいかがわしさとか庶民的なショッピング空間とか子供が鍛えられないというのはいまの仕組みだけでは出来ない。

出来ないことは相当はっきりしている訳で、 それに代われるものが創れるかどうか。

たとえば、 周りに沢山の人が働いているのに接触がない、 接触がないほうがいいと思っている人が大部分だとは思うのですが、 可能性というのは周りに沢山有るかも知れないので、 この街が置かれている状況を乗り越えていく手掛かりを見つける試みを旨くやっていかなければならないと思います。

   

 関西の北摂ニュータウン位までは周りに街が広がっていくのですが、 ところがこれから内陸で開発されるニュータウンや創られた人工島のニュータウンの周りには街が広がっていかないのです。

そこで、 島状に創られてしまって固定されてしまいますので、 既にその周りにあったものとどうやって関係を結んでゆくかが、 将来の街らしさを創っていくうえで鍵を握っている部分だと思います。

   

 民間開発の役割で管理のことが大きく係わっています。

管理で儲けるというのは管理主体がはっきりしている住宅地開発の固有の課題であり、 公的開発でも第3セクターが行っているものは同じ課題がありますが、 都市のなかに創った或いは管理している会社の資産を持っていると、 それを運用してゆかなければならないということになり、 その運用して得た利益を環境に還元してゆくとか、 住民の生活に還元してゆくとかいう方向が必要であると思います。

   

 また、 行政は税金を取ってサービスを返すという仕組みで街がなりたっている訳ですが、 行政のなかに新たに管理の領域と管理の主体が生まれて二重に展開することになります。

   

 そのあたりに、 環境管理とか住みやすい環境をつくって行くとかいう面で、 二重にサービスを得られるメリットを新しくつくっていくことが出来る訳で、 これから新しい問題となってゆくことが考えられます。

また、 管理会社が建て替えるところまで持って行ければ50年後も安心して住める街になるような気がします。

   

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