JUDI関西 私の考える「アイデンティティとまちづくり」
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エコシティ-京都を考える

ランドデザイン

中村伸之

 京都のアイデンティティを語る場合、 まずそのユニークな歴史と文化から語り始めなくてはならないというドグマがあるようだ。

   

 今回の「京都ワークショップ」においても、 そうであったのではないでしょうか。

これは当然といえば当然なことだが、 一方で京都には100万都市としては珍しいほど豊かな自然が残っている。

   

 そして、 「歴史・文化」が強調されるあまり「自然」がおろそかにされるのではないかという危惧を覚える。

   

 さらには「京都迎賓館問題」にみられるように、 歴史・文化をバネにした都市整備が、 都市の中の貴重な自然の保護と対立する事態にもなっている。

   

 他の都市であれば「開発」か「保全」かという分かりやすい対立になるべき問題が、 京都にあっては「文化」か「自然」かといった無茶苦茶な二者択一となって立ち現れてくるのではないだろうか。

   

 まちづくりにおいては「文化首都」「国際文化観光都市」などの目標が語られるように、 私たちが日常的に接する媒体の中では「千年の都」とか「大学のまち」などの形容詞がつくように、 やはりこの街のイメージは「文化・歴史」によって作られ、 肯定的に受け取られる。

   

 そこで私は、 この街の自然を守り育てるような「エコシティー京都」という新しいまちづくりのイメージを提案できればと思うのだが、 そんな力量はないので、 日常生活の中で生まれた雑感ともいうべき、 いくつかの話題を提供するにとどめる。

   

自然の構造がビジュアルなまち 三山に囲まれ鴨川が町の中心部を貫通している。

この盆地景観は鴨川の橋に立てば一目でわかる。

鴨川を遡上して北山に至るようなお祭りがあれば街と自然の結びつきはもっと身近に感じられるのではないか。

貴重な自然と平凡な自然 京都御苑のオオタカやタシロラン、 東山のムササビやオオルリやフクロウなど150万人が暮らす都市としては、 他に考えられないような自然があり、 シイ・カシ林や二次林などの西日本では平凡な自然がそれを支えている。

文化をはぐくむ自然 「京都は池泉の都であり湖底的地理がもたらした産物」(林屋辰三郎)といわれるように、 その自然が京都文化の母胎となった。

祭り、 酒造なども水(伏流水)との関わりが深い文化である。

 今日の造園デザインも、 日本庭園という文化的遺産をコピーするだけでなく、 オリジンとなった京都の自然から発想した方がよりエキサイティングなものになるのではないか。

   

共有される都市の贅沢 風呂屋、 定食屋、 飲み屋、 神社仏閣(お祭り)などで、 気軽にこの街の空気に触れることができる。

さらに100mほど山に登ったり、 河原に下りてみれば思わぬ自然に巡り会うこともある。

あまりお金をかけずに贅沢な気分になれる街の仕掛けがある。

宗教の未来とエコロジー 法然院(環境教育)、 下鴨神社(森林の再生)などのエコロジカルな活動が、 まちづくりと宗教施設の関わりの新しい姿を見せてくれる。

これは宗教自体の未来像にも関係するのではないか。

 いずれにせよ京都の自然の多くは神社仏閣の中にあり、 宗教の力で守られてきた。

   

 以上の断片的な雑感から21世紀の「エコシティー京都」の姿がかいま見えるのではないかと思うのだが、 みなさんはどう思われるだろうか。

   

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