住みあう―守りあう
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巣作りのできる都心環境

関西大学 丸茂 弘幸

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安心して巣作りのできる都心環境を提供するために、 近代ヨーロッパの産物である街区型集合住宅のアジア的展開を期待したい。

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画像t055-1 モダニズムの計画思潮の中で否定され続けてきた街区型集合住宅であるが、 ヨーロッパでも1970年代頃から復権の兆しが見え始めた(イギリスのミルトン・ケインズで筆者らが担当したセントラル・エリア・ハウジングのストラクチャー・プランの一部)
画像t055-2 2階建のテラス・ハウスからなる街区の例。

街区の周辺は幅30mの並木路(ミルトン・ケインズ)

画像t055-3 早朝、 街区内の広々とした中庭を歩く親子(ミルトン・ケインズのフィッシャーミード)

 ルイス・マンフォードにお出ましいただくまでもなく、 住宅の基本は子育てにある。

たいていの生き物は子育てのために巣をつくり、 子どもの巣立ちとともに巣を捨てる。

だが人間は巣を捨てるわけにはいかない。

巣立った若者の多くは大都市のワンルーム・マンションなる巣もどきのものに宿る。

子育てを終えた老夫婦の中にも便利のいい都心のホテルのようなマンションに移り住むものが少なくないと聞く。

これらの生物学的には巣を捨てている人々を住まわせるための都心居住であればさして難しい問題ではないし、 それなりの意味もある。

だがホテルのような住宅で子どもが育てられるわけではない。

   

 生き物が子を育むための巣を作る環境とは、 安心のできる安定した環境である。

人間も例外ではない。

変化と流動を特徴とする都心において、 この安心・安定を保障するためには住戸廻りに〈守られた公共空間〉が欠かせない。

街区型集合住宅はそれを提供する有力な手段の一つである。

1900年前後のヨーロッパにおける都市住宅ストックの大半を占めたこの住宅形式の、 2000年前後におけるアジア的展開を期待したい。

   

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