大地への取組み
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自然を生かしたプランニング事例

山崎

改行マークありがとうございました。 エポックメーキングな事例について当事者の立場からご説明いただけたと思います。

改行マーク戦後、 鉄道沿線沿いで大規模な開発がずいぶん行われました。 関西では里山開発が中心になっていたかと思いますが、 その中で、 住宅も又、 他の消費財と同じように、 大量生産、 大量消費型のシステムが、 構築されたのではないかと思います。 これは、 大型の重機が技術的に可能にしたことですが、 高品質ではあるけれども画一的なまちを作ってしまったと思います。 それは、 その地域の原風景、 あるいは、 その地域と大地のつながり、 その原体験といったものを、 非常にシンプルなものにしてしまったという思いがしています。

改行マークそれでは、 先ほどの緑風台と同じように、 自然を生かすプランニングを見事に商品化している4つの事例を、 色々な切り口でご報告させていただきたいと思います。


八ヶ岳山麓の別荘地

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図1 八ヶ岳山麓の別荘地の分譲パンフレット表紙
改行マーク図1は、 私が以前勤めていました西洋環境開発という会社が30年来ずっと作り続けてきた八ヶ岳山麓の別荘地のパンフレットです。

改行マーク別荘地といっても、 人がそこで暮らしていかなくてはなりませんので、 最小限の機能を確保しているわけですが、 基本的には地域の特徴ある自然植生、 あるいは風光明媚さが不動産価値を形成しております。 そういう意味では、 究極の自然活用の商品ではないかと思います。

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図2 配置図
改行マーク一区画がだいたい1,000mありますが、 図2の配置図に、 その中に生えている木の樹種が全てプロットされています。 中に大きな石があれば、 それもプロットされています。 木が実は商品なんだ、 こういう環境を売るんだということを、 明解に伝えているのではないかと思います。

改行マークその他にも、 鳥とか小動物の紹介や、 別荘地の中で、 どういう時期に、 どういうふうな花が咲くのか紹介しています。 これらは微地形や微気象があってこそ、 様々に彩りを与えてくれるものなのです。 ですから、 先ほど申しましたような、 大規模造成による画一化、 効率化とは対極の、 微地形や微気象が持っている、 生態も含めた価値を大切にした開発と言えるかと思います。


藤和グリーンヒル

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図3 藤和グリーンヒル航空写真
改行マーク図3は、 南足柄藤和グリーンヒルという、 東亜不動産が開発したものです。 1.5次住宅と昔よく言っておりましたが、 住宅地としては通勤の限界立地だけれども、 別荘地と違って、 都市に通えないことはないという自然が豊かな住宅地の事例です。

改行マーク90haの開発ですが、 場所は足利の奥の方で、 ご覧の通りコンター造成になっています。 ここでは、 居住者のうち定住が221戸、 23戸が別荘利用という構成で、 住民の6割は地元、 2、 3割は小田原から新幹線を使って横浜や東京に通っている方です。 残りの1、 2割の方は退職した人たちです。 ここで、 ヒアリングをしてみましたら、 海外での生活経験者とか、 油絵を描いているといった方がたくさん住んでいらっしゃっいました。 また典型的な車社会型のライフスタイルです。

改行マーク先ほど、 江川さんがウッディタウンの近くで、 都市生活はウッディタウンの生活施設を使って、 自分はもっと自然豊かなところに住んでいるという住まい方が紹介されましたが、 まさにここでもそういった生活が選択されています。


フィオーレ喜連川

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図4 フィオーレ喜連川航空写真
改行マーク図4は、 フィオーレ喜連川という栃木県宇都宮郊外にある小さなまちの計画です。 開発コンセプトは、 生活エンジョイ、 温泉付き林間住宅です。 起伏と土地の商品化を一層進めて温泉付きにしたものです。 何の特徴もない里山でしたが、 温泉を掘り当てたということと、 コンター道路による省造成で、 自然林を残した点が特徴です。 そのおかげで造成コストも非常に安く上がって、 坪当たり8万から14万ぐらいの価格で売れました。 即日完売がつづいて、 地元の優先枠をくれというようなお話しが出るほどで、 この不況期には考えられないような売れ方をしたものです。

改行マークここの宅地の購入者も、 地元の方と、 宇都宮から新幹線を使って東京に行かれる方、 それから老後のための土地手当という方が、 1/3ずつという状況です。


六麓荘

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図5 六麓荘の土地利用
改行マーク明治の末期から昭和の初めにかけて、 阪神間で中流のサラリーマンを対象とした沿線開発がずいぶん行われました。 一方で、 大阪の事業家だとか、 富裕層を対象にしたもの、 それから神戸の貿易商だとか外国人を対象とした住宅地も、 同時期に開発されました。 その一つが、 図5の六麓荘です。

改行マーク六麓荘は地形を完全に活かしきったもので、 中に流れる小川を敷地の中に取り込んだりしています。 それぞれ大変大きな敷地で、 今行ってもすごいと圧倒されるわけです。

改行マークこういう特徴のあるものが、 中流のサラリーマンを対象とした住宅地供給と同時に行われたわけです。 そして、 こういった人たちのライフスタイルだとか、 あるいはそのライフスタイルをサポートする色々な生活施設が、 実は、 阪神間の固有の魅力とか、 文化とか、 地域イメージを構成してきたということがあります。 特徴ある住宅地とそこに住まう人たちが、 地域のイメ−ジ、 あるいは生活文化を作っていったという例だと思います。

改行マーク同じように、 昭和の初期にアーネスト・ジェームズが50軒ほどの外国人の専用住宅のために開発したジェームズ山も、 現在でもクローズドコミュニティでなかなか中に入れてくれませんが、 他の地域とは違うイメージ、 環境を作りあげています。

改行マーク周辺に、 ジェームズ山という言葉を冠したマンションができたり、 住宅地ができたりしています。 これは、 そのイメージを活用しているということで、 ここが作った環境が、 一つの環境価値を作っていることの証左だと言えるかと思います。


桂坂の東CED

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図6 桂坂「東CED」模型写真
改行マーク図6は桂坂の東CEDです。 これは内井昭蔵さんの設計です。 当初は、 上側のところが一枚の宅地の計画で、 下はすぐ法になっていたものを、 全体をなだらかにして、 その上にこういったものを作ったわけです。 斜面は見える面積が大きく情報量が多いわけです。 情報が多いものに、 質を与えればインパクトがある、 あるいはイメージ形成をしやすいという利点を持っています。 ここも、 ニュータウンの玄関口、 まっすぐ上がっていって正面にあたる大事なところだったわけです。 そこで、 内井先生にお願いして、 こういったものを作りました。 これが、 桂坂の質感だとかイメージの一つになってくるわけです。

改行マーク一方で、 この住宅が持つ力が、 海外の居住経験者だとか、 今まで住宅地を探していたんだけれどもなかなかいいものに巡り会わなかった、 そういう人たちに支持されて、 完売しました。

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