ありがとうございました。 エポックメーキングな事例について当事者の立場からご説明いただけたと思います。
戦後、 鉄道沿線沿いで大規模な開発がずいぶん行われました。 関西では里山開発が中心になっていたかと思いますが、 その中で、 住宅も又、 他の消費財と同じように、 大量生産、 大量消費型のシステムが、 構築されたのではないかと思います。 これは、 大型の重機が技術的に可能にしたことですが、 高品質ではあるけれども画一的なまちを作ってしまったと思います。 それは、 その地域の原風景、 あるいは、 その地域と大地のつながり、 その原体験といったものを、 非常にシンプルなものにしてしまったという思いがしています。
それでは、 先ほどの緑風台と同じように、 自然を生かすプランニングを見事に商品化している4つの事例を、 色々な切り口でご報告させていただきたいと思います。自然を生かしたプランニング事例
図1 八ヶ岳山麓の別荘地の分譲パンフレット表紙 |
別荘地といっても、 人がそこで暮らしていかなくてはなりませんので、 最小限の機能を確保しているわけですが、 基本的には地域の特徴ある自然植生、 あるいは風光明媚さが不動産価値を形成しております。 そういう意味では、 究極の自然活用の商品ではないかと思います。
図2 配置図 |
その他にも、 鳥とか小動物の紹介や、 別荘地の中で、 どういう時期に、 どういうふうな花が咲くのか紹介しています。 これらは微地形や微気象があってこそ、 様々に彩りを与えてくれるものなのです。 ですから、 先ほど申しましたような、 大規模造成による画一化、 効率化とは対極の、 微地形や微気象が持っている、 生態も含めた価値を大切にした開発と言えるかと思います。
図3 藤和グリーンヒル航空写真 |
90haの開発ですが、 場所は足利の奥の方で、 ご覧の通りコンター造成になっています。 ここでは、 居住者のうち定住が221戸、 23戸が別荘利用という構成で、 住民の6割は地元、 2、 3割は小田原から新幹線を使って横浜や東京に通っている方です。 残りの1、 2割の方は退職した人たちです。 ここで、 ヒアリングをしてみましたら、 海外での生活経験者とか、 油絵を描いているといった方がたくさん住んでいらっしゃっいました。 また典型的な車社会型のライフスタイルです。
先ほど、 江川さんがウッディタウンの近くで、 都市生活はウッディタウンの生活施設を使って、 自分はもっと自然豊かなところに住んでいるという住まい方が紹介されましたが、 まさにここでもそういった生活が選択されています。
図4 フィオーレ喜連川航空写真 |
ここの宅地の購入者も、 地元の方と、 宇都宮から新幹線を使って東京に行かれる方、 それから老後のための土地手当という方が、 1/3ずつという状況です。
図5 六麓荘の土地利用 |
六麓荘は地形を完全に活かしきったもので、 中に流れる小川を敷地の中に取り込んだりしています。 それぞれ大変大きな敷地で、 今行ってもすごいと圧倒されるわけです。
こういう特徴のあるものが、 中流のサラリーマンを対象とした住宅地供給と同時に行われたわけです。 そして、 こういった人たちのライフスタイルだとか、 あるいはそのライフスタイルをサポートする色々な生活施設が、 実は、 阪神間の固有の魅力とか、 文化とか、 地域イメージを構成してきたということがあります。 特徴ある住宅地とそこに住まう人たちが、 地域のイメ−ジ、 あるいは生活文化を作っていったという例だと思います。
同じように、 昭和の初期にアーネスト・ジェームズが50軒ほどの外国人の専用住宅のために開発したジェームズ山も、 現在でもクローズドコミュニティでなかなか中に入れてくれませんが、 他の地域とは違うイメージ、 環境を作りあげています。
周辺に、 ジェームズ山という言葉を冠したマンションができたり、 住宅地ができたりしています。 これは、 そのイメージを活用しているということで、 ここが作った環境が、 一つの環境価値を作っていることの証左だと言えるかと思います。
図6 桂坂「東CED」模型写真 |
一方で、 この住宅が持つ力が、 海外の居住経験者だとか、 今まで住宅地を探していたんだけれどもなかなかいいものに巡り会わなかった、 そういう人たちに支持されて、 完売しました。