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(左)上部全景(S40.2) (右)下部工(圧気ケーソン)施工遠景(S38.8) |
これは大都市の中の土木事業でしたが、 一般の人の目には分からないものです。 見える部分は、 道路から上の上部構造のみで、 「立派な三階建ての道路だなあ」という程度しか分からないでしょう。 その上部構造を支えているのが、 目に見えない30mあまりの基礎部分です。 ここに思いをはせて欲しいと思います。
ニューマティックケーソンとは、 新しいという意味の「ニュー」ではなく、 PNEUMATICと綴ります。 「空気入りの」という意味です。
大阪では地下約30mに「天満層」という砂利層が出てきます。 それまでは、 粘土質層やシルト、 細かい砂の層です。 地下20m付近からは貝殻が出てくるのですが、 これは大昔には海底だったことを示すものでしょう。 「梅田」が「埋めて田んぼをつくった」という歴史から名付けられたように、 梅田界隈は昔から川があふれたりするのを土を盛ってできあがってきた土地だと思います。 ニューマティックケーソン工法は、 そんな軟らかい地盤のための工法です。
下部工(圧気ケーソン)施工近景(S38.11)
下部工(圧気ケーソン)沈設完了(S39.2)
掘削沈下説明図
掘削作業
基礎を30m下に沈めていくために、 4mずつ8ブロックに分けて、 コンクリートを打っては沈め、 打っては沈めていくという工法です。 しかし、 そんなに簡単に沈んではくれないのです。 先端に作業室があったのですが、 沈めていくと中の作業員に気圧がかかって異常な状態での作業となりました。 2.5気圧かかると、 二酸化窒素が体内に入り狭心症が起こったりします。 二日酔いや耳や鼻の悪い者は、 まず入れませんでした。 地上との連絡もとても不便でした。 今振り返ると、 とても野蛮だったと思います。
やがて、 その工法は「鋼管杭工法」といって鋼管杭を打って、 継ぎ足していく工法に変わりましたが、 当時は大阪あたりの軟弱地盤にはニューマティックケーソン工法がベストだと言われていました。 この高速を通るたびに、 当時のことをいろいろと思い出します。
やはりこの工事も自然に挑戦する仕事で、 そのために人間が不自然な状態におかれても頑張ったからこそ完成した仕事だと思います。 この時代は「体にむち打ってでも頑張るんだ。 負けてられるか」という何くそ精神があったからこそできたのでしょう。
今は、 高速道路のあちこちに防音壁がをつけられ非常に不格好なものになってしまいました。 騒音の出ない車を開発して、 早くあの壁をとっていただきたいと思っています。
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